日記です。8100字くらい。『戦隊大失格』を読んだり、お絵描きしたりした週です。
※言及したトピックについてネタバレした文章がつづきます。ご注意ください※
0413(火)
すでに書いた感想記事の、作り足りていなかった画像作成をしていた気がします。
0414(水)
祖母の確定申告書類を間際になってやりはじめる。
と見栄をはった言い方をしましたが、祖母がきっちり保管してくれていた必要書類をしまったケースを机に出しただけです。なんもやってない……。
ふつうのひとなら3月15日までにキッチリカッチリ終わらせているものを、今やってる時点でひどいズボラだというのに、この期に及んでよくもまぁまだ見栄をはろうとしたな……われながら誇らしいよ……。
0415(木)
仮眠をとったのち身内の確定申告を終える。
帰宅後『ゴジラS.P』第4話「まだみぬみらいは」をキメ、窓口基さんの確定申告お疲れ様配信を聞いて(おつかれさまでした……!)、22時30分からのTV放送組の「のばえのきょうふ」実況を見守り、さまざまな面で癒されました。
「連載漫画をなさっているかたは、トークの組み立てがうまい!(わかりやすいし面白い)」となりました。
■読みもの■
マガジンの謎都会の匂い;『戦隊大失格』読書メモ
前作の売りである、かわいいキャラ(※)の魅力。これを覆面・舞台裏モノの枠組みによって顔も性格も文字通りおおいかくしての作劇。なんともチャレンジ精神旺盛な……。
(※)これは雑な言い方で、『五等分の花嫁』も後半ドロドロした情念をぐつぐつさせていたわけですから、その路線の拡張というかんじなのかもしれません。
雑な話ついでに、『ゲットバッカーズ』の無限城とか『エアギア』やらあれやこれやの『週刊少年マガジン』の現代を舞台にした漫画で、都市にシレッと佇む巨大な謎空間、あれって何なんでしょうね? ぜんぜん作者も作風もちがうし、編集方針みたいなものだって無いだろうに、なんか同じ匂いがする。とにかく巨大で、雑多で、カッコよくて(※2)、よくわからないけどスゴイところ。カッコいいけどこわいお兄さんお姉さんがたむろしている、仄暗い場所。
それはたぶん、『ジャンプ』っ子だったぼくが『マガジン』を読み始めてしばらく抱いていた感触に似ている。
グラビアアイドルが表紙をかざり、漫画本編では胸やら何やらが見えたりする。下ネタもえぐく、不良が主役の作品もあり、麻雀漫画がご長寿だった。
ぼくの通学路圏内にはない、背伸びしなきゃ見えない世界がそこにはあった。
そんな匂いが『戦隊大失格』の都市からも漂っていた。
{※2
ただし『戦隊大失格』についてはカッコよさがだいぶ難しくもあって。
ルックスは良いけれど、(今後に発端やら理由やらが掘り下げられて株が上がったりすることは大いにあるでしょうけど、)現状だと性格自体はいや~なやつらだし、頭わるそうな部分しかまだ見せてないので、結構つらいものがある。
その点でおなじくマガジン連載中の『東京卍リベンジャーズ』の舵取りはすごいなと思う。
現在はムショだったり死んでたりだったり現実的な非道をはたらく極道であるし、ティーン時代だって大人たちから渋い顔をされる不良(ヤンキー)である。でもそれだけじゃなくって、人好きするニイチャンだったり、カリスマだったりする。
主人公がタイムスリップして少年時代に戻って、あの悪くはあるけど素敵だった人々がなぜただの悪いやつらに堕ちてしまったのか理由をさぐったり分岐点に立ち会ったりすることで、「ふるきよき」かれらが遠い先の現在でも維持されるよう頑張る……みたいな『リベンジャーズ』の舵取りは、時間SF的要素によってキャラの可能性を多元化することで、悪くカッコいいキャラの負の面をありえる可能性として拾う。とても良い塩梅だと思う}
■観たもの■
高橋敦史監督『ゴジラS.P<シンギュラポイント>』第4話鑑賞メモ
このblogでのここまでの『ゴジラS.P』にかんするお話。放送まえ与太話記事、1話感想エントリ、2話感想エントリ、3話感想エントリ。
この4話鑑賞メモ(日記)をへて、5話鑑賞メモ(日記)、6話観賞メモにつづく。
シリーズ構成・SF考証・脚本の円城塔さんは……
そうなると、全体の長編的な構想が必要になります。13話あるので、前・中・後ぐらいの中編的な構想も必要で、
GIGAZINE掲載、『「ゴジラS.P<シンギュラポイント>」シリーズ構成・円城塔インタビュー、ゴジラ初の13話構成をいかに作っていったのか?』
……とおっしゃっていて、それを単純に当てはめるなら、4話が前編の〆ということになるはずわけですが、むしろ第二部の頭という感じでしたね。3×4(+1)というような起承転結4部構成なんでしょうか?
