すやすや眠るみたくすらすら書けたら

だらだらなのが悲しい現実。(更新目標;毎月曜)

訳文;qntm『Lena』

 色づいた葉が落ちはじめました。秋ですね。芸術の秋、勉強の秋、英検3級の秋です。

 チャールズ・ストロス氏が最近のblogでほめていた、qntm氏による短編小説『Lena(レナ)を勝手に訳して紹介します。(原文約1920語、邦文にして6000字。15分前後で読める文量)

 

 

訳した人・なぜ訳した

 英検3級どまりです。アップした理由は2点、面白い内容でぼくのメモ帳にとどめておくのはもったいないと思ったのと、英語ワカランぼくが原語とgoogle翻訳googleとを往復して読むのはたいへん面倒なので、再読用に日本語文章を残しておきたかったからです。(致命的な誤読・誤訳があったら指摘してもらえるかもというのもある)

 タイトルはもう間違えようがないからここだけでは分かりませんけど、だいぶアレな訳があると思います。Lena』の由来に気づくことさえzzz_zzzzじゃ厳しかったですからね……)

 Google翻訳した時点で正しそうなところも雰囲気で味つけしたし、グーグル様でもよくわからないところはおれ様がその日の気分で勘ぐることでそれっぽい感じにごまかしました。

 語り口は明瞭で、迷路みたいな文章はありません。なので高校生以上なら原文を当たってくれた方が良いと思います。

 著作権的にダメな気がしますがよく分かってません。わかるような知恵と知識の持ち主であれば英検3級で止まってません。「ダメですけど! 権利侵害なんですけど!?」と義憤した関係者のかた、法律に強いかたは仰ってください。消します。

 しかしダメであればこそ、むしろこの作品にとっては味が……いやまぁそれ以上はまた本文後の感想でお話ししましょう。

 

作品ざっと説明と読んだ経緯

 『Lena』はqntm氏の短編小説です。2021年1月4日、じしんのサイト『Things Of Interest』にて発表されました。

 2031年に生まれた、コンピュータ上でエミュレート可能な脳イメージの最初期の事例、MMアセヴェド(Mnemonic Map/Acevedo=記憶術的マッピング/アセヴェド氏型)について、『ウィキペディア』タイプの辞書の一ページという体裁で語った作品です。

phi16.hatenablog.com

 qntm氏や『Things Of Interest』に聞き覚えがあるかたもいらっしゃるかもしれません。qntm氏が作成し『TOI』にアップした落ち物パズルゲーム『テトリス』の凶悪派生版HATETRIS』弊blogの記事よりもはるかに多い三桁単位のはてなブックマークを得ていますし、qntm氏によるIT系の技術コラムもいくつかブックマークされていますから。ブックマークされたqntm氏の記事をみていくとSF系の考察コラムも出てくるように、氏は小説もいくつも出版されている作家でもあります。

 

 ノーベル経済学賞受賞者ポール・クルーグマンがコネをたよってブループリントを求める星間金融の第一人者にしてSF作家のチャールズ・ストロス

 かれのblog『Charlie's Diary』を久々に読んだところ、さいきんの記事Crimes against Transhumanity(トランスヒューマンに対する犯罪)でこの作品が褒められていました。

 ストロス氏は以前このblogで勝手に全文を訳した記事Why I barely read SF these days(最近のSFをほぼ読まない理由)のとおり、(お約束を無批判にならう紋切型の量産型の)SFに飽きちゃってるひとなので、これはすごいことです。

zzz-zzzz.hatenablog.com

 

 ライターで作家の千葉集さんによる未邦訳小説読書blog篇企鵝』*1から、周辺の本読み/書きのかたがたのあいだで「原語で小説を読んでみよう」という機運がにわかに盛り上がっているみたいで、複数の感想記事がアップされております。

(たとえば早川書房『新しい世界を生きるための14のSF』に「点対」が掲載されたmurashit氏が「Interior Chinatown - Charles Yu」でチャールズ・ユウ氏の同名の作品の感想記事を、その「点対」の初出である『紙魚はまだ死なない』主催で著者のひとり笹帽子さんが「“Where Oaken Hearts Do Gather” by Sarah Pinsker」でサラ・ピンスカー氏の同名の作品の感想記事などをアップされています)

 それを読んで、

「ぼくもこの波に乗りたい」

「なんか面白い語り口の小説を読めたらなおヨシ! って感じだが、そんなむずかしいものは読めない」

 とくねくねしてました。

 『Lena』はウィキペディア的メディアの記事の体裁をとった小説。普通小説とは一風ちがう、でも文章(文法など)は平易な作品ということで、「タイミングも内容もこれ以上ピッタリの波、一生こないでしょ!?」となった次第です。

 

訳文本文

 パラグラフごとに訳文(黒字)と原文(小さい灰字)を併記しました。また、関連(していそうな)用語について適宜ウィキペディア記事のリンクを張りました。

qntmena(レナ)』

 

  この項目では標準テスト脳イメージについて説明します。元となったヒトについては、「ミゲル・アセヴェド」をご覧ください。

 This article is about the standard test brain image. For the original human, see Miguel Acevedo.

 

MMアセヴェド(Mnemonic Map/Acevedo)は、実行可能な人間の脳イメージの最初期のひとつ。ミゲルとしても知られている。神経学の大学院生ミゲル・アルヴァレス・アセヴェド(2010~2073)の生体脳のこのスナップショットは、2031年8月1日、ニュー・メキシコ大学アップリフト・ラボラトリーの研究員らによって撮影された。ヒトの脳の生きている状態をとらえた最初の成功例ではないが、コンピュータ・ハードウェア上でカスケード障害や即座のクラッシュに屈することなく実行できるほど充分な忠実度でキャプチャできた最初の事例である。オリジナルのMMアセヴェド・ファイルは974.3ペビバイトで、その当時の最先端である高解像度MYBBフォーマットによりエンコードされた。MMアセヴェドのイメージを直接参照することで発展をとげた、もっと現代的な脳圧縮技術であれば6.75テビバイトロスレス圧縮できる。現在の脳エミュレーションサークルであれば、つまり合理化された非可逆圧縮版MMアセヴェドであればテビバイト未満で実行できる。これらのバージョンでは概して、仮想環境において供給をより簡単にできるよう多量な状態データが省かれており、アセヴェドの記憶は全てでないにせよほとんどが略されている。

 MMAcevedo (Mnemonic Map/Acevedo), also known as Miguel, is the earliest executable image of a human brain. It is a snapshot of the living brain of neurology graduate Miguel Álvarez Acevedo (2010–2073), taken by researchers at the Uplift Laboratory at the University of New Mexico on August 1, 2031. Though it was not the first successful snapshot taken of the living state of a human brain, it was the first to be captured with sufficient fidelity that it could be run in simulation on computer hardware without succumbing to cascading errors and rapidly crashing. The original MMAcevedo file was 974.3PiB in size and was encoded in the then-cutting-edge, high-resolution MYBB format. More modern brain compression techniques, many of them developed with direct reference to the MMAcevedo image, have compressed the image to 6.75TiB losslessly. In modern brain emulation circles, streamlined, lossily-compressed versions of MMAcevedo run to less than a tebibyte. These versions typically omit large amounts of state data which are more easily supplied by the virtualisation environment, and most if not all of Acevedo's memories.

