すやすや眠るみたくすらすら書けたら

だらだらなのが悲しい現実。(更新目標;毎月曜)

www.youtube.com

 ワーナーアーカイブ公式がジョン・フォード監督『荒鷲の翼』冒頭のすさまじい飛行シーンを1080pHD画質でアップロードしていることをいまさら知りました。

 このクリップでは、そのちょっと前の、飛行機操縦ほぼ初心者の主人公をたすけるべく妻が車を走らせたり仲間が救命艇を走らせたりして、とにかく主人公を追いかけることが優先なので同乗しようとした別の仲間たちがちゃんと座るまえに動き始めて事故りそうになるショットが映されていないけれど、並走する飛行機に向かって車の運転手である妻が両手でアピールして、ノーハンドルになった車の制動が乱れるショットなどはクリップ内に含まれてますから、これでもじゅうぶん喧騒がつたわりますね。

{実力ある作り手による映画の、毎ショット毎ショットなにか起こしてやろう、起きてるショットだけでつないでやろうみたいな異様さ(※)、何なんでしょうね……

 また、主演助演の俳優、建物の屋根、貨物列車の側面、邸宅の煙突、庭の芝生、木、プール……低空飛行する飛行機が下方のもののことごとくへ影を落としたりあまつさえ接触してリアクションを起こしている、圧倒的実在感がすごい。

cut573 アメ横の軍艦ビル前を擦過するヘルハウンド。独特の街の雰囲気を出す為、敢えて改修前の軍艦ビルをそのまま使っています。

接地面のないヘリや飛行機などの"飛びもの"は、比較物との対比が難しいのですが、ヘリのような低速の航空機なら、影を落とすことで(この例の場合なら陸橋の側面を上から下へ)特定する根拠を持つこともできます。但しその場合、作画によっては逆に破綻することもあるので注意が必要です。鉄橋のような複雑怪奇な構造物は可能な限りの資料をあたること。実在する街を舞台とする「P2」のような作品ではなくとも、レイアウトマンは具体的な資料をもとに作業することで、そのカットの中に何かを発見し、その驚きを画面に伝える努力をするべきです。そういった作業の積み重ねによってのみ、世界に存在感を実現し、作品に重量感を与えることが可能となるのですから。

   角川書店刊(2009年10月30日第6刷)、『METHODS 押井守・「パトレイバー2」演出ノート』p.64

 押井守さんが『METHODS 押井守・「パトレイバー2」演出ノート』で、比較物との対比が難しい"飛びもの"がどこにいるのかの根拠として影をおとすことの重要性(と問題点)を説いていましたが、アニメばりに制御された描写力が現実の撮影現場で達成されている異様さ。

 

 日本語字幕つきビデオとしては、ワーナーホームビデオが2021年4月に出していた(?)出していて(? Amazonで検索かけても引っかからん。hmvとかではまだ商品ページがある、これはなんかTSUTAYAカルチュア・エンタテインメント株式会社がやっている「復刻シネマライブラリー」シリーズから出ていた『荒野の女たち』とちがってマスタリングがきれいなのでオススメです。

(「DVD画質としては」という但し書きがつくけれど……。出元も販売元もワーナーなのだからBlu-Rayも併売してほしかったな……。いやDVDだけでも出たことを喜ばねば……

www.hmv.co.jp

 宮崎駿紅の豚』の参照元だ~みたいなお話をされているひとを見かける一方で、宮崎駿アメリカ映画ぎらい/『紅の豚』でのアメリカ人・アメリカートゥーンの馬鹿にし具合からなんとなく敬遠してる人もいるんじゃないかと思うんですが……いや、今となってはジョン・フォードを馬鹿にする人なんていないと思うんですが(でも『捜索者』などをマチズモだ、と批判するひとはいるか?)……ふつうにすさまじい作品ですな。

 ぼくは「ジョン・フォードだから傑作に違いないから、いつ見たっていいだろう」と大切にしている/積んでた人で、『トップガン』の感想文書くために飛行機モノの先行作で未見のやつ観とくか~って感じでDVDケースをひらきました。そういうぼくでさえ「いや思っていた以上にすさまじかったわ……」と背筋をただす作品でした。

 

 ホークス監督『無限の青空』の脚本家で原作舞台劇「CEILING ZERO」などを手がけた元海軍飛行機乗りフランク・"スピッグ"・ウィードが主人公の伝記映画です。

 

 ※※こっからはネタバレなのですが※※

 

 『荒鷲の翼』をみて思うのはフォード氏って物語の話型とか語り口の肌理(きめ)とかにほんとうに自覚的だったかたなんだろうなぁということです。

 スクリーンの内外、アメリ(ハリウッド)的物語と現実といったものへのコミットは、ともすると『紅の豚』よりもはるかにシビアだ。

 主人公であるウィード氏の生涯が波乱万丈であり、現実の飛行機に乗る人・かかわる人(WW2戦前・WW2戦中)であると同時に、軍職をはなれて飛行機乗りを主人公にした創作をてがけるライターであるという二面性(三面性)をもちあわせた人であった……というのもあるんだろうけど、ウィードが送った多面的な人生・物語を映像的にがらりとちがう質感でもって描き出していて、ちょっとすごい。

 

 うえの動画で拝めるようすは、戦前(戦間期)の、しかも単独飛行時間11秒という新人パイロットであるウィードによる(陸軍のやなやつとの売り言葉に買い言葉な)"やんちゃ"な冒険飛行なんですよ。

 総天然色の牧歌的な青春といったかんじで、ゆたかな色相と彩度明度による活劇がえがかれ、ダイアログも最小限でちょっとサイレント映画なにおいさえする。

 映画前半でウィードは華々しい軍人生活をおくるけれど、そのキャリアというのは陸軍も海軍も参加したスピードレース大会に参加して勝った(新聞や白黒の報道映画がそれを報じる/それを別居中の妻・子供たち家族が見て「あれがパパよ」「あれがパパなの!?」「シーッ」となったりする)といった、人を殺したり殺されたりする戦争ではなく、スポーティな世界での成績であったりする。

 

 中盤、俗世から距離を置いた生活をおくっていたウィードは、作家へ転身する。

(この俗世から距離を置く日々も、窓ごし、鏡ごし、建物の柵越し……と、文字どおり「隔絶された」時空間が演出されていてすごい)

 えらくなった軍人仲間のツテをつうじて、ウィードは海軍を主役にした映画の脚本を執筆、成功をおさめる。

 ウィードが前半で演じたような(でもはるかにつつましい)乱痴気さわぎの格闘劇は白黒のスクリーンに映されるものとなり、ウィードはそれを(作り手としてだけど)見る側=スクリーンの外にいる存在になる。

 作家としても称賛をうける一方でどこか浮かない顔をしたウィードは、ブロードウェーの世界へ単身とびこむ。『CEILING ZERO』(『荒鷲の翼』劇中では、タイトルが出てくるだけで、どんなものかは描かれない)をヒットさせた帰り道でイエローキャブに乗ったところ、

