日記です。日記なのですが、ルールは一度でも破っちゃダメですね……9月第1~2週と同じく、また日記でさえも遅れてしまいました。
1万3千字くらい。内輪ネタを複数観た週でした。
※言及したトピックについてネタバレした文章がつづきます。ご注意ください※
0929(火)
■ネット徘徊■書きものについて■
大江健三郎のエンタメぶり;オチを思いつく頭とそこにうまく至る経路を実装する手足が欲しい
シビれる語り口と〆で素晴らしかった。ノーベル文学賞受賞者・大江健三郎氏とタレント伊集院光氏のラジオにかんする、とあるかたによる視聴レポです。
文学って聞くとぼくなんかは尻込みしてしまったり、妙に肩肘張ったり、お勉強ってかんじで手に取ったりしちゃったりもして、まぁ実際ほんとにいわゆるエンタメとは違って快楽原則にのっとってない作品に出くわすこともままあったりするワケなんですが、
「どうお話を組み立てれば面白く感じるかなども分かったうえでアレコレやってるんだろうなぁ」というような対談内容でしたね。
「さいしょに出くわしたときは雑然と読み(聞き)流した部分が、最後まで聞いてみると実はほかとガッツリ結線された重要な部分だった(伏線だった)」
と分かるようなお話のすすめかたは、話にまとまりが出るし、受け手に一定の面白味を提供できる……という点でやっぱり強い。
このblogでも紹介したチャイナ・ミエヴィル氏のコラム『Skewing the Picture』 も、チャールズ・ストロス氏のコラム『Why I barely read SF these days』も。
あるいは話したことがないところだと、『kotoba』にて小川哲氏のリドリー・スコット監督『ブレードランナー』/P・K・ディック著『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』/伊藤計劃著『ハーモニー』について語ったコラムも、ぼくが面白いと思ったものは大体そういうところがありました。
そんなところからぼく自身の文章(感想記事とか)を振り返ってみると、面白い情報ではある(となるよう頑張ってはいる)けれど、(それ単体で)面白い話ではないですよね。この違いはかなり大きい。
……そして、こう並べていくと、ただオチてればいいんじゃなくて、オチを際立たせる手管もやっぱり必要じゃん? みたいな気分になってきますね……。
最初に挙げた大江氏のお話も、こういうお話だからこういう語り口になった~みたいな必然性を感じますし、そうした部分がこのお話をより一層おいしく感じるための味になってますしね。
「話がつまらない」と感じる要因を整理してみました。
— じゃじゃまる (@JajacircleS) 2020年9月28日
こうして見ると、①②あたりは聞き手のスキル次第で面白くなる可能性はあっても、③④が「キツいな~」と感じるパターンなのかなと思います。⑤⑥は話し手によってはキツいですが、掘れば何か出てくるかもという希望はまだ残されています。 pic.twitter.com/3MBr8cJwnr
この辺を参考にして、 訓練でどうにかなる部分についてはどうにか矯正していきたいなぁ。
まぁそうは言っても、訓練の結果オチを付けられるようになった(という自信をもった)ときは、それはそれで別の問題が生じそう。落とし方の引き出しがなくて、一本調子になっちゃうとか。
はたまた、オチをつけられない対象については話をしなくなるとか。
そもそも現状の問題への処方箋にはならないという根本的な欠点があります。オチがつけられようがつけられなかろうが、そもそも書けてないんですよね(とらぬ狸の皮算用!)
