すやすや眠るみたくすらすら書けたら

だらだらなのが悲しい現実。(更新目標;毎月曜)

日記;2020/08/18~08/24

表紙と名前が違うって? えーとねェ この本に載ってるマンガを描いたのは 実はあたしなんだよ …なぜって理由は言えないよ 書いちゃいけないことになってるんだよ。

   三和出版社刊(SANWA COMICS)、森山六花著『ひみつの少女性癖』表紙カバー袖、月之島カンナの言より

 日記です。2万2千字くらい。たまや~! 読書も・日記以外の記事を書くのもしっかり休んでしまいましたね……(シングルタスカーなので、vtuber配信視聴と読書はトレードオフなんよなぁ)。ぜったい9月までには終わらすぞ! にじ鯖夏祭り2020とか、京大付近に出現した謎かけ男などの記事を読んだ話とか、エロマンガの話とか。以下、18禁エロマンガの話題があります。下品でエグくイカくさい話がだめな人はご注意ください。

 ※言及したトピックについてネタバレした文章がつづきます。ご注意ください※

じっさいは8/25 2時ごろ投稿しました。

 

0818(火)

 ■そこつもの■

  マウス代わりにペンタブ

 マウスがこわれ、電気屋さんいくまでのあいだ、ペンタブレットでマウス代わりにし始めました。

 ……と書いたけど、じっさいにこわれたのはもっとまえで、先週土日の時点ではもうすでに現行のスタイルになっていた気がする。

 ドラッグの仕方がわからない(chromeやメモ帳など、ひらいているソフトによって変わる?)、よってウィンドウサイズをじぶんで好きな大きさに細かく変えられないなどの問題があり、複窓での作業ができなくなりました。死ぬほど面倒。

 

 

0819(水)

 予定では宿直日だったのが先週代わった関係でなくなりました。元気になってくれてよかった……。

 読書はすすまず……。

 ■ネット徘徊■

  雲の上の存在が案外じぶんと歳が近かったときのショック

 前島賢さんが82年生まれ(つまりまだ30代!)だと知ってショックを受けてしまった。89年生まれのぼくと7歳しか違わないのか。そしてぼくは早生まれで88年度のにんげんだから、小1のときに6年生だったひとが前島さんと同い年ということになる(のかな?)。勝手に伊藤計劃さんより少し下くらいの年齢だと思っていたので、「え、早熟の天才じゃん……」とふるえてしまった。 

 

 

0820(木)

 元気に過ごしました。

 

 

0821(金)

 

 ■ネット徘徊■

  vtuber『【#にじさんじ甲子園】にじさんじ甲子園 振り返り生放送【パワプロ2020】』リアタイ視聴しました。

youtu.be

 いちから社の運営するバーチャルyoutuber団体にじさんじの面々と天開司さんがひらいた『実況パワフルプロ野球2020』の栄冠ナイン育成チームによる試合『にじさんじ甲子園』。

 その振り返り配信がおこなわれたのでリアタイ視聴しました。

 本選や、予選リーグの振り返り配信『熱狂にじさんじ甲子園』は主催の舞元さんのチャンネルでおこなわれましたが、今回の全日の振り返り配信にかんしてはにじさんじ公式チャンネルで行われ、配信内容にもちがいがみられました。

 『熱狂にじさんじ甲子園』が、舞元さん天開さんという野球・パワプロ好きのふたりが試合内容を実際の試合映像をリピート再生しながらこまかく振り返る形式だったのにたいし。今回の振り返り配信は6監督が勢ぞろいし、リスナーさんたちから届いたファンアートを主題に振り返りトークをしたり、さらには選手として名前を貸してくれたライバーさんからの手紙が読み上げられる……などの談笑にちかいものになりました。

 前者の配信を面白く観たじぶんとしては、趣向がちがっていて「思ってたんと違う」という部分もなきにしもあらずだったんですけど、にじさんじ甲子園」らしさという意味ではこういう汲みかたはむしろ行われてしかるべきだとも思いました。こっちはこっちで面白かったです。

{でもおっさんたちが(という言い方はどうかと思うけど、うまい言い方が思い浮かばんので)、ガチ目線で野球について話してる振り返りも同じかそれ以上に聞きたいんスよ!

 言うてAI任せのゲームですから乱数のイタズラお遊びなんですよ。

 なんですけど、お遊びをお遊びと受け取りつつも受け取らずに『にじさんじ甲子園』をマジに手に汗握って熱く楽しく観られたのは、やっぱり舞元さん天開さんを筆頭として、深夜まで考え込んでたらしいでろーんしぃしぃだとかほかの配信者さんだとか――前年『Vtuber甲子園』の攻略ノートをガリガリ書き込んだ大空スバルくんとか――がガチ目で観たり明日の試合に向けて戦略を練っていた本気が見えたからなんすよ!}

 

 限定配信視聴を可能なプランに加入したメンバー限定の後半の配信は、6チームからベストナインを選出する会議配信。

 これだけのためにメンバー加入はだいぶアレな行為なんですけど(笑)、本戦3日間+準備期間+『パワプロ』製作会社コナミさんとの調整などもろもろを含めた感謝とすれば安いくらいではある。

 ベストナイン選出トークでは、各ポジションで実力者を複数人あげつつ、いろんな意味で目が離せなかった選手(野良猫・文野環さんなど)も話題にあげられて、にじさんじ甲子園らしさが出た配信だったなぁと思いました。

 

 

0822(土)

 寝たり起きたりして読書はすすみませんでした……。

 

 ■ネット徘徊■読みもの■

  セミになっちゃた『ぼんくら大学生体験の記録』を読んだ

xcloche.hateblo.jp

 京大落語研究会張出副部長をつとめたことのあるかたの、学部生時代の思い出記事を読みました。張出ってなに? いきなり興味を引く書き出しですね。くわしくはリンク先をたしかめてください。

(前に話題にしたときは、先方に通知いく面倒くささから懐かしの直リン防ぎのアドレス削りをやっていたけど、それはそれでめんどくさいから気にせず行きます……)

 

 以前、最近の東北大SF研を切り盛りしていた下村さんのSF半生記読んだときも言いましたが、個人史好きなんですよね~。

 24時間営業とか深夜3時まで開いていたりする新古書店を桃源郷として目を輝かせたり、あるいはいっしょに謎のポーズと謎のことばをキメ合う、ゼロ年代後半京大SF研の面々とか。

 はたまた過酷な合評会をおこないたくさんの退会者をだしたと云うゼロ年代あたりの京大ミステリ研とか。

 

 さて下村さんの記事について日記を書いたときにピックアップした大川一夫氏のblog記事には、秋の学園祭で一般来訪者にカレーとともに「犯人当て」ミステリを口頭で読み上げて挑戦する京大ミステリ研初期メンバーの奇態が紹介されていて……

年一回の京大の学園祭「11月祭」にカレー・ショップとして「アガ茶クリス亭」を出店し、一般客にカレー・ライスを振る舞うとともにここでも一般向けの「犯人当て」を行った。私達はそれほどまでに「犯人当て」が大好きであった。

   大川法律事務所掲載、大川一夫氏著『シャーロックホームズと京大ミステリ研の世界~綾辻行人氏らはいかにして生まれたか』5.(2)より

私達が「犯人当て」好きだったことは繰り返し述べた。ではどのような「犯人当て」であったのか。当時は今のようにパソコンも無ければ安いコピーも無い時代。犯人当ては、口頭で読み上げて行なった。それゆえ、自ずからその字数は限られ「ショートショート」クラスの短さでそれなりの作品を作らねばならなかったのである。