「おい"スピッグ"」

 となつかしい声。映画前半~中盤でいっしょにバカ騒ぎをしていたジャグヘッドがタクシー運転手をしていたことを身をもって知る。(タクシーを側面から/外から撮り、前席と後席を画面の左右に写す/車体をフレーム・イン・フレームとしてふたりの距離が如実な構図があった気がする)

 

 作家として成功して自立でき、別れた家族もそれぞれ大きくなった時分、世界にあらたな転機がおとずれる。

 作品後半、ウィードが軍へ復帰して戦略担当としての仕事をする日々がえがかれるのだが、ここがかなりグロテスクで驚いてしまった。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/z/zzz_zzzz/20220703/20220703150407_original.jpg

「あのバカは?」

「"スピッグ"だよ」

 海上を浮き沈みしてなかなか飛び立てない、日傘をさした妻があきれるほどのよちよち飛行の水上複葉機の乗り手だったというのに、若き日の"スピッグ"・ウィードは、陸軍のいけすかないやつとの売り言葉に買い言葉な経緯で飛行機に乗り込み離水、仲間たちみなが心配してオープンカーで救命艇でと追いかけ陸海空のチェイスをするおおわらわとなるも、ほがらかに低空飛行をつづけ貨物列車の作業員を驚怖させ水面へダイブさせたりする"やんちゃ"をする。

 

「……」

 いっぽう老いたウィードは、艦橋で画面外を眉間にしわ寄せてにらむ。

 その視線のさきには、戦中の当然として被弾し失速・海面へ落下することとなった戦闘機の姿がある。

「乗員は無事だ」

 大破しているうえに水上機ではない戦闘機だが、乗り手が凄腕を発揮し水面を浮き沈みしつつ不時着、パイロットがコクピットから出て助命のためにダイブする姿を、顔も見えない遠距離で見守りつづける。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/z/zzz_zzzz/20220703/20220703150412_original.jpg

 若き日のウィードが、燃料切れにより、将校とその家族がパーティをする邸宅の庭へ、翼をもがれつつも無事になしとげた"不時着"。

 ウィードはそれと似た状況にまた立ち会うこととなる――当時と違ってそれは戦時下ならふつうに起こりうる一幕であり、自分の立ち位置は、(地上から見守ることしかできない)見物人であるけれど。

 そんな状況が、戦時の記録フッテージからの引用によって次々と映されていく。

 ……そう、あのドタバタと荒々しいけれどほがらかな喧騒は、名も顔も知られぬひとびとが実際に見舞われた笑えない悲惨と同一線上のものなのだ。

 繰り返されるのはそれだけではない。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/z/zzz_zzzz/20220703/20220703150416_original.jpg

 ウィードが眼下にいるジャグヘッドにむけてやった悪ふざけ、男同士のやりとりもまた繰り返される。

 在りし日に、カメラに背を向けてウィードのあやつる飛行機を見て、カメラの側へふりかえった若きジャグヘッドは、老いた現在においてもなお、ウィードの(なにげない会話を糸口にひらめいた戦略の執行下という)筆による飛行機を見るためにまたカメラへ背を向け、そしてやっぱりこちらへ振り返る――今度は笑顔でうかべ、サムズアップとともに。

 

 ……カオティックで無意味で圧倒的な現実にたいして、なんとか自分のできる限りを尽くし、そして自分の物語をえがこうとする姿/じぶんの物語として描き直そうとする映画は、たのもしくもありいじらしくもあり、そして居たたまれないなどの情感もわく。

 なんとも複雑な気分になる、圧倒的な映画なのでした。

 

 

(※ワーナーアーカイブがアップロードした動画のなかにはホークス監督『の偵察』の空襲シーンのクリップ(こちらは480p)もあり、これまた凄い。

www.youtube.com

 1:47~の爆撃とか、ぬるいアクションに慣れた身からするとすごい倒錯してる描写だと思う。

 飛行機の襲来をうけて、室内にいるひともそとにいるひとも皆退避して、カメラから見えない位置にいく。隠れたところでカットを割って、飛行機が爆弾を投下するところが映され。そしてさきほどと同ポのショットに変わって飛行機が飛来して・地面が爆発、砂柱が立つ……

 ……ここで劇映画にわるい意味で慣れてしまったぼくは、「ああ、無人の安全な場でおこなわれる発破カットへ違和感ないようつなげたんだな」と一瞬思うわけなのですが、砂柱がたつまえに画面右から生身の人がフレームインして爆発がおこる場へ走って近づいて「うわー!」て倒れる。安全さもかけらもない。

「いま・ここで本当に起こってしまった」事象へ立ち会ってしまったみたいな黒沢清さんが言うようなドキュメンタリ性というよりかは、「ほらこんな近くに人がいる場でマジで爆発してんすよ! ね? ね!?」と肩をたたいてくる過剰な演出がなされている)

トニー・スコット監督

「「トップガン」を頼まれ 最初はとまどった

 ドン・シンプソンやジェリー・ブラッカイマーと話し合った

 空母の上で「地獄の黙示録」をやろうとしたら反対された

 あれこれ考え続け3度目に出した答えが――

 青空を背景に銀のジェットを駆るロック・スターの物語だ」

   トップガン』0:0:28~オーディオコメンタリーより

 美術学校を出て、ニコラス・ローグ監督作へオマージュをささげた『ハンガー』を撮るも興行的に失敗し、3,4年沈黙することとなったトニー・スコット監督は、ブラッカイマーらからオファーがきたさいの経緯をそんな風に語る。

 The Internet Movie Script Database (IMSDb)に掲載されているChip Proser氏による草稿的台本を読んでみると*1、『地獄の黙示録』をやりたいという思いはけっこう尾を引いていたことが見えてくる。

 

 たとえば完成版本編にも登場した、ベトナム戦争時代の映像をながしながらトップガンの教官がトップガン誕生までの空戦史をふりかえる座学シーン。

 草稿的脚本の当該箇所をみてみると、そこでの劇伴音楽としてドアーズが指定されていたりする。

 

 公開当時からたとえばロジャー・イーバートに「あの義務的な"良心の危機に苦しみ、もう一度飛べるかどうか悩むマーヴェリック"になにかサスペンスはありましたか?」と散々な言われようをされた当該シーンも、改めて観ると、

「けっこうなアイデンティティクライシスだなぁ」

 と思いもする。

「多分ぼくの責任だと思う。でも……どうしてあんな間違いをしでかしちゃったんだか、自分でも分からないんだ」

 I think maybe it was my fault. Nah. I don't know what the hell went wrong.