■ネット徘徊■
『【公式】『ポケットモンスター ソード・シールド エキスパンションパス』最新情報 2020.9.29』を観る
任天堂『ポケットモンスター ソード/シールド』の有料DLC第二弾「冠の雪原」などにかんする宣伝配信がなされたので観ました。
任天堂のゲーム本編宣伝映像はとても素晴らしい出来で、「この広報・編集班がゲーム本編の演出も担当してくれたら……」と思うことも少なくありません(笑)
(『命の灯火』にやられて『スマブラ』Switch買って本編プレイしたときの「思ってたんとちがう……」っぷりったら……。
別の方向で気持ちが盛り上がったから落胆はしなかったけど、『ゼルダの伝説 ブレス・オブ・ザ・ワイルド』のPVも、そこで想像したものと実際のゲーム本編でのムービーパートの使い方とにギャップを感じもした)
適切なメロディに対して適切な情報が配され、観ているこちらの気持ちを適切にノせてくれる手腕。これが今回のプロモ動画にも見られて満足しました。
▼松本理恵監督/BUMP歌『Gotcha!』の詰め込み具合について
この配信の最後に、BUMP OF CHICKENの『アカシア』を音楽にした松本理恵監督/ボンズ制作による短編動画『Gotcha!』も公開されました。
初見では情報を処理しきれなくてポカンとしてしまいました。
全部のシリーズは追えてないですけど、未プレイでもふつうに気持ちの良いカット構成でさすがだなぁとなりました。
有識者があれこれ開陳してくださっているとおり、無数のイースターエッグが盛り込まれており、噛めば噛むほど味が出る作品となっているみたいですね。
映像面の演出でも、ゴリッゴリの対比変奏が利いた、やっぱり噛めば噛むほど味が出る作品なのでした。
最初のサビの、
①「♪ゴールはきっとまだだけど」0:53~で初代~XYまでのチャンピオンが次々と出てくる流れ。①b2回目のサビの同メロディの末部「♪君の命が揺れる時」1:08~で瞳を2度通過するショット構成。
②「♪隣で(隣で)君のそばで」0:58~で主人公トレーナーとそのライバル・相棒的キャラが出てくる流れ(とくに「♪君のそばで」1:00~でフェードをつかって背中を向けた同キャラのBWから年かさを重ねたBW2への時間経過がえがかれる)と、
②b更に2回目のサビの同メロディ「♪誰より(近くで)特等席で」1:14~で、赤緑ライバルが持ちポケモンを周囲に囲んで腕を組み立つ姿。
③「♪魂がここだよって叫ぶ」1:03~の画面下に主人公トレーナー(後ろ姿)&手持ちポケモン(ゲッコウガ/御三家みずポケモン)・画面奥中央に球形の技をはなつ(球形のエフェクトは画面近方へ迫りゆく)モンスター(敵・ミュウツー/初代伝説)……という構図と、
③b更に2回目のサビの同メロディにあたる「♪僕も同じように息をしていたい」1:15~の画面左に新人トレーナー(金銀主人公)とそのパートナーポケモン(バンギラス)vs画面右に玄人トレーナー(赤緑主人公)とそのパートナーポケモン(カメックス/初代御三家みずポケモン)……という構図と、そこから続く画面右のトレーナーの脱帽。
上記が、3回目のサビで、
①’「♪どんな最後が待っていようと」1:32~で剣盾のジムリーダーが次々と出てくる流れ。
②’「♪隣で(隣で)君のそばで」1:39~で主人公トレーナーのライバル/相棒的キャラが出てきて、それが①b'のように瞳を2度通過するショット構成で処理され、さらに②b'ホップ(御三家所持ライバル)持ちポケモンを周囲に従え立ち(1:42){さらに同じ正面姿の構図でポップの兄ダンテ(旧御三家所持チャンピオン)へと切り替わる}
③'「♪魂がここがいいと叫ぶ」1:42~の画面下に主人公トレーナー(正面姿)・画面奥中央に球形の技をはなつ(球形のエフェクトは画面近方へ迫りゆく)モンスター(味方・エースバーン/最新作初期ポケ)……という構図と。
③b’つづく画面左に主人公トレーナー(剣盾)とそのパートナーポケモン(剣盾御三家ほのおポケモン)vs画面右に玄人トレーナー(剣盾チャンピオン)とそのパートナーポケモン(リザードン/初代御三家ほのおポケモン)……という構図と、そこから続く画面右のトレーナーの脱帽。
というかたちで変奏されてるんですね。
(ルビサファ主人公が振り返るのと剣盾主人公が振り返るのとか。ルビサファ主人公のところで赤いのが画面右下から左上へ舞うのと、ホップ⇒ダンテの切り替わりで炎が画面右下から左上へ舞うのとかもリズムを形成している要素かなぁ)
0930(水)
有休取得義務の関係で、午後からお休みでした。ガッツリ昼寝したのでなにもできず……。
