ひさびさの日記です。2万字くらい。
(03/15~05/16の二ヶ月間をひと記事に載せたところ「読み込みが不安定」というツイートを見かけました。自分のPCで確認したら確かに重かったのと、承認欲求のかたまりなのとで、分割することにしました。ビジターフレンドリーでありたいものです。
この記事と、このつぎの記事「日記;2022/04/01~04/30」、そのさらに次の記事「日記;2022/05/01~05/16」は、5/17にアップした記事です)
委員長のCOVID-19自宅療養快癒報告配信を観たり、恋愛・青春マンガにおけるトリオン体としての『隣のお姉さんが好き』14話たーくんの精神性に感銘をうけたり、岩原裕二『クレバテス−魔獣の王と赤子と屍の勇者−』がふつうに面白いなぁとなったり、莎々野うた『マリトッツォだっつってんだろ』などはキャラの魅力・小道具の使い方・物語運びがうまい塩梅だなぁとなったりした2週間でした。
※言及したトピックについてネタバレした文章がつづきます。ご注意ください※
- 0315(火)
- 0316(水)
- 0317(木)
- 0318(金)
- 0319(土)
- 0320(日)
- 0321(月)
- 0322(火)
- 0323(水)
- 0324(木)
- 0325(金)
- 0326(土)
- 0327(日)
- 0328(月)
- 0329(火)
- 0330(水)
- 0331(木)
0315(火)
お仕事がいそがしく、どたばたしてました。
■ゲームのこと■
きょうの『Wardle』
正解! きょうのことばは「照明」でした。
Right! The word was: LIGHT
停電のさい代わりに使える光源を用意しましょう。:ろうそくや懐中電灯、電池類もお忘れなく。
Prepare alternative light sources in case of power outage: candles, flashlights and any necessary batteries.
より多くのことばを推測すれば――それだけより多くの準備ができるのです。
The more words you guess – the more ready you are.
0316(水)
お仕事がいそがしく、どたばたしてました。
0317(木)
■ゲームのこと■
きょうの『Wardle』
正解! きょうのことばは「溝」でした。
Right! The word was: DITCH
もし街路で砲撃に見舞われたら――地面に伏せて*1、穴がないか探してください。砲火がやむまで堀や溝で待ちましょう。
If the shelling caught you on the street - fall to the ground and try to find a hole, trench or a ditch to wait it out.
より多くのことばを推測すれば――それだけより多くの準備ができるのです。
The more words you guess – the more ready you are.
0318(金)
■自律神経の乱れ■
夕方から頭が痛くてロキソニンを飲む
夕方から頭が痛くなり(熱はない)、ロキソニンを飲みました。
■観た配信■COVID-19■
vtuber月ノ美兎『新型コロナになっちゃってたんすけど』を観ました。
エニーカラー社の運営するバーチャルYoutuber団体にじさんじに所属するバーチャル学級委員長・月ノ美兎さんが、COVID-19(オミクロン株)からの快復・復帰配信をされたので観ました。
豊富なポンチ絵とともに語られる闘病レポはとても興味ぶかく面白く、転んでもただでは起きないおもしれー配信者……! となりました。
0319(土)
仕事休み。
■自律神経の乱れ■
日中寝て過ごした
せっかくのお休みでしたが、朝10時くらいに起きて、ご飯を食べたらお昼寝しました。
■ゲームのこと■
きょうの『Wardle』
正解! きょうのことばは「食器」でした。
Right! The word was: PLATE
野営(キャンプ)用のお皿と食器を家族やじぶんのために準備しましょう。
Prepare a set of camping dishes and cutlery for your family and yourself.
より多くのことばを推測すれば――それだけより多くの準備ができるのです。
The more words you guess – the more ready you are.
■読みもの■
莎々野うた『マリトッツォだっつってんだろ』読書メモ
それは何ですか;
莎々野うた氏の読み切り漫画で、第7回ジャンプルーキー!アナログ部門賞・準入選受賞作品。
{莎々野氏の作品はほかにも、『魔法少女クトゥルフ』がジャンプルーキーで読めるみたい(未読)}
読んでみた感想;
たいへん面白かったです。
(原作)静脈&(漫画)肥田野健太郎氏による『霊掃業の洗井くん』同様、魅力的なキャラと卑近なみじめさを織り交ぜつつ、小道具もワイルダー的に活かす端正な作品。(「前段で出した物を活かすぞ」って点では『僕より目立つな竜学生』1話とかも良かった)
0320(日)
仕事休みで宿直日。
■ゲームのこと■
きょうの『Wardle』
正解! きょうのことばは「音」でした。
Right! The word was: SOUND
もし軍事行動がおこったら、音に気を配りましょう。サイレンは差し迫った緊急事態について指し示してくれます。爆発音が聞こえたら建物から離れて最寄りのシェルターを探してください。
In case of military actions you should pay attention to the sounds. A siren indicates an impending emergency situation. If you hear sounds of explosion, you need to leave the building and find the nearest shelter.
より多くのことばを推測すれば――それだけより多くの準備ができるのです。
The more words you guess – the more ready you are.