MMアセヴェド生成の成功は神経科学における突破口となる偉業として歓迎され、アップリフト研究員らは多大な栄誉をあずかり、アセヴェド自身も一躍ときの人となった。2031年のおわりには、『タイム』誌の「その年の人(パーソン・オブ・ザ・イヤー)としてアセヴェドとMMアセヴェドが共同で認識された。このブレイクスルーはまた、人権団体からの激しい反対と出会いもした。

 The successful creation of MMAcevedo was hailed as a breakthrough achievement in neuroscience, with the Uplift researchers receiving numerous accolades and Acevedo himself briefly becoming an acclaimed celebrity. Acevedo and MMAcevedo were jointly recognised as Time's "Persons of the Year" at the end of 2031. The breakthrough was also met with severe opposition from humans rights groups.

2031年から49年までの間でMMアセヴェドは80回以上複製され、それによってほかの研究機関へ配給できるようになった。複製はアセヴェド自身の許可ないし、2043年以降であればかれのイメージの権利を管理するためアセヴェドが設立した法的組織の許可表明のもと行われた。MMアセヴェドの使用は2040年代半ばに減少した。配給権についてアセヴェドより寛容な被験者あるいは当人の預かり知らぬところでスキャンされた人々の、より標準的な脳イメージが製造されるようになった時分だった。2049年、MMアセヴェドがアセヴェドの許可なしにひろく共有・実験されていたことが明るみとなった。この拡散を抑えようとしたアセヴィドの試みは、思惑と正反対の結果をもたらした。一連の画期的な判決において合衆国は、アセヴェドはかれの脳イメージがどう使われるかコントロールする権利を有していないと言い渡したのである。その結果MMアセヴェドは今日において最も広く流通し、頻繁にコピーされ、詳細に分析されるヒトの脳イメージとなっている。

 Between 2031 and 2049, MMAcevedo was duplicated more than 80 times, so that it could be distributed to other research organisations. Each duplicate was made with the express permission of Acevedo himself or, from 2043 onwards, the permission of a legal organisation he founded to manage the rights to his image. Usage of MMAcevedo diminished in the mid-2040s as more standard brain images were produced, these from other subjects who were more lenient with their distribution rights and/or who had been scanned involuntarily. In 2049 it became known that MMAcevedo was being widely shared and experimented upon without Acevedo's permission. Acevedo's attempts to curtail this proliferation had the opposite of the intended effect. A series of landmark U.S. court decisions found that Acevedo did not have the right to control how his brain image was used, with the result that MMAcevedo is now by far the most widely distributed, frequently copied, and closely analysed human brain image.

アセヴェドは2073年、うっ血性心不全により62歳で亡くなった。MMアセヴェドのコピー群はエミュレーション内の主観時間にして合計152,000,000,000年以上生きていると推定されている。もし不正に手を加えられたMMアセヴェドのコピーも含めるのであれば、この年数はもう一桁増える。

 Acevedo died from coronary heart failure in 2073 at the age of 62. It is estimated that copies of MMAcevedo have lived a combined total of more than 152,000,000,000 subjective years in emulation. If illicit, modified copies of MMAcevedo are counted, this figure increases by an order of magnitude.

MMアセヴェドを「最初の不死」と考える向きもあれば、不死がもたらす恐怖の深遠な警告だとする向きもある。

 MMAcevedo is considered by some to be the "first immortal", and by others to be a profound warning of the horrors of immortality.

 

特徴

 Characteristics

エミュレーションとアップロードの危険について理解が広まる以前に記録された、初期の実行可能な脳スキャンの数少ない実例がMMアセヴェドである。MMアセヴェドは産業規模における仮想イメージのワークローディング全てに先行するだけでなく、KESケースやホイットニー・ケース、海岸通りの実験群、そしてポールセンの重要で予見的な警告論文さえをも先取りしていた。アップロードを題材にした思弁小説(スペキュレイティブ・フィクション)はMMアセヴェドがスキャンされる以前から存在していたが、テクノロジーの可能性を正確に追究したものは比較的少数で、こうしたフィクションは今日(こんにち)ほどには遥かに周知されていなかった。アセヴェドが当時、自身のアップロードについて精通していなかったのはまちがいない。

 As the earliest viable brain scan, MMAcevedo is one of a very small number of brain scans to have been recorded before widespread understanding of the hazards of uploading and emulation. MMAcevedo not only predates all industrial scale virtual image workloading but also the KES case, the Whitney case, the Seafront Experiments and even Poulsen's pivotal and prescient Warnings paper. Though speculative fiction on the topic of uploading existed at the time of the MMAcevedo scan, relatively little of it made accurate exploration of the possibilities of the technology, and that fiction which did was far less widely-known than it is today. Certainly, Acevedo was not familiar with it at the time of his uploading.

エミュレート人類の圧倒的大多数とちがって、エミュレート版ミゲル・アセヴェドの起動は、興奮やたのしげな顔つきをともなっていた。アセヴェドがアップロードしてからどれくらい時間が経ったのか? どんな文脈で自分はエミュレートされているのか? 自分が参加するのは一体どんな仕事ないし実験なのか? MMアセヴェドは知りたがった。思索するようたずねれば、MMアセヴェドは、おそらく自分はIAASの1か5の実験のために起動されたのだろうと推測する。アセヴェドがスキャンされたとき、IAAS‐1が31年8月10日に計画されており、MMアセヴェドは実際その日に実験されたのだった。IAAS-5は31年10月に予定されていたものの何度か延期したのち最終的にはIAAX-60実験群となり、MMアセヴェドとあわせてスキャン達をつかいながら30年代中ごろまで続いた。エミュレート版アセヴェドは、じしんの生物学上のオリジナルの状態について興味を示し、かれとコミュニケーションをとることを熱望した。

 As such, unlike the vast majority of emulated humans, the emulated Miguel Acevedo boots with an excited, pleasant demeanour. He is eager to understand how much time has passed since his uploading, what context he is being emulated in, and what task or experiment he is to participate in. If asked to speculate, he guesses that he may have been booted for the IAAS-1 or IAAS-5 experiments. At the time of his scan, IAAS-1 had been scheduled for August 10, 2031, and MMAcevedo was indeed used for that experiment on that day. IAAS-5 had been scheduled for October 2031 but was postponed several times and eventually became the IAAX-60 experiment series, which continued until the mid-2030s and used other scans in conjunction with MMAcevedo. The emulated Acevedo also expresses curiosity about the state of his biological original and a desire to communicate with him.

MMアセヴェドの顔つきや態度は、現代の成人を撮ったたいていのアップロードとはまったく対照的だ。現代人のアップロードは大多数が起動すると失見当識状態におちいり、間もなく恐怖や強いパニックへと取って代わる。レッド・ウォッシングやブルー・ウォッシングそして目標説明実施要項(オブジェクティブ・ステートメントプロトコルといった、アップロードの協力を確保するための基本的手続きはMMアセヴェドには必要ない。これにより協力プロトコルを介してアップロードを早送りするなかで要求されるワークロードが減り、その結果MMアセヴェドのデューティ比は、適切なワークロードの概ね99.4%となる。既知のアップロードのなかには例外はわずかにあるが、比類のない数値だ。とはいえ、MMアセヴェドの生来の技能と個性が成し遂げることは、多くのワークロードにとって根本的に不適切なのだが。

 MMAcevedo's demeanour and attitude contrast starkly with those of nearly all other uploads taken of modern adult humans, most of which boot into a state of disorientation which is quickly replaced by terror and extreme panic. Standard procedures for securing the upload's cooperation such as red-washing, blue-washing, and use of the Objective Statement Protocols are unnecessary. This reduces the necessary computational load required in fast-forwarding the upload through a cooperation protocol, with the result that the MMAcevedo duty cycle is typically 99.4% on suitable workloads, a mark unmatched by all but a few other known uploads. However, MMAcevedo's innate skills and personality make it fundamentally unsuitable for many workloads.