1001(木)
■ネット徘徊■
『【スマブラSP】新ファイター参戦!! 2020/10/1』を観たりした。
ツイッター落ちることあるんだ……となりました。
1002(金)
■見たもの■
1話目から内輪の茶番を見せられるのはつらい(『100万の命の上に俺は立っている』1話)
いちから社の運営するバーチャルYoutuber団体にじさんじに所属する樋口楓さん(愛称;でろーん)とでびでび・でびる様が同時視聴配信をやっていたので観ました。
にじさんじvtuberと同時視聴配信は、私的なものから企業案件まであれこれあって、以前この日記にも書いた月ノ美兎委員長による『ムカデ人間』同時視聴配信は、委員長が出演俳優さんから『ムカデ人間』や他出演作(園子温監督)の撮影秘話を聞き出したりしてとても良かった。
今回はべつのかたがたによる配信ですが、でろーんがこの作品を好きだということは別の配信で言っていたし、でびでび・でびる様のレビューが好きなので、ぼくでも楽しめるんじゃないかと思って視聴しました。
同時視聴元であるAbemaTV版『100万の命の上に俺は立っている』は、出演声優さんの同時視聴特別版となっていて(かれらの音声に重きがおかれ、本編の音がよく聞こえない)、さらに放送内容自体も、"いらすとや"さんのイラストで全て置き換えたバージョンとなっていました。
静止画であるというイメージをどうしても持ってしまっている"いらすとや"さんのビジュアル。『100万~』の訳あり1話もおおむねそのようなイメージに沿って一枚絵をスライドさせたりとかで動いているように見せていました。
ただ、要所要所になると――主役らの変身シーンなどでは――いらすとやさんのビジュアルのまま、一般的なアニメーションのようにキーフレームからキーフレームへ枚数を重ねてゴリゴリ立体的に動きだします。そうすると、いらすとやさんに抱いている固定観念とのギャップで、(一般的なアニメーションを見ているとき以上に)活き活きと動いて見え、とても楽しかったです。
***
この特殊な配信/同時視聴について、アニメ放送開始早々にこの配信がランティスからの案件だったことも明かされたのですが、「それならもうちっとこう……」と思わざるを得ませんでした。
いらすとやさんに置換すること自体は、原作がかつて無料公開するさいの措置としておこなったことで、アニメ版のこの趣向もそれを踏襲した結果なのだそうです。
けれど初回放送でコレとなると、漫画版にあったような「無料公開するための措置として」という一応の言い訳もなくなって、ただただ「話題作りのためにやってます」という作り手の欲気がストレートにぶつけられる形となるわけで、けっこうきついものがあります。
しかも本編映像をただいらすとやに置換しただけでなくて、背景にブレーメンの音楽隊がいたり忍者がいたりと、欲気と言うしかない差分があって、とてもつらかったです。
(とはいえ「じゃあそういう茶目っ気がなかったら良いか? というと……難しいところです。
ただいらすとやさんに置換して映像を展開するのでは、1エピソードが終わる20分間は受け手の関心を持続できない気もし、さらなる味付けをするというのは分からなくもない判断です)
たぶん原作ファンなら「やってるやってるw」と楽しかったんでしょうけど、「今夜知ったよ」「これから知ろう」という自分にとっては、よくわからないローカルネタで盛り上がってる人らを見るようで、ただただ距離を感じるだけでした。
1003(土)
■ネット徘徊■
『【スマブラSP】スティーブ/アレックスのつかいかた』をリアタイ視聴しました
任天堂Switch用格闘ゲーム『大乱闘スマッシュブラザーズSPECIAL』 のDLC第7弾の紹介配信をしていたので観ました。
世界一売れたゲーム『Minecraft』のプレイヤーキャラクターなどをモチーフにしたキャラクターが参戦。
『スマブラ』の最近の参戦キャラのすごいところは、ゲームのキャラ・ふるまいを汲むのはもちろんのこと、元のゲームのシステムも(格闘ゲーム『スマブラ』に活きるかたちで)取り入れているところで、たとえば大御所2D格闘ゲーム『ストリートファイター2』のリュウで乱闘すれば、技が原作のコマンド通りに入力して発動できたり、RPG『ドラゴンクエスト』の勇者で乱闘すれば、技(まほう)を使うには原作どおり(勇者の独自ステータスである)MPを消費しなければなりません。
『スマブラSP』における『マイクラ』の取り入れかたはより一層すごくなっていました。
そもそも『マイクラ』ってどんなゲーム?
