すやすや眠るみたくすらすら書けたら

だらだらなのが悲しい現実。(更新目標;毎月曜)

 トランスジェンダー関連へのはてなブコメの補足②などあれこれ。

 年末にこういう記事を書きましたが(児童の性移行処置、そこまで不安になるほどのボリュームじゃなくね?/トランス不安記事、Yahoo!ジャパン「エキスパート」の大学にポストある人の記事でさえ脱トランス者の処置年齢ひくく誤記したり成年時の処置をぼかして書いてたりと扇動的だよという話)……

zzz-zzzz.hatenablog.com

 ……「いまのところ分かってる機序とかも盛り込んだもっとちゃんとした記事を書かなきゃなぁ」と思っているうちにまた、よくない記事・盛り上がりがでてきましたね。

「性は自由に選べる」「男女の性差はすべて社会的・文化的に構築される」というトランスジェンダー論は間違っている! | 文春オンライン

文春3月号読了。自著『ヒトの原点を考える』で紹介したSry遺伝子の働きの多寡と分界条床核の有意差のうち前者を取上げ,それにより性自認性的指向へ「曖昧さ」「連続性「中間系」が生じる…てのが本文。抜粋適当すぎ

2024/02/09 21:11

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 長谷川眞理子先生の最近の著書ではジェンダー関係についておおむね、

「ヒトのオスメスは大枠は二つだけど、ヒト以外でみれば雌雄同体などもいるし、性転換する種もいるし、またヒトの性自認性的指向などについては二分法で割り切れるものではなく、(おもに出産前後の)男性ホルモン・女性ホルモンの分泌量の多寡(SRY遺伝子の機能具合)や受容体の受け取りかた・それを受けて外的な成長ができるかどうか(性器が外的に成型できるか否かとか)などによって多様性が出るよ。

(↑ここまで『文藝春秋2024年3月号』コラムとか、『モノ申す人類学』とか『オスとメス=進化の不思議(ちくま文庫新装版)』。

 ↓ここから『ヒトの原点を考える』)

 "ホルモンバランスが性的指向性自認を……"とだけ言うと"同性愛者とトランスジェンダーはおなじなの?"という疑問が出そうだけど、それぞれ別の器質がたしかめられはじめていて、たとえば分界条床核は、オスメスで有意なサイズ差(体積差)がある性中枢だけど、男性から女性へと性移行したひと(=Man to Famele,トランス女性)のそれをくらべてみたところ、女性を好きな男性(=ヘテロ男性)や男性を好きな男性(=ゲイ男性)よりも、女性のそれに体積が近かった(『ヒトの原点を考える』での参照元表記はなかった気がする。たとえば『日本臨牀 62巻 2号』新井康允「中枢の性分化‐女の脳・男の脳‐」)よ」

 というようなお話をされておりまして、『文藝春秋』本誌掲載版全文はもちろん上リンクさきの『文春オンライン』抄出版でもまぁいちおうそういうノリですね。

 ただこの抄出版では、本誌では一言も出ていないKADOKAWAの出版中止騒動に触れたり、後半部分の省略をつよくしたりしたせいか、正反対の見解を長谷川先生が言っているととらえた読者が、はてなブックマークやYahoo!ジャパンコメント欄で見受けられる

 こういうのよくないっすよ。

(本編とことなる受け取り方をした人を責めてるととらえられそうな書き方だな。そういうひとについては抄出がわるいせいだからそこはまぁある程度しょうがないって感じです。

 釣りを「釣りです!」と宣言せずにふんわり適当に終わらせて偏見を拡散してる文春オンライン記事担当者のやり口がよくないってお話ですね)

 

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 さて『文藝春秋』当該号は、芥川賞受賞作が載っているわ、伊藤計劃生誕50周年を題材にした円城塔さんによるお参り記事は載っているわ(ほんとうにお参りって感じの内容で、「没後n年いま明かされる衝撃の真実――」とかはない)、小川哲さんの「『文藝春秋』からAI論を依頼された小説家」考は載っているわで買ってよかったですね。

 

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[連載終了告知]春の翌日 - 灰田よしひろ | 少年ジャンプ+

