『逆転裁判4』をクリアして、怖いもの見たさで『逆転裁判5』第1話をやりました。む、むずかしいぜ……。
(※以下、くだんのタイトル・シリーズのネタバレ話※)
<逆転裁判>シリーズプレイメモ;
①「『4』こわいだろ」「『5』第一話ムツカシいだろ……」←この記事
②「推理小説を面白いゲームへと再構築する(プレイヤーは名探偵じゃない問題をいかにクリアするか)」「ムジュン"つきつけ"をまちがい探し作業にしないための工夫、その良し悪し」「『5』『6』プレイ所感」
③「ヒント強くする? 増やす? 異議あり! 『逆転裁判』『大逆転裁判』第1話最序盤における初心者でも解ける作問法」
『逆転裁判4』のなにが怖いか?
大変な作品だなぁとは思った(でもそこは怖い所じゃない)
これまで同様に面白いけど、なんかいろいろと大変な作品だとは、プレイしていて思ったんですよ。
{ほんとうに「同様」か? というと、第1話2話とオドロキくん/プレイヤーのチョイス以外の部分で推理が進行する部分がけっこう多く感じられ、そこは微妙だと思いました(が、はたしてそれが本当に多いのか? は自信がない。
もしかすると客観的な難度はじつは違いがなくて、ぼくが『1』~『3』をプレイして謎解きに慣れてきたがためにそう感じるだけなのかもしれない……)}
ググったら作家でプログラマの宮内悠介さんがだいぶ重い面持ちでポストされていてビックリしつつも、「そうつぶやくのも納得ですわな……」と頷いちゃうような難しい作品。
「逆転裁判4」について一言。諸々のレビューを眺めていたら、話が破綻している、制作者の苦痛が伝わってきた、といったコメントがいくつか目についた。確かに、それはぼくも感じたことだった。行間からは、スタッフの悲鳴が聴こえた。自分がデベロッパだから、過剰に感じ取った面はあるかもしれない。
— 宮内悠介 (@chocolatechnica) 2010年11月29日
話はもとからシリーズを通して破綻している。でもそれは、あくまでインパクトを重視しつつ、その範疇で極力整合性を取ったものだった。「3」などは、よくこんな話をここまで詰めたもんだと感心した。そういう意味では、「4」はこれまで詰められていた領域が、そうなってはいなかった。
— 宮内悠介 (@chocolatechnica) 2010年11月29日
でも、作品への愛着がないのかと言えば、そんなことはないと思うのだ。制作に制作が嫌いな人などいない。プロジェクトは大きくなると、細部まで手が回らなくなる。関わる人間が一人二人と増えるに従い、マネージャーの脳細胞は指数的に死滅していく。ぼくはそのことを責める気になれないのだ。
— 宮内悠介 (@chocolatechnica) 2010年11月29日
なぜか。最初からなんの思い入れもない下請け仕事ならまだしも、愛着があり、なおかつやっつけねばならないことほど心削るものはないからだ。それは、自分が好きなものを他ならぬ自分の手で壊すということだからだ。開発に、好きこのんで手を抜くやつなどいない。
— 宮内悠介 (@chocolatechnica) 2010年11月29日
制作陣は何に追い詰められたのか。むろん陣頭指揮はまずい。保身やメンタルブロックといった組織の力学もあったろう。末端のQCにも問題はあるし、トップの判断にもミスがある。でも、そこまで組織を追い詰めるものは何か。突き詰めて考えれば、それは我々消費者に他ならないのだ。
— 宮内悠介 (@chocolatechnica) 2010年11月29日
zzz_zzzzがやっていて思った大変ポイントは、わりと世評とおんなじかんじ。
たとえば、トリック・事件の流れや事件をまたいだ人物のうごきを改めて並べたときの「よくわからなさ」は、結構すごいことになっていやしないか? とか。
(ただこのへんは頭が悪い人間なので、そこまで気になりませんでした)
(『大逆転裁判1』第1話の、なんか凄い真相が語られだしたときに第三者が「そんなの見てないんですけど!?」と驚きだして、犯人は犯人でもにょもにょ愛らしく動きながら「……やるしかなかったのだ!」と、愛嬌で乗り切るくだりは、この辺の「よくわからなさ」を突破するための良きアップデートだなぁと思いました)