先日の日記の『にじさんじマイクラ夏祭り2020』や『マイクラ肝試し』のように、ゲーム内世界で自然や動物相手に採掘採集して自分の思うがままに道具をつくりだしたり建築したりするのが楽しみの一つのゲームです。
建築できるものは自由度がたかくって、アクションゲーム『マリオ』的なものもつくれたりするみたい。
『スマブラ』に参戦した『マイクラ』キャラは、原作どおりにステージから採掘採集したり、剣やつるはし・トロッコ・爆弾などをつくったり、宙にブロックを作り出したりできます(うまくやればお披露目動画にあるとおり、家ぽいかたちにしたりもできる)。
『マイクラ』キャラを採用するにあたって、これまでただ乱闘キャラが歩いたりなんだりするだけの"足場"だったステージを、地面なら土・飛行機なら鉄といった具合にそれぞれの見た目に見合った素材がとれる"土地"として再設定したそう。
また、足場でない無の空間についても、参戦キャラ全員のぶんの生成物が数十マス(プレイヤーは最大8人が同時対戦できるので、ひとり7マスくらい最大で生成できるとして、56マスとか?)とマップに満ちても問題ないようになってもいるでしょう。素人目にもおそろしいですね……。いったいどれだけ手の込んだ開発になってるんでしょうか……。
(
aini_bellwood氏による実装にかかる手間の推測)
予定していた企画と、現在できている、もしくは着手している要素。そしてまだ完成していない仕様。これらを見比べながら、もっとも近道で現実的で、手が掛からない方向を検討するわけです。いままで作ったものはなるべくムダにせず、費用対効果の高い仕様を選ぶと。個々のスタッフに対するスケジュール見積もりは、これらを見極めるのにも重要です。
エンターブレイン刊、桜井政博著『桜井政博のゲームを作って思うこと』kindle版15%(位置No.198中 30)、「捨てる積み荷を決めること」より
先日の『Outer Wilds』論文翻訳記事の感想欄で書いたことをコピペしますが、桜井氏は――あまたのジャンルで傑作を手掛けたクリエイターである一方で――コラムを読むに、いわゆる職人監督肌のディレクターなんですよね。
「捨てる積み荷を決めること」と題した2008年のコラムで"スケジュールに間に合わない"要素をカットしていくことがゲーム作りには必須だと、不測の事態による事前のプランニングを『大乱闘スマッシュブラザーズX』での裏話とともに語っていました。
日本でゲームを作る自分なら、企画するまえから「あ、ムリムリ」とあきらめ、現実的な仕様に落としてしまうに違いない。
エンターブレイン刊、桜井政博著『桜井政博のゲームについて思うことX』kindle版8%(位置No.14~15)、「夢のようなゲーム」より
超大作『グランドセフトオート』シリーズなど海外ゲームについてこう評したこともありましたし、海外作品に対してだけではなく国産ゲームに対しても現実的なディレクターとしての視線がのぞけます。
破壊可能物品をひとつ入れるだけでも、やれコストだ処理だどうしよう、と頭を抱えるわたしの開発とは、スタイルが大きく異なってますね。相応苦労もしているだろうけど、ちょっとウラヤマシイ。
エンターブレイン刊、桜井政博著『桜井政博のゲームを作って思うこと』kindle版61%(位置No.121)、「『ベヨネッタ』前、『ベヨネッタ』後」より
下記は『みんな大好き塊魂』についてふれた一文。
わたしが作るゲームは、ほかのソフトより比較的ボリュームが多いと言われがち。それは開発期間を潤沢に使うからではなく、着実に仕上げることを重視しているためであるつもりです。基礎実験や試行錯誤よりも、確実に見えるものを優先し、状況に応じてカットしても破綻がないようにするという。しかし、できるかどうかわからないことをしないのは、可能性を閉じているのかもしれない。そりゃぁ反省すべきだなぁと、食べ終わったチャーハンの皿を片づけながら思うのでした。
エンターブレイン刊、桜井政博著『桜井政博のゲームについて思うこと DX』kindle版23%(位置No.232中 53)、「この世に生まれ得ないゲーム」より
『スマブラ』シリーズの心労いくばくか(笑)(笑いごとではない)という感じですが、あの良い意味でのごった煮が、桜井氏にとって自分だけではたどり着けない新たな可能性を押し広げる楽しい日々になっていると良いなと思います。
1004(日)
宿直日。
1005(月)
宿直明け日。
■読みもの■
佐藤氏の創作論3作目が佐藤氏のサイトで連載開始