   トップガン』1:10:54{邦訳は引用者による(英検3級)}

 グースの例の一件について、マーヴェリックは自責にかられる。

 それと同時に、じぶん自身の不可解さにも戸惑う。

 

 初代トップガントロフィ受賞者であるバイパー教官は、じぶんがベトナムで仲間を10人なくしたこと(1:10:05)、マーヴェリックの失敗もよくある経験でしかないことを告げ、「忘れるしかないYou gotta let him go.(1:10:21、吹替版)「忘れるんだYou gotta let him go.(1:10:27、吹替版)と一度だけでなく複数回にわたって言い聞かせてくる。

「ねえ、証拠は全部見せてもらった。あなたの責任じゃない。あなたは悪くないListen, I've seen all the evidence, and it's not your responsibility. It's not your fault.(1:19:19。吹替版)

 恋人である知的な分析官もまた、あなたの責任ではないと述べる。

「あのひとはあなたと飛ぶのが好きだった。」(1:13:10。吹替版)

 夫を亡くしたばかりの相棒の妻もまた自分を責めない。

「あのひとならあなたがいなくても飛んだと思う」

 それどころか、じぶんの復帰を後押ししたりする。

「エンジン停止(ストール)を引き起こしたジェット・ウォッシュを認識ないし回避する方法はミッチェル大尉にはなかった。

 よって当査問委員会は7月29日の事故においてピート・ミッチェル大尉に過失はなかったものと判決。

 ミッチェル大尉の記録からこの事故は抹消。

 ミッチェル大尉の航空状況をこれ以上の遅滞なしに復元させるものとする」

 There was no way Lieutenant Mitchell could either see or avoid the jet wash which produced the engine stall.

 Therefore, the board of inquiry finds that Lieutenant Pete Mitchell was not at fault in the accident of 29 July.

 Lieutenant Mitchell's record will be cleared of this incident.

 Lieutenant Mitchell is restored to flight status without further delay.

   トップガン』1:14:24{邦訳は引用者による(英検3級)}

 海軍の査問委員会の見解でさえじぶんに責はないと言い、だから記録にも残さないのだと云う。

 

バイパー「おやじさんと一緒に飛んだよ。VF51飛行隊だ、空母オリスカニーの。

 君はかれとそっくりだ。もっと良いところもある……悪いところもまぁ。

 生まれながらのクソ英雄とはあいつのことさ」

  I flew with your old man.VF-51, the Orlskany.

  You're a lot like he was.Only better and worse.

  He was a natural heroic son of a bitch, that one.

マーヴェリック「だからあのひとは正しいことをなした」

  So he did do it right.

バイパー(舌の鳴る音)……ああ、あいつは正しいことをした」

  (舌の鳴る音) Yeah, he did it right.

   トップガン』1:21:54{邦訳は引用者による(英検3級)}

「だからあの人は正しいことをなした」

 口角をわずかに上げていたマーヴェリックが、バイパーから顔をそむけて真顔で言ったこのことばは、観直すとどうにも多義的に響いてくる。

 じっさい字幕版では「父がミスなど…」というボーイスカウト然とした素朴で純朴な父への信頼として訳され*2、吹替版では「本当にそうでした?」と皮肉っぽい疑問として訳される*3という、正反対の解釈となっている。

{ただしマーヴェリックの吹替を担当した声優さんの演技は悪い意味で評判で、このセリフが意図せず疑問形っぽい発声になってしまっただけの可能性もある*4*5

 海に消えたF-4戦闘機乗りの父、軍事機密のヴェールで覆われたかれの最期は、はたしてほんとうに正しかったんだろうか? 「そっくり」であるらしいじぶんが海に沈めたグースの例の一件とおなじく、お国が隠したくなるほどの、たんなる愚かなまちがいだったんじゃないだろうか……

 ……海をのぞめる立地に白い菱形格子の柵をかまえたバイパー教官の家で、教官に背を向けて言ったマーヴェリックの言葉は、再鑑賞したぼくのなかではそのように響きました。

 

 だれもがじぶんを励ましてくれる。

 だれもがぼくのせいじゃないと言ってくれる。

 しかもそれは、温情とかではなく、単なる事実かもしれないらしい。

 戦士としてよくあることで、たいしたことないそうだ。力学的に不可抗力なのだそうだ。

 ……じゃあ、かれの死に責任を感じているこの「ぼく」って一体なんなんだろう?

 この「ぼく」の存在理由(レゾン・デートル)は?

 

 草稿脚本のつづきを読んでみる。

59から61は削除

  59 thru 61 OMITTED

***

59A、ラホヤ・ビーチ‐日中

  59A.  BEACH LA JOLLA - DAY

 休日。パイロットは昼の浜辺を楽しんでいる。ビキニにビール、マンボウ水上スキー。年一のオーバー・ザ・ラインソフトボールの一種)大会も進行中だ。テディ・ケネディ・ダイビング学校のチームがスカム・デ・テレ(大地の屑)と呼ばれるものをたたいている。パイロットたちはとてもうまく息抜きをしている。

  A day off. Pilots, other personnel are enjoying a day at the  beach. There are bikinis, and beer, sunfishes and water skiing. The annual Over-the-Line (a variation of softball)  tournament is in progress. The team from the Teddy Kennedy Driving School is whipping another known as Scum de Terre.  The pilots are doing pretty well at blowing off steam.

 

59B、水中

  59B.  UNDERSEA

 波打つ海草。くぐもって響く波の音。愛らしい魚が視界にはいる。槍がそれを突き刺し、海底へくぎづけにする。
  Undulating sea grass. Muffled HISS of the surf. A pretty fish comes into view. A spear shoots through it, and nails it to the ocean floor.

 

59C、海岸線
  59C.  SHORELINE

 ふたつの人影が水面に浮かび、浜へ向かって歩いていく。マーヴェリックは身をよじる魚をつかんでいる。チャーリーは嫌悪する。彼女はシュノーケルを取り外して、海岸をあるくかれについていく。
  Two figures pop to the surface and wade in to the beach. Maverick holds the wriggling fish. Charlie is repulsed. She pulls off her mask and snorkle, follows him in to shore..

 

59D、浜辺

  59D. THE BEACH

 ふたりは腰をおろした。マーヴェリックはチャーリーのまえに魚を落とし、死にあえぐ魚を目にしたチャーリーの反応を見る。

  They flop down. He drops the fish in front of her, sees her reaction at watching its death throes.

チャーリー「なんでそんなことするの?」
            CHARLIE

Why'd you do that?
マーヴェリック(驚く)かけてみたんだ」
            MAVERICK

(surprised)

I had the shot.
 チャーリーは少しの間マーヴェリックを見ると、顔をそむけ、マスクをいじる。

  She looks at him for a moment, then turns away, fiddles with 
her mask.
マーヴェリック「魚は死んだ。ぼくらは生きる」
            MAVERICK

It dies. We live.
チャーリー「獣だよあなたは」
            CHARLIE
You're an animal.
マーヴェリック「そりゃ真実だ。そう言うきみは?」
            MAVERICK
That's true. What are you?
チャーリー「苦しむいきものを見たって私は楽しくない」
            CHARLIE
I don't enjoy watching things suffer.
 マーヴェリックは魚を岩にたたきつけた。魚が静かになる。
He smashes the fish on a rock. It is still.