第一話で幽霊屋敷の正体をさぐって、さまざま推理をしながら電波探知機で謎の存在の足跡をおいかけ、ミサキオク電波観測所と電話を交わした(そのさいユンはちょっとした偶然の符牒から「俺たちに?」「どうやってそれを?」「指示? 誰の?」「JJ? ……ジェットジャガー! 何をたくらんでる!?」「なんだ偶然だ。考えすぎ。気を回しすぎ」と自分たちが開発する奇妙なロボットについて漏らしてしまう)ユンたちオオタキファクトリーの青年コンビ。
かれらは第4話でふたたびミサキオクと電話でコンタクトを取り、偶然糸口をつかんでカマかけてミサキオクの佐藤から観測所地下の謎の骨の存在を引きずり出すと(佐藤「それに意図するとして誰が? なんのために? アレに意思が残ってるとも思えないが……」ユン「アレ? ……地下の?」佐藤「知ってるのか? 骨だぞ? バカバカしい! そんなことはありえない!」)……
「1体消えてる」
「息を吹き返して、うちに帰ったか?」
残り時間13:46~
……整然と並べられたラドンの墓場のうち消えた一体を探して森へ分け入ります。
そこにはふしぎな足跡があり、さまざま推理をしていきます。そして人の落下があり(第一話でユンが落ちたように)、自己紹介があり(ユンたちが警察にしたように)、スマホに収めた異常(一話では謎の歌謡曲/4話では道中のラドンの食い散らかされ死体)に対する答えのような&謎・不気味さをより引き立てるような異音があります{検索結果をしらせる通知音&インドの歌謡曲という新たな謎/自衛隊の銃声の音&それが「フルオート、自動小銃だ」と補足するジャーナリスト"海"の口頭情報(サックリ聞き分けられる怪しい人物像)}。
第1話ではハワイへ学会発表へ出た教授の代わりにミサキオク電波観測所へ「2時間に1本」のバスでむかった神野銘は、こんかいの4話ではリー博士に本人ご指名で招待され、飛行機の良い席でUAE/ドバイへ空を飛び、ドバイ国際空港からリー博士の発表会ステージへは個人運転手の車のふかふかシートの後席で向かいます。
「パワースペクトルかな? でもこれだけじゃ……」
と歯切れ悪い(が正しい)回答をしたメイは、御呼ばれした講演会のホールでは、観客席から我をわすれて自論を唱える。
ユンたちもメイも、第一話をきれいに反復変奏している。
1話〆で日本のミサキオク電波観測所にて佐藤と管理局の局長が地下へむかって怪獣の骨と出会ったように、今回もUAE(?)のシヴァの管理する施設にてふくよかなマダム”ティルダ"と不健康そうな男BBが地下に幽閉されているらしい生きた怪獣へ出会いに行きます。しかもそれは4話中盤の展開でしかない。
3話のユン達が転倒したようなハプニング(=怪獣被害から道路のど真ん中で横転させられた車)に、4話では自衛隊が見舞われる。
第4話は、「起承転結」の「承」の頭のようだけど、すでに「起」の尻ちかくの展開がリフレインしている。ここから先はどこまで転がるか分からないぞ。
***
鼻をつまんだユンらと佐藤のラドン墓場での会話は、口パクを手やハンカチで隠した省エネ作画で、うまいなぁと思った。
もちろん押井監督のおっしゃるように、口パクのリピート作画の単調さをきらってこういうことをされる作り手もいらっしゃることでしょう。
***
暗号を解いたあとになされるメイとユンのLINE会話②のタイムスタンプは、20:37前後。
UAEとの時差はマイナス5時間。メイが20時なら日本のユンたちは25時くらいとなる。日中、四足歩行の恐竜へ自衛隊が発砲した銃声を聞いたユンたちは、アンギラスとはニアミス程度でおわるのだろうか?