ほかには、『2』くらいからずっとそうっちゃそうなんだろうけど、弁護側も検事側も被告も証人もみんなみんな渋味や重みなど変な味つけがなされてしまって、ゲーム上の勝利(無罪を勝ち取る=被告を救うこと)がうれしくないのは何なんだろうなぁとか。
ナルホドくんがなんか大変なことになってるのは聞いてたけど、茜ちゃんがこうなっちゃったのは知らなかったので大分イヤんなっちゃったとか。
(やさぐれてしまったのもアレだけど、テキストスキップできないのがイヤですね。
ゲーム全体にかんする変な味つけの最たる例が、ゲーム側主導のダイアログ送り/ムービーパート演出だと思う。やさぐれモードに入っている茜ちゃんにそうと知らずに話しかけてしまってスキップ不可能な「ボリ ボリ」強制演出に巻き込まれるのが本当にイヤ……)
いろんな仕様とそれをつかった謎解きについて、どう考えても前作『逆転裁判 蘇る逆転』新規エピソード「第5話 蘇る逆転」のほうがばっちりキマっているよなとか。
(カガク調査パートは、大体みんな単発ネタのミニゲームだったよなとか。3DCGでグリグリ回転させたりなんだりして探偵する証拠品調査"遊び"は、第3話第4話は無いのと変わらんくない? とか。)
第3話のCGパート、他ハードで出し直しとなった際にリテイクは無理だったのか? とか。
『逆転裁判2』でストレスだった&『3』で解消されていた「この解答なら、この証拠でもあの証拠でも"つきつけ"OKじゃない?」がまたピーキーになっていたとか。
怖いなぁと思ったのは、その辺のアレとは(たぶん)違う話です。
怖いところ
『1』~『3』のロジックバトルの先をやろうって意気は買える
『4』はかなり戸惑いました。いや、『4』だけなら割と納得いきそうな感じもしました。
初代『逆転裁判』のDS版追加エピソード「第5話 蘇る逆転」(=発表順としては『4』に一番近いエピソード)で提起された論点の拡張版という感じで面白かったし、意気込みまでは買えました。
でも、そう意気込んで提示されたモノはなかなか難しく、途中で振り落とされました……。
「はたして提示・入手できた情報だけで真実が突き止められるのか?」
「論理の通用しないさきで出来ることとは?」
という後期クイーン的問題みたいなアレが『逆転裁判4』でぶちあげられた論点。
毎作全速全開ザックザク機能的にドライブしていく<逆転裁判>シリーズらしく、物語開始時点でもう、
「不完全な情報を完全だと思って見切り発車したレジェンド探偵役は誤答し退場。そこから7年が経ちました……」
という状況になっています。スゴいぜ。*1
『1』~『3』主人公ナルホドくんが極めてきた、シリーズおなじみの法廷バトル。「証言」と「法廷証拠」とを照らし合わせてムジュンを"つきつけ"る論理の駆動だけではどうにも崩し切れない袋小路があらわれた……
……その閉塞へ新たな突破口を開けるのが、『4』の新主人公オドロキくん。
論理的にも傍目にもおかしくないけれど(="つきつけ"られるムジュンも、"ゆさぶり"もできないけれど)じつは秘密を裡にしまっているという巧妙な偽証言。このタイプの偽証言を証言者が発したさいに証言者から無意識に漏れ出てしまう身体的異変を"みぬく"ことができる才能の持ち主がオドロキくんです。
みぬいた玉瑕から追及*2することで"法廷証拠"が実は不完全であったことを突き止めて不足分をグリグリと書き加え、完全な絵図を思い描いていくシークエンスがたのしいです。
島田荘司作品もかくやという大掛かりなトリック・大きな絵図をひもとき図解していく楽しみに満ちた『3』のその先として、『4』がこうなるのは非常に納得いく流れです。
この辺までは良い。というか、単にそういう話だけだったら呑み込めたんですよ。
「"みぬ"いた所でさぁ」が第1話で展開される怖さ
でもそうじゃない。
毎作全速全開ザックザク機能的にドライブしていくシリーズです、この仕様に対する当然の疑問も向き合います。つまり、
「"みぬく"ったって(『2』以降のオカルト嘘発見器"サイコ・ロック"がそうだったように)限界があるよね? "みぬく"をもってしても袋小路で立ち往生したらどうする?」
という疑問ですね。
『4』はそれに対しどういう答えを出すのか?
