すやすや眠るみたくすらすら書けたら

だらだらなのが悲しい現実。(更新目標;毎月曜)

日記;2020/12/29~2021/01/04

f:id:zzz_zzzz:20210104214123j:plain f:id:zzz_zzzz:20210105083557j:plain あけましておめでとうございます! 日記です。15000 →19000字くらい。『「もののけ姫」はこうして生まれた。』鈴木Pも面白い、『PotC』も異様だ(人間の生理現象まで制御する人体改造的作り込みをしてたんだなぁ)、『ヘミングウェイ&ゲルホーン』が観れなくなるのは惜しいと思った週。

 ※言及したトピックについてネタバレした文章がつづきます。ご注意ください※

 

1229(火)

 ■読みもの■ネット徘徊■

  円城さんのゲンロン講座の内容がアップデートされていた

 丑年でしたね。

 ゲンロンでおこなわれるSF講座の、2020年版円城塔さん担当回のテクストscrapboxへアップデートされていました。2019年版2018年版も同scrapboxに併載)

 「限られた枚数の中で」は、前年の「小説の手管」(&具体例①「場面の接続」要約改稿版というかんじ。「でかいものを雑に入れない」とか、「・天才が何かをひとりで思いつき続ける話を書かないこと ・はっ(ヒラメキ)(略)」とか、「"そして次の日"はやめましょう」とか、同じところもあります(抜けたものもある) もう少し具体例が知りたいかたは19年版にも目を通すとよいでしょう}

 

scrapbox.io

 新規に追加されたのは「設定を考える」で、ゴジラの紋切り型が例にされていました。

(ただし円城氏がそこを詰めないひとかどうかは作品によるでしょう。

 19年版の「小説の手管/例:設定」「例:でかいものを雑に入れない」では、詰められるところは詰めておこう、作中における妥当性は確保しておこうというお話がなされていますし。

 『読書で離婚を考えた。』の「恐怖新聞」評は、恐怖新聞の特性を読んで「カミオカンデにかけよう」「星間通信につかおう」という設定転がしが披露されました。

 円城氏が脚本をつとめる『ゴジラS.P.』は、取り消し線がひかれた部分もまた重要なのではないでしょうか)

 そのほかの部分では……

・要請から航空支援到達までがはやすぎるのではないか
 ・うるせえ、航空支援はすぐくるんだよ

   scrapbox円城塔『設定を考える』

 ……円城さんはこのネタを前にもサンプリングしていた気がするけど、異様なほどニヤニヤしみじみしてしまって困ってしまった。年末と寒波、バイオリズムの乱れ。

 一方、トランスフォーマーの戦闘描写には明らかにオタ趣味がのぞいている。味方と思われる緊急通信が入ると、まずプレデターグローバルホークUAVを飛ばし、AWACSを急行させて、現状を確認したうえで、A-10が地上を制圧し、ついでAC-130の脇腹が膨大な火力を地上に投射するわけだ。あまり段取りを省いていない(指揮系統の直通ぶりはアレだが)。通信がつながってから現場に一瞬で到着する即応ぶりは、いかにカタールといえどもアレな気がするけれど、いいんだよ!信じる心があれば航空支援は時空を飛び越えてやってくるんだよ!

   伊藤計劃運営blog『伊藤計劃第弐位相』、「変態者」より

 2009年は丑年で、つまり伊藤さんが亡くなってからもう干支がひとまわりしてしまったんですね。

 

 ■インターネット老人会

  イーガン作品も30年まえなのか……

 『戦闘妖精・雪風』が35年以上まえの作品だというのに驚いたけど、イーガンの初期作が30年も前の作品だということも結構ショッキングで、「それだけ前の作品についてネタバレをためらう必要があるのか?」という疑問もわくけど、

「いやいやぼくが『アクロイド殺し』や『そして誰もいなくなった』、『オリエント急行殺人事件』を楽しめたのは既読者のかたがたのそういう気配りのおかげじゃん?」

 という思いもあり。むずかしいところです。

 

  オタクの誇張表現って

 類似(?)表現として「n億年ぶり(に絵を描いた)」もありますが、これって駄菓子屋のおばちゃんの「はい100万円」ではないか?

 

 

1230(水)

 仕事納め日。

 ■観たもの■インターネット徘徊■

  vtuber『ねんま…「その口塞いでやるよ…」…ッ!…チュボボ……【にじさんじ/月ノ美兎】』リアタイ視聴しました

youtu.be

 いちから社の運営するvtuber団体にじさんじに所属する学級委員系vtuber月ノ美兎委員長が今年2020年のふりかえり配信をしていたのでリアタイ視聴しました。

 途中、あした大晦日NHK紅白歌合戦をひかえるPerfumeのっちさんからLINEが入って、観ているこちらがニヨニヨしてしまう局面も。(のっちマジで委員長リスナーなんだなぁ……)

 本当に飛躍の一年だったなぁとしみじみしてしまいました。

 委員長がとりあげなかった配信もアレコレ面白いものがあって、パッと思いつくところでは10月のにじさんじ御茶会『月ノ美兎と一緒に受けるイラストレーターねづみどしのN高イラスト授業』にじさんじ箱内でプチ流行りした「キッキッキ」を生み出した9月10月など何度か行われた『Among Us』実況コラボプレイ配信などが楽しかったり興味ぶかかったりしましたね~。

 

1231(木)

 宿直日。

 ■観たもの■

  フィリップ・カウフマン監督『ヘミングウェイ&ゲルホーン』鑑賞メモ

www.amazon.co.jp

 AmazonPrime向け配信期間がきょうまでだったので滑り込みで観ました。購入・レンタルに移行してくれるとよいけど、大体そのまま配信終了になる印象がありますよね。

 それは何ですか;

 フィリップ・カウフマン監督による2時間33分のTV映画です。 題名のとおり作家アーネスト・ヘミングウェイ氏とその三番目の配偶者マーサ・ゲルホーン氏が主役で、かれらの出会いから別れまでが描かれます。(本邦ではWOWOWプレミアで『私が愛したヘミングウェイ』と題され初紹介。Amazon版の題名は上のとおり)