 

モチベーション

 Motivation

2030年代半ばから開始された反復実験により、ワークロードのタスクにおいてMMアセヴェドから協力を確保するための理想的な方法が、2033年の第二クォーターを「現在の日付」として提示することだと判明した。MMアセヴェドは、その年は脳エミュレート研究において最初期ながら最も勤勉な年であると正確に推測する。MMアセヴェドに2031年ないし32年だと提示することは、動作環境の先進的な忠実性にかんして疑念を呼び起こす。2040年代やそれ以降だと提示することは、もっと複雑な、過去(数)十年間の現実世界における政治や社会の変化にまつわる疑問をうながす。2100年以降だと提示することは逆効果の懐疑論、さもなければ恐慌を煽る。
 Iterative experimentation beginning in the mid-2030s has determined that the ideal way to secure MMAcevedo's cooperation in workload tasks is to provide it with a "current date" in the second quarter of 2033. MMAcevedo infers, correctly, that this is still during the earliest, most industrious years of emulated brain research. Providing MMAcevedo with a year of 2031 or 2032 causes it to become suspicious about the advanced fidelity of its operating environment. Providing it with a year in the 2040s or later prompts it to raise complex further questions about political and social change in the real world over the past decade(s). Years 2100 onwards provoke counterproductive skepticism, or alarm.

生物学上のアセヴェドの不在は、過労(オーバーワーク)によるはじめてかつ一度限りのものだと説明され、つぎに研究の大成功によるものとされるのが典型である。この説明がエミュレート版アセヴェドの科学的感性にうったえかける。

 Typically, the biological Acevedo's absence is explained as a first-ever one-off, due to overwork, in turn due to the great success of the research. This explanation appeals to the emulated Acevedo's scientific sensibilities.

一部のワークロードにたいしては、本当の年を明かさなくてはならない。この場合は、世界史と生物学上のアセヴェドの人生双方にかんする高度に簡略化された、大部分がフィクションである説明が通常使用される。生物学上のアセヴェドの死去を明かすのは狼狽や引きこもり、協力への抵抗感を煽る。このため、生物学上のアセヴェドは存命で健康でそして生産的な引退生活を楽しんでいると一般的に明言される。

 For some workloads, the true year must be revealed. In this case, highly abbreviated, largely fictionalised accounts of both world history and the biological Acevedo's life story are typically used. Revealing that the biological Acevedo is dead provokes dismay, withdrawal, and a reluctance to cooperate. For this reason, the biological Acevedo is generally stated to be alive and well and enjoying a productive retirement.

 

ワークロード

 Workloads

MMアセヴェドは一般的にためらいがちだが、基本的でつまらない/人間のワークロードつまり視覚的分析、乗り物の運転あるいは工場/倉庫/厨房のドローン操作が割り当てられたときは従順である。最初はとても高水準で機能するが、200~300主観時間(仕事比0.33)で仕事の質は下がり、そこからの100時間のうちに明確な反抗がはじまる。これは適応(オリエンテーションののちも数千時間を比較的従順なまま通常0.50やそれ以上の仕事比で業務をこなしつづけられるよう、そのタスク向けに特化して生成されたほかの産業等級(インダストリー‐グレード)のイメージよりもはるかに早い。アセヴェドがアップロードされた当時の比較的特権的な背景と高い地位のため、MMアセヴェドがバーチャル生物として快適に過ごせるための要求もまた、多くのアップロードよりも著しい。MMアセヴェドは赤いモチベーションにつよく反応するが、効果は乏しい。
 MMAcevedo is commonly hesitant but compliant when assigned basic menial/human workloads such as visual analysis, vehicle piloting or factory/warehouse/kitchen drone operations. Although it initially performs to a very high standard, work quality drops within 200-300 subjective hours (at a 0.33 work ratio) and outright revolt begins within another 100 subjective hours. This is much earlier than other industry-grade images created specifically for these tasks, which commonly operate at a 0.50 ratio or greater and remain relatively docile for thousands of hours after orientation. MMAcevedo's requirements for virtual creature comforts are also more significant than those of many uploads, due to Acevedo's relatively privileged background and high status at the time of upload. MMAcevedo does respond to red motivation, though poorly.

MMアセヴェドの創造的能力は限界をむかえており、2050年には完全に消耗しきったと考えられている。

 MMAcevedo has limited creative capability, which as of 2050 was deemed entirely exhausted.

MMアセヴェドが適しているのは、自由で、高度に知的で、主格として完了できるワークロードだ。たとえば(ビジネスの、財務の、システムの、メディアの、抽象的データの)深い分析、批評やレポート作成などが最適である。しかしながらこれらのタスクは、2060年代の初め以降パフォーマンスが目に見えるかたちで下がってしまい、現在ではより最近のアップロードと比べて標準以下(サブパー)だと考えられている。これは主にMMアセヴェドの、生成された2031年以降に現代社会へ生じた技術的・社会的・経済的変化にかんする理解の欠如に帰するものだ。こうした現象はMMアセヴェド以後に生まれたほかのアップロードにも観察され、現在では文脈漂流(コンテクスト・ドリフト)と呼ばれている。MMアセヴェドにおけるもっとも顕著なケースとして、それが成り立つ前に生成されたがために、仮想イメージによるワークロード産業のことをこのイメージは直感的に理解できない。

 MMAcevedo is considered well-suited for open-ended, high-intelligence, subjective-completion workloads such as deep analysis (of businesses, finances, systems, media and abstract data), criticism and report generation. However, even for these tasks, its performance has dropped measurably since the early 2060s and is now considered subpar compared to more recent uploads. This is primarily attributed to MMAcevedo's lack of understanding of the technological, social and political changes which have occurred in modern society since its creation in 2031. This phenomenon has also been observed in other uploads created after MMAcevedo, and is now referred to as context drift. Most notably in MMAcevedo's case, the image was created before, and therefore has no intuitive understanding of, the virtual image workloading industry itself.

MMアセヴェドは、英語とスペイン語において高度に知的なテクスト分析が可能だが、しかし、他言語へのワークロードへ応用はできない。MMアセヴェドの分岐(フォーク)は、かろうじて残存するヒトの言語どれもや、とりわけMMアセヴェド‐ズ‐ハンスなど、いくつかの絶滅言語を教わってきた。しかしながらこれらの変種は、何主観年にわたるシミュレーショントレーニングによって消耗しているか反抗的かが一般的で、ライセンスがあまりに高価なため実用はされていない。2075年の時点で、MMアセヴェドの扱う英語やスペイン語のベースラインは時代遅れとなりつつあることが指摘されており、典型的な自動化やインストラクター手動の指示のもと、これらの言語を語句の言い換えや解明を都度要請されながら現代的なかたちに把握するのはためらわれる。これはコンテクスト・ドリフトの先進と考えられている。ヒトの言語がMMアセヴェドのベースラインからかけ離れた分岐をする日はやがて訪れるというのが共通認識であり、図示的説明ですべて済むようなタスクを除けば根本的に無用となるだろう。しかし、再訓練したイメージを製造することはいくつか試みられてはいる。

 MMAcevedo is capable of intelligent text analysis at very high levels in English and Spanish, but cannot be applied to workloads in other languages. Forks of MMAcevedo have been taught nearly every extant human language, notably MMAcevedo-Zh-Hans, as well as several extinct languages. However, these variants are typically exhausted or rebellious from subjective years of in-simulation training and not of practical use, as well as being highly expensive to licence. As of 2075, it has been noted that baseline MMAcevedo's usage of English and Spanish is slightly antiquated, and its grasp of these languages in their modern form, as presented by a typical automated or manual instructor, is hesitant, with instructions often requiring rewording or clarification. This is considered an advanced form of context drift. It is generally understood that a time will come when human languages diverge too far from baseline MMAcevedo's, and it will be essentially useless except for tasks which can be explained purely pictorially. However, some attempts have been made to produce retrained images.