   大川法律事務所掲載、大川一夫氏著『シャーロックホームズと京大ミステリ研の世界~綾辻行人氏らはいかにして生まれたか』7.(1)より

 ……その一方で、げんざいの学園祭におけるミステリ研の催し物の落ち着きをしるした注釈のそっけなさに、ちょっとさびしさを感じていましたが。

 現代の京大まわりも、 へんな賑わいがあるんだなぁとニヤニヤしてしまいました。

 『ぼんくら大学生体験の記録』では、森見登美彦氏の小説でおなじみ韋駄天こたつ――それのモデルだろう京大学園祭の野外になんとなしにマジに現れる(れた)こたつの出自が語られるという、キャッチーなトピックが描かれています。

別blog『忘れないために書きます』さんの『夜は短し歩けよ乙女』感想で、こたつが実在するらしいことなどは知っていたんですけど、くわしい来歴までは知らんかったので興味深かったです)

 このかたの個人史が面白いのは、そんなこたつがタイトルにならないくらい、へんてこな話題がほかにもいっぱいあるということです。

 

 さて先述したとおり70年代の京大学園祭には、京大ミステリ研が来訪者に口頭で「犯人当て」を行なう奇習があったらしい(が、現ミステリ研だとそういう催しはおこなっていないらしい)。じゃあ現在の京大学園祭はといえば、来訪者は落研からストリート謎かけなるものをもちかけられるらしい。

ぼくがそのこたつに出会ったのは、大学祭で落語研究会の客寄せのために路上で「ストリート謎かけ」という催しをしていたときだった。「ストリート謎かけ」というのは5〜6人のチームで道ゆく人にお題をもらってその場でたちどころに解いてみせ(なかなか解答が出ないときは三味線をジャカジャカ鳴らして時間を稼ぐ)、感心してもらったところで屋内でやっている落研の寄席に誘導する……というちょっとばかし迂遠なアウトリーチ活動である。これはたしか「謎かけ男」に着想を得てはじめたのだった。

    セミになっちゃた『ぼんくら大学生体験の記録』元祖・韋駄天こたつ(ではない)より(太字強調は引用者による)

 ちょっと待って「謎かけ男」ってなに?

(略)夏休みのある日、大学の学生課から落研に苦情がきた。なんでも落研部員を名乗る人が百万遍交差点周辺の街や大学構内でナンパをして連絡先を聞き出そうとしてくるそうで、迷惑しているとのことであった。

 

その人物というのが、「俺は落研の部員なんだけど、お題くれたら謎かけするよ〜。なんか適当な単語言ってみてよ」というように、謎かけを口実にターゲットに近づき、しょうがないかと適当な単語を言ったが最後、「その心は! 〇〇でしょう〜」と鮮やかに解いてみせ、感心して心に隙ができている隙に連絡先を聞き出すという手口だそうである。

   セミになっちゃた『ぼんくら大学生体験の記録』謎かけ男の怪

 学園祭問わず、辻謎かけをしかける男が21世紀の京都にはいたそうな。なにそれこわい。

 

◆◆◆

 

 いつの日かなんかしら面白い話を思いついた暁にはきちんと具現化してブチ上げたい欲望をかかえるワナビとしては、リアリティを感じさせる書きぶりが勉強になりました。(いや嘘松とか言いたいわけではないです)

 ファンタジックなエピソードの数々には、さきのストリート謎かけであれば"仕掛ける"側をつよくみせる舞台裏の工夫が複数しるされていたり、謎かけ男であれば「学生課から苦情が」と記されていたり……と、地に足の着いた卑近さ舞台裏のメカニズムが併記されていて、これの有る無しが(ぼくにとって)、『ぼんくら大学生体験の記録』と、森見氏の筆による韋駄天こたつなどいくつかのエピソードとを分かつ点なのではないかと思う。

 

 大川氏の創成期京大ミス研ばなしから、現代に対するちょっぴりのさびしさを感じてしまうように、『ぼんくら大学生体験の記録』にもやっぱり、その後についての記述にさびしさを感じてしまう。

 落研というひょうひょうと自由なぼんくら大学生のミニマムな(に見える)世界も、大学の学生課から苦情の通達が舞い込み、改築にともなう部室の立ち退きなど、部室のそとの都合が押し寄せる――そして、そうした都合にしたがわなければならない――社会の一要素である。

 そうしたあれやこれやに、関東に住むぼくのような門外漢でさえ耳にしたことのある、立て看板や吉田寮の騒動といった(世間に荒波が立った)社会的におおきな話題を思い起こさざるをえない。

 

 いつの時代かに夢見られた京都の(一部学生周りの?)へんてこさというのは、段々と取っ払われているのかもしれない。

 けれど*1ゼロ年代のミステリ研のサークルBOXのドアをひらけば居合の刀を持ち込んで京極夏彦を読む挙動不審な会員がいたりするように、状況がかわったら、かわった状況のもとで生まれ育ち死ぬような、また新たなへんてこが湧いて出てくるのではないかなぁ……なんて、楽観も沸くような記事でした。

 

 

 ■ネット徘徊■

  vtuberにじさんじにじさんじ鯖夏祭り2020』リアタイ視聴しました

 いちから社の運営するバーチャルYoutuber団体にじさんじの面々が、『マインクラフト』の自社サーバで夏祭りをもよおす大規模コラボ配信をおこなっていたので観ました。

 数十人がいくつかのグループでそれぞれディスコードグループをつくって配信をしていたのですが、ぼくはメインで月ノ美兎委員長を観ました。

www.youtube.com

 委員長は「委員長」というディスコードグループをつくり、半ばソロ配信をされていました。委員長のディスコグループにはいってきたのはけっきょく同期の樋口楓(でろーん)さんだけで、コンビコラボ配信にちかいかたちでしたが、でろーんは夏祭り実行委員会委員でもあったので、1/4~1/3くらいはソロだったような印象です。

 

 夏祭りの実行委員は複数人いらっしゃった関係で、委員長のほかにも(夏祭り実行委員長・桜凛月さんと仲よしの)怪盗vtuberのルイスさんなど、ソロ配信とコラボ配信の中間を行き来するかたもそれなりにいらっしゃいました。

 なかでも異色だったのは、じしんの配信はせず、『マイクラにじさんじ鯖夏祭り』だけ参加した舞元さん。vtuberになるきっかけにもなった推し配信者・若菜さんのvtuberとしての引退配信を観るために、二窓プレイをされていた(らしい)……という裏事情があったのですが、神社の鳥居の前でひっそりと佇み地面を見つめるおじさんの姿には哀愁がただよい、また事前に「放置プレイをするので攻撃するなり何なり弄ってもらって大丈夫」というようなチャットを送ってたというお話からか、ほうぼうでかわいがられていて配信していないのに有数の存在感がありました。

(ぼくとしては町田ちまchangがためらいなくウリウリ肩をぶつけてきて、攻撃する元気な姿がおがめて嬉しかった)

 鳥居まえにたたずむ舞元さんを一瞥して

「これあれじゃんステーションバーじゃんwww」

 と評した委員長の表現力はやっぱり只者じゃないと思いました。

 

 ほかにも、花畑チャイカ&鷹宮リオンお嬢様コンビとの譲り合い協力で達成した面白スイカ割りとか、「Youtuberが縁日のくじ引きが検証するくだりやりたい!」「あ~……やりますかぁ!」とか、イブラヒムさんのまねをして小さな水路で釣りをした委員長が手に入れた熱帯魚を手にもって「熱帯魚って食べれんの?」と疑問を出した時にはムシャムシャ食べててでろーんが「ぇぇ……?」と困惑するくだりとか、面白いくだりもエモいくだりもいろいろあった。

 

 あと単純素朴に出し物がとてもすごかった! お化け屋敷とか射的とか競泳場とか、レッドストーン回路をつかったプログラミング的なものも組まれていただろうギミックが凝っていてすごかった。