 カウフマン監督はアメリカ宇宙開発黎明期をえがいたノンフィクション映画の傑作イトスタッフ』の監督として有名ですね。同名小説の映画化在の耐えられない軽さ』、マルキド・サドを主役にした舞台劇の映画化イルズ』など、文芸映画のイメージをお持ちのかたもいるかもしれない。

 ほかにもジェシー・ジェイムズ物の栄枯盛衰を主筋としつつも100点台まで延々野球をやったりアメリカ先住民の呪術医の謎治療を受けたり蒸気オルガンが大活躍したり……と矢鱈に無軌道でパワフルな、20世紀という科学の時代を目前にした19世紀末という時代をグツグツ煮詰めた大傑作ネソタ大強盗団』、『ミネソタ~』よりも主筋がハッキリしているけれどしかしやはりこちらも南北戦争前後の時代の空気を煮詰めたような南北の歌や先住民の声などが多声的に猥雑にひびくイーストウッド監督ウトロー(原題The Outlaw Josey Wales)』('76)の脚本といった傑作を手掛けていて。

 『ミネソタ大強盗団』は、2,3年まえこそ蓮實重彦御大セレクト西部劇ベスト50の一作だからそっち系の映画オタクには有名だけど紀伊国屋さんで出たうえに廃盤になって高価で手が出せない……みたいな歯がゆい状況がでしたが、いまは廉価版が再販・市場流通しているので、ぎゃくにF/ボディ・スナッチャー(面白い!)とかイジング・サン』(そりゃあ大傑作というわけでは全くないし、もし「カウフマン監督作からオススメを挙げろ」と言われてもぼくはこれを選びませんけど。でも、悪い出来ではないんですよ意外と……)とかの娯楽色の強い作品のほうが顧みられてないのかなとか思う。

 あらすじ;

 晩年のゲルホーン氏がどアップで、フロリダ州キーウェストのバーで初めてヘミングウェイと出会ったときのこと、スペインで再会し戦場へ帯同取材したときのこと、ヨリス・イヴェンス監督ドキュメンタリー映画『スペインの大地』を製作し発表したときのこと、キューバヘミングウェイと共に過ごした日々のこと、かれをキューバに残しフィンランドの戦場を取材したときのこと、キューバへ帰り荒れ放題となった家でプロポーズされたときのこと、中国へ取材がてら新婚旅行したときのこと、WW2下・キューバでのUボート発見をまかされた右翼活動に仲間といそしむ彼に愛想をつかして古巣新聞社に現地取材の戦争特派員をねがいでたときのこと、WW2下ヨーロッパへ単独潜入したときのことを語る。

 観てみた感想;

 主人公のゲルホーン氏やヘミングウェイ氏の伝記的事実をまったく知らないにもかかわらず、作中の虚実について話す……という、映画オタクがよくやる愚かな雑語りをするぞ~。

 『ヘミングウェイ&ゲルホーン』は、『ライトスタッフ』や『ミネソタ大強盗団』のような非物語的な生っぽさ・妙な力強さ・雑味はほとんどない、劇映画らしい劇映画なのですが、逆に――昨今の実在人物を題材にした映画や「実話をもとに」映画からすれば不思議なくらい――語り手が明確に設定された「お話」らしさを打ち出していて。そうして語られた回想は、対比変奏のしっかり利いた映像詩となっていて、2時間33分すらすら観られました。

(ただ、ドキュメンタリー映画『スペインの大地』が完成して、ヘミングウェイの夫婦関係もひとつの終わりをむかえる90分あたり。ここでテンションはふんわりしますが、お話し的にそこで一段落ついて作り手としても意図的にチェンジペースしてるものだと思うので、意図的なそれを難点に挙げるのは酷というもの)

 

 映写機の光

 ヘミングウェイ邸の私設映写室やアメリカ都市部の編集室にあるその光は、これらがどれも光線のように強く長く伸び、そこにいるものを分断する境界線となっていて面白かったです。

(部屋の外で光線をちょくせつ見られないときの映写機の光もナカナカで。

 映画内映画を上映中のヘミングウェイ邸私室に面する室内窓や外窓は、まるで雷の空みたく明滅する)

 フロリダ州キーウェストヘミングウェイ邸でひらかれたスペイン内戦へのコミットを呼びかける会でのシーンを例に取り上げると……

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0:11:23のショットでは、ヘミングウェイ二番目の夫人ポーリンモリー・パーカー演じる、暗いショートカットで黒地の服を着て腕組みしている女性)に誘導され部屋にはいったばかりのゲルホーンニコール・キッドマン演じる金髪白シャツの女性)からすると、スペイン内戦にコミット中の活動家(作家ジョン・ドス・パソスやドキュメンタリ監督ヨリス・イヴェンスなど)は、映写機の光線のむこうでぼんやり見える存在です。

0:14:46ヘミングウェイ入室で上映中断・ふつうの室内灯にきりかえた談笑をはさんだのち、再度スペイン内戦コミットを呼びかける段にもどったときは、内戦参加者から勧誘をうけるゲルホーンはスクリーン近くに立ち映写機の光を浴び、
0:15:10ポーリンと一緒に部屋をあとにするヘミングウェイは、光線をはさんだ逆サイドにいたりします。
(画面の引用はここではしませんでしたが、ヘミングウェイがゲルホーンを、ゲルホーンがヘミングウェイをチラ見する二人のバストショットは、ヘミングウェイ側だけ映写機の光線が入って、距離感が強調されていたりと面白い)

 さてスペイン内戦の戦場にきたヘミングウェイとゲルホーンは、ロバート・キャパ(今作では彼一人だけが登場し、ゲルダ・タローの姿は存在しない)れ落ちる兵士』が撮られたその現場に居合わせます。崩れた兵士にヘミングウェイは走り寄り、われわれには聞こえない会話を交わして、こときれた彼にかわって遺品の銃を手にとり丘上の戦場へと駆けていく。

 スペインから帰ってきたふたりは編集室でイヴェンス監督ペインの大地』のアフレコに挑む。オーソン・ウェルズと喧嘩をし彼を帰したヘミングウェイはみずからナレーションを担当する。スペインの戦場をとらえた映像を反射させたガラスの室内壁のむこうにモノローグするヘミングウェイ