チャーリー「いや!」
            CHARLIE
No!
マーヴェリック「これでもう苦しまないね」
            MAVERICK
It's not suffering anymore.
チャーリー(かれに奇異の目を向け、冗談半分で)残酷だよ」
            CHARLIE

 (she looks at him strangely,  half jokes)
 You're horrible
 マーヴェリック「きみはちがうんだね。冷凍ミートボールを食べるからか? (魚を置く) 生きものは死ぬ。きみが呼吸するたびに、きみは小さな生命体を百万単位で殺している。きみが食事をするたびに、なにかは死ななければならない」
            MAVERICK
You're not, cause you eat frozen meatballs? 

(he puts it down)

Things die. Every time you breathe, you kill millions of tiny organisms. Every time you eat, something had to die. 
チャーリー「これは殺す必要なかったよね」
            CHARLIE
You don't have to kill it.
マーヴェリック「だれかはやるよ。それが誠実なやりかただ。きみも自分の手を汚せよ」
            MAVERICK

Somebody does. It's more honest this way. You do your own dirty work.
チャーリー「ほかの人を殺すことをいつも考えてるの?」
            CHARLIE
You ever think about killing another human being?
マーヴェリック「かれらがぼくを殺すことを考えてるのと同じくらいには」
            MAVERICK

About as much as they think about killing me.

チャーリー「それがあなたの心配ごと?」
            CHARLIE
Does it bother you?
マーヴェリック「かれらはルールを知ってる……(チャーリーにとってきびしい話題であり、背を向けるが、マーヴェリックは彼女のそばへ寄る)これは取引だ。だからきみはここにいる。あっちかぼくか。これが入場料だよ。(チャーリーがさっと離れる)それがきみの心配ごとだろ。なぜ? きみもこの一部だからだ。(チャーリーはこわばり、マーヴェリックは彼女から離れる。かれは軟化する)誰だって死ぬ。多くのひとはなにかのために命をかけたりしない。きみは直視したくないだけだ、どうだ。きみはすべてクリーンにたもちたいんだよ、知的に……速度ベクトル、翼面荷重ダイアグラム……きみは一度でも飛んだことがあるか?」
            MAVERICK
They know the rules...

(this is too strong for her, she turns away, he comes around to her.)

That's the deal. That's why you're up there. It's him or me. That's the price of admission. (she draws away)

It bothers you, why? You're part of it.

(She stiffens, he's losing her. He softens)

Everybody dies. Most people don't get to die for something.You don't want to confront it, do you. You want to keep it all clean, cerebral... velocity vectors, wing-load diagrams...You ever been up?
チャーリー「飛行機で?」
            CHARLIE

Flying?

マーヴェリック「きみは物事から距離を置くことに頭をつかっている。ただただ身をまかせたことが一度でもあるか?」
            MAVERICK
You use your mind to keep things at a distance. You ever just let go?
 彼女は答えない。
  She doesn't answer.
マーヴェリック「ぼくが本当にこわいものがなにかわかるか? 長生きだよ。うしなうことだよ、髪を、歯を……度胸を、風を。そして脳みそを……。部屋で膝に手を置いて座って、昼間ずっとTVを見ることだよ」
            MAVERICK
You know what really scares me? Living too long. Losing my hair and my teeth...and my guts and my wind. And my brains...Sitting in a room with my hands in my lap, watching daytime TV. 
チャーリー「今いったどれも信じていないでしょ。じぶんが死ぬなんてあなたは考えてない」
            CHARLIE
You don't believe any of this. You don't think you'll ever die.
マーヴェリック「そうだよ、もちろん。飛んだ先で何かするとき、ぼくは毎秒だましてるんだ。ぼくはくつがえしつづける、すべての法則を……重力を……なんであれ。その縁(エッジ)でスケートしてるんだよ」
            MAVERICK
That's it, of course. When I'm up  there and doing it, I'm cheating it every second. I'm subverting all laws...gravity...whatever. I'm skating the edge of it.
チャーリーウィンストン・チャーチル
            CHARLIE
Winston Churchill.

マーヴェリック「は?」
            MAVERICK
What?
チャーリー「かれはこう言ったの……"撃たれても無傷なほど爽快なことは人生にはない。"」
            CHARLIE
What he said..."There's nothing so exhilarating as being shot at without result."
マーヴェリック「たった一度の人生だ。だれもが等しく価値があるんだろう。きみは、自分の夫に先立たれてしまった奥さんを見たことある? そして意味のない下り坂が何年もさきまで伸びているのを見たことは……。

 空のなかにいてそこでなにか本当に危険なことをするとき、さきが見えるんだよ……十秒くらいかな。未来すべてが。うまくいってそのくらい。でもこの数秒の想像は価値がある」
            MAVERICK
All you've got is one life. I guess it's worth about the same to every body. You ever see an old woman after her husband has died? And the meaningless years of decline stretch ahead...  When you're in the air and doing something really dangerous, you can look ahead... maybe ten seconds. That's your whole future. That's as far as it goes. But imagine what those seconds are worth.
チャーリー「じぶんでじぶんを殺すことになるのでは? 逃してしまうものについて考えたらどう」
            CHARLIE
What if you kill yourself? Think of everything you'll miss.

マーヴェリック「ぼくが知らないものはいっぱいある……美味しいワイン……偉大な絵画……オペラ。長生きしたら、手を出すこともあるだろう。なにもしなければ、逃すこともないはずだ」
            MAVERICK

There is lots of stuff I don't know about...  Fine wine... great art... the opera. I guess if I live long enough, I'll get to it. If I don't, I'll never miss it.
チャーリー「それが勇気だと本当に思ってる?」
            CHARLIE
Are you really that brave?
マーヴェリック(首を横にふる)ぼくは自分の母の死を見た。癌だった。母は癌について長いこと考えていたんだ。おまえは死にゆくことへ同意したと周りは言う。もういないという事実をすぐに受け入れたと。ぼくは予期してなかった。母は……とても勇敢で……ぼくよりも勇気があった。空へ行けば、思考のための時間はない。失敗をおかせば、ただちに地面のしみになる。単純化された葬儀の手配さ」
            MAVERICK

(shakes his head no.)
I watched my mother die. Cancer. She had a long time to think about it. They say you reach an agreement with death. Come to accept the fact that pretty soon you won't be here. I didn't see that. She... was very brave...braver than I am. You go up there, there isn't time to think. If you make a mistake, you're just a smudge on the ground. Simplifies funeral arrangements.
チャーリー「おぉ考えていたとおりのひとだ」
            CHARLIE

It's just as I thought.
マーヴェリック「は?」
            MAVERICK
What?

チャーリー「あなたは完ぺきに狂ってるんだ」
            CHARLIE
You're totally insane.
マーヴェリック(笑顔をうかべる)どうもありがとうございます。(魚をもちあげる)心配してくれよ、これにしたみたいにさ?」
            MAVERICK

 (he smiles)
Thanks very much.