この構造が示すのは、歴史小説はそもそもの最初から、歴史上の出来事をお話の形で語るものでも小説の形で再現するものでもなかった、と言うことです。スコットは、歴史上の出来事をどう解釈しどういう意味を持たせることができるか、から筋書きや登場人物の配置を割り出しています。幾つかの場所、事件、人物は実在し実際に起こったとされていることですが、主要登場人物や主な筋書きに属する事件は架空であり、それを史実とされるものの間に紛れ込ませることで、「ミドロジアン」は構成されています。
大蟻食の生活と意見掲載、佐藤亜紀著「歴史小説の技法 I――歴史小説の類型」内「i 二種類の歴史小説」より
『小説のストラテジー』『小説のタクティクス』を著した佐藤亜紀氏の創作論3作目が、佐藤氏じしんのサイトで連載されるみたいです。月3回(全36回)更新とのこと。
前2論考とも、「こう読んだら(観たら/聞いたら)より一層おいしく味わえるよ」という受け手側にとっても実践的な内容で。
僕の作品との接しかたは読んでから十年以上が過ぎた現在でもなお『ストラテジー』『タクティクス』につよく影響されています(、と言うには、氏からアホほど笑われる方向のダメな味わいかたをしてもいる、アホな受け手ですが……)。今回も楽しみです。
『歴史小説の技法』1の1では、歴史小説の古典『ミドロジアンの心臓』を取り上げ、こんにちまで脈々とつづく歴史小説とはどんなものか記されています。
『ミドロジアンの心臓』の系譜として/あるいはそこから外れたものとして挙げられた作品には、佐藤氏が論考で話題にしたり小説で批評的な参照をしたりした名前もちらほら見られ、今後の論の展開に期待がかかります。
(たとえばトルストイ『戦争と平和』は、佐藤氏が『アナトーリとぼく』で題材にした作品で、両作の異同と、原作から違えることで佐藤氏がどのような創意を盛り込んだかについては仁木稔氏がごじしんのblogで細かに検討されています)
■見たもの■
vtuber『【クイズにじオネア】最初からいた奴が解けないわけなくない!?【にじさんじ/月ノ美兎】』をアーカイブ視聴しました。
いちから社の運営するvtuber団体にじさんじに所属する月ノ美兎委員長が『クイズにじオネア』実況プレイ配信をしていたので観ました。
『クイズにじオネア』はがめまるさんのつくったゲームで、プレイヤーはにじさんじ新人配信者となりにじさんじに関するクイズを解くことで知名度を上げていき、チャンネル登録者数100万人の"バーチャル・ミリオネア"をめざします。
出題構成は「いちから社の運営するバーチャルライバープロジェクトの名前は?」など基礎的な問題から、このバズワードを言った配信者は誰? 配信者同士が組んだグループ名は? この配信者がよくやるゲームは? あるいはにじさんじを卒業した配信者・海外の配信者の問題、ある配信であれをしたのは何時何分何十秒地球が何周まわった時? ……といった具合に徐々に細かいトリビアルな内容へ移っていきます。
ゲーム実況配信と言えばその範疇にありますが、問題にたいして、たとえばグループ名について問われれば委員長がそのグループに初めて出会ったときの話をしたり、こういう名前をつけたのは当時のにじさんじ配信者の編成が……と話をしたり、委員長によるにじさんじ語り・振り返り配信にもなっていて、そこもなかなか面白かったです。
そうした観点から言うと、「次のうち、「にじさんじ Music Festival」で、3Dモデルが公に初披露されたライバーは誰?」というクイズはなかなか胸にくるものがあり、委員長がじっさいにそのライブに参加した当事者の証言として、配信に乗らない配信者たちの舞台裏の物語が語られたりします。
問題を媒介にしてそのひとの個人史が語られる……そういう意味では、本家クイズ・ミリオネアを題材にした映画『スラムドッグ$ミリオネア』にちかい配信だったのかも。
問題は1000問をこすなかからランダムで選ばれるのですが、配信はじめて2問目が「ゲーム実況中に発した「あぁゴミカスー! 死ねぇー!!」という怒号で話題になったライバーは誰?」で。
配信最後の問題が「御伽原江良が「しょぼんのアクション 後編」配信で「あぁゴミカスー!!死ねぇー!!」と発言した時点でのしょぼんの残機数はいくつ?」なのは、なんともきれいな構成だとびっくりしてしまいました。
また配信序盤ではフェルミ研究所のモノマネをしたりもしましたが、この最終問題では委員長式のフェルミ推定がおこなわれていき(※なお計算はガバガバ)、ここもまたアツかった。
登録者数100万人行きました!!!!!!!