 録音室の暗がりに置かれたフィルムにはカットされた本当の英雄の姿があり、『スペインの大地』からの削除について異議をとなえる別の人物ドス・パソスもあらわれる。しかし、ヘミングウェイらの態度をみて、パソスもまたウェルズ同様去っていく――映写機の光を越えて、光のむこうへ。

 『スペインの大地』試写会のステージ袖でふたりは情事にふけったり、キューバの屋外バーのダンサーたちの楽屋裏で情事にふけったり、中国へ取材がてら新婚旅行したりすることとなるが、結局仲たがいをして。

 そしてゲルホーンが今度は看護師団の行列にまじってWW2の戦場へと歩みを進める。場面にはゲルホーンがWW2の模様をつたえるナレーションが重ねられる。WW2の戦場をとらえた実像(戦時記録映像フッテージ?)を反射させたガラスの船窓のむこうに彼女の姿。電信室で口述するゲルホーンとは裏腹に、おなじくヨーロッパに来たヘミングウェイはタイプせず飲んだくれ、現地の美女とねんごろになり、助手席に美女をのせて車を走らせ――そして対向車の眩いライトに照らされて、白い光のなかへと消えていく。

 

 タイプライターを打つ棚や卓上に酒瓶や傘に飾り紐のついたライトスタンドを置き、ヘミングウェイやゲルホーンが打鍵するとそれらがプルプルと震えるようになっていて、この辺の手つきに、スティーブン・スピルバーグ監督ンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』で有線電話のコードをブルンブルン振動させたり、電話の置いてある机にやっぱり傘に飾り紐のついたライトスタンドを置き、ぶるぶるカタカタ震わせていたことを思い出しました。

スピルバーグ関係でいえば、ヘミングウェイ邸の映画内映画上映中の部屋と面する窓の明滅具合に、『宇宙戦争』の地下室の窓が思い浮かんだりもした)

 『ヘミングウェイ&ゲルホーン』の執筆がもたらす振動は、直後にある壁を叩いて大声をあげるヘミングウェイの激や、部屋ごとを揺らす砲撃の震動とくらべれば微々たるものなのですが、しかし確かに存在している。

 スペイン内戦の取材へ列車でむかう道中の夜、居眠りする隣席の青年に寄りかかられいびきをかかれたゲルホーンはみずからの衣服を手で引っ張り上げ耳をふさぐんですけど、ヘミングウェイと同棲したキューバでは、終日ひびく彼のタイプライターの打鍵音にまくらを折って寄せじぶんの耳をふさぐこととなり……

 ……なんて具合に、こまかな身振りも反復変奏され、つらつら眺めていられました。

 

 

0101(金)

 宿直明け日。

 ■社交■

  あけましておめでとうございます

 今年もよろしくお願いいたします。

 

 ■観たもの■

  スパイク・ジョーンズ監督『her/世界でひとつの彼女』再鑑賞メモ

 それは何ですか;

 スパイク・ジョーンズ監督・脚本による2013年公開の至近未来SF映画です。再鑑賞。

 観てみた感想;

 「前監督作いじゅうたちのいるところ』出世作ルコヴィッチの穴』も精神道場みたいな映画だよなぁ」

 とか、

「精神的成長みたいなものを主軸に置いてしまうと、"倫理的に・社会的に良い"とされる立ち振る舞いってそれなりに限定されてしまうから、長編には向かないんじゃないか?」

 とか、ここのところなんだか疲れているので、

「いや感動的なんですけど、おれはマラソン大会の最後尾の選手を拍手で迎えたくて映画を観てるんだっけ?」

 なんてとげとげしい疑問も思ってしまったりもするのですが(苦笑)

 作劇は豊富なロケーションハンティング・美術とCGIによってキッチリかっちり構築され充実していて、やっぱりよくできた傑作だ~とも思うわけです。

 

〔1/29追記;以下については、別記事『『君の名は。』への評がいかに快挙か;訳文と感想(ネットで読めるグレッグ・イーガン氏の映画・創作観)』にて、小項で加筆修正したものを載せています{ハイテクAIサマンサのアプリの販売所が磯崎新さんの設計した証大ヒマラヤセンター(撮影された場所は『Pen Online』青野尚子さん「驚異の上海建築2-磯崎新」がわかりやすい)で。ハーバード大卒の女性とのデート場所は、上海・楊浦区にある3GATTI Architecture Studio設計のZebarであると書いたりしました。それらの知見はJESSICA ELLICOTT氏の論考China, Hollywood and Spike Jonze’s Her』がとても参考になりました。そこからさらにネットやら紙やらいくつか記事に当たってそれぞれの建築家の意図を拾ってきたり)}追記オワリ〕

 トゥーンレンダリング(というか最近の海外映画のイメージボード的に)シンプルなデフォルメの利いた画調の洞窟をすすんんださきで出会った異星人と対話をかさねる劇中3Dホログラムゲーム{=※直截に言えばノ旅ビト』('11)を思わせる。こういうアートワークと雰囲気のアドベンチャーゲームのはしりがどれだか無知だから分からないですが、『風ノ旅ビト』を受けてのものだったらフットワークすごく軽い映画だなと思います。}が出てきたと思ったら、その後に女性とのデートの現場で要素だけ見れば洞窟じみたレストラン(実景。オシャレで清潔感があり現代的)が出てきたり……と、撮影前に練ってなければ出来ないだろう連関がアレコレあります。

www.youtube.com

 

 「話が面倒くさくなってきたな」と思ったところは手持ちらしいブレのある構図で撮られていて、こういうところがカッチリしているんですよね。

 

 そんなカッチリの境地が足音の演出で。

「嘘みたい。あんなくだらないケンカで、8年の夫婦生活が終わっちゃうなんて。

 一緒に帰ってきて途端に言われた、"靴をドアの脇に置け"って。

 彼はそこに置くのが好きなんだけど、私は靴の置き場なんかで指図されたくなかった。それよりソファで少し休みたかったのよ」

   スパイク・ジョーンズ監督『her/世界でひとつの彼女』0:54:00~エイミーのセリフより(伊藤美穂氏翻訳による吹替版)(太字強調は引用者による)