 (he lifts the fish)

Care for some suchi?.

59E、浜のもう片方の端‐遅く

  59E.  THE OTHER END OF THE BEACH - LATER

 バレーの試合が激しさを増す。マーヴェリックとチャーリーはそのまえをぶらつき、やわらかくおしゃべりしている。グースが駆け寄りマーヴェリックをつかんだ

  A killer volleyball game in progress. Maverick and Charlie wander toward it, talking softly to themselves. Goose runs up and grabs him away. 

グース「来いよ、つぎはおれらの出番だ」

           GOOSE

Come on, we're next.

マーヴェリック「は?」
            MAVERICK

What?

グース「来いって、6ドル稼げるかの瀬戸際なんだ」
            GOOSE
Come on, I got over six bucks on the line.
 マーヴェリックは顔をあげ別チームの男ふたりに目をやった。勝者がネットの向こうで待っている。もちろんアイスマンとスライダーだ。試合が即座に収拾つかなくなっていくのをチャーリーは座ってながめた。マーヴェリックとアイスは、ネットを挟んだ対角の前衛に瞬時についた。酒を飲む周囲は試合以上に堕落(?)してそれを眺める。マーヴェリックはチャーリーを一瞥した。かれは居心地悪そうだったが、もはや取り返しのつかない対立のなかへ引き込まれてしまっている。チャーリーは何も言わないが、気持ちは態度にあらわれている。

 試合に戻ろう:スライダーとグースは、互いの顔にスパイクを決めようとセットアップした。マッチポイントが中央に上がる。両選手が跳び、マーヴェリックはスマッシュ、アイスはブロック、しかしボールはアイスの前腕をすり抜けていった。マーヴェリックがアイスをはじめて打ち負かした時だった。マーヴェリックはチャーリーを見ると、彼女は海をじっとながめていた。彼女が振り返ると、マーヴェリックは試合をとつぜん切り上げた。周囲はもう一試合やろうと声を上げたが、マーヴェリックはこばんだ……。
  Maverick looks up and sees the other two-man team, the victors, waiting on the other side of the net for them. Of course it had to be Ice and Slider.Charlie sits and watches as the game gets immediately out of hand. In moments, Maverick and Ice rotate to forward positions directly opposite each other across the net. Other revelers turn to watch as it degenerates (?) to more than a game. Maverick glances at Charlie. He seems uncomfortable, but irrevocably drawn into the confrontation. She says nothing, but her attitude is apparent. Back to the game: Slider and Goose set them up, as they try to spike the ball in each other's face. The final point...up over the middle. They both go up, Maverick smashes, Ice blocks, but the ball sails away, off his forearm. For the first time ever, Maverick beats him. He looks over at Charlie, she is staring out to sea. She looks back at him and he's suddenly had enough competition. They call for another game, but Maverick turns away...

グース「さぁさぁ寄ってらっしゃい! 倍にするか無一文か……アメリカのみなさま12ドルでどうだ」

            GOOSE
Come on, come on! It's double or nothing.. We're talking twelve bucks American, here.

マーヴェリック「ぼくはもう充分だ……いまは」

            MAVERICK

I've had enough...for now.
 マーヴェリックはチャーリーをつかみ、そしてバイクに手をかけた……
He grabs Charlie and his gear..

マーヴェリック「来てくれ」
            MAVERICK
Come on.

チャーリー「どこへ?」
            CHARLIE
Where?

マーヴェリック「弾丸飛行はいかが?」
            MAVERICK
You want to go ballistic?

チャーリー「わからない。コントロールできないのは好きじゃない」
            CHARLIE
I don't know. I don't like being out of control.
 マーヴェリックが振り返ると、アイスがボールをバウンドさせてこちらを見つめていた。
  He looks back at Ice, bouncing the ball and staring at him.
マーヴェリック「しっかりつかまってくれ、そのうち慣れるよ
            MAVERICK
Stick with me, you'll get used to it.

 

59F、屋外、砂漠

  59F.  EXT. DESERT

 バイクは時速130、140、150マイルと速くなる。チャーリーは平然としている。マーヴェリックがふりむき彼女を見ると、チャーリーは笑顔をかれに返した。
  The Bike doing 130, 140, 150 mph. Charlie is unfazed. He turns to check her out, she smiles back at him.

 

   The Internet Movie Script Database掲載、Chip Proser『Top Gun』脚本より{邦訳は引用者による(英検3級)}

 『トップガン』のえがくロックスターは、危険で、魅力的で、刹那的で、そしてもっと虚無的なものなのではないだろうか。

 えがこうとした、なのかもしれないけれど、

「うん、まぁ、つらいのはわかるよ。やつらはデューク・ミッチェルの息子だからって士官学校入学を認めなかったし、おまえはあのうわさを背負って生きてかなきゃならないし」

 Look, man, I know it's tough for you. They wouldn't let you in the academy because you're Duke Mitchell's kid and you have to live with that reputation. 

「でも、いっしょに空を飛ぶと毎度おもうんだよ、おまえはまるで亡霊相手に戦ってるみたいだって」

 But it's like every time we go up there, it's like you're flying against a ghost.

   トップガン』0:38:20

 でもいま観られるかたちでもだいぶ不穏だ。

 

 初見時はのほほんと見てしまったんだけど、けっこう考え込んでしまう内容だと、いまさらながら思う。

gigazine.net

「空のなかにいると、いつもある種の恐怖をあじわう。それは興奮とスリルと緊張がまぜあわさったものなんだ」ヨギは言う(引用者注;アレックス・"ヨギ"・ナラキス中尉。ヨナイ氏の取材相手のひとりであるトップガンF-14乗り)。「でも夜の空母への着艦(ランディング)は、希釈しようのない純然たる恐怖だ」

 もちろん航空学校時代に空母へのランディングを日中おこなってきたし、通常の滑走路にえがかれた飛行甲板のシルエットへ夜間ランディング訓練だってあった。そういう話じゃない。事前準備できないものの話をいましている。

  "There's some fear every time you're in the air, mixed with excitement and thrill and tension," Yogi says, "but a night carrier landing is the only thing that is sheer, unmitigated terror." You've done day landings on carriers back in flight school, of course, and practiced night landings on the silhouette of a flight deck painted on a regular runway. But nothing, nothing prepares you for what's coming next.