■観た配信■
vtuber月ノ美兎『【きりーつ】4年分のあいさつ、集めてみました【気を付け!】』観ました。
エニーカラー社の運営するバーチャルYoutuber団体にじさんじに所属するバーチャル学級委員長、月ノ美兎さんが活動4周年をむかえました。
それを記念して、委員長の定番挨拶「きりーつ! 気を付け!」を4年ぶんの一気に見てみようという動画が公開されました。
投稿は委員長の個人チャンネルですが、編集は月ノ美兎切り抜きチャンネルさんによるもの。
氏はお名前のとおり、委員長の切り抜きを――配信で面白かった部分をピックアップして、ハイライトとしてまとめる動画を――投稿しているかたのひとりで、切り抜き文化は賛否両論ありますが(たとえば元動画の再生数に貢献しないだとか)、このかたの「切り抜き」は丁寧なうえに最近の配信だけでなく過去の配信までまんべんなく取り上げて温故知新のレトロスペクティブの感さえあり、すさまじい限りです。
最初のあいさつだけとはいえ4年間の配信すべてを切り抜く労力たるや! 尋常ではないお仕事です。
0321(月)
仕事休みで宿直明け日。
■自律神経の乱れ■
日中寝て過ごした
せっかくのお休みでしたが、宿直で睡眠サイクルが乱れたからか、日中を寝て過ごしました。
■ゲームのこと■
きょうの『Wardle』
正解! きょうのことばは「水」でした。
Right! The word was: WATER
非常時にそなえて飲用も非飲用の水も大量に準備しておきましょう。
Prepare plenty of drinks and technical water supplies in case of emergency.
より多くのことばを推測すれば――それだけより多くの準備ができるのです。
The more words you guess – the more ready you are.
■観た配信■
以後一か月くらいvtuber最強決定戦にむけたスクリム練習カスタム配信視聴の日々;『【APEX】顔合わせ!3pt視点です w/白雪レイド, 藍沢エマ【にじさんじ / 樋口楓】』
渋谷ハル主催Vtuber『最協決定戦Season4 ver.APEX LEGENDS』のチームが発表され、顔合わせ・練習配信がちらほら出てくるようになりました。
去年観ておもしろかったから、さらにがっぷり四つで配信を追いかけてみることにみました。ぜんぶ書くとリンクだらけで重くなるので省きましたが、白雪レイド&藍沢エマ&樋口楓トリオの配信はだいたい追いかけました。
配信を追いかけたさきの結晶としての本選模様は、来月の日記記事の4月17日(日)をご参照ください。
0322(火)
あまり元気に過ごしませんでした。
0323(水)
■読みもの■
『隣のお姉さんが好き』14話「なんか意地悪な心愛さん」
それは何ですか;
「日記;2020/06/09~06/15」で話題にした『好きな子がめがねを忘れた』の藤近小梅さんのマンガです。今回話題にするのは最新話である第14話。
序盤のあらすじ;
掲載サイト『マンガクロス』にて最初の第1~4話と、最新エピソード数話(いまだと第12~14話)が無料で読めます。
読んでみた感想;
新年の配信ビデオのセール情報を見ていくなかで、zzz_zzzzはこんな与太話をしていました。
『隣のお姉さんが好き』のお姉さんが好きな映画がレンタル100円セル580円に。
うそだろお姉さん、まさかベゾスと……?
{お姉さんとベゾスはとくに無関係でしょうけど、でも、さまざまな創作物がキャラクターをその所持品とか愛読書とかで間接的に描写するのの応用として。たとえば古くて渋い映画好きのキャラクターのオススメ映画群を検索かけてみると、本屋さんで売られてる謎の安売りDVD群とおなじ(ただまぁ画質音質などはアレだけど掘り出し物がけっこうあると評判である)、とか、社会派な物知りキャラの知識をよくよく調べてみると『BS世界のドキュメンタリー』が大体ひっかかる(ただまぁ一概に「浅い」なんてことは無くて、18年に邦訳の出た本『「おいしさ」の錯覚 最新科学でわかった、美味の真実』で取り上げられた知見は、『BS世界のドキュメンタリ』で12年に放送されたものと結構かさなってたりする)、とか、なんかそういうサブテクスト自体にも含みをもたせる形で人物像を描く作品も、きっと色々あるんだろうな……
(物語上ではオシャレなはずのキャラがしまむらブランドである……とか、あるいは音楽初心者が異様に高価でめずらしい楽器を持ってる……とかみたいな製作上の都合をかんじさせる妙チクリンを、そこをふくめて意図的に物語・メインキャラの根にする作品も、きっと色々……)}
14話を読んだぼくは「こ、こういうかたちで文脈を築いていくのか……」と感動しつつ、つらくなってしまった。
どういうかたちのどんな文脈?