不穏な盛り上がりの震源は作者𝕏らしいのだけれど、既に鍵垢だから後追い者にはなにがなにやら。

2024/02/19 14:02

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 連載終了のお知らせに対してなんだか不穏なコメントがはてなブックマークや𝕏で見られます。野次馬したところ、どうにも作者が𝕏で原稿料にかんするトラブルをポストしていたらしく、それを受けての盛り上がりらしかった。

 作者はすでに鍵垢となっており、盛り上がっている第三者のコメントを漁ったところで実際の呟きをスクショしたり引用したりしてソースを提示したものは見当たりません。

 第三者のコメントの内容も「未払い」と言っているひともいれば「支払い遅滞」と言っているひともいて、そのポストが今回されたものなのか過去にされたものなのか一回なのか複数回なのかさえバラバラ。伝言ゲームが始まっている感があります。

少年ジャンプ+インディーズ連載枠!!

「漫画版なろう(ジャンプインディーズ)上位作品に、各頁5千円+0~1.5万(3日間PVで変動)を払うよ」て仕組だったのか。面白い/好きな作品は(非インディーズ枠でも?)3日内にちゃんと読むようにしないとなぁ。

2024/02/19 11:11

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 この盛り上がりで初めて知ったのですが『少年ジャンプ+』のインディーズ掲載枠って、

集英社が運営している漫画投稿掲載SNS『ジャンプルーキー!』(=ようするに漫画版『小説家になろう』)の人気作を『ジャンプ+』へ掲載するよ、それにあたって一ページ当り5,000円+0~15,000円(三日間PV数で変動)を支払うよ」

 という、ギャラ付きの出張掲載枠だったんですね。

 もし支払い遅滞があったとして、はたしてそれが支払日がバラバラ・予告通りになされない個別の問題だったのか、それとも〆日支払日のラグによる企業的慣例(的問題)あるいはPV数集計反映タイミングによるシステム(的問題)がうまく作家へ伝わっていなかったのか……こちらからはまるでわかりませんけど、どれであれ、問題の有無について公表してほしいなぁと思います。

フェアトレード印のコーヒーを飲みたいという心理的な問題)

 

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ビデオゲームにとってストーリーテリングとはなにか?――『A Mind Forever Voyaging: A History of Storytelling in Video Games』- Dylan Holmes - 最後の短篇企鵝の剥製

🐧氏による梗概+原著で話題的取扱年代的に漏れたモノを🐧が適宜広げ深め掬う脚注の2段記事。/"リセットボタン押す他ない誤選択(死等)は没入阻害"って価値観の(『ヘビーレイン』と異る)解がループ物?と読んで思いました

2024/02/19 08:20

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 作家で批評家で面白ブロガーの千葉集さんによる未訳本紹介記事(4万字)。

 未訳のビデオゲーム論の詳細な梗概と、原著(2012)じゃ話題的・取扱年代的に漏れたトピックや作品を千葉氏が適宜ひろげ深め掬う脚注とによる二段構成で、非常に興味ぶかかった。

 

 とくに「へぇ~!」と思ったのはキャラの死/ゲームオーバーにたいする扱いかたがひとつの関心事になっていること。この梗概を読むに、

(アーケードゲーの昔から今もある)即死大量死/ゲームオーバーによりシステムリセット&リトライを何度も押さなきゃいけない形式は没入感を損ねるよね」

 という問題に対して……

  1. プレイヤーキャラ(視点人物)が死なないようにしたゲームとか、
  2. プレイアブルなメインキャラが(どのようにプレイしても)途中で死んでそのままになる/それを軸にした物語展開がなされるゲームとかがあり、そしてさらには、
  3. 複人をプレイヤーキャラクターとしてザッピングし動かす群像劇構成だけど、プレイ次第で各人死ぬという一見「誤選択」っぽいものでもゲームオーバーにならず、それを反映したまま物語が続いてそのまま最後まで成立するゲーム