「証拠捏造、非合法な搦め手を使うしかねーっしょ!」
これを第1話で出してしまう。えええ……。
第1話の例はいくらか酌量ができます。「当事者として、明らかな齟齬を見たからこそやった」って部分はあるし、「モノが捏造だっただけで、それによって展開された推理はじっさい真相と相違ない」というアレではありました。
でも真相と相違なかったのは結果論に過ぎないわけで、このひとが「見た」なり「正しい」なりと主張する モノなり推理なりの信憑性はなぜ保証されるのか?(これまでのシリーズで散々論破してきた、思い込みで突っ走る証人たちとの違いはなに?)という疑問(というか反語)はどうしたって抱いちゃう。隠しカメラで盗撮したものとか、もっと堅そうに見える証拠(=第4話のメイスンシステムパートなどなど)の場合だってそう。同じ疑問から逃れられません。
『4』最終話をプレイし、そこで実施される「裁判員」制度と、このゲーム/物語における役割を知ったzzz_zzzzは、
「<逆転裁判>世界の行き着く先は、検察側が提示する「真相」と弁護側が提示する「真相」とのどちらを推したいか? 人気投票バトルになってしまうのだ」
という、すごい結論を提示されたように思えてなりませんでした。
{証拠品捏造によって弁護士バッジを喪失したひとが、有罪無罪を左右できるくらい重要な劇中世界の司法の(司法の!?)新制度「裁判員制度」の策定・立ち上げ要員になれたり。
ある裁判の「裁判員」として(その元弁護士に?)選定された結果、その元弁護士の作成した「ゲーム」でもって、ゲーミング大過去 ⇄ ゲーミング近過去 ⇄ ゲーミング現在とを往復して得たゲーミング「証拠」でもってゲーミング参考人物を問い詰め(その問い詰め過程にはあきらかな因果の乱れがあって、シミュ現在で得た証拠をシミュ過去人物に"つきつけ"たりする)、新たなゲーミング「証拠」を得ていくさまを追体験する……という、片一方側への肩入れ著しい謎システムに付き合わされたり。
そうして追体験させられた結果でもって、事件の有罪・無罪を投票しなきゃいけなかったりするのは……それはそれでなんか怖いよ~!
(「もともとの<逆転裁判>裁判システムが、あまりに検察側に有利なシステムだから、その是正のため」とかだったらまだ分かるんですが、『4』冒頭は弁護士側がやらかしちゃったことだからね……)
ハッピーエンド自体は「疑わしきは罰せず」で、それだけ見ればまぁ穏当なんですけど、「99%有罪な状況証拠が出揃っていても、被告が色々な意味で悪人でも、1%無罪の余地があるなら有罪にしてはいけないんだ」みたいな話じゃないんですよね。
「有罪を訴えてる側がめっちゃアヤシイし不快である……有罪と判じる側の主張がまちがっていることを証明し切れてないけど、アヤシイんだ! だから無罪なんだ」みたいな話だから、
「これでいいのか……?」
と怖くなる。
(ここへきて、割り切れなかった物語が素朴なエンタメ精神を取り戻していることもよくない。
視点がプレイヤーに近い弁護士らの肩入れする側が、素朴にかわいくて弱気で健気な「娘」で。
いっぽう主人公らと敵対する側が、狡猾で悪い「年長者の男」である……という座組が、よりいっそう「人気投票」感をつよめています)
この先に待っているのは、より信じられやすい「真実」の作成であるとか、より都合の良い裁判員確保であるとかといった、裁判・司法制度のエンタメ情実劇場化では……?}
「"論理的に追及しきれない袋小路へ行こうとも、より正しい真相を希求する姿勢が大事なのだ"というスタンス論、願いのお話なのだ」と捉えても……
もうちょっと穏当なとらえかたをすれば、
「"たとえ論理的に追求しきれない袋小路に行こうとも、より正しい真相を希求する姿勢が大事なのだ"というスタンスのお話・そういう祈りにも似たおとぎ話を語っているのだ」
みたいなところになりそう。
(じっさい劇中でも「根拠のないおとぎ話」だと語られている)