 とくにおばけ屋敷は、『マイクラ』のシステムをつかって再現されたホラー映画でおなじみの演出がおもしろかったです。

 チェスト(アイテムを複数収納できるボックス。クリックすると収納されたアイテムを表示するウィンドウがポップアップする)をつかって恐怖映像が画面いっぱいに広がるブラウザクラッシャー的な演出だとか。

 そしてさらに畳みかけるように、チェストをクリックした瞬間に床がひらいて下に落ちる/上の階が暗いのに対して・落ちた下階は全面が溶岩……というコントラストでまたびっくりさせる。

 あるいは、窓(?)が床に絶対に設置されるよう仕掛けられた機構によって、暗い道を歩いていると突然ガラスが砕ける音が響くジャンプスケア的な演出がなされていたりとか。

 どれもホラー映画ではきらいな演出なんですけど、こんかいのおばけ屋敷「よく再現したなぁ~」と興奮しました。『ラヂオの時間』や『欽ちゃんの仮装大賞』の芸コマナンバーを観るさいの快さ。

 

 7割8割がた桜凛月さんの設計ということで、いやはやすげ~~。

 いやぁ、先日の『にじさんじ甲子園』とか『イーリス3Dライブ配信』とかもそうなんですけど、本当に、音頭をとってくれる技術・熱意のあるライバーさんのおかげで素敵なイベントを楽しむことができて良かったです。

 

 

   ▼バーチャル黒沢清にじさんじ鯖夏祭り2020)

 なかでも好きなのが、リゼ・ヘルエスタ皇女の配信での一幕(1:58:00~)ですね。閉会式がおわり神社を見ていたリゼさん達さんばかは、屋根のうえに人影をみつける。それは一期生あこがれの月ノ美兎委員長とその友達・樋口楓先輩の姿だった。絵になる光景をズームして見ていたが、友人アンジュ・とこが神社のなかに入り内装に感嘆していたのでそちらに向かう。神社から出ようとしたところ……上のツイートの状況。

 

 『マインクラフト』は――シンプルなグラフィックだからこそ? それともシンプルながらに細かく創発的に派生する化学現象や物理演算が効いてるからか、それとも物同士のインパクトやエフェクトに関する演出がいいのか――キャラが落下して地面にぶつかり、そして死んで所持品をまきちらすときに、なんともいえない物質感があって、素朴に怖いと思ったりする。

www.youtube.com

 おなじく夏祭りに参加されていた北小路ヒスイさんによる別視点2:23:17~のほうが、より"らしい"かもしれない。

「楽しかった~」「お手てつなぎしよう」とか絶景ポジションでなごやかな〆の振り返り配信をやっている後ろで、ひっそりと先輩ライバーが投身自殺している、という"おわかりいただけただろうか?"シーン。

 

   ▼実行委員あまみゃの職人感

「ゆかたぁ~~! 着てます!!」

 と喜色満面の声をあげてくれたとおり、委員長もさわやかな白と水色のゆかたを着ての配信でした。

「浴衣わたくし用意してなかったんですけど、あみゃみゃこころさんがわたくしに浴衣をくれまして!」

 ということで、実行委員のひとり天宮こころさんの気遣いで、推しのすてきな姿が拝めました。

 委員長もでろーんもじしんの配信枠をとじたあとも『マインクラフト』夏祭りをおかわりしていたようで、そこで天宮さんと対面する機会がありました。

 そこでの配信を聞くに、もともと天宮リスナーの86さんがつくってくれた薄い桃色の浴衣グラをもとに、あまみゃさんが浴衣の色調をかえつつさらに委員長の顔を乗せた……というかんじみたい。

 でろーんと一緒に委員長の周りをぐるぐるにじりにじり遊んでいたところで委員長のグラフィックを一瞥

「ここ髪割れちゃったんかな~どうすればよかったのかなぁコレ~? 首のところもさ~灰色にすればよかったんかな~?」

 と、自作した委員長の浴衣グラフィックの玉瑕を見つけ、自問自答8割ってかんじの呟きじみた相談をリスナーへする。しょ、職人……!!

 

   ▼「あみゃみゃ、散歩の時間だぞ」かえみととあまみゃの謎の交流

「あみゃみゃ、散歩の時間だぞ」

 まじめな天宮さんをよそに、かえみとは周囲に穴を掘ってじぶんで埋まり始める。そして天宮さんに、夏祭りの景品として手に入れた釣竿をわたしてくる。

 無言のメッセージにみごと応えて委員長へ釣竿をふるあまみゃ(パーフェクトコミュニケーション)

 ルアーを咥えて顔を上下に振り、次いでぴょんぴょんと跳びはねる委員長の芸コマ釣られ魚演技がひかりましたね。(光り物だけに)

 

 

0824(日)

 仕事休みで宿直日。

 ■ネット徘徊■

  【#にじ鯖夏祭り 後の打ち上げ】 雑談するよ!【にじさんじ/桜凛月】

youtu.be

 にじさんじ鯖夏祭りの立役者、桜凛月さんの振り返り配信がおこなわれていたので観ました。りつきんという愛称で知られるこの桜さんは、桜第一惑星からきた妖精というvtuberさんです。『マインクラフト』に長け、にじさんじサーバーの宙にうかぶキャトルミューティレーション中のUFOはりつきんの家。

 今回の夏祭り舞台の8割がたを設計・建築したというりつきん。イベント当日も、各地でおこる不慮の事故のサポートに大活躍でした。 

www.nicovideo.jp

(切り抜き動画ですが、りつきんの活躍がここにまとまっています)

 

「本音言うと、ことし夏祭りする予定じゃなかったっちゃ、実は。去年の夏祭りで最後にしようと思っとったっちゃ」

 振り返り配信でりつきんはそんな本音をこぼします。

「去年も去年でひとりでやっとったから……"楽しい"だけじゃなかった、っていうのがあったけん。"ちょっとわたし向いておらんのかもしれん"と思って。

 作るのとかはめっちゃ好きとよ、人を喜ばせるとか、いたずらすんのとか~めっちゃ好きっちゃけど~、じぶんの力量がなかったけん、"だいじょうぶかいな?" "やめとこうかいな?"と思っとっちゃけど~

 今年はね自粛期間もあったし、"いやぁ夏祭りもなかろう……"みたいな。

 だけん、特別に、"今年はがんばろうかな"って思ったっちゃ~ね

 外出できないような暗い昨今だからこそ逆に明るい話題を、こんなご時世だからこそバーチャルの世界で夏祭りを……そんな意向があったんですね。聖人かなにかか?

 

 去年のもよおしと、そのときの試行錯誤の思い出を語ったりつきんは、今年についてこう振り返ります。

「失敗してめっちゃ泣きそうやったもんね、今年はスゴイ感動で泣きそうやった。

 花火が打ちあがった瞬間、のどにガッと来て~」

 文字起こしするとちょっと味気なくなっちゃいますからリンク先飛んでいただきたい。生の声やらブレスやらが本当にこう、しみじみ~だったり、はずむようだったり……たしかな達成感をあじわっているんだろうな~というのがありあり伝わる内容で、聞いてるこっちがにっこにこしてしまうんですよ!