 ……も出てきたよ、といった具合に検討・発展がなされていくそうな。

 この梗概を読んで、

「第四の壁を露呈する瞬間を減らしたり、プレイヤーキャラとプレイヤーとの連続性を保ったりする(前述③のゲームみたいな「分岐をめっちゃ頑張って実装する」という方向性の解決以外の)もう一つの解が、タイムループ物の『Outer Wilds』(2019)とか"リトライをゲーム世界内現実にする"作品群なのかな?」

 と思ったり。

 

***

 

 Holmes氏の論考/千葉氏の梗概ではストーリーとナラティブについて……

・用語の説明「(本書において)物語(story)とはプレイヤーの介入する前から存在した予定されたりしていた出来事の連続として参照される。ナラティブ(Narrative) とは、最終的な成果物(end products)、ゲームの特定の形式内で展開される一連の出来事の現前として参照される」

 ……と説明され、これはゲーム関係の著書訳書をあれこれ出している美学者の松永伸司さんによれば……

 ……とのことで、

「このへんzzz_zzzzもよくわかってねぇんだよな。じぶんが読む・書くときもカタカナルビで補足してったほうが良いのかな……」

 と反省しました。あとで弊blogの英検3級記事群も見直さねばなぁ。

zzz-zzzz.hatenablog.com

 ナラティブとストーリーだけじゃなく、うちのblogで勝手に訳して紹介したジェンキンズ氏の論考でも出てきたプロットとストーリー周りもzzz_zzzzは混乱・混同してしまって、いまだによくわからなくなってしまう(し、わかってない)

{(12:45付記)以下は逆に混乱がふえてる文章}

 何となくプロットを筋道=骨組み、ストーリーを物語=もっと肉のついたものってイメージしてしまうのだけど、たぶん逆なんだよな。

 シア・フォルマリズムの批評家は、プロット(ないしシュジェート)――クリステン・トンプソン言うところの「すべての因果関係が、その映画じしんが視聴覚情報として提示するとおりに構造化されたセット」――と、ストーリー(ないしファーブラ)――鑑賞者が心のなかで構築する、時系列順のできごと――とを有用に区別しています。(22)

 Russian formalist critics make a useful distinction between plot (or Syuzhet) which refers to, in Kristen Thompson's terms, "the structured set of all causal events as we see and hear them presented in the film itself," and story (or fabula), which refers to the viewer's mental construction of the chronology of those events.(22)

 陰謀の訳語でもあるとおりプロットはたぶん企みとか趣向の方向性(の、時事をいかに盛ったり入れ替えたりして肉付けして物語るか、その計画書)だと思ったほうが多分よくて、ストーリーはヒストリーなど歴史・年代記的の方向性(肉付けされてない、時系列記録)だと思ったほうが多分よいんだろうよな*1。この辺のあれを無理くりくくるならたぶん……

・プロット≒シュジェート≒ナラティブ≒ミメーシス、

・ストーリー≒ファーブラ≒ヒストリー≒ディエーゲーシス(ダイジェスト)

 ……みたいなグループ分けになるんでしょうかね? 逆に誤解・混乱が増えてる?

{(12:45付記)後述する孔田氏の論考をざっと読んだかんじ、以上のかんがえは誤解や混乱を増やしてるぞ!}

 

 勉強がたりない。もっと読まなきゃな~と上の記事のタイムスタンプ見てびっくり。もう3年前なの!?

 blogで最近話題にしたってイメージの伴名練短編集『なめらかな世界と、その敵』も、いまググってみたらこの夏で5周年ですって。

 伊藤計劃生誕50周年はそんなもんかなと思うけど、『なめ、敵』でもう5年なんだ……。マジっすか……。

 

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kakuyomu.jp

 murashit氏からコメント欄で孔田多紀さんの論考をおしえてもらいました。

 チラッとのぞいた感じ、多様な意味を紹介しつつその交通整理をされているコラムのようで、まさしく求めていた記事っぽい。murashit氏(ならびに執筆者の孔田氏)、ありがとうございます!

 

 また……

 松永氏のこのへんの連ツイを参考にするのもよさそうですね。

 

 

 

 

*1:そういや「ヒストリーはストーリー」みたいなお話がときどき識者から失笑を買っているけど、これってつまり「恣意的な何かって意味合いはもともと薄いものなのだ」みたいなお話なのかな?