***
無限の猿定理などに並べて、雑に見えて偶然そうなるのは奇跡というネタとしてポロックのドリッピング・アートが出てきたくだりは、『エクス・マキナ』について……
……ガジェットや話題のハッタリの利かせかた・もっともらしさの確保については、ちょっと悩ましいところがあります。劇中IT長者ネイサンが話題にするポロックのドリップ・ペインティング、ネットの情報などから解析された性的嗜好などは、現代のポピュラーサイエンス本で扱われるようなトピックなのですが、セリフがふんわりしていてそちらへつながっていきそうでいかない。
(ポロックの画については適当に見えて、フラクタクル構造を有していて、D値はどの作品も一定。その値はちょうど人間が心地よいと感じる複雑さだった……
……というやつですね。
後者についてはオギ・オーガス&サイ・ガダム著『性欲の科学』などが参考になる。
劇中のセリフは、たとえばポロックについては
「そうポロック、ドリップ・ペインティングだ。彼は頭をからっぽにして、手が動くままに描いた。意図的でもランダムでもなく、その中間だった。オートマティック・アートというやつだ」0:48:50~
と禅問答みたいに話題が振られます)
若手SEについてネイサンは当初から馬鹿にしている調子があるしじっさい馬鹿にしているので、この辺の会話も「バカ(ケイレブ)にはわからないだろう」と意図的に会話のレベルを落としたというような人物造形的必然性があるのかもしれませんけど、まぁだからって頭のわるい会話に上映時間を割かれてもなぁというところは、たしかに無いわけではないよなぁなんて思いました。
{この辺は、はたして観客(であるぼく)がどこまで作り手の知識を信頼してよいか、信頼できるくらいどれくらい情報を示してくれるか……みたいな話になってきますね。(ジョゼ・パジーリャ監督『ロボコップ』('14)の「作り手は確実に『ユーザー・イリュージョン』やら『ロボット兵士の戦争』やら押さえてるわ」という圧倒的信頼感って奇跡だったんだろうなぁとか思う)}
弊ブログ『日記;2020/12/29~2021/01/04』「アレックス・ガーランド監督『エクス・マキナ』鑑賞メモ」
……とか思っていた箇所だったので、「やはり円城先生、信頼できる……」てなりました。いや『ゴジラS.P』でのポロックの話題にされかたもべつに現実の科学的知見につながるドアのような要素はたいがい薄いわけですが、『エクス・マキナ』的困惑はいだきませんでした。ふしぎだ。何がちがうのか?
***
4/16追記
セリフが多い、は多いのですが、発話する・会話するシチュエーションは結構いろいろある気がしますね。
今回みたいに「変な声色しているな」と思っていたらキャラが映ると鼻をつまんでいるのがわかる、みたいな例は極端ですけど、しりとりをしてみたり(4話)、観衆の一人として独り言をつぶやいていたのが、立ち上がってステージの講演者にむかって大声を張ってみたり(4話)。
マニュアルを読み上げてみたり(1話)、見知らぬだれかと電話をしてみたり(1話)、事情聴取をされてみたり(1話)、歌舞伎的な演説をぶってみたり(2話)、TVワイドショー/報道番組/専門家による記者会見などをつないでみたり(2話)、食材・料理物色中にAIと主語述語をはぶいたナマっぽい会話をしてみたり(2話)、軍隊的な段取り段取りした会話をしてみたり(3話)、緊急災害報道を読み上げてみたり(3話)、AIと省略しまくったツーカーな会話をしてみたり(3話)。
あっ、プロジェクタ投影をバックにした暗室での、日本の研究者の発表(2話、4話)と。広く明るいホールでの、TED的な海外の研究者のプレゼン(4話)対比もありましたね!