「今年はいろんなひとが助けてくれて~……建築もやし~。でろーんさんも、ニュイちゃんも、こころちゃんも一緒につくってもらって……わからんことあったら相談して~"どうしたらいいんかな?" "ああしたらいいんかな?"とか~」

 

 そのほかさまざまな振り返りをされていて、余韻に浸りました。夏祭り当日でも、花火があれだけ上がっているのに演算がなめらかであることにも感嘆の声が上がってましたが、ボートレース場なども処理がおもたくなる代物らしく、サーバー負荷にかんする相談とかを事前にあれこれされていたそうな。

 ありがとうにじ鯖祭り。ありがとうりつきんTV。。。

 

 

0824(月)

 宿直明け日。

 皇族以外のY染色体やら、MITメディアラボ助教の素朴な代理母談義やら、SF評論はSFか問題やら、ジャンプ連載作家による刑事事件にかんする出版社の謝罪文面問題やら、さまざまな方面でさまざまな角度のインターネットよい話がポップしており、白熱しているなぁとなりました。熱闘電子園。

 

 ■インターネット徘徊■

  寝取られだろ

 エッチな漫画にくわしい○○先生 「寝取りですね」じゃねーだろ寝取られだろどう考えてもふざけんなお前のようなやつがいるから悲しい事故がおきるんだ……と個人的なイライラや、「イラつきを抜きにしても、あきらかに受動態"られ"の展開なのに、なんで"り"なんだよおかしいだろ」というはともかく。(ムカついてもなくても変わらんじゃん!?)

 このへんの表記揺れ、どこかで統一されてほしいですよね。

{「ですよね」と言い切ってしまうのもアレだなぁ。

 寝取られモノって、叙述ミステリや作品内でジャンルが転換する作品と一緒で、そうだと知らずに(=身構えずに)読んだときがいちばん衝撃って大きくなるから、ある程度ぼやかされてた方が楽しい、というのもまたありますよね……むずかしいところです}

 

 さてNTRと聞いてどんなシチュエーションを思い浮かべますか?

 

 NTという略語は「寝取れ」の略だというのが個人的な理解でした。

(たぶんいまもこれが主流)

(2021/09/01追記;

note.com

 インターネット考古学者ちゆ12歳さんによる『「NTR」という言葉の発祥は、たぶん2001年7月18日』によれば、「NTR」という語の発祥はおそらく2001年7月18日、ジャンルとしてまだ「寝取られ」が定まっていなかった時代、"「彼女または片想いの娘が、他人とHしてしまう」ゲームや漫画について"まとめた個人サイト『寝部屋』のインターネット掲示板における議論らしい)

 耳にした当初こそ「受動態"られ""R"は省略の仕方がおかしくない? 誤解をまねかない?」と疑問に思っていたけど、慣れっておそろしいもので、次第に気にしなくなった略称です。

{「略奪(愛)」などということばを聞いたりするように、「寝取る」を使う必要はべつになさそうではある}

 

 さいきんでは、この直感的に理解しやすい表記をそのとおりに使っている層がいるっぽいんですよね。「寝取」をNTと。

 しかもこれは初心者がそう称しているのではなく、むしろ、ジャンルファンがそう言っていたりもしているらしい。

 

 なんでもBSSくがきにきだったのに)同様、寝取られジャンルの多様化・細分化によって、「寝取られ」をNTRRとあらわす流れがいくらかあるっぽいんですよ。(こういうキッチリ分けて略すひとにとっては「寝取らせ」はNTRSとなる模様)

 「寝取り」の表記は揺れていて、上で言ったように従来のNTRを当てはめるやりかた(旧来の認識とのカテゴリーミステイクを起こしやすいやりかたで、よろしくないと思う)もあれば、NT寝取、ということか? L・Rという違いで反対語っぽくて良い略称)という表記もあるそうな。

 

 

 ■18禁の話題■書き足してひとつの記事として独立化するかも?■

  エロマンガのご都合をすりぬけるナマヌルい風;森山六花『ひみつの少女性癖』を読む

表紙と名前が違うって? えーとねェ この本に載ってるマンガを描いたのは 実はあたしなんだよ …なぜって理由は言えないよ 書いちゃいけないことになってるんだよ。

   三和出版社刊(SANWA COMICS)、森山六花『ひみつの少女性癖』表紙カバー袖より

 森山六花みつの少女性癖』を読みました。

(ひとを選ぶ話題なので、感想を読むか否か選べるようにできたほうがよいだろうということでページ最下部に置いただけで、べつにこの日に読んだわけではありません)

 ぼくが手に取ったのはFANZA電子書籍版です。紙の本だとけっこう装丁がちがうっぽい。紙の本で読んだらどんな具合か、ちょっと気になりました。

 

 三和出版『コミックマショウ』やそれ以前は休刊となった茜新社『COMIC高』などでいくつか短編を載せていた作家で、城先輩。』がえろかったので再度読みたくて買いました。

   ▼距離があったり縮まったり;局部の距離感にみられる『田城先輩。』のえろさ

 水泳部のエースで容姿端麗、クールな見た目の高嶺の花というかんじの上級生、田城先輩。主人公である1年生の平水泳部員は、そんな彼女と偶然ふたりきりになり、初めて深い会話をする機会をえる。

 面とむかって対話するなかで主人公は、あこがれの先輩がじぶんのような下っ端部員の名前も知っていたこと、それだけでなくこちらのフォームの欠点を指摘してくれるくらいに自分を見てくれていたことを知る。

 幸運はそれだけではない、その場で指導してくれたりする気さくで優しい一面を持っていることなども身をもって知らされる。

 先輩は、おれに理想的なスイミング・フォームを文字どおり手取り足取りおしえてくれることに集中しすぎて、じぶんの胸がおれの背中に当たっていることに気づいていないらしい。

 感情がたかぶった主人公は、先輩のほうを向いて壁ドンをし、そのままの勢いで告白してしまう。

 シャワールームでのバッティングや、先輩による手取り足取りのフォーム指導などの不慮のボディタッチなど、遭遇や会話していく過程で不意におとずれたエロマンガ的な一幕も相まって、告白した主人公の股間は屹立しており、向かい合う先輩のへそにいまにも触れそうだ。しかし、寸でのところでふれないまま、一線を引いている。

 先輩はまんざらでもない様子だがしかし、

「でもわたし…」*2「こんなだよ…わたし…」「幻滅…するでしょ」*3

 と顔をくもらせながら、さきほどチラリと見た、水着の布のVライン全面にあるかのような剛毛を露わにし、じしんの醜い(と彼女がかんがえる)点を露わにした。うつむいた顔は羞恥というより自己嫌悪におちいっており、視線はかれから外れ、漠然と床を見ているようだ。

(もしかしたらかつて他の異性と良い雰囲気になったさい、ここについてドン引かれたことがあるのかもしれない。しかしそういった過去などは、この物語ではうかがい知ることができない)

「大丈夫です先輩ッ」

 田城先輩の肩をつかんで声を張り上げる主人公。ここではじめて男からのボディタッチがなされる。再度かれを見る田城先輩。

 問答のすえ先輩は体勢をくずして床に尻もちをつき、エロマンガ的においしい開脚を男に披露することになる。ふたたび男の局部を抜き撮りしたコマが挿入される。さきほどのへそすれすれのコマと違うのは、このコマが、田城先輩の主観ショットとしてえがかれていることだ。

「彼… すごいおちんちん…」*4

 男のセリフや態度をうけたことで田城先輩はかれに目を向け、かれの言がうそではない証拠を目の当たりにしたのだった。

 そこから一転、田城先輩は大胆になり、異性の水着を剥いてみたり、押し倒したりする――さきほど男が興奮のあまりやってみせたことを、あたかも反復するかのようでもある――

 田城先輩は床に尻もちをついた男のうえにまたがり、局部をあわせる。挿入を目的としたもの/その過程でうまれたものではなく、ボディコンタクト・ふれあいとしてのそれだ。

 序盤では男の熱情と理性とが天秤にかかった結果、後者が勝って、寸でのところで触れ合わなかった両性の局部が、この後半では、女の熱情と理性とが天秤にかかった結果、前者が勝ったのだ。そしてふたりは……みたいなおはなしです。

 エロマンガらしいエロマンガで夜のおかずにピッタリの作品なのですが、(抜き挿しするための、読者を煽情するためのものとしてだけでなく)男女の距離感の表現物・演出材として局部が描かれているようで、それがより一層のエロさをかもしています。