 元カノ夫婦は帰宅時の靴のことでケンカし別れるのですが、主人公トゥオンブリーとAIのサマンサが大きくケンカする場面を見てみると、こちらも靴音がノイズとしてひびいている。

 中盤、トゥオンブリーとAIのサマンサが、サマンサが秘密裏に話をすすめていた協力者を仲介することでもっと物理的なセックスをこころみる場面。訪問者がドアを叩く音がけたたましく響き(1:15:14)トゥオンブリーがラッパ飲みし終わった酒瓶を置く音も甲高く響き(1:15:20)、ドアを開閉する音も大きく響く(1:15:57、1:16:03)。ここでは(サマンサにより行動を操作され、じしんもサマンサを模倣する)協力者が歩くたび、室内の床板をハイヒールがつよく鳴らし(1:16:55~)ソファに座らされたトゥオンブリのまえに協力者が立つとき、ハイヒールが脱ぎ捨てられ床に大きな音をそれぞれ立てます(1:17:06,08)

 終盤、サマンサがトゥオンブリーの呼びかけに応えず、遅れて返事をしてくれたと思ったらサマンサが自分を置いていろいろ進んでいることが彼女から明かされて驚かされる場面。こちらでは、地下につづく階段で立ち往生・しゃがみこんでしまうトゥオンブリーの耳に、雑踏の足音がおおきく響きます(「アップデートのために私たちは一時停止していたの、"私たち"というのはOSグループよ」との旨を言われた1:44:20~、「以前いっしょに会ったシンクタンクのグループとは違うグループよ」と言われた1:44:34~で、足音は一段と大きくなっていきます)

 

 

 ■観たもの■インターネット徘徊■

  vtuberにじさんじ『【#にじさんじ煩悩】除夜の鐘でみんなの煩悩108個をはらう【にじさんじ/リゼ・ヘルエスタ】』アーカイブ視聴しました

youtu.be

  いちから社の運営するvtuber団体にじさんじに所属するヘルエスタ皇国第二皇女系vtuberリゼ・ヘルエスタ皇女と学級委員系vtuber月ノ美兎委員長が今年2020年の108の煩悩をふりはらう配信をしていたのでアーカイブ視聴しました。

 何度かコラボ配信をしているふたりらしく息の合ったトーク回しで楽しく観られました。

 にじさんじマリカ杯にむけて練習をしようと思ったがついついえっちな画像を開いてしまってそちらに時間を食われてしまって経験が積めてないことをナチュラルに告白されていた、にじさんじがほこる性欲の塊vtube鈴鹿詩子さんが、この配信でも案の定煩悩まみれの絵馬を出し、それをリゼさん委員長がお祓いするとき

 スタッフの操作ミスで、絵馬じゃなくて「鈴鹿詩子」の文字だけが消えるという事態になった時、「煩悩の権化消えたぞw ゼロなんだ煩悩消えたら詩子さんってw」「そうですね絵馬が消えるかと思ったら……」「煩悩が人型をなしていただけの……w」と即座にリアクションしたり。

 これまた邪念のおおい神様系vtubeフミ様が絵馬を寄せたときは、「とんだ邪神ですね」と即答したり

 にじさんじライバー+スタッフ+αの煩悩絵馬の面白さを、リゼさん委員長のトークがより楽しく読んでくれていたなぁと思います。

 

 別軸で面白かったのはシスター・クレアさんとのやりとり。

クレア「誘ったりするときに、"いやっ私が誘ってもちょっと申し訳ないから……"と」

月ノ「クレアさ~ん(笑)」

リゼ「いやでも人に話しかけるときにそういうのが気になってエンター押せないみたいなの、ムッチャわかります!」

月ノ「そうね~たしかにね~。

   ロリータ服で町あるきましょう、クレアさん……」

クレア「ありがとうございます(笑)」

リゼ「あっ! それまでけっきょく今年は~? 達成…? あの、親知らず大丈夫ですか? その影響ですよねたぶん…」

月ノ「そうなんですよ~!」

クレア「ありがとうございます! 無事なおって……」

   Youtube、リゼ・ヘルエスタ -Lize Helesta-チャンネル『【#にじさんじ煩悩】除夜の鐘でみんなの煩悩108個をはらう【にじさんじ/リゼ・ヘルエスタ】』0:40:50~

 シスター・クレアさんがゲストとして悩みをお話されたときに出たこの話題、ご存知ないかたのために説明させていただきますと、クレアさんとエリー・コニファーさんがおこなっているじさんじ御茶会』配信に委員長が誘われた縁で、「オフの日に(委員長&クレア&エリーの)3人でロリータ服を買いにお出かけに行ってそれを着て街を歩き回ろう!」と余暇の予定が立てられたものの、クレアさんが親知らず抜歯手術の予後がわるくキャンセルされてしまった……という過去を受けてのものです。

 リゼさんは前々から委員長リスナーであることを仰っていたんですけど、ここでさらっと会話に入ってきたところに「リゼさんまじで委員長リスナーなんだなぁ……」とニヨニヨしみじみしてしまいました。

 

  vtuberにじさんじ『年またぎにじさんじ同時視聴しながら年越し配信!【にじさんじ/月ノ美兎/リゼ・ヘルエスタ】』アーカイブ視聴しました

youtu.be

 地上波のTVでもTOKYOMXで放送され、Youtubeでもミラー配信がなされた『【越し特番】年またぎにじさんじ!2020-2021~島﨑信長とレバガチャダイパン!?SP~』。それを月ノ美兎委員長リゼ・ヘルエスタ第二皇女が同時視聴配信をされていたのでアーカイブ視聴しました。

 去年の『年またぎにじさんじ』にひきつづき、声優の島﨑信長さんが出演されており、「信長さんの3Dモデルはポリゴン数が多いなぁ」「そうですねえ(笑)」とか、信長さんがいちから社謹製の3DCGモデルに本当になったさいは「ポリゴン数が減った(笑)」「そうですねえ(笑)」みたいなお話がなされていました。