李博士のプレゼンもかなりバランス感覚が優れていたなと振り返って思う。
2話だか3話だかで神野銘が博士のバックグラウンドを見ながら漏らした「シミュレーション上は安定しているみたいだけど、現実での成果は……」みたいなテンション低めの言及。
これが当のリー博士のプレゼンをみてみると、観衆を沸かせる(おそらく定番の)ジョークと化しているさまが描かれていて、実際TEDとかを見たりポピュラーサイエンス本を読むとそれなりに見られる茶目っ気が思い起こされ「これは"らしい"ディテールだな」と思ったし。
そして、メイや門外漢の観客であるぼくがいだくような当然の/しかしごもっともな(と自分で言うのは恥ずかしいですが……)疑問について、こういう世俗慣れしたクールな捌きかたを見せることで、
「たんに研究面で優秀というだけでなく、なんかどうやら軍産複合体らしい(とりあえず傭兵がいる)このスゴイデカイ企業でも余裕で乗り切れるような、一癖も二癖もあるスターなのだな」
というのを分からせてくる。
0416(金)
■自律神経の乱れ■
ゴーズオン連続体
2010年前後はともかくとして、『デス・スト』に『シン・エヴァ』に『ゴジSP』にと、最近やたらと思い返すことが増えました。
面白い映画を観て「伊藤さんならどんな風に評してくれただろう」と思うことは多々あったけど、
「伊藤さんならどんなゲームや映像作品を手がけたろう」
と思うようになったのは、いろいろな作家の先生がたがそれだけ精力的に広域にご活躍されているという、豊かでよろこばしい現状があってこそで。
そしてこうした連想は、各御仁の功績を無視する乱暴なものだという自覚だってあるのですが、しかし、どうしても隙間から漏れ入ってきた寒風をふさげないときもある。
0417(土)
出勤日。
0418(日)
いろいろと疲れが出て、昼間はずっと寝てました。
■社交■
モンハン宣教師が我が家にやってきた
ぼくは『ゴジラS.P』に夢中の昨今ですが、高校時代からの友人A氏はモンハンにはまっています。
「モンハン体験版DLした?」
「した」
「モンハン買う?」
「でもちょっとcovid-19が心配だよね」
「映画版の話ではなく」
***
「モンハン買った?」
「ゴジラS.P2話がモンハン感あったよ」
***
「モンハン買った?」
「ゴジラS.P4話も足跡探したりしてモンハン感あったよ」
みたいな感じで楽しくLINEで会話していて、今晩A氏はなぞの文字列をよこしてきました。
まるで『ゴジラS.P』3話に出てきた暗号。おお観てくれたのか、これからは一緒にゴジラS.Pのはなしができるな! と思ったら、
「有効期限12ヶ月だからDLはやくしてね」
モンハン製品版のDLコードだこれ。
オタクの布教活動はすごいですね……。
いろいろ落ち着いてアナログ空間で会ったときは8000円リターンせにゃ……。
■描きもの■
二次創作;『ゴジラS.P』の絵
『ゴジラS.P』の二次創作ラクガキです(ぜんぜん楽書けなかった……)。
3時間くらい書きましたが、延々「ワカラン……」て感じ。
立体をとれない人間が建物を、ましてや非実在ロボを描こうとすると地獄だということがわかりました。
『ゴジラS.P』登場人物のひとり加藤侍(ハベル)とその社用バイクを書こうと思いました。それだけだと味気ないので、かれが勤めるオオタキファクトリーの工場も描こう、と。
わかりやすい外観と内装数ショットは1話中盤にあり、内装を一望するショットは3話中盤にあります。
「シャッターはだいたい閉め+工場内は影にするし、それらしく見えればよいので」と、1話中盤だけで描きはじめました。
アタリをあまりにザックリ描きすぎて、ロボと工場のサイズ感がこの時点で(たぶん)失敗していることに気づけませんでした。(なんなら今でもよくわかってない。これじゃないのはわかっているのですが……)
それ以上の問題として、仰ぎ見るかんじのロボが全くよくわからない。そもそも正面から見たロボの造形もよくわかってないのに描き始めた。そりゃ失敗するよ。
ハベルだけ書ければよかったので、満足して布団にはいりました。
起きて見直したら「おれがよくてもさすがにこれはダメだろ……」と正気にもどって、工場内のロボを描きます。
影をつよくします。
イラストらしくなってきたことで、自分の描いた工場があまりにせまいことへ気づきます。たぶん水平方向だけでなく奥行・天地方向もおかしいですが、どうすればよいかわからない。
バイクを気持ちアオリつよくして、背景をきもち魚眼的にゆがませます。
「狭いんじゃなくて、パースがキツイだけなんですよ」という見苦しい小細工です。
画面右手前のキャラ(有川ユン)をしっかり描きます。
押山清高さんがウェブにてされているイラスト添削(けっこうな作例を無料で公開してくれている)で、背景だけでなくキャラもきちんとパースに乗せれば空間がそれらしくなる~みたいななんかそんな感じのことをうっすら学んだので、消失点から線をひいてなんかそれっぽい感じにしました。なんかそれっぽい感じになってくれてると嬉しい。
(具体的には、上着の裾と、ズボンの裾の角度に違いを出しています)
■読みもの■
つの丸著『みどりのマキバオー』ワイド版7巻まで読書メモ
途中まで読んで「これは当時めちゃくちゃ腐ったお姉さまお兄さまがたが熱かったのでは!?」とツイート検索かけてネタバレを踏みまくりました。
それは何ですか;つの丸さんによる週刊少年ジャンプ連載作です。1巻あたりのボリュームが増量したワイド版で読んでいます。
序盤のあらすじ;
「たかが1億の借金がなんだってんだよ、こっちにはミドリコの仔がいるんだよ」
「んあ~~~」
「……!!??」
みどりの牧場のアイドル・桜花賞馬ミドリコが産んだ仔は父母のどちらともちがう真っ白なずんぐりむっくりで、葦毛というわけでもなく、電柱に張り紙がなされていたロバにそっくりだった。
借金にあえぐ牧場主は落胆し、ゆくゆくは馬肉となってもらおうとその白馬に見向きもしなかった。愛するわが仔の運命を知ったミドリコは、のほほんと日向ぼっこするわが子をどうにかこうにか走らせようとする。
小柄でやさしい性格の白馬は牧場の同年代の馬となじめず、ミドリコが無理やり引っ張ろうにも頑として動かない。
一見ぐうたらに見えるこの仔だけど、桜花賞を獲ったわたしでも動かせないなんて……!