— 月ノ美兎🐰0時~ミューコミプラス (@MitoTsukino) 2020年10月4日
実況プレイを終えた委員長がこうツイートしたところ、
みとちゃんおめでとうーーー!!!!😭👏✨素晴らしいです!!!。゚(゚´ω`゚)゚。
— 東雲めぐ/ Megu shinonome (@megu_shinonome) 2020年10月4日
みとちゃんおめでとうございます👏🏻👏🏻👏🏻👏🏻👏🏻👏🏻👏🏻👏🏻👏🏻👏🏻👏🏻👏🏻👏🏻👏🏻👏🏻👏🏻👏🏻
— 天神子兎音 a.k.a. Kotone (@kotonegami) 2020年10月4日
おめでとうございます!!!
— 島﨑信長(島崎信長) (@nobunaga_s) 2020年10月4日
みとちゃんおめでとうううううう!❤️
— 乙女おと♍️5000兆円欲しい系Vtuber!㊗️新衣装! (@0tome0to) 2020年10月4日
企業Vtuber個人Vtuberはたまた(正月特番で共演した)人気声優さんまで、さまざまなお祝いリプライがとびかう事態に。
あっ‥‥あ、あっ、ありがとうございます!!!
— 月ノ美兎🐰0時~ミューコミプラス (@MitoTsukino) 2020年10月4日
草はえますわ。
vtuberにじさんじ宇宙人狼『Among Us』実況プレイ配信をリアタイ視聴しました
いちから社の運営するvtuber団体にじさんじの面々が『Among Us』を実況プレイされていたので視聴しました。
ぼくは上述のとおり月ノ美兎委員長の視点でリアタイ視聴。
『Among Us』はちまたで宇宙人狼などと称され人気沸騰しているゲームで、宇宙船の船員たちは、船内のあちこちに配された業務をこなし、ときおり起こるハプニングに対処しつつ、船員に紛れ込んだ詐欺師(インポスター)を探し・追放します。
ホロスタのかたがたがやられたり、キズナアイさんがやられたり、にじさんじ内だと、にじさんじidのHanaさんらがやられていました。
椎名結華さんが主催で、配信冒頭では、でびでび・でびる様がゲームルールについての自前のスライドショーを使いつつ説明(0:7:30~)。配信参加者がでびる様の主幹的な説明にたいしてQ&Aを差し込んでいて……かゆいところまで手が届く、ほぼ初見である自分にとって優しいイントロダクションがなされていました。
これだけ丁寧にルール説明がなされた配信は、配信者だけの集まりだとけっこうに珍しい気がします。
Perfume結成20周年イベント『“P.O.P” (Perfume Online Present) Festival』の「のっちは○○とゲームがしたい!」など、TV番組制作スタッフが入ったものと遜色ありません。
ゲーム内容も、参加者全員にそれぞれ見せ場があって良かったですね。
ぼくは、月ノ美兎委員長の配信でゲームを追いましたが、ぽんひまがカワイソかわいかったし。
(また、ゲーム後の挙動もおもしろかった。ああいう状況に置かれたあとにどんな会話をするか、ひとによっては吊るされたことを引き金にどつき漫才してみせるとか色々な方向がありそうですが、「仕方ない」とやわらかく受け止めることはひまちゃんらしいなと思いましたし、そこから、
「振り返ってみると自分は自分でたしかにあやしく映ったと思う」
と感想戦方向に関心がむかうのもまた、さすがゲーマーのひまちゃん)
不破湊さんのキョドり具合と慌て具合、そうした頼りなさそうなところと対照的な要所要所のキメ具合。しぃしぃのザックザクと決断していくゲーミングがよかった。
とくに早瀬走さんのプレイングはファインプレーだったと印象があります。
議論がどっちつかずの灰色(誰も吊るされずに終わる)になりがちななかで、早瀬さんがいたおかげで正解不正解どちらにせよキッチリ白黒つける方向で舵取りをなされた局面があれこれあったように思え、ゲームにも配信にもメリハリがついたなと思います。
人狼ゲームって、玄人・意志の強い人によって押し切られちゃう・やりこめられちゃうことって少なからずある気がするんですけど(そうなっちゃうと配信を見ているぼくとしてはあんまりおもしろくない展開になる)、新規人狼ゲーだとその辺の経験差はすくないし、またみんなプレイヤーもみんなハッキリ意思を主張できるひとの集まりでなかなか良かったと思いました。