心愛「えいが(もぐもぐ)映画で気に入ったら原作読むとかでもいいかもですね」
紡「あ~なるほど! さすが心愛ちゃん」
心愛「原作小説アリの映画っていうと…スティーブン・キングとか?」
紡「あ~! 『スタンド・バイ・ミー』とかいいかもな」
心愛「紡さんだから『シャイニング』とか言うかと思いました」
紡「いや読書感想文に『シャイニング』はいかついだろ…」
マンガクロス、藤近小梅『隣のお姉さんが好き』第14話「なんか意地悪な心愛さん」p.7
心愛さん紡さんがワイワイキャッキャと創作談義をし、たーくんが蚊帳の外にいる……という14話の展開は一見、過去エピソード第4話「あんまり見たくなかった」を思わせますが。
あちらと明確に違うのは、かれ彼女が夢にむかって頑張る芸術家の卵たち(=好きなお姉さんが映画好きだから、一緒にいる時間を増やしたいから映画を観るたーくんと隔たりのある、違うタイプの人びと)ではなくて。心愛さんと紡さんもまた、『シャイニング』という原作者が映画版をきびしく批判したことで有名な作品について、含みなしに話題にするようなあっさいあっさい映画/小説トークをするような人々である、芸術を肴に毛づくろいをしたい人々である(たーくんと同じ穴の狢である)……ということが示されていることですよね。
(前話13話で心愛さんが漏らした「たーくんはちゃんと映画観てるなぁって」で色濃くなってきた)別方面のつらさが明確になってきて、つらい。
好きなお姉さんが、何とか仲良くなろうと小細工を弄する俺の想いや行動を冷めた目で見てくる(これは仕方ない。その気のない人から欲気を向けられるのは苦痛でしょう)一方で、自分の好きな人に対しては俺と同じようなあっさいムーブを取っている……!
『君の膵臓が食べたい』から焼肉トークへ転換する姉のやさしさと頭の良さに癒されました。
▼たーくんの精神性「ニブさ・ポジティブさ・未成熟ゆえのノーダメージ」は、『GANTZ』や『ワートリ』トリオン体ばりの発明なのではないか?
たーくんのタフさがすごい。ポジティブなのと、あと未成熟ゆえにいまいち言葉の裏を読めないし読まない少年だ……という彼の造形。これは『ワールドトリガー』のトリオン体ばりの発明なのではないかという気がします。
トリオン体というのは、劇中世界にあり人々から生み出される(?)エキゾチックエネルギーで、RPGのMPとか『ドラゴンボール』の気とか『ハンター×ハンター』のオーラとかみたいなものなのですが。
それらとちょっと違うのが、そのエネルギーを材料にして、自分そっくり・かつ・自分が好きなように動かせるテレイグジステンス・ボディを作り出せる点にあります。
そうして作り出された身体=トリオン体は、何度も作り直すことができ、トリオン体をつくりだすのに必要な量のトリオンも個人差はあれども量・頻度ともにけっこう簡単に生まれるらしい(たとえトリオン生成量が極端にすくないと評される人でも、トリオン減った・切れたので1ヶ月1年戦闘復帰できません、みたいなことはない)。
ということで『ワールドトリガー』では、首ちょんぱや胴体分断などの初見殺しの一撃必殺技とか、手足を一部欠損した状態での危機的状況での戦闘継続などが頻発する、「ほかのバトル物よりも過酷、だけどキャラが(戦力外や死亡によって)退場することが(物語の現在時制においては)ごく稀」という、なんともすごい設定となっています。
『ワートリ』以前だと、謎のハイテク存在から招集されて以後戦闘終了までのあいだに生きてさえいれば戦闘中のケガがリセットされて五体満足で日常へもどれる『GANTZ』は、ぼくらアラサー世代だと忘れてはいけない存在ですね。
回復魔法がある世界やら、タイムトラベル・時間ループ物やらは、一見すると悲劇を克服する気楽な物語/痛みをなかったことにしたい責任逃れ的な物語のように見えますが。でも場合によっては、むしろそうしたガジェットを用いることで過酷だったり悲劇的な状況を手を変え品を変え何度も何度もおかわりするサドマゾな欲求を満たす物語構造をとる作品もあるように思えます。
(悲惨のおかわりとしての回復魔法/時間ループ物は、上とはちがう方向性で底抜けに責任逃れなお気楽物語といえるかもしれない)
(時系列は前後しますが)最近話題の『タコピーの原罪』なんて、まさしくそういう情緒をつよく刺激してくれる作品でしたね。けっきょくやり直せる方法があるのにそれを複数回伏せることによって、「一回性の取り返しのつかない暴走をしてしまった」という気持ちを読者に何度も何度も味わわせることに成功した、とても優秀な作品でした。ゆるさんぞ。
……『隣のお姉さんが好き』のたーくんの、「ふつうであればそれ一つで物語の幕がおろされる、相手からのNGや悪意。これ(ら)をそうと認識できずノーダメなので、いつまで経っても物語が終わらず試合続行できる」という未成熟性・ポジティブな精神性は、恋愛・青春モノ分野でのすごい発明なんじゃないでしょうか。
『隣のお姉さんが好き』は『僕ヤバ』のような夢もないし『タコピー』のような絶望もなく、ただ「自分の気持ちなど相手にとっては何の価値もない」という、あのみじめさが蘇ってつらくなりますね
— まこ (@mako_0722) 2022年3月23日
かれのバリアとタフネスのおかげで、ぼくら読者はきっついきっつい青春のかさぶたを何度も何度もベッリベリ剥がされていけるというわけです。
ラブコメ漫画において、難聴主人公なんて揶揄が一般的になってどれくらい経ったことでしょうか。
恋愛・青春マンガにおけるポジティブな感情を引き起こすピークのひとつである「想い人への告白」を、そのときたまたま主役の耳に入らなかったことで無効化する展開が複数の作品であらわれたことを思い返せば、ネガティブ方面でも同じような発明が誕生するのは当然のながれでしたね。
もっとも、「はたして心愛さんがそんなひどいことをずっと言ってられる精神性のひとか?」とそんなこともないと思いますし、たーくんだって大なり小なりダメージは入っていそうだし、ここまでのやり取りのなかでも見受けられたとおりたーくんの変化も書かれもしています。
「いまのふたりならこういうやり取りになってしまうけど、ふたりの関係が変わるか、ふたりの弱さや強さによってこうした温度感はそのうち終わるだろう」
と思うような自然な展開だと今作についてはとらえていますが、その設定はすごいものだし。これを技芸として解析・再現する作家たちによって、さらにすごい未来が待っていることでしょう。どうなるんでしょうねこれから。
岩原裕二『クレバテス−魔獣の王と赤子と屍の勇者−』4巻まで読書メモ
それは何ですか;
『いばらの王』、『Dimension W』などアニメ化作品をてがけてきた岩原裕二さんの最新作です。
今回はなんと、剣と魔法と魔獣のファンタジー!