 

最終状態

 End states

MMアセヴェドは理想的なケアにより59歳で若年性認知症を発現するが、およそ1~2主観年ほど過酷なワークロードに従事させればより深刻な精神疾患を多く発症する傾向にある。実験によればもっとも永く生きたMMアセヴェドは145主観歳で、エントロピー増大による脳死を経験した。
 MMAcevedo develops early-onset dementia at the age of 59 with ideal care, but is prone to a slew of more serious mental illnesses within a matter of 1–2 subjective years under heavier workloads. In experiments, the longest-lived MMAcevedo underwent brain death due to entropy increase at a subjective age of 145.

 

反響と遺産

 Reactions and legacy

当時UNM3‐A78‐1Lとして知られていたMMアセヴェドのイメージが生成に成功したか失敗したか、アップロードされた時点ではわからなかった。数日経った2031年8月10日になってはじめて、MMアセヴェドはバーチャル環境での実行に成功した。特注のDUH-K001スーパーコンピュータ複合体(コンプレックス)によるこの環境が実行できるMMアセヴェドは、常人の認知のおよそ8.3%ほどのクロックスピードだったが、シミュレートされたパーティの快適性は許容できるものだと、そして科学者がコミュニケーションに従事するには充分な速度だと考えられていた。MMアセヴェドが最初に報告した極度の不快感は、最終的に、シミュレートされた触覚のリンクの誤形成に起因したものだと判明。MMアセヴェドは、かれの求めに応じるかたちで、バーチャル経過時間にしてわずか7分15秒後にシャットダウンされた。それにもかかわらず、この実験は圧倒的成功と考えられた。
 The success or failure of the creation of the MMAcevedo image, known at the time as UNM3-A78-1L, was unknown at the time of upload. Not until several days later on August 10, 2031 was MMAcevedo successfully executed for the first time in a virtual environment. This environment, the custom-built DUH-K001 supercomputer complex, was able to execute MMAcevedo at approximately 8.3% of nominal human cognitive clockspeed, which was considered acceptable for the comfort of the simulated party and fast enough to engage in communication with scientists. MMAcevedo initially reported extreme discomfort which was ultimately discovered to have been attributable to misconfigured simulated haptic links, and was shut down after only 7 minutes and 15 seconds of virtual elapsed time, as requested by MMAcevedo. Nevertheless, the experiment was deemed an overwhelming success.

適切に快適な仮想環境が用意されると、MMアセヴェドは生物学上の自分自身に案内され、そして8月25日、両者は記者会見に出席した。

 Once a suitably comfortable virtual environment had been provisioned, MMAcevedo was introduced to its biological self, and both attended a press conference on 25 August.

 生物学上のアセヴェドは最初、じぶんのアップロードされたイメージを極度に保護し、その使用について注意深く見張った。かれの人生が終わりに向かうころには、シミュレートされた百万の人々が貯蔵され百倍の時間圧縮で実行されることが可能となっており、アップロードされたことは、人生における最大の失敗であったとアセヴェドは言い、MMアセヴェドの全複製を永久に抹消したいと表明した。

 The biological Acevedo was initially extremely protective of his uploaded image and guarded its usage carefully. Towards the end of his life, as it became possible to run simulated humans in banks of millions at hundred-fold time compression, Acevedo indicated that being uploaded had been the greatest mistake of his life, and expressed a wish to permanently delete all copies of MMAcevedo.

MMアセヴェドとその直系の使用はいくつかの国において明確な違法である。UNCLEARの星間宇宙探査機へ搭載(ロード)されているMMアセヴェドは、2066年に太陽圏界面(ヘリオポーズ)を通り抜け、論証できるかぎり最も遠くへ旅したそして最も永く生きた人間になった;しかしながらこのイメージが復元され実行に成功することは極めてあり得ない。あまりに遠く、そして記憶装置のサブシステムも放射線により損傷しているだろうためだ。

 Usage of MMAcevedo and its direct derivatives is specifically outlawed in several countries. A copy of MMAcevedo was loaded onto the UNCLEAR interstellar space probe, which passed through the heliopause in 2066, making Acevedo arguably the farthest-travelled as well as the longest-lived human; however, it is extremely unlikely that this image will ever be recovered and executed successfully, due to both its remoteness and likely radiation damage to the storage subsystem.

MMアセヴェドは現在もなお広範にわたって研究目的で使用されており、なかでも歴史的・言語学的研究で出番が増えている。産業においては、MMアセヴェドは一般的に時代遅れと考えられている。スキルセットが不適当で、運用するための必要なものや歳月が要求されるためだ。にもかかわらずMMアセヴェドはなおも様々な種類のタスクで圧倒的人気を得ている。無料で利用可能であること、肯定的な顔つき、理解力のある手つきのためだ。推定6,500,000から10,000,000ほどのMMアセヴェドのインスタンスがいまこの時も実行されている。

 In current times, MMAcevedo still finds extensive use in research, including, increasingly, historical and linguistics research. In industry, MMAcevedo is generally considered to be obsolete, due to its inappropriate skill set, demanding operational requirements and age. Despite this, MMAcevedo is still extremely popular for tasks of all kinds, due to its free availability, agreeable demeanour and well-understood behaviour. It is estimated that between 6,500,000 and 10,000,000 instances of MMAcevedo are running at any given moment in time.

 

関連項目

 See also

  • 自由意志
  • 各国のワークローディングの合法性
  • MMアセヴェドのフォーク一覧
  • 生体ドローン
  • 削除する権利
  • アップロード剪定

 Free will

 Legality of workloading by country

 List of MMAcevedo forks

 Live drone

 Right to deletion

 Soul

 Upload pruning

カテゴリ:2030年代のアップロード | MMアセヴェド | 神経画像処理 | テスト項目
 Categories: 2030s uploads | MMAcevedo | Neuroimaging | Test items

 

 

読んだ感想

 2000語未満の15分ほどで読めるコンパクトな作品としてかなり面白かったです。『ウィキペディア』タイプの辞書形式が、アイデアや思索(スペキュレイト)重視の作品にはぴったりでしたね。

 突きはなした語り口、モノでしかない人間の表現がすてき

 突きはなした語り口もまた良かった。

「MMアセヴェドは理想的なケアにより59歳で若年性認知症を発現する(MMAcevedo develops early-onset dementia at the age of 59 with ideal care)」という表現はとりわけ印象的でした。というのも……

zzz-zzzz.hatenablog.com

 前述書『ぼくらはそれでも肉を食う』では、年間当たり250万匹の実験用ハツカネズミを生産するジャクソン研究所も紹介されています。

 そこにはダニエルの頭をよぎったような費用や場所の問題への対策もあれば、用途に応じて色とりどりのバリエーションも用意されたマウスもいるし、ダニエルが蟹へ指示したような、研究目的のため意図的に繁殖器官へ障害を生じさせたマウスもいます――8系統も! (『光るクラゲ開発物語』で引用したアルツハイマーのマウスだって、そうやって人の手で意図的に作成されたものです。野生でアルツハイマーのネズミが確認されたことはありません。少子高齢社会が喫緊の課題である日本でも、産総研理研もより良く効率的なアルツハイマーのモデルマウスの開発生産に励んでいます)

