すやすや眠るみたくすらすら書けたら

だらだらなのが悲しい現実。(更新目標;毎月曜)

日記;2019/08/20~26

 日記です。6000字くらい。

 ※言及したトピックについてネタバレした文章がつづきます。ご注意ください※

 

0820(火)

   ■ネット散歩(ネット学級会)■

 リンクは張りませんが、身につまされる記事を読みました。

 ある論考に寄せられたお便りの公開返事という記事でその大部はとうぜんのことながらお便りと自論の検討についての文章だったのですが、最後にやさしい世間話という感じのものが載っていました。ガツンときたのは、

「相手の不備を指摘する会話のなかで、その指摘をした自分(送り主自身)について(社交辞令以上に)過度に卑下するのは、"そんなダメなひとから不備を指摘されるこちらは何なのか、高度な罵倒か?"という話になってくるので、(会話のそのほかの個所で言われたとおり、"論の検討をしたいだけで他意はない"というのであればなおのこと)送るまえに考えてほしいです」

 というような具合のお話。そういうことをやらかしたことのある自分としては、気をつけねば……とつらかった。

 

 あくまでぼくがやらかしたことについてですが、自分の過去の失敗を振り返りそれを未然に防ぐ手立てを考えてみるとほかに……

 

 ●とにかく、なまの感情をそのままぶつけないようにする。

 ・なにをどうしてほしくて便りを送るのか考える。

  (自分が伝えたいことはなにか? それを伝えることで相手にどのようにしてもらいたいのか? をまず端的に伝えたうえで、詳細に入るといいのかもしれない?)

 ・便りを書いてもすぐ送らず、1週間せめて1日だけでも間をあけるなど冷却期間を置く。

  →とりあえず発信しないとなかなか気が済まない性分なら、とりあえずブログやら自分のサイトを開設するなどして、相手の生活圏を汚さないで済む場に吐くのも手かも?

 ・「世界はべつにおまえ(自分)を中心に回ってるわけじゃないんだぞ」と自分で自分を言い聞かせる。

 

 ……あたりは、即効性がありそうです。

 そのほか短くまとまらないこととしては……

 

 ・「(任意の大きな集団。たとえば男/女、たとえばオタク)は、(任意のざっくりした否定的な言葉。たとえば下半身で生きてる/感情的だ、社会経験がない・成熟していない)だ」という文言を見かけても、脊髄反射的に反応しない。

  →たとえ自分がその任意の集団である/否定にあてはまる典型例やあてはまらない例外だからといって、あなたが別にその任意の集団の代表的人物でもなんでもないのであれば、その文言によって自分個人が否定されたわけでもないし、「自分たちが十把一絡げの雑なくくりで否定されたから、おれが反論せねば!」みたいなことをする必要もない。

   →相互フォロー関係にあって、話の内容もいかにもあなたが話したことを受けての反応に思えても、ぜんぜん別口からの話である可能性はけっこうある。(フォロー100人フォロー1000人のTLではちょっとしたつぶやきなんて爆速で流れていく)

 ・あなたの話(あなたが興味ぶかいと思った知見・フランクと思える世間話)に対して聞き手からあなたにとって喜ばしい反応が返ってきたとしても、それはあなたの話に同意したり楽しんだりしているわけではないかもしれない。空気を悪くしたくないから処世術として愛想笑いを浮かべてるだけなのかもしれない可能性を考える。(『ねとらぼ』しげる氏のコラムが参考になります)

 →誰か何かを否定するのはストレスだし疲れる。

 ・旧知の仲の他人同士のやりとりを見て、それが最適解だろうと判断し倣うのも意外と落とし穴がある。

  →ふたりが猥談で盛り上がっていたとしても、べつにあなたとはしたくないかもしれない。

 

 ……あたりが自分のやらかしとして思い浮かびます。その節はすみませんでしたという気持ちしかない。 

 

 と、問題点はいくつかわかっているんですが、リアル友人には面白本からの面白知見について(べつに面白く思ってなさそうだと分かっていても)話しがちになってしまう。これはどうしたもんかな……。

 休日で歩いたり、ひとと関わったりしないため、「最近どんなことあった」みたいな身辺雑記的なおはなしはすべて、最近読んだ本や観た映画の話になってしまうんすよね……。

 

0821(水)

 宿直日。

 ■ネット散歩■

 Hayakawa Books & Magazines(β)、「『なめらかな世界と、その敵』印税の寄付について」

 紙の書籍版の印税を、ということみたい。たしかに「電子だと月1冊とかのときはどうするんだ?」というアレがありますよね。

 話題作なので電書版を購入済みなのですが、これを聞いて「紙の書籍版を注文しておけばよかったかな、読んで面白かったら一冊買うか? でも布教する相手もいないぞ……」となりましたが、じぶんで寄付するという選択肢に思い至らないあたりにぼくのだめさ加減が詰まっている気がする。