たしかにそれは大事だし、オドロキくんの"みぬく"シークエンスの妙な難度もそういう視点でなら納得いくところがあります。
オドロキくんが"みぬく"ことは、最初のうちはロジックを展開するための糸口で、たとえば、
「こういう真相Aが予想されるもそれについて巧妙な偽証言をしてブロックしているこのひと。このひとをよくよく見ると、その真相Aを反映した防衛的反応A´を無意識のうちに漏らしている」
というようなことだったんですね。
でも終盤の最難関シークエンスで"みぬ"かなければならない異変は、序盤とはぜんぜん違う。糸口もへったくれもほぼほぼ無くて虱潰しローラー作戦を展開するしかないレベルの高難度になっています。
逆転裁判4クリア。そうそう、結局王泥喜君(というか彼の一族)の出自が本人には不明のまま終わるんだよなーと懐かしく感じたり。結局「みぬき」の力は一つも解けず攻略を見た。オリジナルの時も全滅だったので、本当に相性が悪いらしい。引き続き5のプレイ開始。こちらはほぼ未プレイなので楽しみです
— 土屋つかさ (@t_tutiya) 2024年7月20日
(↑「みぬく」シークエンスは、たとえばシナリオライターの土屋つかさ氏が『結局「みぬき」の力は一つも解けず攻略を見た』といった感想ツイートをされる程度にはめんどっちい)
{『4』終盤にでてくる高難度の"みぬく"について、それまで"つきつけ"たムジュンで見られたメンタルブレイクモーションに、ヒントは有るっちゃ有る。
「……あるけどこんなの、無いのと変わらないじゃん!」
というものなのでした。
ここ突破するのに体感1時間以上は詰まりました……。見つからな過ぎてzzz_zzzzは、一回寝て、次の日に再チャレンジしましたよ。
("みぬ"かれた異変は、その反応が出ない劇中人物がほぼほぼ居ないような異変で、「じゃあこれまで"みぬ"いてきた人のなかで、そういう異変が認められなかった人々と今回の人とで何がその違いを分けたの?」となる)
zzz_zzzzzはまず、"みぬく"対象の人物について「スクープについて皮算用していると鼻が膨らむ」ことを指摘するダイアログがあったのでそこに注目するも、何も無いのを確認。
つぎに、とにかく「ハミガキをする」人物であることに着目して、まず「ハブラシを持つ手」に注目し、これまた空振ります。次に、「目」や「ノド」を見て、ついにひらめきます。
「あっ! これだけ気づけないということは"木を隠すなら森のなか"の精神で、"ゴリゴリにアニメーション中の箇所"にあるのでは? ……つまり"口パクアニメ"の奥の"口内になにか"異変が起きているのでは!?」
なかなか良いヒラメキだと目を凝らしましたが、これまた空振り。ディスプレイの表示範囲をズラして証言を繰り返し見聞きして、画面の端から端まで雑巾がけするように眺めて解決しました。トホホ……}
手がかりらしい手がかりもほぼほぼ無く、ただただ時間をかけ機械的に総当たりするという力技で突破するしかなかったこの"みぬき"は、従来のロジック解明"遊び"では出来ないこと・"みぬき"さえすれば状況が進展することというそれらの観点では正しいし素晴らしい。
プレイアブルキャラクターがナルホドくんに移って過去未来を往復しながら証拠を得る謎のゲーム内ゲームも、裁判員の主観ショットで構成された裁判員システムでの選択肢も、なんというかこの世界(ないしこのジャンル?)における元気玉みたいなものととらえれば、
「真実を希求する"目"は、なにもオドロキくんだけが持っているわけじゃない。不特定多数の万人の"目"こそが重要なのだ」
と素晴らしい。
……素晴らしいですが、でもやっぱりコレ、「総当たりの効かない"実力主義"」の推理ゲームとして立ち上げられた企画としては敗北宣言なのではないでしょうか。
(この先に待っているのは、全区域の監視カメラ設置・全人員へのカメラ装備を義務づけた超監視国家化であるとかといった、推理を不要とする世界なのでは……?)