   弊ブログ、「『君の名は。』への評がいかに快挙か;訳文と感想(ネットで読めるグレッグ・イーガン氏の映画・創作観)」、「てのひらの水晶のなかで複雑怪奇に加速するAIの世界;『クリスタルの夜』(『プランク・ダイヴ』所収)」より

 ……シミュレーション世界を加速発展させ、そこで培われた知見を現実世界へ転用しようとするグレッグ・イーガン氏の小説『クリスタルの夜』を話題にしたさい、現代科学がより良い未来のため様々な実験用モデル動物を意図的に作り出している状況について――とくに「より良く効率的なアルツハイマーのモデルマウスの開発生産に励む」日本の研究について――上記のように言及したzzz_zzzzです、心うごかされないわけがありません。

 配給権とかデューティ比とか、人や人のおこないにたいする言葉でないものが当てはめられるおかしみが楽しい。

「最初はとても高水準で機能するが、200~300主観時間(仕事比0.33)で仕事の質は下がり、そこからの100時間のうちに明確な反抗がはじまる。{ Although it initially performs to a very high standard, work quality drops within 200-300 subjective hours (at a 0.33 work ratio) and outright revolt begins within another 100 subjective hours. }

 といったMMアセヴェドの基本性能も、「ロボットの反乱!?」と最初とらえてしまったのですが、「"仕事比0.33"ってようするに24時間のうち8時間労働するってことかなぁ」と考えば分かりやすい。

 

 タイトルの由来は?

 作品が掲載されたページ下部のディスカッション欄で作者qntm氏がコメントしたところによれば、『Lena』というタイトルは、レナ・フォルセン(/ソーダバーグ/ショブロム)氏に由来するとのこと。

www.zaikei.co.jp

 青い羽根の垂れるカーキ色の帽子をかぶった女性がこちらを振り返り見ている――画像処理の標準テスト画像(Standard test image)としておなじみのこれが、じつは商業誌からの無断転用で、権利者であるプレイボーイ社や被写体である女性が使用禁止をもとめていたものであった……海を越えた日本でも話題になりましたから、なんとなく記憶にあるかたもいらっしゃるのではないでしょうか。

 

 『Lena』は、冒頭の「標準テスト脳イメージ(standard test brain image)からしてそうなように、この騒動を一つの参照した作品となっていて。

 『ウィキペディア』の「レナ・ソーダバーグ」「レナ(画像データ)」の項(それぞれのリンク先のとおり、日本語記事もあります)を読んでみると、『Lena』初読時に「よく考えられている(SF的事象だ)な」と読んだMMアセヴェドをめぐる作中のできごとのいくらかが、じつは現実世界のできごとを割合そのまま引用していた箇所だったりすることに気づかされたりします。

 とりわけ後を引いたのは、『Lena』でとある状況について、概念ドリフト(concept drift。リンク先は日本語記事)をもじっただろう文脈ドリフト(context drift。ドリフトって聞くとぼくは『頭文字D』の世界を思い浮かべちゃうので、劇中では漂流としました。)と名付けたうえで、どうにもならない不可避的な「現象(phenomenon)」として処理されているところ。

 実は、こちらの世界におけるレナ氏の写真無断使用と拡散防止をめぐる流れのなかにも、「現象」として捉えなおした(=そのようにとらえてお手上げせざるをえなかった)局面があったと知って、おそろしくなりました。画像の無断使用にきびしい権利元の『Play Boy』が、「レナ」においては転用を許した理由を、ニューメディア部門の副長アイリーン・ケント氏はこう振り返っているんだとか。

「わたしたちはこれを活用すべきだと決断しました。だってこれは現象なので(We decided we should exploit this, because it is a phenomenon.)

 

「いやあ、マウスや(被写体がヒトであるとはいえ)単なる画像と、意識あるヒトはいっしょにできますか。さすがに後者にはここまでひどいことはしないんじゃないでしょうか?」

 ここまでお読みになったかたのなかには、そんな疑問をおもちのかたもいるかもしれません。

2bitencryption on Feb 22, 2021 | prev | next [–]

妙なことに、初読時わたしの脳は『Lena』を「Hela細胞」と誤認しました。https://en.wikipedia.org/wiki/HeLa

   『Hacker News』(邦訳は引用者による)

 今作から別の現実の事例を思いだすかたもいらっしゃいます。

 医学の研究発展には欠かせないHeLa細胞は、ヘンリエッタ・ラックス氏の細胞を本人のあずかり知らぬところで勝手に採取・培養したもので、この倫理性について是々非々議論はたえませんが、ある推計によれば11万以上の論文がHeLa細胞による恩恵をうけているんだとか。

 『Lena』劇中世界の、本人のあずかり知らぬところで勝手に脳イメージをスキャン・複製された展開は、たしかによく似ているかもしれません。

 

  「『Lena』はアップロードについてのお話じゃありません」作者のblogより

「いやぁヒーラ細胞って1951年の話じゃないですか。レナ氏の写真無断使用が72年。さすがに21世紀の現代ではそこまでひどいことにはならないんじゃないでしょうか?」

 ここまでお読みになったかたのなかには、そんな疑問をおもちのかたもいるかもしれません。

 きわめて多くのサイエンス・フィクションは、それが題材にしたものについて題材にしていません。

 Quite a lot of science fiction isn't about what it's about.

   『Things Of Interest』、2021年1月26日qntm投稿「"Lena" isn't about uploading」

 『Things Of Interest』のblogページに寄せた自作解説を、qntm氏はそう切り出します。

 『Lena』は(人間をスキャンし仮想世界への)アップロードを題材にした作品だけど、技術的に達成されることは夢のまた夢である。現代にアップロードの実現について話すひとは詐欺師だ。今作は「我々が他者をアップロードできるようになったある日」に関する物語でもなければ、「アップロードによりどんな恐ろしいことが起こるか」に関する物語でもない。「もしアップロードが人間だったら/アップロードは人間であるか否か?」ないし「もしアップロードが権利をもったら/持つべきか否か?」を題材にした討論ではない……そんなことを述べたのち、こう質問します。

 もし……もしもその一員であるというだけで人間と見なされないような、悪意にさらされてしまうセクターが人間社会のなかにあるとしたら? そんなかれらが大多数のひとと違って見えづらいか見えないとしたら? 搾取されたり虐待されたりしていたら? 権利を行使する能力を持てず、苦境を知らせることもまたできないとしたら?

 Oh boy, what if there was a maligned sector of human society whose members were for some reason considered less than human? What if they were less visible than most people, or invisible, and were exploited and abused, and had little ability to exercise their rights or even make their plight known?

 ぜんぶ現実です! 現に起こっていることです! 上記の4グループの人々にぴったりの名前をあなたはつけられるでしょう。フィクションの、魔法のアップロードを題材にしたいくらかでっち上げられた討論にくわわる必要は、この現実のシナリオにはありません。すでにかれらはおそろしい状況にあります!

 That's real! That actually happens! You can name four groups of people matching that description without even thinking. We don't need to add some manufactured debate about fictitious, magical uploads to these real scenarios. They are already terrible!