  ■読み物■

 短編集『なめらかな世界と、その敵』を読み始め、そのまま謝辞まで突っ走ってしまいました。書下ろしの『ひかりより速く、ゆるやかに』が圧倒的。

  『なめらかな世界と、その敵』読書メモ

 この短編集については、とんでもなく早い段階から濃密な作品評作家論がすでにお目見えしています。読み手まで圧倒的なの何なの。また読み返したくなります。

 はてなblog『“文学少女”と名前のない著者』さんによる『この世界の中で、この世界を超えて――伴名練とSF的想像力の帰趨』

 ぼくとしては、のぞみ123号、物語内物語としての窓、ということで、トニースコット監督作品とりわけ電車「ペラム123」がジャック・停車させられてしまう『サブウェイ123激突』について書こう書こうと思っているけどいまだに書けてないことを思い出しました。

 初出がだいたい同人誌で、謝辞の多くもそれらを手がけた仲間たちが挙げられて、商業未採録の同人作品からの影響が語られてもいまして。『A.G.C.T. 』など新間大悟氏の同人作品から後の伊藤計劃氏の作品(同人・商業両方)を思い浮かべたときのような気持ちになりました。趣味趣向や志をある程度おなじくした人々が出会い集まり語り合い、じぶんひとりでは目を向けなさそうなことにも他人と接したことで関心をもって、じぶん自身の言葉を築き上げていく。まぶしい。

 

0822(木)

 宿直明け日。

 熱にあてられたので同人誌をたくさん注文しました。同人作品を5年以上まえのものを新品で後追いできる……というのは凄いと思う。商業だって廃版になっている可能性があるのに。それでも手に入れられなかったものはあり、ひと月ちがえば配信・販売サイトさえあるかどうかわからないタイミングもありました。『パブー』終わってしまうのだなあ。(1003追記 これ書いた翌月9月2日のお知らせにある通り別運営会社に移管され、サービス自体は継続されているみたいです! デマ言ってすみませんでした)

 

0823(金)

 ■建物■

 ボイラーの給湯管に亀裂がはいって大変だった。土日はいるまえに壊れてくれてよかった。

 

0824(土)

 注文した同人誌の入金を済ませました。利用した通販サイトは、定価に上乗せするかたちで購入者が好きな金額をお布施できるサービスのあるサイトでしたが、金がないことを言い訳にしてすべて定価で……。

 入金を夜に行なったところ、その夜が明けないうちに「発送しました」連絡がはいりました。休日の深い夜にお手数ご足労おかけしてマジすみません……という気持ちになりました。

 

 KindleにPDFやらをインポートするのは何か難しいなとなりました。なんか1ページずつしか表示されなかったりする。小説ならまだしも、見開きページのあるマンガ・写真集系だとそれはきびしい。

 ■読み物■

 買った同人作品を消化中です。京大SF研版『伊藤計劃トリビュート』も読みました。そちらを今週の定期更新の弾にするつもりが、昨日の今日でさっくり仕上げることはできないのでした。

  『女甲冑騎士さんとぼく』シリーズ読書メモ

 青井タイル店の暴力ちゃん(おくむら、aoitile)氏の同人漫画。現在4巻くらいまで出てるみたい。

 漫画本編は、あの抜群にうまいカラー表紙のような絵柄じゃありません。ありませんが、表紙のような質感がキャラや物語にしっかりあります。承認欲求も適度にあるうえ、(体育会系出身なのか?)他人をアゴで使う自分勝手さもある等身大のザ・オタクな「ぼく」と、かれと的確な会話をする女甲冑騎士。そして釣り堀や銭湯などへの自然な反応などなど……女甲冑騎士と現代日本とが見事に溶け込んでいます。

 毎ページ欄外に挿される一言も相まって、『スクールランブル』的な青春というか、現代日本のシェアハウスでえんえんやり取りされるしょうもない、それゆえにかけがえのなかったりする日常の尊さがあります。永久につづいてほしい。

 

  『機甲兵装立体図説』読書メモ

 現在は恋愛コラムニストとして活躍の場を広げられているしげる氏による、『機龍警察』の二次創作本。原作小説の記述からメカのビジュアルを想像し、それどころか立体造形として成形・彩色、現代日本のあれやこれやの前で撮られた自作模型の写真が載せられています。そして、メカの特徴やらを手や足背中など説明や製造経緯・歴史背景などを記した文章から構成されていて、『機龍警察』未読者にも「強化外骨格がいまここに本当に運用されていたら?」という疑似歴史書・兵装解説本として楽しめます。

 各メカについて製造・使用された時代や国や団体や目的の違いが、シルエットのような大きな点から、手や関節などの機構や、表面のテクスチャの違いといった細かな点まで微に入り細に入り表されていて、すごいなあとなりました。

 

 昔ながらの迷彩・ドット迷彩の使い分けはもちろんのこと、塗装のウェザリングも摩擦で禿げたのか・油排気などで汚れたのかくらいまでは当然のこととして、鋳造パーツなので面が平らでなく凸凹粗い、なども盛り込まれていて、たまに絵を描く者としては「立体造形でこれだけのことをやられてるんだから、二次元でもそこまで念を入れれねば……」と襟元ただしました。

(模型に疎いので、他のクリエイターの方々と比べてどのくらいの技術なのか、まったくよくわからないのですが)