 黒い海のうえの黒い空を飛んでいると、数マイル遠くの虚無のなかに突如として白い光の点が見えてくる。無線の声はそこに船があることを教えてくれるが、その小さな光以外に見えるものはなく、その光をどれだけ最高のタイミングで辿ろうとも「制御された墜落(クラッシュ)」以上のものにはならない。

 海がおだやかで空気も澄んでいる幸運にめぐまれたところで、闇のなかで光は跳ね、揺れる原因がはたしてじぶんなのか船なのか知るすべはない。わかっているのは、60フット*6の鉄壁のうえのたった700フィート*7の甲板が降り場だということだけ。

 もし軌道が低すぎれば、ぶつかり破片と鉄くずとなって船側(せんそく)へ散る。高すぎれば、戦闘機の腹からだした鉤(テイルフック)が着艦用ケーブルにかからず空を切るから、もう一周してランディングをやり直さなければならない――すでに一度失敗したランディングを。

  You are flying out of a black sky onto a black sea, and suddenly you see a dot of white light miles away in the void. The voice on the radio tells you that's the ship down there, but all you see is the little light you must follow down into the controlled crash that is a carrier landing in the best of times. If you are lucky the sea is calm and the air is clear, but if the light bounces in the dark you have no way of knowing which is moving, you or the ship. All you know is that somewhere down there is a 60-foot wall of steel and only 700 feet of deck. If you hit too low you'll have to be scraped in bits and pieces off the side of the ship, and if you come in too high and fail to snag the restraining cables with your tailhook you'll have to come around again - and you've already screwed up once.

 VF-1米国海軍第一戦闘飛行隊(ウルフパック)が航海したインド洋の、とりわけ荒く暗い夜の場合なら、あるパイロットは12回ランディングを試みた。12回もだ。

 何周も何周もまわって燃料を使い尽くしてどこにも行けなくなったこの哀れな男のために、給油機が揺れる甲板から二たび離着艦して空中給油をおこなったが、それでもまだかれは降りられない。やっと着艦できたとき、甲板にひどく激しくぶつけて飛行機を傷つけ、泣きながらコクピットから出た男の顔は老人のようだった。

「慣れることは一生ないよ、」

 オーガンは言う。空から帰ってこようとあがく相棒を夜半まで起きて見ていた男だ。

「もし慣れたとしたら、どこかがおかしくなってるってことだ」

  The VF-1 Wolfpack was out on cruise in the Indian Ocean one particularly rough, dark night when a pilot had to come around twelve times. Twelve times. The poor guy had nowhere else to go, and he came around and around, burning so much fuel that twice tankers launched off and refueled him in midair and landed on the pitching deck while he was still out there trying to make it down. When he finally did, he hit the deck so hard that he damaged the plane, and when he climbed out of the cockpit he was crying and looked like an old man. "You never get used to it," says Organ, who sat up half that night watching his buddy trying to come back out of the sky. "If you do, there's something wrong with you."

   EHUD YONAY「TOP GUNS」(『CALIFORNIA MAGAZINE』1983年5月号掲載記事の、DAVID BARANEK『www.topgunbio.com』再録版より)(2022年6月17日閲覧){邦訳は引用者による(英検3級)}

 

*1:トップガン』スタッフクレジットに出てくるのはジム・キャッシュ氏とジャック・エップス・ジュニア氏のふたりだけど、ノンクレジットで仕事したかたがいるらしく、そのひとりがProser氏。もうひとりはもうひとりがウォーレン・スカーレン氏(ほかの脚本仕事として、ティムバートン監督版『バットマン』や『ビートルジュース』、トニー・スコット監督『ビバリーヒルズコップ2』など)。正規の脚本家コンビがたたき台にするためのドラフト脚本だったという話もあれば、コンビが書いたあとのリライト作業だったという話もあり、ちょっとググったくらいではどんな仕事をしたのかわからない。

*2:素直にとるのが正しいだろう証拠として、劇伴音楽はこのダイアログの時点でやさしいメロディを奏でている。

*3:皮肉として解釈するのが正しいだろう証拠として、たとえば序盤の女性用トイレまでナンパしにきたマーヴェリックをフったシャーロットが、そこから出た直後グースへ「あなたの友達すぅごい」と一声かけ去ったことで、グースが二人が一発いたしたと勘違いしたくだりのように、今作の会話劇には皮肉がいっぱいあって、記事本文のつづきで取り上げるとおり、ここと並べたくなるようなやりとりもあったりする。

*4:もっとも、ぼくは吹替版は吹替版で合ってると思う。そしてキャスティングも吹替版収録も話題のひと一人でできるわけがないのだから悪評がかれだけに行くのはおかしいと思うし、今回話題にしたセリフについては「さすがに正反対に聞こえる発声はNG・リテイクが出されるだろう」とも思う。

*5:同場面のセリフをそれぞれ並べると……

字幕版

「おやじさんもVF51部隊だった

 君は彼に輪をかけた腕前だ

 欠点も多い

 彼は生まれつきの英雄だった」

「父がミスなど…」

「分かってる」

吹替え版

「VF51飛行隊。おやじさんと一緒に飛んだ。

 君はかれとよく似ているが、もっと良いところも、悪いところも。

 あいつこそ生まれついての英雄だったよ」

「本当にそうでした?」

(舌の鳴る音)……ああ、そうだった」

*6:60フット=約18メートル。

*7:700フット=約213メートル。

らくらくがき

www.youtube.com

「あっビデオレターですね~これは~!」に大草原でした。

(3Dの肉体がない配信者が出演するときは、汎用黒子3Dモデルを「あのキャラに見えてる」というていで「黒子だけどあのキャラなんだよね」と想像力をはたらかせてやり取りしたりするのですが――そして今回だって、じっさい指示だし役の詩子おねえさんもそういうていでお話しされていたのですが。このときばかりはふつうに黒子を黒子としてとらえてエロマンガ/AV的ないかがわしさを見出していて草だった。べつの想像力がはたらいてるよ!)

 ……のだが、「Youtubeのポリシー的にあやしいかもしれない」ということで、予防的措置としてYoutubeでの当該パートはカット、ニコニコ動画へアップし直しとなっていました}

 

***

 

 神絵師のかたがたは「らくがき」と言って(実際そのくらい気楽なノリで)すごい絵を毎日のように投稿するもので、見栄っぱりのぼくもしっかりフルカラーの絵を「ゼェゼェ……ラッ、らくがき、ですけど……?」とマラソン大会のギャラリー前だけしゃんと走るみたいな感じでお出ししていたわけですが、体力がないので本当に楽々ならくがきを投稿するようになり申した。

 主演作の劇場公開を受けてなのでしょうかなんなのか、トム・クルーズ主演作のいくつかが配信でちょっと安くなってますね。

 

 トム・クルーズ人気の火付け役、業白書』itunesAmazon)が500円前後。未鑑賞なので、ぼくは廊下を華麗にすべるムービークリップしか知らない作品。

 トニー・スコット監督による往年の人気作ップガン』itunesAmazon)が713円。字幕吹替え切り替え化で4K対応で映像特典付きなのでitunesのほうが圧倒的にお得。

間隔を詰める初めての試み

 レイシーが操縦するリアジェットにある大型の窓の後ろには何台かのカメラが据え付けられ、潜望鏡のように機体の上部と下部に突出しているカメラもあった。正義の味方が見た映像を撮るため、一機のF-14の外部ポッドにはカメラが内蔵され、悪役の視点を見せるために、私たちの複座式F-5Fのコクピットにもカメラが入っている。これだけカメラが用意されていても、ジェット戦闘機の立ちまわりを撮影するのは予想以上に困難だった。