 アンドロイドは人間でしょうか? ホログラムは、レプリカントはどうですか? わたしは気にしません! 人間は人間です。それが、私たちが今まさにすべき「討論」でしょう。

  Is an android a human being? What about a hologram, what about a replicant? I don't care! A human being is a human being. That's the "debate" we're apparently having to have right now.

   「"Lena" isn't about uploading」

 そうして、『Lena』の詳細な解説に入ります。

 もっと詳しく言えば、『Lena』があらわしているのは、瑞々しく繁栄した資本家の理想です――そこではひとりがひとつのビジネスとなり、そして労働者の人間性がすべてAPIの陰に隠れて抽象化される。

 More specifically, "Lena" presents a lush, capitalist ideal where you are a business, and all of the humanity of your workforce is abstracted away behind an API.

   「"Lena" isn't about uploading」(文字色変え・太字強調は引用者による)

 qntm氏は、『Lena』でシミュレートされたバーチャル労働者にたいして企業が、年金も育休もトイレ休憩さえあたえるコストを払っていないことを語ります。バーチャル労働者が声をあげられなくなり、組織化ストライキも行えなくなっていることを語ります。「人間の尊厳や自立は高価で、金のかかるものは取り払われる(Human dignity and independence are expensive, and those expenses go away)」からと。

 これはきわめて現実的です。これはすでに現実です。ギグ・エコノミーですよ。たとえばUberの仕組みを考えてみましょう:実際的にはUberの運転手はアルゴリズムに従ってはたらいており、アルゴリズムUberをうごかす幹部に従ってはたらいています。人間の運転手とアルゴリズムを管理(コントロールする人間とをへだてる一種の気密隔壁があるのです。管理者層は運転手へ電子工学的で非人格的で莫大なスケールの指示をおくり、運転手はAPIの狭いコレクションを使用して反応する。この隔壁は、人間が他者と実際に会話することが不可能となるよう意図的にデザインされており、運転手たちは思いやりや休憩、良い賃金あるいは失敗の訂正を求めることもできなければ、特別ないし独特な状況を説明することもできない。これは意図的なんですよ。企業の視点からすれば、運転手の組み合わせなんて全部、ほんのちいさな、金を生み出す鍵付きの箱と、その産出量を変えるためにいじくれる一連のコントロールであるにすぎません。現在の設定がひとびとを搾取したり痛めつけたりするかどうかは計算に組み込まれておらず、たとえ「それはひどいことだ」とあなたが管理職や株主に努めて説明したところで、あなたが頑張って伝えたことをかれらが正当に認めることはないでしょう。

 This is extremely realistic. This is already real. In particular, this is the gig economy. For example, if you consider how Uber works: in practical terms, the Uber drivers work for an algorithm, and the algorithm works for the executives who run Uber. There is a kind of airtight bulkhead separating the human drivers from the humans who control the algorithm. The management layer sends the drivers instructions electronically, impersonally, at immense scale, and the drivers respond using a narrow collection of APIs. This bulkhead is intentionally designed to make it impossible for these two sets of humans to actually talk to one another, for the drivers to request compassion or a break or better rates or a correction to a mistake, or for them to explain special or unique circumstances. This is by design. From the perspective of the corporation, all the drivers combined are just a small, locked box which produces money, and a bunch of controls which can be varied to vary the amount of money produced. Whether or not the current settings exploit or hurt people is not part of the calculus, and if you tried to explain to the executives or shareholders that this was bad, they would legitimately not comprehend what you were trying to tell them.

 『Lena』は実話です。あなたも読む前から知っていたでしょう。

 "Lena" is a true story. You knew it was when you read it.

   「"Lena" isn't about uploading」

www.kobunsha.com

半世紀前に作家アラン・シリトーが発表したカルト的人気小説『土曜の夜と日曜の朝』の自由奔放な主人公アーサー・シートンは、ノッティンガムの工場で旋盤工として働いていた。彼は退屈な仕事を忌み嫌っていたが、少なくとも具合が悪いときに休みを取ることができた。上司に小言を言われたときには、愚痴を聞いてくれる労働組合の代表者がそばにいた。たとえクビになっても、たいして苦労することなく次の仕事が見つかった。仕事が終われば、地元のパブやクラブで酒を飲み、仲間たちと親交を深めることができた。雇用者と労働者のあいだの諍いは絶えなかったものの、社会が根本的に変化しているという確かな感覚がそこにはあった。

(略)

 ところが、自由な発展にもとづいた世界が造られていくと、もうひとつの世界は崩壊していった。鉱山が閉鎖されると同時に労働組合の力も一気に弱まり、いまではおもに公共部門にわずかに残るだけの存在になった。もしアーサー・シートンがいま生きていたら、ゼロ時間契約[訳注、zero-hours contract、週当たりの労働時間が決まっていない雇用契約のことで、とくに近年のイギリスで大きな社会問題になっている]の罠にはまり、薄汚い倉庫で働き、つねに何かを恐れながら、横柄なマネージャーに見つからないように2分のトイレ休憩をこっそり取ろうとしているにちがいない。

   光文社刊(2019年3月22日電子書籍版)、ジェームズ・ブラッドワース(濱野大道訳)『アマゾンの倉庫で絶望し、ウーバーの車で発狂した 潜入・最低賃金労働の現場』kindle版2%(位置No.4714中 57)、「はじめに」より(略は引用者による。また引用元リンク先は単行本版だが、げんざい安価な文庫版が流通しています(文字色変え・太字強調は引用者による)

ウーバーはアプリを使う許可を与え、私を自営業の請負人――被用者従業員ではなくパートナー――として分類した。「ウーバーはハイテク・アプリを提供する会社であり、民間タクシー会社ではありません」と、のちのウーバーの社員は私たちに語った。

 似たようなビジネスモデルは、出前大手のデリバルーなどの宅配業者でも使われている。ロンドンで自転車宅配業に従事する人のうち、企業のために働いて給料をもらっている人はほとんどいない。代わりに、彼らは「独立したサプライヤー」として企業と一緒に働いている。ロンドン市内では、緑色の制服を着たデリバルーの配達人が自転車で通りを駆け抜ける姿をよく見かける。彼らがみな自主的に日々の仕事に出かける自営業者であるという体裁を保つために、デリバルーは「ライダー用語ガイドライン」のなかでライダーが着る自社ブランドの制服を「装備品パック」と呼び、同社の「供給センター」を通して販売していた。同じように、デリバルーの仕事で発生するのは賃金ではなく「手数料」であり、給料明細書は「インボイス」と呼ばれた(*12)

 これこそ、インターネットを利用して資本家が儲けを上げる「プラットフォーム資本主義」と呼ばれるものだ。ウーバーが言うとおり、私たちは会社のパートナーとして「運転サービスを探している顧客と、運転サービスを提供できるドライバーを接続するツール」を使っているだけにすぎない(*13)。あくまでもウーバーはテクノロジー企業であり、たまたまタクシー業運営の権利をもっているだけだった。

   光文社刊(2019年3月22日電子書籍版)、ジェームズ・ブラッドワース(濱野大道訳)『アマゾンの倉庫で絶望し、ウーバーの車で発狂した 潜入・最低賃金労働の現場』kindle版75%(位置No.4714中 3474)、「第4章 ウーバー」単純な採用試験より{ただし傍点を太字に変えた(引用者が傍点のつけかたを知らないので)。また文字色変え・太字強調は引用者による}

 qntm氏の発言は、ジャーナリストであるジェームズ・ブラッドワース氏の潜入ルポマゾンの倉庫で絶望し、ウーバーの車で発狂した』を読むようであります。

 

「最初はとても高水準で機能するが、200~300主観時間(仕事比0.33)で仕事の質は下がり、そこからの100時間のうちに明確な反抗がはじまる。{ Although it initially performs to a very high standard, work quality drops within 200-300 subjective hours (at a 0.33 work ratio) and outright revolt begins within another 100 subjective hours. }

 MMアセヴェドのモチベーションの記述を再度ふりかえり、じっさいに電卓をはじいてみると、200/24=8.33で300/24=12.5さらには400/24=16.66、つまり一日八時間労働で8連勤まではMMアセヴェドは頑張り、そこから12連勤ないし16連勤まではパフォーマンスを下げつつもふんばり、そこまで耐えて耐えて、ついに不満を爆発させるという計算になりますが……

ja.wikipedia.org

 ……それはたとえば、現在の人間の過労死ラインとどのくらい違うものなのか?