読む人への注意;
コミックスがモノクロ版とフルカラー版がある。(ぼくはモノクロ版のほうが好き)
序盤のあらすじ;
掲載媒体のLINEマンガで3話途中まで読めるのと、Kindleで1巻が3/29・23:59まで期間限定無料試読できる。
「我はクレバテス人属全てを殺すと決めた。恨むなら人属としてハイデンに生まれたことを恨むといい」
「待って……子供は! 生まれる時と場所を選べない…!」
「……」
「大人があなたにどれだけひどいことをしたからって……それがこの子の死ぬ理由になるだなんてあんまりだ。まだ立てもしないのに…」
13人の勇者がそれぞれ携えた至高の魔剣を満足に使わせる間もないほど瞬時に返り討ちにした魔獣王は、勇者たちを送ったハイデン王国へ逆に攻め込み、王都を壊滅させる。王が斃れ、穴が開いて夜空が見えるようになった王城をあとにしようとした魔獣王の耳を、叫び声がつんざいた。
桃色の髪の赤子が泣いていた。
そのまま放置すれば死ぬだろう、我が手を下すまでもない。去ろうとした魔獣王だったが「助けてください」との別の声が赤子の隣の瓦礫のしたから発せられたのを聞き、足を止める。
瓦礫の下敷きとなりながらも赤子を無傷でまもった黒髪の人属と問答をした魔獣王は、その大きな尻尾を、刺すのではなくおくるみをひょいと摘まむのに使うことにした……というお話です。
読んでみた感想;
(3巻がでたくらいのところで岩原氏はナタリーからインタビューされたらしい。そのうち読む)
いま出ている4巻でひと区切りついたけど、「おれたちの戦いはこれからだ!」エンドではなく、以下続刊らしい。よかった……。
1話だけ読んで「異種間子育てで情が生まれちゃうやつっすか? 好きなやつ~!」と早合点しちゃったんですが、そんな甘っちょろい感情移入とかするようなタイプだったら、魔獣の王として人里離れた根城で永らく暮らしてなんていないだろう当然として、われわれが虫を育てるレベルの感覚で赤子を育てようとする。
赤子が空腹を訴えれば魔力をそそいで回復させればなんとかなるからそうしてしまうし、粗相をすれば糞便をエサとする蟲たちのもとへ落として穢れを除く。
とはいえ気高い魔獣の王なので、「正しい人属の育て方は"これ"ではないんだろうな」というのも分かるので、「そうだ、さっき襲いかかってきた勇者のなかにひとり女がいたな」と、人の赤子の育て方について聞き出そう/保育者として使役するためだけに死者蘇生(ネクロマンス)する。
独身だから赤子の腹は満たせられないと勇者が答えれば、じゃあ乳母をさらいに行くか……と近所の集落を訪れる。
人属にかんしては無知な魔獣王をガイド役にして、劇中世界の人々がどんな暮らしをしているのか? ハイデン王国だけが鋳造できる至高の魔剣とはなんなのか? 人属があやつる魔術とはなんなのか? 伝承どおりとはいえ、魔獣王とは永らく睨み合うだけで休戦状態であったハイデン王国がなぜそこまで威信をかけた魔獣王狩りをしたのか? 手ぐすねしている存在はいないのか? ……などなどを描き出していきます。
大国ハイデン王国が墜ちたということで、つまりハイデンだけが作り出せる至高の魔剣とそれをつくりだす魔法の炉も所有権があやふやになったということで、他国はもちろん国内でもさまざまな蠢きがあり、平時では取り繕われていた下にどんな顔があったのかが露わになっていきます。
そうして見える顔たちが、岩原裕二らしい凝った厚みと幅があって素晴らしい。 たとえば乳母をもとめて偶然おとずれた野盗のアジト。
ここで『クレバテス』は1巻ぶんくらいの文量をついやすのですが、そうするに足るだけの豊かな書き込みが、名もなき野盗とそのアジトにはありました。
野盗が野盗として暮らし続けるには、ふつうに考えれば強盗を成功させるだけの武力と、そうして得たものを利益に還元できる市場の存在が必要となる。
『クレバテス』はふつうに考えれば当然もってなければおかしい野盗の武力を、頭数や腕っぷしのほか、地元ハイデン産の魔鉱をつかった(だけの)ごくごく程度の低い魔剣にあるとします。そしてさらには、ハイデン王国の情勢不安{=正当な魔剣の供給停止(=魔剣の需要や価値の上昇)}にかこつけて、ニセ魔剣を正当な魔剣と偽り売ろうとする算段を立てていることを描く。
一四八五年のこと、名だかいオリヴィエ・マイヤールが、オルレアンで四旬節の説教をしたときには、たいへんな数の人が、まわりの家々の屋根にのぼって説教をきいたという。屋根葺き職人は、六十四日分の修理代金を請求している。
中央公論新社刊(中公文庫)、ホイジンガ(堀越幸一訳)『中世の秋 上』kindle版5%{位置No.6508中 246(409ページ中 20ページ目)}、「Ⅰ はげしい生活の基調」より