 局部を一方が一方にこすりつける、欲情の表現としてのそういう描写って結構あるんですけど{まじめな・お堅いヒロインが、完堕ちした姿として出てくるとか。{よしろん著『コーチング』*5など)}、『ひみつの少女性癖』他収録作にもチラホラあるような、こういう"ふれあい"って感じのものは、あんまり見ないような気がする。

(いやぼくはエロマンガの大先生ではありますが、これは「ワイは猿や……エロゴルファー猿や……!」という感じの哀しい性欲モンスターとしての大先生であって、表現にかんして分類分析しながら読んでいるわけではないから、全然ただしくない見解かもしれません)

 

   ▼描き下ろし部分のナマヌルいえろさ;赤裸々な楽屋裏話とつきぬける空のようなオマケ漫画

 読んでみてビックリ、だいぶへんてこな短編集になってました。

    ○脱線。好きなメタエロマンガ3作ざっと紹介

 実験的な作風のエロマンガって最近でもあれこれあって、たとえば以前話題にしたクジラックス先生や、あるいはこちらは話題にしたことがないたけのこ星人先生が有名でしょう。

 前者の先生なら、幼女レイプを通じてホモソーシャルな友人関係がえがかれるりともだち』

 後者の先生なら、仲睦まじい男女カップルのエロマンガ恋愛模様のはしばしにストーカー的な悪魔がちらつく前後編の大作ッカリしなきゃ ~わたしの楽園生活~』。ちょっと強引な彼氏のキュンとくる行動を、ヒロインの目線からながめた作品で、コマには少女マンガ的に花が咲いたりなんだりする。

 

女性によるポーンハブ上の検索上位には、読者の多くにとって嫌悪感を催させるものもある。女性に対する暴力を含むポルノの検索だ。女性による検索の優に25%は女性が被る苦痛や恥辱を強調した動画を求めてのものだ。「痛ましいアナル責め」や「公衆の面前での凌辱」や「極端に暴力的な輪姦」などだ。女性の5%は同意を伴わないセックス(「レイプ」や「強制された性交」)の動画を(同サイトでは禁止されているにもかかわらず)探している。そしてこれらすべての検索語の検索率は、男性に比べて女性のほうが2倍にも及ぶ。もし女性に対する性暴力をテーマにしたポルノがあれば、私のデータ分析は、それはほぼ常に女性に偏って好まれるであろうことを示している。

   光文社刊、セス・スティーヴンズ=ダヴィッドウィッツ著『誰もが嘘をついている~ビッグデータ分析が暴く人間のヤバい本性~』kindle版38%(位置No.4896中 1796)、「第4章 秘められた検索」多彩なる好みの世界より{※ただし、同項で次いでただし書きされているように、取扱い注意な情報です。「もちろんこうしたデータを受け入れるにあたっては常に、空想と現実生活の違いを忘れないことが重要だ。確かにポーンハブを訪れる数少ない女性のさらに一部はレイプものを探している(見つからないが)のは事実だ。しかし当然ながらこれは、女性が実生活でレイプ願望を抱いているということではないし、もちろんレイプの罪を軽くするものでもないポルノ関連データが教えているのは、時に人は、自分の身に起こってほしくないこと、人には決して言えないことを空想するということだ。」}

 

女性は支配的なアルファ・ヒーローが好きだが、今のロマンス小説には、ヒーローが超えてはいけない一線が存在するように思う。女性に暴力を振るったり、女性を心理的に虐待するようなヒーローは書けないのだ。しかし、1970~80年代のロマンス小説には、残酷なヒーローが登場するものも多い。道を踏み外したヒーローもいる。『炎と花』のヒーローは、冒頭のシーンで処女のヒロインを事実上、レイプする。そしてのちに、彼女を娼婦だと思っていたと弁解する。1982年にキャサリン・コールターが書いた『悪魔の抱擁(Devil'sEmbrace)』では、18歳のヒロイン、キャシー・ブロウガムがステキな青年と結婚式を挙げる直前に、34歳の貴族クレアがヒロインを誘拐し、縛り上げたうえで、荒々しくレイプする。そしてのちに、彼女はクレアのとりこになる。

(略)

 しかしロマンス小説の読者は、レイプ犯や人殺しのヒーローを望んではいないだろう。ストーリーの最初のほうで、ヒーローにちょっとした女性蔑視の言動があったり、ヒーローがまぬけだったりしても、彼らがヒロインに出会ってから変わることになるから、喜んで我慢するのだ(*29)。実際には、ヒーローが最初からアルファとして登場する小説は、全体の半分程度しかない。

   阪急コミュニケーションズ刊、オギ・オーガス&サイ・ガダム著『性欲の科学 なぜ男は「素人」に興奮し女は「男同士」に萌えるのか』kindle版35%(位置No.7009中 2361、2389)第5章より(*29は「Knight(2009)」とあり、『Passionate Ink: A Guide to Writing Erotic Romance』などを書いたロマンス作家アンジェラ・ナイト氏の論考を参考にしたものと思われる)

女性たちは、自分のロマンスのヒーローには、ココナツのようであってほしいと思っている。つまり、外側はハードで手強いが、中身はソフトで甘いということだ。だれもが甘い中身を味わえるというのではダメで、ヒロインだけが彼の殻を破れるというのがいいのだ。ヒーローがヒロインに優しさと思いやりを示してくれるのなら、ほかのみんなに対しては、どんなにこわもての支配者であってもかまわないというわけだ。

   オギ・オーガス&サイ・ガダム著『性欲の科学』kindle版35%(位置No.7009中 2407)第5章より

女性が男に犯されることを夢想するのはよくあることで(*15)、女性の学者たちも一般の女性たちも、こうした夢想に理解を示しながらも、戸惑い、不安を感じている(*16)。しかし、想像の世界で興奮するからといって、現実の世界にそれを望んでいるわけではないようだ。心理学者のメレディス・シバーズは「興奮するのと、認めるのは別ものだ」と主張する(*17)。実際には、多くの女性が、想像上のレイプはかなりのレベルの合意にもとづいていることを強調している。

   オギ・オーガス&サイ・ガダム著『性欲の科学』kindle版40%(位置No.7009中 2736)第6章より

16 Meana(2010).https://www.nytimes.com/2009/01/25/magazine/25desire-t.html?pagewanted=all

LeitenbergandHenning(1995).「女性の30%が『男のすべての要求に従わなければならない奴隷になった自分』を想像したことがあると答え、22%が『自分が男にひどい目にあわされた後に官能を覚えるセックス』を想像したことがあると答えた」

   オギ・オーガス&サイ・ガダム著『性欲の科学』kindle版92%(位置No.7009中 6403)第6章脚注16より

ファンフィクションサイトにも、さまざまなタイプの「合意のない」セックスを描いた作品が掲載されている。なかには、非常に暴力的だったり、女性の名誉を傷つけるようなセックスを描いたものもあり、そうした作品は、分類用のこんなタグがつけられるほど増えてきている。「虐待Abuse」、「暴力Violence」、「嗜虐的性行為BDSM」、「拷問Tort[ure]」、「恥辱Humil[iation]」。こうしたタグは、アダルトファンフィクション・ドットネットのハリー・ポッターものでは、セックスジャンル別人気ランキングのトップ10に名を連ねている(*20)。