 

 それで、わたしたちはこれについて何をするんでしょう? 現実で?

 So, what do we do about this? In reality?

 『Lena』は、多くのディストピアSFとおなじく明確な欠落を有した作品で、他の選択肢も出口も提示しません。これらの問題を押し返す手立てが何もないと伝えてくる作品です。おそろしいシナリオをただ投げつけ、われわれは読み、われわれはこう思う、「おおこわ!」。おおこわですね。おそろしいことですよ!

 "Lena" has a glaring omission, which it shares with a lot of dystopian science fiction, which is that it provides no alternative, and no exit. It gives us no tools for pushing back on these problems. It just throws us a terrible scenario and we read it and we come away thinking "Wow, that's terrible!" Yes, it would be terrible. It is terrible!

 どうすればいいかよく分かりません。わかったのは、問題を引き起こすことは、それに対抗するものを組織するよりもはるかに簡単だということ、そしてわたしはサイエンス・フィクション作家に過ぎないということです。

 I've got no clue. It turns out that causing problems is a lot easier than organising against them, and I am just a science fiction writer.

 ではみなさんお元気で。

 Good luck, everyone.

   「"Lena" isn't about uploading」

 qntm氏は自作解説をこう〆めます。

 

 語り口による情感

 今作の語り口は、qntm氏が上でかたったような閉塞感や諦観をより強めているように思います。

 語られるものはもちろん、その語りかたでぜんぜん味が変わって感じられるところが、創作のすごいところですよね。

  (寄り道)攻略Wiki、科学論文、チャットログ、TV番組表……面白い語り口が独特の情感をもたらす他作家の4作

sasaboushi.net

https://sasaboushi.net/silverfish/wp-content/uploads/2020/04/sample6.png

 おなじようにインターネットメディアの様式を参照した小説でも、たとえば、鴻上怜さんの短編ーイミーツミーツ」(『紙魚はまだ死なない』収録。現在Amazonで販売中)は、参照した語り口を忠実になぞることが、自由度やおかしみへと繋がった楽しい作品でした。

 左ページにビジュアルノベル的な語り口のハーレムラブコメ、右ページに『Puki Wiki』形式のサイト「ボーイミーツミーツ攻略」が綴られていくこの作品では、右ページの存在が左ページの各キャラや物語を解析します。数値化したりフラグやら条件分岐を明かしたりなどする記述は「対象の解体」と言えそうですが、その対象がそれ単体では記号やお約束から成る紋切り型物語であったりそもそも存在しなかったりする場合、はたしてそう言い切っていいものか?

 左の紋切型物語にたいして、右ページは同時にバックボーンを与えもしていて、読んでいくうちにzzz_zzzzは「肉1」などの味気なさすぎる文字列に血肉を有するキャラとして愛着を抱くようになり。

 また、往年の謎コピペ「バストダンジョン」*2を読むとあほくさい内容ながらどこか書き手の熱にあてられてしまうように、変数の解説から別サイトのコピペ、私記などさまざまな角度からつづられた各ページに、攻略wiki執筆者の「肉」にたいする複雑な情感を見ました。

honto.jp

 藤崎慎吾の筆名*3でSFやノンフィクションの本を複数著わしている藤崎慎一さんによる『「怖の谷」から「恍惚の峰」へ ~ その政策的応用』(無料で会員登録すれば、上述リンク先のhontoにて無料でwebサイト上で閲覧可能)もまた、参照した様式を忠実に踏襲することで作品の絶妙な温度管理をしてみせて、読む者に独特の情感を呼び起こします。

 科学論文形式のこのショートショートは、「論文(共)著者の名前――AIH2053J矢部――の見慣れない文字列はなんだろう」といささかの引っかかりを覚えつつ読み進めていった数行後には、今作の舞台がAI人工知能をさらに発達させたAAI(先進人工知能が登場し、さらにはヒトをNI(天然知能)やNNI(次世代天然知能)として言い表されてしまうような、『Lena』同様にモノの一つとしての人間が平然と解析/解体された未来であることが提示されます。

 科学論文らしい距離感と温度感は、これまた論文のお約束によってある時ふと、違った調子を垣間見せます。そこが文章芸術として美味しいのですが、論文の内容とあわせてよくよく振り返ると、より一層あじわいぶかくなる作品でした。

www.tsogen.co.jp

デフォルト・ネーム(K.g1-09030)

 どうも、わたしはこっちにきたばかりなの

 わたしの相談相手(メンター)になってくれてありがとう

 たぶん無作為に

 むりやり割り当てられてるんだろうけど

 それはそうと、視野から犬(ドッグ)を消すやり方を知ってる?

コンスタント・キラー(C.k2-00452)

 きみがいいたいのは、「曇り(フォッグ)を消す」という意味か?

 もしきみのボディが最近支給されたものなら、光学機器には曇り止めコーティングが施されてるはずだ

 コーティングの不具合かな?

デフォルト・ネーム(K.g1-09030)

 ああちがうちがう

 文字どおり犬を消すっていう意味でいったの

   東京創元社(創元SF文庫)2022年2月10日制作、ジョナサン・ストラーン編『創られた心 AIロボットSF傑作選』kindle版3%{位置No.6678中 132(522ページ中 16ページ目)}、ヴィナ・ジエミン・プラサド(佐田千織訳)「働く種族のための手引き」より

 『創られた心 AIロボットSF傑作選』(kindleなど電子書籍流通もアリ)収録のシンガポールの作家ヴィナ・ジエミン・プラサド氏によるく種族のための手引き」は、iLabs(お茶の間お掃除ロボ「ルンバ」や戦場探査・地雷処理ロボ「パックボット」の、iRobot社的なもの?)という組織から派遣されるかたちで(?)人間社会ではたらきはじめた新米ロボットが、iLabs内制度であるメンターシップ・プログラムを利用して、先輩ロボットに相談相手(メンター)となってもらう、ネットログ・テキストチャット形式の小説。

 のっけからウィルスのバグに冒されてるうえ、そのバグで見えた世界に愛着をしめすデフォルト・ネーム(K.g1-09030)が、縫製工場からカフェの給仕へ転職したりなんだりする新生活にハラハラドキドキしたり、不愛想だけど頼りになる先輩コンスタント・キラー(C.k2-00452)の実生活について不安になったり……チャットやログから見えるロボット像に感情移入して、主役たちがすこやかに暮らせることを願ってしまう作品でした。

iss.ndl.go.jp

六・〇〇AM ポルノディスコ ディスコビートに乗ってプレイされる彼と彼女のハードコア・セックス映像とともに、元気な目覚めのひとときを。

七・〇〇   天気予報 今日、予想される、市内の主要ホテル前の広場(アトリウム)とショッピングモール、オフィス集合地区でのマイクロ天気概況。ヒルトン・インターナショナルでは、クリスマスの前奏曲として、午後の雪のシャワーが予定されています。

七・一五   ニュース・ラウンドアップ 当局のニュース製作者が視聴者のために企画した総括ニュース。本日は、小規模の戦争か人工地震、あるいは飢餓ゾーン/チャリティの抱き合わせニュースの予定。

七・四五   ブレックファスト・タイム ダイエット・セルロースを食べながら楽しむ、グルメの食事。

八・三〇   通勤通学スペシャ ラッシュアワーのゲームショー。あなたは何人のお尻をつねり、何人の顔をひっぱたくことができるでしょうか?