歴史学者のホイジンガ氏が『中世の秋』で「人生の出来事は、いまよりももっとくっきりとしたかたちをみせていた。悲しみと喜びのあいだの、幸と不幸のあいだのへだたりは、わたしたちの場合よりも大きかったようだ」との書き出しにつづけて、生活の種々相が残忍に公開されたこと(「地位、身分、職業は、服装でみわけがついた。大物たちは、武具や仕着せできらびやかに飾りたて、畏れとねたみの視線をあびてでなければ、出歩こうとしなかった」*2「ハンセン病を病む人たちは、ガラガラを鳴らしながら、行列を作ってねり歩く。教会では、乞食が哀願の声をはりあげ、障害のある身体をさらす」*3)、鐘の重要性、刑罰の重さ、巡回説教師たちの雄弁がどれだけ上下の階級をとわず民衆に響いたか事例を複数列挙していくなか挿し込まれたこんな記述。
六十四日分の修理代金に、中世人の巨大感情ぶりだけでなく、「もしかしてイベントにかこつけて多少ふっかけて請求してない?」と職人の商売根性を疑ってしまうようなぼくが興奮するような書き込みです。
{不勉強なので、野盗の仕事や暮らしに関する記述をうまく引っ張ってこれないのでアレですが(※)、『ノッティング・ヒルの追い剥ぎたち』(あとで論文リンクを張る)によれば、路上で追い剥ぎをしていた集団は、犯行が露見したら「聖域特権」をもとめて教会内部に逃げ込もうとしたり、「聖教徒特権」の条件をクリアするためにいくつかの教会の祈りの言葉を暗記していたりしたそうだ。
(※
伊藤進『森と悪魔: 中世・ルネサンスの闇の系譜学』の盗賊的な項は文学からの引用が多くて、実際がどうかがよくわからなかった。ある作家のエッセイ・祖母からの聞き書きとして19世紀台でも「森は野盗が出るから危ない。なので捕まえた賊はさらし首にして吊るしていた」みたいな話は出たりする。
手持ちの中世本だと、戦争行為に付随する略奪行為のはなし(戦場の中世史)や、前触れなしに攻め入り・略奪したあと事後報告で誓書をだして「フェーデ」をしたことにする、泥棒騎士・傭兵のお話が多くなってしまう)}
ここには衣食住があり、意思の異なるひとびとが不満を抑えながらも共に過ごす社会がある。不満があっても吐き出せない、共に過ごさざるを得ない上下構造の社会がある。
野盗が暮らしていく当然として、暴力や性暴力のはけ口にされたり、掃除洗濯料理などの雑務をめいじられる、つらい境遇の辛い境遇の女たちがいます。一言「つらい境遇の女たち」と言っても、何から何までやらされるひともいれば、うまく立ち回って性奉仕だけで暴力や雑務から逃れられるひともいる。前者が後者を疎んじているかというとそんなこともない。
アジト生まれアジト育ちの女(前者のタイプ)がこどものころは、実の母が野盗の相手をすることでじぶんがそうした暴力にさらされないようかばってもらいながら成長したし、母が蒸発し後ろ盾のなくなったおとなになってからの時分では歯が抜けるほどの暴力にさらされましたが、アジトヘ補充されてきた見目麗しい後者が、野盗のいない二人だけのときに男への取り入り方を教えてくれたことで、暴力だけは避けられるようになりました。
こういう夢と現実のギャップのなかで折り合いをつけるもっともらしいふるまいは、野卑な山賊だけでなくそのほかの階層のひとびとにも窺えます。
勇者が魔獣王に挑む、という物語のきっかけからしてそんな代物です。
「「勇者の中の勇者 ハイデン王より賜りし武器で4体の魔獣王を倒す」「人々は世界の本当の大きさを知る」……だいたいそんな感じだ」
「魔獣王って強いの?」
「そりゃ強いさ 噂じゃ天地を引き裂くって話だ」
「だからさ ハイデンの王から特別な武器を賜る必要があるんだよ」
Line Digital Frontier株式会社刊(LINEコミックス)、岩原裕二『クレバテス−魔獣の王と赤子と屍の勇者−』1巻kindle版40%(位置No.217中 86~7)、「第3幕 落ちぶれた勇者」より
のちに13人の勇者のうちのひとりとなったアリシアは、幼いころ父とそんな話をします。でもそんな話を信じていたのはほんの一部だけでした。
「にしても国王様が死んだってのは本当に本当なのか?」
「ああ本当らしい 魔獣王討伐に失敗して逆に殺されたんだと」
「今までだって何度も失敗してたのになんで今回に限って」
「今までは魔獣王にたどり着いた勇者はいなかったんだよ つーか魔獣王に本気で挑むヤツなんていなかった 『勇者』なんて肩書きただの飾りさ」
「王の『至宝』の剣欲しさに勇者になっただけだ ひどいヤツなんて授かったその日に売りやがった」
「ああその話ならオレも知ってる 王も気付いた 剣を作っても伝承に挑む者はいない だからこの15年鉄を打つのを止めたんだ なのにどういう訳かここにきて13人も勇者を選んだ 聞いた話じゃ城の前でパレードまでしたそうだ」
「マジかよ」
Line Digital Frontier株式会社刊(LINEコミックス)、岩原裕二『クレバテス−魔獣の王と赤子と屍の勇者−』3巻kindle版40%(位置No.203中 23~4)、「第13幕 勇者の悪い噂」より