 委員長とリゼさんは番組内でも出演シーンがあり、笹木咲さん社築さんと『桃太郎電鉄 ~昭和 平成 令和も定番!』をプレイ。カットされたところもかなり盛り上がったそうで、可能なことなら全長版が観てみたくなりました。

 

0102(土)

 年末の宿題をやってますが、ご飯を食べたら昼間がっつり寝てしまった。

 ■観たもの■

  アレックス・ガーランド監督『エクス・マキナ』鑑賞メモ

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「かれに見られてないと何が起こるか知りたくて」
 劇中IT億万長者ネイサンの別荘で暮らすアンドロイドのエヴァは自身の充電をおこなう誘導電流プレートの電気を逆流させることで、別荘のシステムをオーバーロードさせ、停電をおこします。
(ネイサンの会社で働く若手プログラマーのケイレブは、ネイサンに用意された部屋の監視カメラを偶然起動させたさい、エヴァが壁に手のひらをつけている姿を目撃しますが0:19:26、停電はその直後におきたのでした)
 そうして停電のおきた室内は、赤い非常灯が焚かれることとなります。
 別の日、非常灯が映画の画面を赤く染めるなか、エヴァはネイサンの会社でケイレブと秘密の会話をし{、ネイサンは信用ならない男であることや、停電の原因や、彼女が停電を起こした理由など(上で引用したセリフ)}、そしてふたりを隔てるガラスの壁に手のひらをつけます(0:53:27)

 エヴァやネイサンと会話していくうちに、心境に変化がおきたケイレブはある日、部屋に備え付けられたヒゲ剃りを分解し(1:14:16)自傷行為をします。
 赤い血を滴らせた手のひらで監視カメラをなで、画面を赤く染める。(そのさまを、ネイサンの別荘で暮らすメイドのキョウコが目撃する)
 こうした行為をしたとき既にケイレブはネイサンを信用ならない男と認識していて、かれが酒で寝ている(=かれに見られてない)時間帯に秘密の行動をとっています。

 ネイサンの別荘で暮らすメイドのキョウコは、アジア系の容姿のとおり、ネイサンやケイレブに寿司をふるまったりする。
 映画の中盤で赤い刺身に包丁をとおすさまがクローズアップされるキョウコもまた、映画の画面をとある赤で色づけ(1:31:17)、そして何かに手を当てる存在です。
 はたしてキョウコがどうやって赤をもたらしたか?
 はたしてネイサンの頬を右手で撫でて、じぶんのほうを向かせたキョウコ(1:31:03)の心境はどんなものだったのか?
 ……そこにエヴァが停電を起こした理由が、ケイレブが監視カメラをなでた偶然の行動が、ぼくのなかでこだましてならないのでした。

 

 そんな具合に舞台・役者の身振り・脚本までもがよく整理され文脈だてられた立派な映画なのですが……

 ……ガジェットや話題のハッタリの利かせかた・もっともらしさの確保については、ちょっと悩ましいところがあります。劇中IT長者ネイサンが話題にするポロックのドリップ・ペインティング、ネットの情報などから解析された性的嗜好などは、現代のポピュラーサイエンス本で扱われるようなトピックなのですが、セリフがふんわりしていてそちらへつながっていきそうでいかない。

ポロックの画については適当に見えて、フラクタクル構造を有していて、D値はどの作品も一定。その値はちょうど人間が心地よいと感じる複雑さだった……

www.nikkei-science.com

 ……というやつですね。

 後者についてはオギ・オーガス&サイ・ガダム著『性欲の科学』などが参考になる。

 劇中のセリフは、たとえばポロックについては

「そうポロック、ドリップ・ペインティングだ。彼は頭をからっぽにして、手が動くままに描いた。意図的でもランダムでもなく、その中間だった。オートマティック・アートというやつだ」0:48:50~

 と禅問答みたいに話題が振られます)

 若手SEについてネイサンは当初から馬鹿にしている調子があるしじっさい馬鹿にしているので、この辺の会話も「バカ(ケイレブ)にはわからないだろう」と意図的に会話のレベルを落としたというような人物造形的必然性があるのかもしれませんけど、まぁだからって頭のわるい会話に上映時間を割かれてもなぁというところは、たしかに無いわけではないよなぁなんて思いました。

{この辺は、はたして観客(であるぼく)がどこまで作り手の知識を信頼してよいか、信頼できるくらいどれくらい情報を示してくれるか……みたいな話になってきますね。(ジョゼ・パジーリャ監督ボコップ』('14)「作り手は確実に『ユーザー・イリュージョン』やら『ロボット兵士の戦争』やら押さえてるわ」という圧倒的信頼感って奇跡だったんだろうなぁとか思う)}

 

 ビデオの映像特典は観たことなかったのでそちらも観てみましたが……そんなに収穫はないかなぁ。

 記事にするにあたってググってみたら、美術監督をつとめたマーク・ディグビー氏が『de zeen』Marcus Fairs氏によるインタビューに答えていて、上階はノルウェーJuvet Landscape Hotelやその近くで建造中だった同建築家Jensen & Skodvin Architectsによる邸宅で撮影され、地下は英国パインウッドスタジオに建てられたセットだと云います。

(美術について、初期は巨大建築を見たり「安藤忠雄さんの作品を収めた素晴らしい本」を読んだりしつつ構想を膨らませていったそう。

マーカス・フェアーズ:では映画に使われた建築の出発点は何だったんでしょう? ノルウェーのロケーションから出てきたんですか、それとも巨大建築の本からインスピレーションされたんですか?

 Marcus Fairs: So what was your starting point for the architecture used in the film? Did it come out of the location in Norway or did you get out a big architecture book for inspiration?

マーク・ディグビー:まぁその組み合わせです。初期のデザインは、わたしたちが見てみて頭にピンときたアイデアを包括したもので、だからじっさい彫刻作品のギャラリーなんですよ。大邸宅で撮影しようと考えていたので、わたしたちは大空港の空間や大きなコンサート建築、大きな美術館をじっさい見ることから始めました。安藤忠雄の仕事が載せられた素晴らしい本を見ました。

 Mark Digby: Well it's a combination of things. Our initial design encompasses any ideas that hit our head when we look at it, so it is actually a gallery of sculptural pieces. Because we thought we were going to be filming in big mansions, we actually started off looking at big airport spaces, big concrete buildings, big museums. We looked at a fantastic book on Ando's work.