円熟したシリーズの辿り着く先としてはわかる。でもコレさ……
「最後の西部劇」やら「ヒーロー物の極北」やら、そういうジャンル作の締めくくり・極限を銘打ったり打たれたりする作品ってそのトピックにまつわるドン詰まりを提示した作品であったりしますよね。
そんなわけでzzz_zzzzはとまどいつつも、
「『逆転裁判4』もそういう、シリーズを/議論を重ねてきた作品らしいところに辿り着いたなぁ」
と、まぁ、納得じたいは致しました。
『4』の怖いところが、心機一転のリブート一発目ってところ。どうやって続けるんだこれ……?
『逆転裁判5』第1話のはなし
チュートリアル回は新人弁護士のほぼ初登板……じゃなくベテランへ交代、しかも新人がお助けアンサー役!?
『5』は企画立ち上げ人であり脚本を手がけていた巧舟さんが退き、新体制でのスタートとのことなんですが……これまた難しくって、どうしたもんかなぁと思っています。
推理ゲームとしては敗北宣言としか思えないあの『4』からどう続けるんだ? という一番の疑問はまだまだ第1話をクリアしただけなので一旦保留。
そんな殊勝かつ慎重な判断のできるzzz_zzzzが、中途プレイ段階でグチる要素ってなによ?
まず「この証言にあの証拠品を"つきつけ"ればよさそうな気がするけど、よくわからない」「肯定したい文脈で"異議あり!"って声かけるのは、なんか変じゃない?」みたいな部分がある(※)という、つまずいちゃいけない部分でのつまずきがあるんですけど。
それ以前のところで、
「これでいいのか?」
となってしまいました。
まず<逆転裁判>って(特に『1』~『3』あたり)、ノリにノってるときの久正人作品が思い浮かぶような軽やかかつド迫力の全速前進で、なんかマイケル・マン的ないしベイ的な割り切りを自然な形で展開していて凄いシリーズなんですよ。
一例として『2』第1話の割り切りとか感動しました。
作品の最初ですから、今作から初プレイであろうプレイヤーのためのチュートリアルを兼ねなきゃいけないんですけど。でも主人公続投の続編ですから、「主人公ナルホドくんは『1』で見事な推理・論戦を展開させてきたから、今更チュートリアルなんてしたら物語的にはおかしい」という問題がある。
こうした商業プロダクト的事情と物語的連続性との両方をクリアするために、『逆転裁判2』第一話でナルホドくんは突発的かつ一時的な記憶喪失に陥るんですよ!
『3』『4』とそれぞれの導入も面白く、『3』第1話では時系列を過去にして、ナルホドくんの師匠筋の綾里弁護士の活動初期の案件を第一話にもってきています。
新システムが投入された『4』第1話では、前主人公ナルホドくんは旧システムの限界に巻き込まれて退場(!)、かわりに新人かつ特殊な才能をもつ新主人公を抜擢し、その特殊な才能を活かせる案件に挑ませます。
『5』第1話だって、最初は面白くプレイしてたんですよ。
前作主人公オドロキくんが担当するはずだった案件について、オドロキくんが爆発事件に巻き込まれてケガしてしまい出廷できなくなってしまったので、おなじ事務所の新人が急遽実戦へ……という流れ。
「この流れなら、操作確認・チュートリアルも自然だなぁ」
そう思っていると、弁護(≒プレイヤーの操作権)は新人さんから前々主人公ナルホドくんへバトンタッチされてしまう。
操作説明自体は終わったことだしバトンタッチするだけならまぁそこまで変でもないのかな? と思ったんですよ。でもそれだけじゃなかったから、
「どうしたもんかなぁ」
なんですよ。
プレイヤーキャラクターとなったナルホドくんに対して、そこまであたふたしてた新人がNPCとなった途端に「詰まったら私に相談してくださいね」なんて今作から導入された"お助けアンサー"システム役を買って出るんです。
今のところそこまで酷く詰まることって無いのでどのくらいの助けっぷりなのか不明ですが、「そんなに出来る人なら、バトンタッチなどせず、この新人が全部やればいいじゃん……?」と思ってしまいましたね。