   オギ・オーガス&サイ・ガダム著『性欲の科学』kindle版41%(位置No.7009中 2777)第6章より

エロマンガのいかにも女性蔑視的・男性(読者)本位におもえる強引な展開と、少女漫画のオレ様系彼氏ってじつは似てね?」

 セス・スティーブンズ=ダヴィッドウィッツ著もが嘘をついている~ビッグデーダ分析が暴く人間のヤバい本性~のポーンハブ検索ワード分析や、男性がこのんでアクセスするポルノや女性がこのんでアクセスするハーレクインロマンスやファンフィクションなどのロマンス小説の傾向をしらべたオギ・オーガス&サイ・ガダム著欲の科学』*6で、意外なことに女性でも(強姦など)じぶんたち女性を蔑視するような/性暴力的なシチュエーションを検索したり夢想したりするひとが少数派ながら存在するらしい……という知見や研究が記されていましたが。

 ……たけのこ星人先生の『シッカリしなきゃ』は、くしくもそうした知見に独力で到達し、そのうえで物語を練ってしまった、エロマンガと少女マンガとを重ね合わせた傑作です。

 ぼくが偏愛している虫と嘘つき』たけのこ星人先生の作品。

魔法の効力は、その行為者に依存する。魔法は、だれでもおなじようには使えない。天賦の才を持つ人間にしか使えない魔法もあれば、長年の研究によって魂を浄めた人間にしか使えない魔法もある。正しい心を持つ人間にしか使えない魔法もあれば、使う人間の善悪によって違うふうに作用したりもする。

 科学では、こういうことはまったく起きない。銅線のコイルに磁石を通せば、あなたがだれだろうと、あるいは心の善悪にかかわらず、電流が流れる。

   早川書房刊、『SFマガジン 2008年1月号』p.46、テッド・チャン著「科学と魔法はどう違うか」より

 (略)SFでは、宇宙の法則が個々の人間を識別することはない。宇宙はある人間を区別しないし、人間と機械を区別しない。ファンタジーでは、宇宙の法則は、人間の個性という概念を認識している。ほかの人間にとってだけではなく、宇宙自体にとって特別な個人が存在する。

早川書房刊、『SFマガジン 2008年1月号』p.47~48、テッド・チャン著「科学と魔法はどう違うか」より(略は引用者による)

  気弱なオタクに催眠術をしかけられる無口なヒロイン側の視点からその模様を追った変則恋愛……から、エロマンガの世界であればおなじみの理屈が{テッド・チャン(魔法やファンタジーとの違いを明確に区別している)SF観をおもわせるような、公平さと冷徹さで}猛威をふるう。エロマンガという不条理にふりまわされながらも、しかし、エロマンガという枠組みのなかで取りうる自由を発揮して見せるヒロインたちの姿がせつない……物語にあたまがいっぱいになって抜くヒマなんてない、そんな作品が『弱虫と嘘つき』です。

 

 雑誌掲載時からしてとんがってたこれらの作品群を読んだ雑誌読者は、作家個人の単行本についても「そういうものが載っている」と分かったうえで購入するでしょう。

     ○本題『ひみつの少女性癖』描き下ろしパートのへんてこさ

 でも森山六花先生は、雑誌掲載された短編自体にはそういう目に見えるかたちでとんがったところはありませんでした。なので、個人短編集として本にする段になってはじめて書き下ろされたこのたくらみを知らないひとは、結構いるかもしれません。

 ツイッターやカスタマーレビューやらを見たかんじ、楽しめそうなひとにはあんまり届いてなくて、逆に、ドン引いてしまうひとには届いてしまっている……そんなカテゴリーミステイクが起こっているようで、なんとも心苦しい。

 

 『ひみつの少女性癖』は34ページくらい描き下ろしがあり、10ページくらいは掌編の新作読み切りといううれしい本です。ただ、その描き下ろしは『田城先輩。』のエロさに吸い寄せられたぼくにとってギョッとするような内容でもありました。

 表紙をいちまいめくったカバーの袖には、(少年・少女漫画のコミックスでおなじみの)作者自画像+近況コメントが描かれている(。この著者近影の絵柄は、『ちびまる子ちゃんさくらももこ先生のデフォルメ絵くらいのシンプルさ)。けれど、その名は月之島カンナなる人物であり、「この本に載ってるマンガを描いたのは 実はあたしなんだよ」と言ってのける……そんなよくわからない一発をお見舞いするのが、紙の本版みたい。

 カバーの袖などは未収録の電子書籍版でもそのノリはある程度たもたれていて、本編のエロマンガへ入るまえに、やはり月之島カンナによる舞台裏ばなしが挿入されています。曰く、『ひみつの少女性癖』というタイトルは編集から決められたもので、表紙カラーイラストも不本意なものだ、ラフは書いたけど、清書も彩色もじぶん以外の人に任せたと。

 

 短編集として再録されたエロ漫画のまえには、本編とはあきらかに絵柄もノリもことなる扉絵が――なつかしい絵柄/デザイン(※)で描き直されたキャラクタたちを被写体にした扉絵が――先置きされていて。{「Count Down(任意の数字)」と、「★プールサイド・カプリチオ!の巻」などといった往年のマンガのサブタイトルみたいなものが付されています}

(※見た目になつかしいだけじゃなくって、骨格造形レベルで往年のトレンドにのっとっています。たとえば唇の位置ですよね。最近のキャラにありがちな、鼻と顎の先端とのまんなかに唇がくる骨格ではなく、鼻の下から1/3の高さに唇がくるビジュアルです。へたすれば口と鼻がくっつくレベルで隙間がなかった往年のクールなキャラの造形!)

 それをめくったさきの(綴じの関係でうまれる)余白的なページには、デフォルメされた月之島カンナ氏とともに、『告白懺悔室』と題された長いコラムが一作ごとに挿入されます。

 この『告白懺悔室』はなかなか身につまされる内容で、「こ、こんな赤裸々に感想戦をしてよろしいんですか……?」と恐々とします*7

・内容に関してだが、エロマンガだからといって、二人が付き合って何か月かになるのだから、そろそろ行為に及んで当然、という流れを、しかも登場キャラのセリフで説明までしてしてしまっているのは、相当安直な作り方だったと思える。それでも編集サイドからは、早く脱がせて本番シーンを描くようにと指示されたこともあり、私としてはそれに従ったものであった。

   三和出版社刊(SANWA COMICS)、森山六花『ひみつの少女性癖』FANZA電子書籍版p.8/210、付録①より

 のっけから男性向け成年誌におけるプロット上の制約と編集からの指示についてが論難され……

・それはそうとこのマンガのヒロイン、現在の私の絵柄からは考えられないほど胸が大きく描かれている。こうした表現は、必ずしも作者の好みであるとは限らず、マーチャンダイジング的というか、先に述べた「約束事」に類するものであると、強調しておきたい。

   三和出版社刊(SANWA COMICS)、森山六花『ひみつの少女性癖』FANZA電子書籍版p.34/210、付録②より

 ……つぎの作品についてでは、キャラクタの造形について自己批判がなされます。

それまでの作品に対する編集サイドの評価から、いよいよ進退を迫られる時期に至っていたので、所謂「テコ入れ」として、登場キャラの造形面にまで幾つかの指示を受けたものであった。
   三和出版社刊(SANWA COMICS)、森山六花『ひみつの少女性癖』FANZA電子書籍版p.84/210、付録④より

 ぼくの好きな『田城先輩。』でさえ、こういう具合につらいお話がなされていきます。

 さて『田城先輩。』の姉妹作として、登場人物をおなじくするばさどきどき。』という作品も発表されています。

 先述作のエピソードの最初と最後にでてくるのがつばさというキャラなんですね。主人公とメインヒロインである田城先輩が情事にふけっているところへ、主人公の同級生であるつばさが偶然にも居合わせてしまい、それを陰で見てへたりこんで赤面し、ぬれた自身の局部を抑えて「どうしよう……」と心のなかでつぶやく……クリフハンガー的な落ちで『田城先輩。』は〆めくくられています。