逆に、作業中はナチュラルにはぐれがちで、討論の席では会話のキャッチボールと関係なく考え事をして意味不明な角度へと球をほうる月ノ委員長が、ほかの配信者さん/リスナーからどう見えていたのか、すごく気になるところ。
ゲーム中に逐一システム説明がなされる第1戦(0:20:53~)から毎試合たのしめました。
とくに熱かった第7戦(1:42:12~)。
徐々に減っていく船員と、だれなのか一向に分からないインポスター。
後半はみんなで団体行動することとなり、新たな犠牲者はなかなかでないけれど、序盤から注意力散漫でみんなとハグレがちだった委員長は、この終盤戦でだんだんと疲れが出てきたのか、自分のタスクを終わらせようか団体行動の和を乱さないようにしようか右往左往してどっちつかずの行動をとりつづけてしまう。
幾度となく行われてきたインポスターのサボタージュのなかで、とりわけ大きく場を乱したわずかな瞬間を縫ってついに新たな殺人が行われ、しかも運悪く委員長だけが集団から離れていた……。状況証拠は完璧不利、さあどうなる討論!?
***
委員長の形勢逆転の一言は、試合後も参加プレイヤーから絶賛の一手だったんですけど、他方、ゲーム巧者が多そうなほかの配信者(不破さんとか、でびる様)リスナーのチャット欄で示唆されていたとおり、「それだけではまだ何とも言えない、別の理由も考えられるもの」でした。
『にじオネア』配信といいこれといい、情報を受け取るじぶんの単位時間当たりの理解力といいますか、「もっとよく考えれば穴があるんだけど、その場では"なるほど!"と柏手を打ってしまう」情報について、というか、穴に気づかず柏手を打ってしまう自分について、ちょっと思いを馳せてしまった。
▼公式デベロッパーの規約と有志のMOD利用、実況の鮮度と権利確認
さて『Among Us』は日本語未対応のゲームで、そーわっとさんというかたが個人的に日本語化MODを作成されています。
既存のゲームを個人がアレコレ改造するMOD文化。MODの種類もさまざまで、つくられた経緯、公式との関係もまた色々あります。
そーわっとさんによるMODも、公式に連絡をとり許可を仰ぎ……と、クリーンな手続きをふまれていたそうで、『AU』の良さが日本でも広まるよう努めていたことと思われます。
ぼくなどの門外漢の目にも触れたMODといえば『グランドセフトオート』シリーズでの奇怪なMODですが、そうした外野の耳目までひいた例みたくゲームのキャラクターを別作品の姿かたちに置き換えたりするものもあれば、独自のシステムを組み込んだりするものもあったり、バグを修正したものもあったり……さまざまな改造がおこなわれています。
システム面でのMODだと、『Minecraft』の景観をフォトリアルなものに変えるMODだとか、FPSゲームをバトルロワイヤル方式のゲームに変えるだとかが有名で、一大ジャンルを築いた『PlayerUnknown'sBattleGround』ももともとは別ゲームのMODでした。
外国語のゲームを、熱意ある個人が母国語へ翻訳する……というのも、そうしたMODの世界のひとつです。
今回のにじさんじ宇宙人狼は、そーわっとさん翻訳作成のくだんの日本語化MODを使用しての配信でした。
そーわっとさんのDiscordでは、利用規約のひとつとして「配信で利用する際は、翻訳者の名前とtwitterリンクを」という旨の部分がうたわれていたのですが、概要欄に記載はなく、非公開となりました。
そこから波及して、MOD製作者さんにフォロー0フォロワー0ツイート0ちかい即席アカウントが多数突撃をしかける事態となり、とてもつらい状況ですわ。ご迷惑をおかけして申し訳ない……。
{また、そういう凸用アカウントじゃない平常運用アカウントのかたでも、
「なんか言いたくなる気持ちはわかりますが、それは迷惑かけちゃってるコッチが言うことじゃなくないっスか……?」
と思わせるリプライが送られていたりして、「Oh……」てかんじです。
(たとえば、
「注意事項がなかったため今回のインシデントが起こったと考えられます。二次掲載サイト運営者にMOD製作者さまから一言おっしゃってくださるととても幸いです」