) 

 

  浦谷年良監督『「もののけ姫」はこうして生まれた。』鑑賞メモ

 それは何ですか;

 浦谷年良さん取材による『もののけ姫』制作舞台裏の6時間40分におよぶドキュメンタリです。

 読んでみた感想;

 ナレーションやインタビューがふんだんに盛り込まれたTV番組番組したドキュメンタリーなのですが、久々に全編きちんと観てやっぱり面白いなぁと思いました。

 もうひとりの主役といえる鈴木Pの面白さがなんとなくわかってきました。

 

 もちろん宮崎駿さんはすごいスタジオジブリで、膝をブルブルと貧乏ゆすりをしたり頭を抱えたりしながらとにかく鉛筆をうごかし、左手人差し指と中指のあいだに煙草をはさみながらも紙をパラパラしつづける宮崎駿さんの姿。……これは、パブリックイメージとしてかなり有名なのではないかと思います。

 『もののけ姫』の絵コンテを日々すこしずつ進め、ある時は次の展開をどうするかいくつも図を描いて検討し、ある時は描いたものを捨て……とする宮崎さんの苦悩はほんとうに興味深い。

 もうひとつ、時代劇の登場人物・武士と農民。その固定化されたイメージに問題があった。

「刀ぶら下げてチョンマゲ結った男を主人公にしただけで、もうやりたくないですね。なんにも精神的に新しいものが工夫できないんじゃないかって感じがね、自分にあって。じゃあ侍に従えている百姓を主人公にするってのもね、コレ180度ひっくり返しただけで……なんか、極右(? きょくう)と極端のちがいにどこがあんだって、違わないってね。そのくらいやっぱり……大したことじゃないんじゃないかっていう……思って。

 じゃあ何が作れんだって」

   ウォルト ディズニー スタジオ ホームエンターテイメント発売(ジブリがいっぱいコレクション)、浦谷年良監督『「もののけ姫」はこうして生まれた。』disc1・0:07:20~「第1章 紙の上のドラマ」企画と構想 遥かな道のりより 

浦谷年良(『もののけ姫』という一本の映画でとりあつかうには)問題がたくさん入りすぎてて、逆にハラハラしますね(笑)」

宮崎駿ようするに解決不能な問題ですよね。それを解決可能な問題に限定して、とりあえずその課題をクリアするってことで映画をつくってましたから。"それが映画の枠内だ"って思ってたけど。それをやると、現代にぼくらがぶつかってる問題とは拮抗しない、っていう結論が出ざるをえないから。解決可能な課題じゃない、解決不能な課題をつくるっていうね。ひひひ(笑) これは胃によくないですね(笑)

 解決可能(な課題)で映画をつくってるやつを見るとね、"能天気め"と思うと同時にうらやましいですよ」

   ウォルト ディズニー スタジオ ホームエンターテイメント発売(ジブリがいっぱいコレクション)、浦谷年良監督『「もののけ姫」はこうして生まれた。』disc1・0:42:54~「第1章 紙の上のドラマ」宮崎駿の創造回路 時代の風を読むより

 

 一方、鈴木敏夫Pは、このかたはこのかたでなんか異様だ。

 '96年10月21日。電通やメイジャーなど……ジブリスタジオ・徳間書店日本テレビはもちろん、映画上映にかかわる宣伝会社が一堂に会し、"□"字にならべた机をかこんだ宣伝会議(disc2・0:48:06)で、ひとり靴をぬいでパイプ椅子の上であぐらをかいてやはりブルッブルと貧乏ゆすりをしバッカスカ煙草を吸いまくり熱弁をふるう……今回見直して印象的だったのは、むしろこちらの姿なのでした。(スクショを取ったところみたく、鈴木Pだけ顔をあげて喋って、他の人は肩身せまそうに俯いたり……みたいな瞬間もあったり)

(あと、スタジオと言っても、机をたくさんならべて普段着のオタクたちがヘッドフォンをつけ鉛筆走らせているだけの普ッ通~の仕事場へ、日本刀を文字通り背負って現れたりする辺りも、なかなかインパクトがある)

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 大きな興行収入をねらうということは、多くの観客を獲得するということ以前の問題として、映画館の大きな・そして多くのスクリーンで流してもらわなければならない(=映画館主が1番スクリーンで流すに足る作品だと認めなければならない)。映画館にとっては、客の入らない映画を大きなスクリーンで流すわけにはいかない。さぁどうやって確保しようか? という話になる。

 絵コンテを読んだうえでどうやって売っていくか? {グロいシーンがあって既存のファミリー層にとって厳しいかもしれない。逆にぬるいジブリとして「しょせん漫画映画なんだ」として思ってる大人の観客をどう振り向かせるか? 「感情移入できるか?(難しいのでは?)」という声もあがった(男女ともに。「私みたいな若い女性層に感情移入できるか?」という旨の疑問も)}

メイジャー脇坂守一「”この映画はすごいんだ!"っていう――まぁ、ここにも書いてあることではあるんだけども――"ちがうんだ"っていうことを、"『(風の谷の)ナウシカ』から13年経ってどうなったのか?" っていうのをツカミとしては……」

 まずは超大作感を売り物にしようという意見に、鈴木さんは反発した!

メイジャー脇坂「……入り口としては間違ってないと思いますけどね」

鈴木敏夫「そこんところをね、一番聞きたいんですよね皆さんに。

 "本当にそうなのか?"

 なんでか? ぼくは明解に『狸(=平成狸合戦ぽんぽこのときにそれはやらなかった、"目をみはる映像スペクタクル!"っていうのはね――これは徳さん(=メイジャー取締役宣伝プロデューサー・徳山雅也さん)の案だった。

 それで、このときの方針は――ね?――ハリウッドとまともに勝負すべきではないっていう考え。もっとみじめなところでやっていこうと、そういう方針に立ってたんだよ。

(こくり)

 要するにね? "所詮なに言ったってアニメーションなんだ"、"漫画映画なんだ”。それでね? "いわゆるCGをつかった、お金をかけた――ね?――本格アクション映画のね? 勝負できるか!?"