木工職人の町シロンの宿の酒場では男たちがそんな話をかわします。
『クレバチス』の魔獣(王)が牛耳る世界のごく小さな領域で暮らす人属が伝承する、魔獣王を打ち倒して世界を広げる夢物語と、それにたいする劇中現代人の冷めた目線。
これらは、歴史家ホイジンガ氏が語る中世の秋の、形骸化してポーズだけになった十字軍遠征とよく似ています。
十字軍は、すでに久しく、特別税をとりたてるためのいい口実にもなっていた。フィリップ善良侯もまた、この機会を盛んに利用している。(略)
すでに、法王からは十字軍旗がおくられ、これをうやうやしく拝受したフィリップ侯は、それを押したてて、ハーグの町に、ものものしい祭列を組んだ。リールでの祝宴の席上、そしてそののちにも、遠征の誓約は、ぞくぞくと集まった。ジョフロワ・ド・トワジはシリアの港を調査し、トゥールネの司教ジャン・シュヴァロは献金を管理し、ギヨーム・フィラストルにいたっては、もうすっかり旅装をととのえ、遠征用の船もすでに徴発されていた。
人びとは、せっせと用意をしていた。ところが、けっきょく遠征は行われないだろうとの漠たる予感が、一般にひろまっていたのである。リールでの候じしんの誓約にしてからが、はなはだ用心ぶかいものであったのだ、すなわち、御神より支配をゆだねられた国々が、平和なやすらぎのうちにあるならば、出発しよう、と*4。
中央公論新社刊(中公文庫)、ホイジンガ(堀越幸一訳)『中世の秋 上』kindle版52%{位置No.6508中 3370(409ページ中 213ページ目)}、「Ⅶ 戦争と政治における騎士道理想の意義」より
ホイジンガ氏は、十字軍遠征とおなじく予告されながら一向に実行に移されないこととして「王侯の決闘」を挙げ、打算を見ますが、しかしそれだけだと読むことへ疑問をはさみます。
実際、このような解決法は、プリミティヴな正義感情を満足させ、同時に騎士道幻想にもよくなじむものであったから、しばしば提起されたのである。けれども、いかに周到に王侯たちの決闘のことが準備されたかを当時の記録によむとき、わたしたちは、つい疑念にとられて首をかしげてしまうのだ、これは、ただ、熱心なふりをしてみせている、こぎれいな遊びなのか。つまりは、ここにもまた、美しい生活を求める願いをみてよいのか。それとも、挑戦した王侯たちは、実際に戦いを予期し、期待していたのか、と。だが、当時の歴史家たちは、闘い好きの王侯同様、このことを大まじめに考えていたのであって、これはたしかなことである。
中央公論新社刊(中公文庫)、ホイジンガ(堀越幸一訳)『中世の秋 上』kindle版53%{位置No.6508中 3400(409ページ中 215ページ目)}、「Ⅶ 戦争と政治における騎士道理想の意義」より
そして、騎士道精神が現実の戦争において、それを発揮する者の害となった例を複数挙げもします。
騎士道精神と現実との衝突は、本当の戦争のさなかに、騎士道理想が自己主張しようとするとき、もっともきわだったかたちであらわれる。(略)
最上の指揮官たちさえも、もちろん国王までもが、しばしばロマンティックな冒険を求めて、あえて危険に身をさらすのであった。エドワード三世は、スペイン戦の護衛艦隊に無謀きわまる襲撃をしかけて、あやうく生命をおとすところだった。
ジャン二世の星の騎士団の騎士たちは、戦闘のさい、けっして四「アルパン*12」以上は退却しない、と誓わなければならなかった。残された道は、死ぬか、捕虜になるか、どちらかひとつという次第。かくて、この奇抜なルールのために、フロワサールによれば、さっそく九十人あまりの騎士が、声明をおとすことになったのである。
(略)
ある指揮官、ギヨーム・デュ・シャテルは、側面からイギリス勢を襲おうとした。というのも、イギリス勢は、海岸線に濠をしつらえて守りを固めていたからである。ところが、ここに、ジャイイ卿は、防ぎ手のイギリス勢を土百姓の群れと呼び、このような敵をさけるなど、まったく恥ずかしいことではないかといい、恐れるな、とデュ・シャテルをはげましたのである。この言葉は、デュ・シャテルの骨身にこたえた。「恐れるなどということは、ブルターニュ人のけだかき心のあずかりしらぬところである。されば、よろしい、すでに勝利はおぼつかず、死を予見してのことではあるが、必死の運をためすとしよう」。続けて、かれは、けっして命乞いはしないとの誓いをたて、そして出撃して殺された。かれの部下たちもまた、無残に全滅したのである。
中央公論新社刊(中公文庫)、ホイジンガ(堀越幸一訳)『中世の秋 上』kindle版55%{位置No.6508中 3505(409ページ中 221ページ目)}、「Ⅶ 戦争と政治における騎士道理想の意義」より
「故に 我が知りたいのはキサマら人属の 体を飾りたて歩く者たちの本質 キサマらはどういう生き物なのか 答えよ なぜ我の死を望んだ?」