という旨の連リプライ。リプライを送ったかたはそんなつもりないと思いますけど、「おまえがおれらから強盗に遭ったのは、夜道を歩いているお前が悪い。自衛しろ」みたいな理屈に聞こえます。
いくつあるかも不明だし、どこまで拡散されてるかなんてわからない支流下流の世話を、源流が見ろというのは無理ですよ……)}
プレイヤー同士のコミュニケーションは音声チャットでおこなうし、ゲームプレイ中のゲーム内の文字情報にかんしては、とりたてて言語的な理解を必要とする部分はありません。
("雪山人狼"との愛称で楽しまれた『Project Winter』のほうが、はるかに文字情報が多いゲームでした。
「『PW』が実況当初、英語(制作国デフォルトの外国語)のままプレイされて問題なくプレイできていたわけだから、このゲームもプレイ自体はMODを入れずとも出来ただろう」
という見方は当然でてくるでしょうし、それなりに頷ける声でもあります)
ただ、本編を開始する前に、「プレイするにあたってこんなゲーム設定しました」という注釈があったとおり、『AU』はプレイヤーの好みで操作できるルール設定・ステータス的な変数がとても細かい・多いゲームみたいなんですよね。
プレイヤーキャラの移動速度だなんだと細かなところまで多岐にわたるコンフィグは、外国語のままだとわかりにくいので、そーわっとさんによる翻訳があったからこそ白熱のゲーム実況を楽しめたものとぼくは思います。
企業vtuberさんは所属企業が権利確認をあれこれ行なう体制がある程度ととのっていて、たとえばにじさんじなら任天堂とパートナーシップを結んだり、コナミ『esportsパワフルプロ野球』による対人戦企画『にじさんじ甲子園』では優勝者がゲーム本編に特製モーション・ボイスが設定してもらえたり……というように、いくつかのゲーム・企業とは円満な関係を築けたりもしていますが。
しかし、100人以上の配信者が四六時じゅう配信している団体です、全部が全部チェックを行えているわけではないんでしょうね。
{情報伝達がうまくいってなかったのが、はたして配信者~配信者間なのか(そもそも問題だと認識してなかった)、配信者~権利確認スタッフ間なのか、権利確認スタッフ~権利元間なのか、その辺よくわかりませんが。ぼくは、最初のパターンかなぁと邪推します……}
また、たとえおおもとのゲーム(企業)をやること自体には権利的にOKだったとしても、個人が制作しているMODや、"わかってる"趣味者同士がはぐくんでいるローカルコミュニティに踏み入れることについてはまた別問題で、かゆいところに手が届かなかった結果が今回や過日の一件になるのでしょう。
配信業となればネタの鮮度もあり、視聴者であるぼくの本音としても新しもの好きなミーハーな面は否定できません。できないわけですし、きれいごとなんですけど……より広い層が幸せになれるよう舵を取ってもらえたら良いですねぇ。
……などと書いていたら、10/6、
昨日のAmong Usアーカイブについてです。
— 椎名唯華👻 (@yuika_siina) 2020年10月6日
modの規約が守れてなくて心配迷惑かけてしまいました。
本当にごめんなさい。
みんなで謝罪して運営さんと一緒にお互い解決にむけて話し合ってるからちょっとまっててね!
作者様への意見はやめてください!
主催として代表してツイートしてます。
にじさんじ側から先方へ謝罪が入り、さらには10/7にはそーわっとさんから、
「今回いちから株式会社様と直接お話させていただき、和解する方向となったことをご報告いたします。」
とのご報告がなされました。よかったよかった。
そーわっとさんありがとうございました……!
(寛大なご対応いただき……と言いたくなっちゃいますし、じっさい寛大にご対応いただいたわけですが、他の言い回しがないものかな~とも思います。うまい言いかたが思い浮かびません。
今回はファンとしては嬉しいことにアーカイブ再公開の運びとなりましたが、べつに、アーカイブ削除となってもまったくおかしくない、妥当な結果だと思うんですよ。たとえアーカイブ削除となったとしても、先方が狭量だということは断じて無いわけです)