 (略)昨日、リアから撮影された黒のバンディット(敵機)とアメリカのトムキャットがすれ違う重要なシーンは、まるで何匹もの蠅が青いスクリーンの上を飛び交っているかのように地味で退屈な絵だった。一つのフレームに収めるにはジェット機うしの間隔が広すぎた。この問題に直面したラットは西海岸の戦闘機オペレーションを統括する二ツ星の提督と話し合い、あくまでも飛行士たちが危険と感じない状況下において、訓練機動時に飛行機が五〇〇フィート以上の間隔を維持するという規則に一度限りの例外を設けることで最終的に合意した。

(略)

 二回目のすれ違いは一回目と似ていたが、ずっと間合いを詰めたものになった。私の慣れている五〇〇フィートの間隔よりも、F-14はさらに近い距離を目にも留まらぬ速さで飛び去って行った――リアルタイムで微調整が行なわれるので、少しは安心できたが。

 高度を詰めたすれ違いが成功したことで、満足感が生まれた。私たちはハリウッドのスタッフを前に迫力ある飛行を見せることができた。さらに軍人は単に勇敢なだけでなく、計画を実行するためにリアルタイムでの調整を繰り返す柔軟性も持ち合わせていることを証明した。十分に分泌されたアドレナリンは、ぎりぎりまで間合いを詰めてすれ違い飛行を行なったこの日の午後を思い出深いものにするはずだ。

 トニー・スコット監督が無線で「みんな、さっきよりもよかった。ずーっといい。でももう一度だけお願いできるかな、もう少しだけ近くしてくれればいいから」

   並木書房(2017年刊)、デイブ・バラネック著(茂木作太郎訳)『F-14トップガンデイズ 最強の海軍戦闘機部隊』p.18~21(太字強調は引用者による)

 海軍トップガン候補を主役としたトレンディドラマ/青春グラフィティという感じでお話はタルいかもしれないし、空戦模様は技術的困難もともなって今見るとイマイチ分かりにくいところがあるかもしれませんが(ミサイルが真っ青な空を飛ぶ1ショットでもって、「ミサイルが当たらなかった/避けた」ということにする展開は、やっぱり混乱するし観直してもせつない)、映画として映える映像を実機でつくりだすために手間暇・コストをかけていますし、画面にひとつも空が映らない機内のほんの1秒あるかないかのショットでもコクピット内に光と影が挿し込んで明暗が激しく揺れるなかでの操縦模様となっていたり、演出力が光る作品です。一見の価値は確実にある。

{6/15追記;

 (上のセール対象ではない)3D版Blu-Rayビデオでひさびさに観直したら、これはエラい劇映画だといまさらながら感心しました。物語の筋じたいはともかく、その歩み方はキビキビしているうえに有機的で活き活きしてる。

 ダイアログもスペクタクルも可能なかぎり刈り込んであって、会話劇が見ていて飽きない。

 対比変奏もかっちりとキマっているし……

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/z/zzz_zzzz/20220630/20220630235809_original.jpg

 ほかにも訓練地、私的空間、飛行機上――それぞれの時空間での一貫していたり……

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/z/zzz_zzzz/20220630/20220630234134_original.jpg

 ……態度ががらりと変わったりする人間のふるまいや人間関係がとにかく楽しい。

 でてくる人出てくる人、自分たちの立つ舞台によって本音と建前をつかいわけたり、あるいは本音のつもりだし本音なんだけど自分でもよくわからないオブセッションに憑りつかれて言ったこととやってることが違えてしまったりするので、セリフと表情と身ぶりがそれぞれ別々に動くこともままあって、どんな会話劇も一義的におさまらずに活き活きしてる}

 

 ダグ・ライマン(リーマン)監督による桜坂洋原作の幸福なハリウッド映画化、時間ループモノSF戦争アクションール・ユー・ニード・イズ・キル』itunesamazon)が815円。字幕吹替え切り替え化で4K対応で映像特典付きなのでitunesのほうが圧倒的にお得。

 

 エドワード・ズウィック監督によるスト・サムライ』itunesAmazon)も713円。

 われわれ世代だと、伊藤計劃氏の作品レビュー/ズウィック評がどうしても強いですけど……

web.archive.org

projectitoh.hatenadiary.org

 ……実際みてみると、映像的に映える創造がいっぱいありますよ。

 伊藤氏が評するように真面目は真面目なかた・作品なんだ(ろう)とは思いますよ。(今となってはもう「クールジャパン(笑)」「日本スゴイ(笑)」ってかんじで対外関係における裸の王様感がありすぎて嘲笑どころか恥ずかしくて居たたまれなくなってしまう「日本には独自の四季があって~」という言い回し・風土観。

 Blu-ray/DVD特典であるオーディオコメンタリかインタビューでズウィック監督は笑いなど混ぜず真顔で「日本には独自の四季があって~」と言って称賛する。なんてまじめなひとなんだ……

 でも、べつに作りたい画・音と資料(史実)とを天秤にかけて後者をえらぶひとというわけではなく、そうして調べたものやことから映画に応じた組み合わせや誇張や簡略(ないし継ぎ足し)をして一定の文脈をつくることは(多分どの監督作も)なされているのではないでしょうか。

(なつかしの鑑賞メーター時代の感想が流用できそうなので以下に掲載)

※色んな作品のネタバレをするよ!※

 今作『ラストサムライ』の各地のようすは、図式的にまとめられる形で組織されています。

 冒頭ちょびっと登場するサンフランシスコも、序盤や後半でちょこっと出る横浜・東京も、メイン舞台となる勝元の村も、低所の市井~傾斜~高所の権力(者・社)の建物、そして大きな塔型(しばしば"井"型)の建造物電信柱や帆菊紋付きの瀟洒な鳥居頭に小石を乗っけた木の肌の地味な鳥居……という図式が引け、さらにはこの図式は細切れの回想シーンのウォシタの虐殺のインディアン集落でさえ窺えるんです。

燃えて木組みを露わにするテントの脇に、"井"の字型の物干し枝がある(0:11:10)。 その光景はまるで、鉄道敷設真っ只中の名もなき日本の村の、燃えて木組みを露わにする木造家屋とその脇の鳥居(0:23:06)を見ているよう。}

 また、画面一つのインパクト・現物からの改変度合で言えば、(多分)デフォルメが利いた結果、天皇の鎮座まします几帳の内側の装飾がめちゃくちゃかっこいいことになっている。天皇が背にする側に(も)金の菊紋があり、この菊紋が椅子に座った天皇の頭の後ろにちょうど来るような絶妙な位置にあつらえてあり、キリスト教画の光輪と同等の効果をもたらしているんですよ。

(菊紋のある椅子は現実にもさまざまあり、たとえば現代の現実の国会の御傍聴席なんかもそうだけど、座ると背中に隠れて見えなくなってしまって、『ラスト・サムライ』のようにはならない)

 

 別口で伊藤氏の評を補助線にして、あらためて作品を観なおすと、

『ラスト・サムライ』について伊藤さんの話の主眼は、桜とか風俗・自然描写でなくて、出演した日本人の顔や所作の美しさについてではあるけれど……

"(オリエンタリズムオリエンタリズムだけど)異国の人のカメラ・照明により、我々日本人でさえ気づかなかったような母国の美に気づかされる映画"

 ……というような具合に今作を讃えた伊藤さんのあの評は、実はズウィック監督の目論見そのまんまだったんじゃないか?