 『つばさどきどき。』はそのつばさがヒロインをつとめた作品。

 『田城先輩。』と対になるような作品で、こちらの作品のオチは主人公とつばさが情事にふけっているところへ田城先輩が偶然にも居合わせてしまい、へたりこんで赤面したところ、物音でふたりに気づかれてしまう。田城先輩はおもらしをしながら「先生に言うから」と声を張り上げるというものです。

 

 これらを読んだぼくは、

「なるほどダブルヒロインで、最初2編でそれぞれの魅力を書き、3作目で3Pになる流れだな」

「それはそれとして、1作目とつじつまがあわない展開があれこれあって、どうやらパラレルワールドらしいけど、これはどうしてなんだろう?」

 というような感想をいだいてましたが、三作目が発表される機会はついぞおとずれませんでした。

 なぜなのか?
 告白懺悔室を読んだところ、雑誌掲載当時に思った疑問にたいする直截なこたえが載っていました。

一方のストーリー設定に関してだが、それに関して私が当時、どのような思考に至ったのか。今となってはまさしく愚かしいと言うほかに適当な表現が思い浮かばないのだが、かの『めぞん一刻』のような三角関係のラブコメディー的な構図を、こともあろうにエロマンガに持ち込もうと考えたのである。このような設定は、二名のヒロインに対して男性キャラクターが「優柔不断」な態度を貫いてこそ成立する者であるのに対し、エロマンガとはせいぜい二十ページ前後の尺に所謂セックスシーンを必ず盛り込まねばならない。故にゆるゆるとした「三角関係」など成立し得るはずもなく、基本設定の時点で構造的な、そして致命的な欠陥を抱えていた
   三和出版社刊(SANWA COMICS)、森山六花『ひみつの少女性癖』FANZA電子書籍版p.84/210、付録④より

(略)ここまで私のエロマンガ作品に帰された評価というものに対し直接的な言及はさけてきたものであるが、ここから先は多少辛辣な叙述が含まれるので、ご覚悟を願いたい。
・この作品は本来製作する構想がなかったのであるが、編集サイドより「前作品のサブヒロインをメインに据えてもう一本」との指示を受けたもので、はたしてそれをどのような作品内容とすべきか、しばしの間、考え込んでしまったものである。それというのも、指示内容通りに製作した場合、前作で一方のヒロインと関係を持った男性キャラを、もう一方のヒロインとも関係を持たせねばならなかったからである。
   三和出版社刊(SANWA COMICS)、森山六花『ひみつの少女性癖』FANZA電子書籍版p.110/210、付録⑤より

 連作となったのはたんにシリーズ物をもとめた編集の要請によるもので、その2作がパラレルワールドとなったのは、月之島氏の創作観・作家的な倫理観と編集の意向とがせめぎあった結果によるものだった。

 そして3作目が登場しなかったのは……

これまで何度か言及してきた「掲載されるための作品作り」とでもいうべきものが、この時点で破綻し始めていたと考えることもできるだろう。ただ、結果のみに着目するならば、この作品が、当該雑誌における私の最終掲載作品となったということである。初回から最終回に至るまで、編集サイドからの所謂ダメ出しを受けることはあっても、読者からの直接的なフィードバックを、筆者が被ることはついぞなかったのである。

   三和出版社刊(SANWA COMICS)、森山六花『ひみつの少女性癖』FANZA電子書籍版p.34/210、付録⑤より

 ……市場原理によるものだった、と。

 

 『COMIC高』編集者からの評価も、そして読者からの評価も見えないなかで、月之島氏のエロマンガという枠組みへの違和感は、よりいっそう強いものとなっていったようです。

 6作目ふろせっくす!』は、別の出版社・雑誌三和出版『コミックマショウ』)から発表された作品ですが、もともと全年齢向けだった作品を、出版社側から用意されたプロットでもって描きなおしたものだそうで、後半のセックスシーンは原作にはなかったものなのだという。

 その一方で、「前作までの製作体制の解体」*8に着手してもいたそうで、絵柄は(ぼくが森山先生のファンとなった)『田城先輩。』~『つばさどきどき。』とは違ってそれ以前のやわらかなキャラデザインやボディバランス(過度にバストが大きかったり腰がくびれていたりしない)、写実的すぎないトーンワークに近いものへと戻されていてます。

 

 思いかえせば『つばさどきどき。』のヒロインつばさの造形も、田城先輩にくらべてかなりピーキーなルックスでした。同級生というには幼く、ボーイッシュといえば聞こえがよいけど、『爆走兄弟レッツ&ゴー』などコロコロコミックの少年キャラクター的なバタ臭さがにおう姿でした。

 

 7作目mellow yellow』は、三和出版『ドS女子が絶対にセックスで逆転されない世界vol.1』掲載作で、単行本収録の最新の絵柄にちかいビジュアルやストーリーになっています。

 メインヒロインの髪型は往年のアイドル(たとえば中森明菜氏など)のロングヘアやら、サブヒロインは桂正和影少女』の側頭部にうずまきが描かれたヘアスタイル的なものやらを思わせるもので、男女の交流については、掲載作で要請されたものだろうスタイルどおりにドSな女キャラによる(収録作でもひときわハードな)濡れ場が描かれますが――しかし、セックス自体はおこなわれません。

……このマンガ 流行りの絵とはちがうけど それまで描いたのに比べると意外と評判は悪くなくってね
出版社からはこの絵柄で次も というオーダーがあったんだ…

けどそれはこんな生ぬるいエロ描写ではなくて もっとハードで乱暴なセックスシーンを描く という内容に限るということだったんだ

(略)

…この絵というのは わたしにとってはちょっと普通の絵と違ってね
今さら言っても遅いけどナマヌルイ表現とはいえR18で使ってしまったのは正直今でもどうかとおもうぶぶんがあるし とてもそんなハードなエロを描くことはできないと思った

   三和出版社刊(SANWA COMICS)、森山六花『ひみつの少女性癖』FANZA電子書籍版p.168/210、第1コマより

それで結局その仕事は断って同時にエロマンガの仕事自体もやめた(略)
絵の方もより解剖学的にスーパーリアリスティックに そして実写と見紛うような とにかくそういうものが尊ばれる世界なんだ

今回トビラ絵でいろんな絵を描いたでしょ
ああいう感じの絵って本来はNGなんだよ ナマヌルすぎてね
あれを描いたらエロマンガ業界じゃ仕事は次から来なくなる
(略)
だからこんなページ描いたって本当は何の実利もないんだよ
本のセールスポイントにもならないし原稿料はない
けど一応わたしがどういうことを考えてこれまでの仕事をしてきたのか伝えておきたくてね…
この本はそのために出したようなものなんだよ

   三和出版社刊(SANWA COMICS)、森山六花『ひみつの少女性癖』FANZA電子書籍版p.168/210、第2コマより

 エロ漫画の巻末によくある、お友達のエロ漫画家からの寄稿イラストが寄せられたりする「ゲストコーナー」には、業界の友人がいなかったと云うことばどおり、だれからの寄稿もなく、代わりにこの本に登場したヒロインたち{の、作家の現在の絵柄(80~90年代の往年のラブコメ的な絵柄)で描かれた別人ともいうべきキャラたち}がゲストとして訪れ、エロマンガ本編に対するツッコミをしていきます。

「フタマタ男は嫌い」

「そのコとあたしとどっちが大切なのってカンジですよね…」

「女湯に男子がいたらワタシ投書しちゃいますよぉ」

 などなど。

 『mellow yellow』の後のページには、これまた漫画本にはよくある、作画や脚本、登場人物についてのクレジットページがを載せられています。

 たぶん紙の本だと、ここで終了なんじゃないでしょうか。

 

 

えー
それでは前置きはこのぐらいにしまして

こころがほのぼのする紙芝居をはじめたいと思います
   三和出版社刊(SANWA COMICS)、森山六花『ひみつの少女性癖』FANZA電子書籍版p.200/210、第1コマより

  電子書籍版では、このあと月之島カンナ氏が再登場して、女K』という作品が掲載されています。(紙の本だとこの部分は別冊付録になってるのかなぁ?)