ミドリコがわが仔の秘めたる才能に気づき始めたその頃、みどりの牧場へカタを求めて借金取りの車がやってきた……。
読んでみた感想;
貧乏牧場の白い珍獣マキバオー、金満牧場の黒い帝王カスケードのライバル関係を主軸として、兄がカスケードと因縁のあるアマゴワクチン、外国産馬の偉丈夫ニトロニクス、地方競馬の星サトミアマゾンなどがダービーや有馬記念などのG1レースを競う。
読んでみて初めて知りましたが、方向性としては『カイジ』や『ジョジョ』のようなシビアなルールで試合展開がなされるマジメ極まりないレース漫画なんですね!!
試合がシビアであるがゆえに、馬たちのレースに賭ける強い思いもまた輝く作品でした。
マキバオーの特徴的な容姿は、そのまま競走にむすびつく(長所短所をふくんだ)特徴として処理されていて、この設定の突き詰め具合はすさまじい。
(小さいから混雑する馬群をすり抜けられるかもしれない/これだけの小柄で他と競れるということは心臓への負荷が高いかもしれない/小柄すぎて乗れる騎手は限られている。蹄が丈夫/大きすぎることがホニャホニャ。おおきな鼻で空気をたくさんとりこめる)
マキバオーの上には人間の騎手カンスケが乗るほか、野生のネズミ・チュウ兵衛も一緒に乗ることになりますが、ここもまたクレバーでした。
やさしいけれど、だからこそ「ここぞ」という勝負に出れないカンスケと。強気だが、だからこそ失敗もしてしまうチュウ兵衛。それぞれ異なる思想をもつ両者とマキバオー3者が相談しながら進んでいくレース展開がとても良い。
個人の自問自答にしたって良いのだろうけど(じっさいほかの馬のなかには、モーリアローなど表と裏をつかいわけた大人の馬もいます)、各馬の戦略・信条が絡んで目まぐるしく展開するレースの大部にからみ、それに合わせて一レース中にさまざまな試行錯誤をする主人公が、ただひとりの走者としてグルグル戦略や意識を変遷させると、読者(であるぼく)にとっての主人公像は、コロッコロと芯がないフニャフニャ意味不明な性格に映りそうです。
マキバオー&チュウ兵衛&カンスケ3者のアンサンブルが楽しいし、上ではこの3者を分離した一個人のように書いてしまったが(実際そういう要素はあると思う)、異なる性格の3者1チームは、べつに「わたし&野生(システム1)&理性(システム2)」みたいな、キッチリカッチリ単純な記号的割り振りをしているわけでは全くない。
ふたりの騎手の声も耳に入らないくらい「かかり」状態に入ったマキバオーとか、性格のことなる3者がおなじ方向をみんなで向いたときとか、極端に走ったときの振れ幅が(ひとりの性格が揺れ動くより)より大きく出た気がします。
主人公馬にみられる個性的なキャラの差別化は、2番手3番手の馬にも行き届いていて、それぞれが特定の属性を煮詰めた代表/アイコンのようになっていました。(アイコンなんだけど、その馬でないとこうはならないという細部・個性を有していて、この辺もなんかすごい)
地方競馬の星であることに誇りをもち故郷へ錦を客を呼び寄せたいが「中央じゃない・2軍3軍としての地方」を受け入れてしまっている地元の馬と距離感があるサトミアマゾン。
貧乏牧場出身であるがゆえにとにかく連戦連勝して金を稼ぎたいし、そのためにはこすい手もつかうモーリアローなど、キャラが立っています。
0419(月)
宿直日。