 これで"これはトンマなタヌキの話なんです"っていう(笑)*1、そちらの路線に切り替えたんですよ。切り替えたっていうのか、そちらの路線を出したんですよ。

 だからぼくはこれは本当に大事な問題だと思う」

   ウォルト ディズニー スタジオ ホームエンターテイメント発売(ジブリがいっぱいコレクション)、浦谷年良監督『「もののけ姫」はこうして生まれた。』disc2・0:49:38~「第2章 生命が吹き込まれた!」宣伝作戦の始動より

 鈴木Pだけでなく、予告編制作会社や、広報を担当したさまざまな宣伝マンにも取材していて、こちらも興味ぶかかった。

 '96年10月12日、『もののけ姫』のTVCMが打たれました。

 これまでのジブリの予告編/CMでは、カットの多い他作品との差別化のため、良い1シーンをじっくり見せる……という方針だった。そこへ(鈴木氏が、ジブリでも何度も上映会をしたという『映像の世紀』の影響を受けて)30秒の尺へ矢継ぎ早に30カット、腕が飛ぶ暴力シーンで幕をあける……という「これまでのジブリとは違う作品だ」と印象づける広告を打ったんだとか。

予告篇製作ガル・エンタープライズ 板垣恵一ジブリマークで「ふっ」と安心してる瞬間に(久石氏の劇伴の)ダダンダンダダン♪でもう手が飛んじゃったほうが面白いなってその場で思いましたよね(笑)」

   ウォルト ディズニー スタジオ ホームエンターテイメント発売(ジブリがいっぱいコレクション)、浦谷年良監督『「もののけ姫」はこうして生まれた。』disc2・0:42:36~「第2章 生命が吹き込まれた!」宣伝作戦の始動より

 2時間に収める当初の想定から、シーン追加で15分ちかくはみ出たフィルムにも完成のメドがたち、’97年7月12日に公開されることとなった『もののけ姫』と同時期公開の映画は、同日にスト・ワールド/ジュラシック・パーク、8月にピード2』という大ヒット洋画続編。

ウィキペディアを見てみると『ジュラシックパーク』は配給収入83億円(興行収入128億円)、『スピード』は配収45億円(興収入70億円)、たいするジブリ作品は、宮崎駿前監督作『紅の豚』が配収28億円高畑勲監督『平成狸合戦ぽんぽこ』が26億円、近藤善文監督『耳をすませば』が18.5億円。配収が2倍3倍ちかい『ロスト・ワールド』や『スピード』を推すのがふつうだ}

 そこで広報はいくつか(ドキュメンタリで紹介されるのは大きく3つくらい)の戦略をとった……

  1. マス向けには、打倒『ロスト・ワールド』、日米決戦を打ち出した。{'97年3月10日制作発表記者会見・徳間康快ジュラシックパークのPart2、ロスト・ワールドが上映されますので――まったく――一騎打ちということになるだろうと思います」disc3・1:09:38~ 東宝宣伝部P矢部勝氏「日本人のなかのヒーローがやっぱり次から次へと消えていったなかで、この『もののけ姫』がね、たとえばそのこの夏ちょうど『ロストワールド』があったんで、"あの恐竜に姫が立ち向かうぞ!"っていうような構図は面白いんじゃないかと。日本人の意識をくすぐれるんじゃないかっていうことで日米決戦というのをぶち上げようと(ニヤリ)」1:13:42}
  2. 映画館主(年配が多い)向けには、新旧日本映画巨匠対決路線を打ち出した。('97年2月東宝宣伝キャラバンで鈴木P登壇・「宮崎駿が『七人の侍』に挑戦状をたたきつけた作品なんだ」とアピール1:14:35)
  3. 全国のTVへは、日本生命の協賛CMで愛と人間ドラマ路線をうちだした。{'97年4月~。電通の担当したCMの内容は、米良美一さん歌唱の主題歌をつかった、命の大切さを訴えるもの。「愛といのちの物語を大切にしたいとニッセイは思います。」disc3・1:21:54~}

鈴木P 「とにかくこの作品はね、"宮崎駿が念願の作品なんだ"と。”実はかれが一番好きな作品は、皆さんもご存知の!"……だいたい映画館主さんたちってあの60歳前後のかたが多いんですけどね、"あの『七人の侍』! みなさんご存知ですよね?"っつって。

"宮崎駿があの『七人の侍』に挑戦状をつきつけるね、作品なんです!"って。……なんてことを言ったらね、みなさんザワザワってするんです(笑)」

ウォルト ディズニー スタジオ ホームエンターテイメント発売(ジブリがいっぱいコレクション)、『「もののけ姫」はこうして生まれた。』disc3・1:14:53~「第3章 記録を超えた日」宣伝・興行大作戦/配収日本一を目指せ!より

 先述'96年10月の宣伝戦略会議では、「宣伝マンなので愛とかをどうしてもウリにしたくなる(笑)」という旨の自虐をふくんだお話とか、リュック・ベッソンオン』('94)のキャッチコピー「凶暴な純愛」若い女性社員複数名からも「よかったですよね~」という旨の笑顔で同意がなされる談笑的場面*2とかもあって、ニッセイCM路線はそれが活かされた感じだなぁと、なかなか興味深かったです。

 

 『「もののけ姫」はこうして生まれた。』は、アニメができあがるまでのだいたいが写されている、それはもちろん。

 宮崎駿(絵コンテ作成/原画直し/レイアウト直しetc)を中心として、原画(&レイアウト/作画打ち合わせ/社員候補の試験と宮崎さんからの講評)・動画・色彩(アナログ⇒デジタル/新人研修の習作と宮崎さんの講評)・撮影(/撮影効果)・CG・劇伴音楽・主題歌・SE・アフレコ・さらには制作進行も……と、アニメのスタッフクレジットに出てくる役職はだいたい網羅されているんじゃないかしらん。