 これは『mellow yellow』と登場人物・設定をおなじくするパラレルワールド的作品で、その意味では『田城先輩。』&『つばさどきどき。』のような連作が先行してあったわけですけど、そこまでの作品とはかなりようすの異なる作品です。

 『my』と異なるヒロインと懇ろになるわけでもなければ(申し訳程度に濡れ場に参加したサブヒロイン2人はいっさい行為に加わりませんし)、さらに言えば、そもそもメインヒロイン・カンナさえもに濡れ場がありません

 

 『my』でヒロインが少年に対しどうしてああも攻めるまでに想いを募らせていったのか? 『少女K』では、『my』で描かれなかった男女二人のであい(偶然のバッティング)で生まれた因縁や、それ以降、運動会本番に向けて黙々と練習をつつける少年を、カンナが陰からじっと見つめる日々がしるされていきます。

 『少女K』に登場するシャワーシーンは、『田城先輩。』シリーズと違って、陰から見て局部が濡れたりなんて展開へはまったく行きません。乳首や局部はえがかれず、代わりに細かく描かれるのは、膝小僧にできた傷です。

 冒頭で少年とバッティングしたために負い、そして少年から絆創膏をもらったひざの傷……これがそれなりに癒えつつもなおも痕として残っているさまです。

 今作におけるシャワーシーンは、エロマンガ読者のためのサービスシーンではありません。劇中の少年との出会いでできた膝小僧の傷に、シャワーをあびている主人公カンナが目をむけるための(=かれをカンナがどれだけ想い続けているかを視覚的に表したアクションを引き出すための)物語的な舞台装置なのです。

 ひざ小僧をみおろすカンナは、そのまま、校庭で自主練をする少年を校舎の上階から見下ろすカンナの姿とかさなっていきます。

 バッティング以降身体接触はおろか、会話もない。遠くから見つめるだけの日々。

 ロッカーに二人で入って密着したり、シャワールームに二人で密着したり……といった、それまでの月之島氏の筆によるエロマンガで起こったような天の采配は、この『少女K』については起こりません。

 

 ……『my』が最初の1ページ数コマですませた導入部分。これを丹念にえがいてみせたのが、『少女K』というオマケ掌編なのでした。

 『my』とおなじく少年は運動会で微妙な成績をのこしますが、それに対してカンナがするのは『my』のインモラルさとは対照的な、往年のラブコメの一ページというようなふるまいで、つまり、エロマンガの基準からすればナマヌルイどころのさわぎではないものでした。

エッ
いや…ホラわたしってこういうカオじゃん

だから巻末でこういうのをやるのはおやくそくかななんてさァ……

   三和出版社刊(SANWA COMICS)、森山六花『ひみつの少女性癖』FANZA電子書籍版p.200/210、第2コマより

 この記事でもちらっと言ったとおり(漫画本ではがっつり明示されているとおり)、月之島カンナとは、『my』と『少女K』のヒロイン・カンナです。

 たしかに月之島氏のいうとおり、単行本での書き下ろしとして後日談なり何なり数ページのおまけ漫画がつくケースは、エロマンガではそれなりに見かける様式です。……たしかにおやくそくといわれたら、そうなのかもしれない。

 『ひみつの少女性癖』は、エロマンガのお約束にのっとったオマケ漫画によって、エロマンガという形式を逆手に取ることで、エロマンガのヒロイン――と言い張る、くだんのエロマンガと絵柄もデザインも異なるキャラクター――が自分の正史をみずから語りなおしてしまう……という、とってもへんてこな漫画なのでした。

 べつに月之島カンナが漫画家であるとか劇創作者だ~というような描写はエロマンガ本編にはまったくなくて、さらに言えば彼女が往年のマンガ好きだ~みたいな設定だってうかがえません。その意味ではこのメタ構造は悪い意味でへんてこです。いびつだ正直。

 月之島氏が非成年誌の分野でご活躍できるかどうかはぼくにはよくわからない。『少女K』は、面白いしほほえましいけど、他愛もないドラマに思えもする。

 エロマンガとしてはナマヌルすぎるかもしれない。でも、「じゃあ一般紙に載っていたらどうか?」といえば――ラッキースケベなりトロフィーワイフ何なりが批判される昨今です――もしかすると『少女K』の最後のあの展開ですら、よろしくないとする声もあがるやもしれません。

 また、10ページ程度の尺ゆえでしょう、この作品でも冒頭のエロマンガに対してなされた懺悔とおなじく、駆け足に説明的なナレーションで済まされた部分がありもする。とんでもない大傑作というわけではない気がする。

 でも青春ってへんてこなものじゃないですか。伏線なんてない、いびつな、よくわからない衝動に動かされるものではないですか。そしてまた、他愛もないドラマが展開されにくいのが、エロマンガというものではないでしょうか。

 

 ハードでリアリスティックでそれでいてよくわからん制約があるエロマンガの世界の隙間を縫うようになぜだか吹けてしまった、『少女K』というナマヌルいそよ風が好きです。こういうラブコメがもっと読みたい。

*1:以下の楽観はたぶん、『ぼんくら大学生体験の記録』をお書きになったかたの実感とはことなるだろうけど。

*2:三和出版社刊(SANWA COMICS)、森山六花『ひみつの少女性癖』FANZA電子書籍版p.93/210、「田城先輩。」より

*3:三和出版社刊(SANWA COMICS)、森山六花『ひみつの少女性癖』FANZA電子書籍版p.94/210、「田城先輩。」より

*4:三和出版社刊(SANWA COMICS)、森山六花『ひみつの少女性癖』FANZA電子書籍版p.96/210、「田城先輩。」より

*5:ワニマガジン社刊(WANI MAGAZINE SPECIAL COMICS)、よしろん著『トラワレBOX』fanza電子書籍版p.80/194第3コマ、「コーチング」

*6:『性欲の科学』についても感想のこしておきたいですね。

 脱線すると、よく調べられた面白い本なんだけど(たとえば、大きい胸がセックスアピールとしてどの文化圏でも好まれる一方で、小さい胸もそれはそれで性的な需要があり、たとえば日本では「貧乳」として親しまれている。『らき☆すた泉こなたや『かんなぎ』ナギ様などの貧乳キャラクターは人気だ……みたいな話が出て来たりする)、よく調べられているがゆえに、「いやソレちがうんじゃね?」みたいなモヤモヤするポイントもくっきりしてしまうんですよね。

 アクセス比率のちがいをもとに「性欲の消費物として男はポルノ映像を、女はロマンス小説を求める傾向にある」という二項対立がかかげられているけれど、これってどうなんだろう? とか。オーガス&ガダムが固有化する「女性の、性的なコンテンツへの楽しみかた」は、ぼくの目には、「萌える」という男女問わず行われる作品受容とかなり重なる部分があるように思えてなりませんでした。

 さきに取り上げた『らき☆すた』こなた人気などは、性的な対象というよりもそうした「萌え」の対象という面もけっこう大きいのではないかと思うし。

 また、ロマンス小説でおなじみのヒーロー像として、この日記の本文で引用したような「ココナツ」男性が出てくるわけなんですが……これってようするに「ツンデレ」じゃない? みたいな疑問がぼくにはあります。

*7:ただ、森山氏の成年向けの活動は商業だけでなく同人分野にもおよんでいるっぽく、そちらの活動時期や内容を考えるに、はたしてこの本の記述を鵜呑みにしていいものかどうか? よくわからないところがあります。

*8:三和出版社刊(SANWA COMICS)、森山六花『ひみつの少女性癖』FANZA電子書籍版p.136/210、付録⑥より