{ムービーパートから察するに、(有能だけど)トラウマが枷となってメインの弁護士としては活動できない……みたいなことなのだと言えばそれはそうなのかも}
そのへんの設計思想からしてこれまでのシリーズとはだいぶ違う感じがあって、難しいですね……。
弁護対象の被告がクセのない純朴な子でかわいらしいうえ、真犯人がイケすかないし真実が明らかになったあと盛大にメンタルブレイクすることで、謎解きするモチベーションを素朴に高く仕立ててくれるとか、そういう美点はあるんで、続きもやっていくつもりですが。ううむ。
(※)容疑者の正しい証言に異議を入れて、前者を参照して手元の「正しい証拠」の偽りを正す(……?);『5』第1話の証言と証拠品のよくわからなさについて
第1話で取り沙汰される事件は、裁判所爆破事件。
裁判所マスコット"ねつゾウくん"ぬいぐるみの中に入っていた時限爆弾が裁判所で爆発した……という事件で、逮捕・裁判にかけられた被告が犯人と見なされたのは、爆発で千切れたとおぼしき"ねつゾウくんのしっぽ"から被告の指紋が採取されたため。
そのしっぽは実はねつゾウくんの仲間"えんザイくん"のしっぽで、プレイヤーキャラクターはそれを"つきつけ"ることで上述の前提をくつがえします。
ただ、その証言がzzz_zzzzにはむずかしくって、被告の「えんザイくんと一緒に傍聴してたら、逃げ遅れてしまって・・・・」との証言に「異議あり!」と唱え、ねつゾウくんのしっぽ を"つきつけ"(そしてねつゾウくんのしっぽとえんザイくんのしっぽの類似性の記された別の証拠も併せて"つきつけ")ることで、真相解明に進むんですけど……
……ここで「異議あり!」と言う流れにzzz_zzzzは戸惑いました。
ゲーム本編ではこのムジュン(?)について、①「検察が証拠品を取り違えたのだ」とプレイヤーキャラクターである弁護士が主張し、劇中裁判所でも採用されました。
でも、"えんザイくん""ねつゾウくん"にかんするムジュンを指摘したところで、下記の二つの可能性どちらだってありえるじゃないですか?
- 被告の持っていたえんザイくんが、検察側にねつゾウくんと誤認されてしまった。(本編で採用された解釈・真相)
- 爆弾犯である被告が、両者の類似性を悪用して「えんザイくんを持っていた」のだと偽証している(証拠品は現状の理解で正しい)
……そして現状としては、えんザイくん実物は未発見でねつゾウくんの実在だけが周知であるという状況だから、なおさら②「被告が偽証している」とする後者の可能性のほうが高いのではないでしょうか。
(上の"つきつけ"について一体zzz_zzzzがなにを問題だと思っているのか……理屈だけはだいたい同じで細部だけキテレツな別例で示せたら、もうちょっと分かりやすくなるでしょうか。
たとえば、
「被告は"現場にはじつは、指紋まで完全コピーされた自分のハイテククローン人間がいたのだ"と証言していますけど、これは法廷証拠として共有している"被告の指紋が着いている凶器"とムジュンしているので異議を唱えます!
検察側は証拠について誤解釈をしています。ただしくは"凶器は被告と同じ指紋をもつ別人により振るわれた"――これこそが真実なのです!」
とか言われたとしたら、「なんだコイツ~?」となっちゃうんですよね僕は)
これまでの<逆転裁判>シリーズにおける「異議あり!」って、以下のような流れで出てくるものだと思っていたんですよ。
証言のなかに(嘘であれ誤解であれ)偽りがあって、それについて「異議あり!」と"正しい"証拠品を"つきつけ"ることで隠されていた真実が明らかになる……というもの。正しいと既に確定の取れている部分を足掛かりにして、一歩二歩と「正しい」部分を拡張させていく手続き。これが、「異議あり!」の流れだと。
いっぽう『逆転裁判5』第1話のえんザイくんのくだりは、上とはちょうど正反対になっている。疑惑の被告による正しい(と主張しているだけの)証言に「異議あり!」とツッコんで、手元の"「正しい」と認められた証拠品が、実は正しくないこと"を証明するという流れになっていて、ちょっとよく分からない。