「獣には理解できまい」
Line Digital Frontier株式会社刊(LINEコミックス)、岩原裕二『クレバテス−魔獣の王と赤子と屍の勇者−』1巻kindle版40%(位置No.217中 35~6)、「第3幕 落ちぶれた勇者」より
魔獣王に対峙したハイデン王は、結果的に王都を壊滅することになろうと本気で伝承を叶えようとした理由について語らず、「獣には理解できまい」とだけ述べます。
ここにzzz_zzzzは、打算的なひとびとだけでない、よく分からないモットーに突き動かされる中世人的な姿を見てしまいます。
***
奥行きある書き込みは人々だけでなく物々にもおよびます。
たとえば魔獣王が洗う面倒をおしんで、使役したヒトへ労をおしつけた赤子のおくるみ・下着。まかされた女勇者が川でそれを洗ってみると、そこには王家の紋章が刺繍されている。
たとえばハイデン王国の森ではぐくまれた町シロンの家具。森と目と鼻のさきの町である当然として、村の経済基盤は森の木を加工した林業・木工業なのだが、建物にはいってみると、立派な鉄製の家具がいくつかある。
「木工職の町なのに鉄のベッドってのも不思議だろ? 何十年も前に城の椅子作りの礼にと国王がくださったんだよ」
そうヨソ者へ説明する住民の顔は、誇らしさと自分たちの仕事にたいする自信がにじんでいる。
そうして出された細部が、物語やアクションへ絡んでくる作劇がまた楽しい。
0324(木)
■読みもの■
『メダリスト』5巻&アフタヌーン本誌4&5月号掲載回読書メモ
あまりに熱いヒキだったので単行本未収録の続きのエピソードを一話読み、さらに気になったのでもう一話読んでしまいました。
5巻と6巻収録分のエピソードで、また一段も二段もすごい作品になった。
ソシャゲのデッキ構成にたとえた演目解説は、わかりやすいうえに(高難度をキラキラSSR、低難度をRなどと)記号性や見た目の派手さも導入できてナカナカすごいアイデアだと思いました。
で、そうして観客席だと引いた目線でとらえられたスケートリングのなかはソシャゲのガチャばりの死屍累々、演者や演技(の四苦八苦、そういう演技をするに至った回想)がスプリットスクリーン的に多量に端的に処理されて無常感がすさまじかったです。
出番こそ短いけれどそれぞれの選手やエピソードが、これまで主役を張ってきた選手と変わらない丁寧さで描かれていて、まったく「その他大勢」ではない、きちんとした顔を有している。だからより一層つらい。
ぼくがblogなどをよく見るclementia氏がいつぞや、
「マンガでは過去のコマを多量に一挙に並置する大ゴマ(カルタ遊びの最初みたいにコマが乱雑に置かれたアレ)を描けるけど、映画・アニメなどの絵や音が時間軸的に一方向に流れていくメディアで同じ演出は難しいのではないか」
というようなお話をされていたような覚えがあります。
そのときぼくはいまいちピンとこなかったんですが(「"マンガほど一挙に"はできないだろうけど、それぞれの過去シーンをポンポン繋げたらそれなりに同じような効果が得られるのではないか?」と)、『メダリスト』5巻の演技シーン/『アフタヌーン 2022年5月号』掲載エピソードを見て、あれってこういうことかとようやく気付けました。
さすがにこれを映像作品でやっても(映像として適した形でコンバート・再演しても)、ここまでの凄惨さは出ないんじゃないか。
(動きやプロの役者の声や音がつけば、もちろんこのシーンも感情を揺さぶられるだろうけど。でもそれは、マンガ版のそれが生み出したものとは別物だろう)
0325(金)
■観た配信■
vtuber『【#カラオケ3D】春分のカラオケパーティ~~!!!デュエットたくさん!【にじさんじ / supported by DAM】』をリアタイ視聴しました。
エニーカラー社の運営するバーチャルYoutuber団体にじさんじに所属する面々が、3DカラオケスタジオでDAM様提供でカラオケ大会をひらいていたので観ました。
にじさんじも運営開始から早4周年、エルフ系Youtuberの花畑チャイカさんがカラオケで入れたナンバーは、先輩である1期生・月ノ美兎委員長がソニー・ミュージックから出した『みとらじギャラクティカ』や樋口楓ろーんがランティスから出した『Baddest』。
チャイちゃんの聞きこんでるんだろう堂々たる歌いっぷりもよかったのですが、「DAMに、入ってるんだな。にじさんじライバーの持ち歌縛りでカラオケ大会を開いたってもう、おかしくないレベルまできたんだな……」としみじみしました。
■ゲームのこと■
『星のカービィ ディスカバリー』1面プレイメモ
(なおこのプレイメモは、先日アップした個別の感想記事
へいろいろ膨らませたうえで使いました)
▼1-1面の完成度がすごい
1-1面の興奮たるや!