 

 警視庁の龍機兵3体がならび立つp.23~24の見開きページは、バンシーの背面装備のいかつさが一層強調されて面白かったです。

 日々のツイートから、しげる氏の趣味趣向として 「スケールを揃えて複数種を横断して買」ったりスケールをそろえたことによって面白くなった写真をアップされたりもするところは覗かせてもらっていたんですが、実作でもそうした思想が感じられる一枚だなあと、この見開きページについて思いました。

 

  京大SF研版『伊藤計劃トリビュート』読書メモ

 伴名氏の短編集から遡及して。同人配信販売サイト『パブー』にて、閉店まえの駆け込み購入(1003追記 これ書いた翌月9月2日のお知らせにある通り別運営会社に移管され、サービス自体は継続されているみたいです! デマ言ってすみませんでした)前半4作を読み終えました。(最後の『美亜羽』は19年短編集収録の最新版を読んでるから、あと3作でだいたい読んだことになる)

 どれも面白いと前置きしたうえで、いちばん惹かれたのは『量子の海のカルペディエム』でした。

 いうなれば量子力学版『ファイト・クラブ』で、(バスター・)キートンのドタバタ喜劇みたいなピタゴラ装置的な起床に始まって、次第に主人公が一文字キちがいのエドワート・)ノートンに見えてくる、物語や文体のムードチェンジが気持ちよかったです。

 失敗を未然に防ぐスゴい技術が民間人もつかえる保険として普及している世界で、主人公は(たぶん)中産階級で、大規模な失敗はやり直しがきくけど日常のささいなできごとはそうではない程度の契約プランで保険に加入しています。そこで、ささいな失敗も大規模なものへエスカレートするようなDIY装備を整えることで契約の裏をかいて、二度寝を許さず完璧な起床をし電車の乗り過ごしを許さず完璧な通勤をする完璧な郊外生活がえがかれる冒頭からして凄い。

 劇中独自のSFガジェットの使用について、その初手から応用技・裏技を披露することで、その技術が劇中世界にどれだけ馴染んでいるのかを描いてしまう、スピーディかつなめらかな語り口と、そうした演出のためにさらっと描かれるアイデアの多さ・突き詰めかた。

 劇中SFガジェットによる必然として、SFガジェットに慣れ親しみ使いこなす劇中人物の当然として、文体が繰り返しも多く硬く安定したものとして築かれていて(時刻や秒針の刻みなどもその印象をつよめます)、そこから不意に訪れる「あはははははは」のような裂け目がおそろしかったです。伊藤氏も読んでいたと云う佐藤亜紀氏の『小説のストラテジー』で取り上げられたようなディエーゲーシスとミメーシスのコントラスト、そんな用語や技術を知るまえに『ハーモニー』をひらいて、序盤の一言や終盤の異様な擬音の連発に驚いた初読時の感覚が思い出されました。

  とにかくモチーフ選択がうまくって、目覚まし時計、トラムが来ない、そして個人の寿命……と、時間を巻き戻す動機もまた、時間をめぐるトピックが多い。

  ■

 ですが、トリビュート・オムニバスとしての強みを感じたのは、むしろそれ以外の作品たちなのでした。集団制作の面白さ。

 ■

 購入した電子版『トリビュート』は、改稿もなされた第2版とのことで、だからなのか『美亜羽へ贈る拳銃』は短編集で読んだのと同じオチのように思えました(。初版はどんなものだったのやら……後追いの悲しさよな~)。ただ、中盤の分子ガストロノミー料理ハイテク版は、同人版の時点では未登場だったみたい{。19年刊短編集版を読み、巻末の初出時期をみて、「『noma』日本支店ができたのこそ数年経っているけれど、(そこでも修業した)橋本氏が自身の店舗『セララバアド』ができるのは4年以上もまえの時分に、劇中へその料理を取り入れていたのなら、現実にかんするアンテナのはりかたとそれをウンチクに終わらせない作劇の反射神経・手管がすごすぎるだろ……」とふるえていた。どちらにせよ「出して終わりにしない作劇力」がすごいことには変わりありません}。

 逆に19年短編集版では"「神冴志恩」で検索すればだれでも分かる周知の事実だ。"とされていたところが、同人版だと、"今やWikipediaの「神冴光希」の項を見ても分かる周知の事実だ。"と、固有名詞が削除されていたりするところもある。ジミー・ウェールズからのメッセージは皆さんに届かなかったのか……。

 細部の変更で、面白いところが一つあった。この例だと後半のネタばらしっぽくなってしまう、ということもあるのかもしれないけど、なんかもっと面白い見方ができそうだ。

 『拡張幻想』も注文したので、そちらとの異同もたしかめたいところです。

 

 0825(日)

 宿直日。『トリビュート』の続きをよみました。感想を別に書くつもりだったけど、これ書けるのか……? ぼくには歯が立たない作品がでてきてしまった。世の中にはわからないことがまだまだいっぱいあるものです。精進します。

 

0826(月)

 宿直明け日。帰宅後眠ってしまった。記事を書けども完成しませんでした。