 などとも思ったりもしました。

 いや別に、オーディオコメンタリを聞いても、そうした目論見があったと明確に述べられる訳ではありませんよ。

 けれど、映画劇中でオルグレンが驚嘆する勝元や彼の治める古き村の人々が、濃い明暗の出た「カラバッジョのような映像」(0:33:18監督オーディオコメンタリ。残念ながらitunesでもAmazonでも配信版では未収録)として映されているのに対し。勝元や古い村の人々を排斥する新政府のえらいひと大村が、擬洋風建築の自室に掲げているのがカラヴァッジオの絵画(『聖パウロの回心』本編1:21:25等)であったりするのは、その証左となると思います。

{つまり、今まさに自分が排斥しようとしている地元(って言い方もなんですが)のものに、じぶんがありがたがっている「良いとされるヨソのもの」と同じ美がしかも活きた状態であるんだけど大村は気づけ(てい)ない……ということですね}

 

 サムライたちをカラヴァッジオのように描くことで、何がしたかったのか?

 

 改めて観ると結構にズウィック監督の後の傑作ブラッド・ダイヤモンド』へ通じる要素があります。

 というのも両作とも、お上に国に裏切られた男が、最後の最後に完璧な光景をその目に収め「自分は見た」と独り言をこぼすみたく誰かに伝える映画なのです。

{今作では切腹後に舞い散る桜を見た勝元がperfectと、『BD』ではアーチャーが崖向うに飛ぶ飛行機を見てincredibleと言い、前段に話の出た砂を手で触り風に飛ばす(『ラストサムライ』において桜は、日本の美として勝元が挙げ、外国人オルグレンに教えたものであります)

 相棒はそれを見れないが聞き、上に伝える。

{今作のオルグレンは介錯・介抱したために桜と逆を向いており、『BD』のマディーは携帯で別場にいる。

 また、その伝え方は、今作においてはオルグレンが会議の場にやってきて天皇に勝元の剣を渡す、オルグレンの見聞したもの(勝元の人生)天皇に伝える。(お国はアメリカと日本国内の兵器なども扱う汚職商人の食い物にされそうなところを方向転換し、母国の誇りを忘れない方向へちょっと変わるらしい)

 『BD』においては汚職ルートの解明・暴露と会議の場に召喚されたソロモンの人生により。(お国は、先進国やら戦争請負会社の食い物にされそうなところを、そうできないような方向へ変わるらしい)

 今作を観返したのは、同主演同監督による他作ャック・リーチャーNEVER GO BACK』を観て良い頃合だと思ったからなのですが、続けて観たからこその収穫があったように思う。実はあの作品もローリー』も『BD』もそして今作『ラスト・サムライ』も、"自分の手元には結局何も残らないけれど、他の人にとっては何ら価値のないものかも知れないけれど、その時の一瞬だけかもしれないけれど、でもたしかに、自分は美しく素晴らしいものを得たのだ"という映画なのではなかろうか。

(もちろん、その人物が視点人物かどうかとか、得るタイミングはどうかとか、難易度的にどうかとか、悲劇性の度合いは作品によって異なれども)

 そうした観点からすると、いちばん悲劇的ではないだろうし得られたものも一回こっきりのものでさえないかもしれないけど、つつましくささやかなものをつつましくささやかながらも美しく描いてみせた『ジャック・リーチャーNEVER GO BACK』が、いちばん好きかもしれない。 

 

 ……といった具合に、セールになってないトム・クルーズ主演『ジャック・リーチャーNEVER GO BACK』への好意を語って、この記事はおしまいにします。

 識者から好評でも不評でも、良いモノじぶんにとって好きなモノはあれこれありますが、費用対効果とかって考えてしまうものですよねやっぱり。

 一歩ふみだすきっかけとして、セールの存在はありがたい。

 これを機にあなたに何か良い出会いがあることを祈ります。

 どれも日記か個別の感想記事か何かでもっと加筆したり詰めたりするつもりですが……。

www.youtube.com

レディ・ガガ氏公式チャンネルの主題歌、日本語含む各国語字幕が用意されてるの凄いな……)

 

「"わからないからこそ好きなんだよ"、"わからないまま戦ってくれるから良いんだよ"」というお話が長々解説されたり、その解説を読んで「なるほど腑に落ちました!」との声が出たりするのを聞くとぼくは、

「なるほどつまり"分かるからこそ良い""良さは伝わってこそ"ってことだな?」と多分さいしょに訴えた人が伝えたいことと真逆の合点を得てしまうのだが、それでよろしいのか?

・『シン・ウルトラマン』本編冒頭映像を観て、面白さを再確認しつつもリズムの妙な外しかたに気づく。

 

・5/28は午前0時にィジランテ 僕のヒーローアカデミア:ILLEGALS』最終回、昼間にップガン:マーヴェリック』を観て、年間の基準値を大幅に超えるアメリカ活劇成分を摂取してしまった一日となり申した。

 まだ今年の半分も終わっちゃいませんが、『TG:M』はぼくにとって2022年ベスト映画になるんじゃないだろうか。というか魂の一作になるかもしれない。

 

ゥせぇるすまん』124話一挙配信(6/5までアーカイブ残るらしい)をふとクリックしてみたら普通に映像として魅力的なのでびっくりしてしまった。

{画像さいしょの2つが5話『47階からの眺め』で、つぎの2つが6話『勇気は損気』。明暗のつよさや具象抽象、粗密のデフォルメの利かせ方、スケッチ的な抜きかた。これがご覧のとおり「うまいひと」によるうまい塩梅で、素朴に見応えがある。(ぼくの先日の「らくがき」もこんな感じに描ければよかったんだろうな、と思わされた)

 ウィキペディアによれば美術監督は宮野隆氏とのことだが、話題にしたエピソードのスタッフはだれかは存じません}

 

 

※以下、件の作品や話題にした作品の結末までネタバレした文章が続きます。ご注意ください※

続きを読む

らくがき

www.youtube.com


(余談ですがオープニングアクターのdodo氏の『era it』(リンク先MV)で、「疲れてなくてもヒップホップ聞いていいだろ! dodo! なんでそういうこと言うんだ!」てチャットが飛び、それにたいして「うづコウ(リスナー)おる」と別人からのチャットが連鎖したのは、ネット中継ならではといいますか、視聴者層の幅広さを感じました)