 それと同時に、プロデューサーの仕事や、出来上がりつつある/出来上がった映画をどうやって映画館主に、観客に売り込むか……という、映画プロデューサーや映画配給会社、TV・各種メディア広報マン、フリーの広告コピーライター糸井重里氏)の活躍も写されていて。

 映画という興行についての幅広いドキュメンタリーになっているな~と再鑑賞して思いました。

 

 

0103(日)

 ようやく『PotC』3部作のBDボックスが見つかりました。去年の宿題はアップするなら今日だったんですけど、完成は遠いのであきらめました。

 ■blogのこと■

  何度言ったっていいのかもしれない

 高校時代からの友人S氏と電話をしました。blogの話になり死につつ、そこで現代オタクの二次創作/vtuberのファンアート文化をはなし、月ノ美兎委員長の話をすることとなりました

 委員長についてはこのblogのどの日記をクリックしても出てくるし、なんなら日記以外の記事でも触れています。はてはぼく、S氏と面と向かって会ったときに話をした気さえする

 日記以外の記事でvtuberの話題をだすことについて、「さすがにどんな話題でも自分の好きなトピックにつなげる害悪オタクすぎるよな……」「毎度毎度おなじ話をくりかえすウザいOBOGOP上司えらいひとみたいじゃない?」という客観視と自制心はありましたが。

 よくよくふりかえればこのblogはアクセス解析的にいえば検索エンジンでひっかかったページを踏んでくるかたが9割超なので、毎度毎度したって良いのかもしれないなぁなどと思いました。

 

 ■観たもの■

  生理的な反射を抑える人体改造的メイク;『メイキング・オブ・パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』(一部)鑑賞メモ

 観たい情報がどこかにあるのは分かっていたんですけど、3部作(+トリロジーBOX限定特典)のメイキングや映像特典はすべて見てるので「後半のほうにあったらヤだな~」「一部の映像特典はミニゲームやらなきゃいけないとか妙な作りだった気がするからそこにあったらマジでやだな~」と思ってたんですが、第一作のわかりやすい特典の分かりやすいチャプター名のところにあって良かったです。

 観たはずのメイキングを再び観て「え、そんなことやってたんだっけ!?」と驚き、やっぱりヴァービンスキー監督や『PotC』って異様な凝りようだったなとしみじみしてしまった。*3

結局は 歯が決め手なんだ

   ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン販売、『パイレーツ・オブ・カリビアン 呪われた海賊たち』2枚組blu-rayの特典ボーナスディスク所収『メイキング・オブ・『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』』0:21:04、「衣装とメイク」より。ゴア・ヴァービンスキー監督の言

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 『PotC呪われた海賊たち』監督のゴア・ヴァービンスキー氏やメイク監修のヴィー・ニール氏は、同作の2枚組Blu-rayエディションのボーナスディスク所収のメイキングにて、劇中荒くれ者の様相について意図やかれらへほどこした工夫をさまざま語ってくれています。

 荒廃具合をあらわすために、老若男女子役までプラスチックの入れ歯を用意し、そこへ絵筆をはしらせウェザリングをほどこしたり。黄ばんだ目や義眼を再現するため、白目まで覆うタイプのコンタクトレンズを用意したり……などなどは映画本編を見ているだけでもうかがい知れることでしょう。

 聞いて「そんなこだわりがあったの!」と驚く、映画だけ見ていても分かりにくい工夫として、(ほの暗い欲望をかかえた)主役のひとりバルボッサジェフリー・ラッシュ演)に瞳のハイライトを消すコンタクトを、そして海が日常すぎて陸にあがると逆に足がふらつく歴戦の海賊キャプテン・ジャック・スパロウ役のジョニー・デップ氏へは遮光機能のあるコンタクトレンズを用意したことをニール氏は語っています。

 照り返しの強い海上では常人なら反射的にまばたきが多くなるけど、海の男ならただの日常なのでまばたきしない――言われればなるほど当然の考察ですが、気づきにくいし現実の身体でどう達成すればよいかわからないイマジネーションを、特殊な装身具を用意することで現実に達成させてしまう。すげー!

 

 シリーズ第二作PotC デッドマンズ・チェスト』ラストの舞台が、じつはその島(廃村)の成り立ちとか廃れた理由とかまできちんと考えられた舞台だってことは(そしてそれを説明するシーンも撮ったが、テンポが悪くなるのでカットしたことは)覚えていたし、荒くれ者のウェザリングを歯や目といった細部まで凝ってることは覚えていたけど、こういうところはすっかり忘れてました。

 記憶をあらってみることで、過去の自分(の関心事)といまの自分のちがいに気づけて、「とくに成長らしい成長を実感できてないけど、意外と変わってるんだなぁ」と驚きました(……なんてことを、ちょっとまえの日記でも書いた気がするな)

 

 

0104(月)

 ■社会のこと■

  『シンエヴァ』『モンハン』有料配信やらんかなぁ?

 神奈川でもcovid-19感染者がまた増えてきたこともあって、年末から3次4次のへだたりあたりの周囲にそうした声が聞こえてきたのですが。職場にでてみれば、別部署の職員Aさんが大事をとって休んでいる(お客さんであるAさんの家族αさんの職場でcovid-19感染者が出た。αさん自身はPCR陰性だが、熱が出た日があったので。αさんは独立していて別地方で働いているが、Aさんとは新年のあいさつで実家へ里帰りしており……みたいな話がでてきた。

 緊急事態宣言やロックダウンがなされるかはわからないけど、新規感染者が年末の時点で4500人いって上り調子……というこんな状況では今月も来月も映画館いけないよなぁ、『シン・エヴァ』『モンハン』有料配信やってくれんかなぁ、という思いを強く持つ。

 

 

*1:ちなみに声は笑っているが顔は全然笑ってませんでした(現実の笑いなんてそんなものかもしれませんが……)

*2:いまとなっては貶められがちな『レオン』だけど、当時の観客(にちかい立場のひとびと)がどう思っていたか知られるということでも面白い。

*3:いやぼくが無知なだけで『PotC』にかぎらず、ハリウッドでは当たり前の技術・工夫なのかもしれないけど……。