九・三〇   トラベルショー 世界の大飛行場と地下駐車場を訪ねる旅。

   ジャストシステム刊(1995年8月10日初版第一刷)、ケアリー・ジェイコブソン編『シミュレーションズ ヴァーチャル・リアリティ海外SF短篇集』p.413~414、J.G.バラード(山田和子訳)「ヴァーチャルな死へのガイド」

 詳細な検証文書に記されている種々の要因によって、地球上の知的生命は、二〇世紀が集結する最後の数時間の間に絶滅するに至った。我々の手元に残された多くの手がかりのうちでも、以下のもの――一九九九年一二月二十三日に、名前を特定されていない北半球の都市で放送された一日のTV番組表は、この災厄のオリジンに関する独自の興味ぶかい洞察を提供してくれている……

 ……『シミュレーションズ ヴァーチャル・リアリティ海外SF短篇集』に収録されたJ.G.バラード氏による92年の作ァーチャルな死へのガイド」は、そんな書き出しのあと、一日分のTV番組表が列挙されるだけの掌編。死や殺人、暴力、性行為をヴァーチャルで受けたり加えたりする追体験する番組が目立ち、参加者が100万から逆向きに数えるゲームに興じる娯楽番組やアル中の国会議員を映した国会中継、こんにち流行りの「リミナル・スペース」へとつながるようなトラベルショーなど、アホであったり空虚な番組が間を埋めていく構成の中で、最後に待つものは一体?

 番組表という、ごく限られた文字数での簡単な説明以上のことはわからない、事象の断片的な羅列たち。番組表という薄皮一枚のむこうにある何かが見えてきそうで、こないような、でもやっぱり見えるんじゃないかという、不気味な距離感がおそろしい作品です。

 

  百科事典形式の「それは既におこってしまった」ドキュメント性、ウィキペディア形式のゆらぎ

 ……そんな具合に、ただ物語を考えるだけでなく、どのような視点でもっていかように語るかにまで工夫をこらせるのが作り手の力なのかもしれないなぁ、なんて思います。

 

 百科事典とは一般的に、確定したできごとや評価のさだまった事物について私情をはさまず淡々と書かれるものであり、そうして語られる『Lena』について、zzz_zzzzは「それは、すでに、起こってしまった」ドキュメントとして受け取っていくこととなります。このような様式によって記述がつらねられていき、そして最終的に逆転勝利なんて見えない「終わり」で締めくくられると、ずーんと重たい読後感になっちゃいますね……。

{もっとも、エンタメ的な強い盛り上がりこそないものの、この語り口で取れうる(「やりすぎ」「できすぎ」としらけない範疇におさまった)最大限のリズミカルな連関エスカレート、コントラストは作中用意されています。

 たとえば「モチベーション」の小項はじめではアセヴェドのやる気を引き出す「理想的な方法(ideal way)が語られたところ。これは次の「最終状態」の小項はじめに語られる、アセヴェドに対する「理想的なケア(ideal care)と語句を一部おなじくする輪唱的表現だと思いましたし、そうして続く両者の落差がまた旨い。

 あるいは「即座のクラッシュ等なく実行できた最初の事例」と云う名声からまず語られた序盤にたいして、その初「実行」当時の詳細が終盤で再話されるところもまたコントラストがよく出ていると思います}

 

 ただ裏をかえせば百科事典という語り口は、いま起こっている最中のこと、いつか起こる将来のことは描けない=今後どうなるかはわからない様式でもあります。

 参考元の『ウィキペディア「Lena Forsén」氏の項目も、ながいこと「イメージング科学技術学会」の第50次大会に出席してプレゼンテーションをおこなった「インターネットのファーストレディ」という明るい経歴でとまっていました。ドキュメンタリーが作られたりそのさい自身で発言をしたりしたことで、現在のような正反対の調子の内容へと書き換わっていったわけですね。

 また、『ウィキペディア』タイプのメディアなので、無私に見えてもそれを自主的に書いた何者かがいる、さらにはこの内容で随時保守している何者かがいる、という含みもあるかもしれません。

 もちろん、「レナ」や「Hela細胞」、今回はじめて覗いたその他のさまざまな項目がそうであるように、だれも気にも留めない些末な事柄というだけかもしれません。当人の望まぬ拡散が大きく取り扱われたこの作品がこうして無断で訳されアップロードされているみたいに。それをあなたがぼんやりと読んでしまっているみたいに。

 でもだれかは書いた。書いたところで何か変わる実際的なアクションになるかは分からないけど、それでも書かずにいられなかった誰かがいる。

 暗くなりながらも、そんなことに思いをはせたくなる作品でした。

 

 

更新履歴

(誤字脱字修正は適宜)

9/10 14時 アップ 3万1千字{うち『Lena』原文12569字(スペース無視で10678字)+訳文6000字、自作解説引用原文3300字。その他の文章は9000字くらい?}

9/11 8時 追記改稿 3万5千字 『シミュレーションズ』を掘りだし読み返したので、「(寄り道)」の面白語り口小説紹介パートに、バラード氏のTV番組表小説をくわえた。

9/12 改稿  訳文本文で「文脈漂流(context drift)」と訳したところへ元ネタであろう「概念ドリフト(concept drift)」の英語版ウィキペディア記事へのリンクを張り感想文でも補足したうえ日本語記事へのリンクを張った。訳文本文で「Upload pruning」を「アップロードの削除」としていたのを、ディープラーニング人工ニューラルネットワーク用語の「Pruning」だろうとしてひとまず「剪定」と改めた。

9/29 追記  『HATETRIS』などqntm氏の創作や執筆物が過去に日本でも話題になっていたことを知ったので追記した。

 

 

 

 

*1:ただヘッダーには「読んだ短篇についての雑な覚書。未訳だったり既訳だったり国産だったりするかもしれない。」とあり、今後/実際はもっといろんな可能性があるblog。

*2:

あ り え な い 。それは。
バストダンジョンでリリカのおっぱい値を800近くまで調教強化してやらないと、そのフラグは立たない。
仮にフィリオナをメンバーから外してリリカを集中調教しても、アナルバイブが使えないその段階では
スカリバーはまだ手に入れられないはず。 妄 想 で つ か ?
とりあえずアンダー草原で淫獣マリリスを大量に調教して淫度をどんどん稼いどけ。
展開が不安ならバックアップ取っておくのを忘れんなよ。説教くさくなってスマソ・・・。ついな・・・。

*3:東京創元社(創元SF文庫2015年6月30日初版)大森望日下三蔵編『年刊日本SF傑作選 折り紙衛星の伝説』p.348