おなじみコピー能力を駆使して、"特定のコピーのアクションでないと変化がおこらないオブジェクト"のリアクションを引き出したり。『ディスカバリー』初登場となる"ほおばりヘンケイ"が複数種いっきにお目見えされ、まるでオモチャ箱をひっくりかえしたかのように目新しいものが次から次へと出てくるうえに。
"ほおばりヘンケイにより変化がおこるオブジェクト"が、ステージだけでなくクリーチャにも織り交ぜられている。
(カービィ⇒ステージやらカービィ⇒ステージやらだけでなく、NPCクリーチャの行動が⇒ステージに影響をもたらすオブジェクト変化があるのがすごいところだ)
『ディスカバリー』の荒廃したポストアポカリプス的世界にぴったりの、コンクリ建物をコウラがわりにするクリーチャの造形がすばらしいし、その対処法もまたよかった。
***
▼「スター集め」的な面ロック/アンロックへの一工夫がフラグに血肉を与え、プレイするモチベーションに
1-1面は"ほおばりヘンケイ"の本編レギュラーバリエーションを紹介していく顔見世ステージだったようで、ここで想像したような――新しいマップに行くにつれ新しいクリーチャが登場して、新しいなにかをほおばり、その場その時の解決を見出し活路を開いていく――なんでもありの百面相サバイバルは訪れない。
ただ、ステージは飽きがこないよう厳選されている感があり、また『カービィ』らしい雰囲気がゲームプレイを楽しくしている。
大枠は『マリオ64』のスター集めのようなよくあるシステムで、マップ探索しステージ内に隠されたフラグを回収し、それが一定以上の達成度になればボス戦ステージをアンロックできる……というもの。『ディスカバリー』ではワドルディ(=『カービィ』シリーズの雑魚敵・味方キャラ)がスターの役目をはたしている。
なぞの次元のゆがみによって異星へと吸い込まれた、カービィらプププランドの住民のうち、ワドルディは原生クリーチャへ捕縛・どこかへ運び込まれている不幸に見舞われている。
カービィはかれらを助けにマップを回る……という感じ。
ボス面は鍵のかかった門によって固く閉ざされており、そのステージで助けたワドルディが一定数以上になれば、それをアンロックできる。
まず、このステージ内目標が愛らしい~!
たとえば廃ショッピングモールをあつかった1-4面「行こうよアライブルモール」のクリア目標のひとつは、「まい子にならずにモールを出る」。
なんともとぼけた目標ながら、"正解ルート"以外をえらぶとやり直しになるステージギミックと、舞台となったモールらしさ、『カービィ』らしさが噛み合ったベスト目標のひとつだと思う。
もうひとつ、ステージロック/アンロックの模様について。
『星のカービィ ディスカバリー』はゲームによくある(フラグ集め・)ステージロック/アンロックの模様を、ワープスターに乗ったカービィが地域を浮遊する鳥瞰シークエンス(=ステージセレクト画面)に、前述した提示数だけ(プレイヤーが救出した)ワドルディがぽこぽこと大挙して、門をボコボコ叩いて壊す……という劇中舞台における事実描写として登場させている。
わちゃわちゃするアニメーションが非常にかわいらしいし、プレイヤーとしてもワドルディが単なるクリアのためのフラグ・変数ではなく、「自分が"助け出した"血肉のあるキャラなのだ&そして一緒に冒険をすすめてくれる仲間なのだ」というたしかな手ごたえが得られ、冒険するのがとてもたのしくなる。
■読みもの■
タイザン5『タコピーの原罪』(完)読書メモというかなんというか……
それは何ですか;
『タコピーの原罪』は、タイザン5氏による中編漫画です。このたび完結して、来月下巻も発売されるらしい。
読んでみた感想;
幕引きのナレーションと浮遊的なカメラワークに、『アメリカン・ビューティ』を想起し、「使用者や使用者らの関係性によって上下する『タコピー』のエアコンの温度描写も、思い返せば『アメリカン・ビューティ』のファイアバードの置き場所とつうじる作劇だったな」などの感想をいだきました。
きれいにまとまった傑作で、すばらしかったですが。
それはそれとして、『マイマイ新子と千年の魔法』やら『神様がうそをつく。』やらなにやらの「なかったことにできない/夢のさきでも逃げ場がないなかで、どうする?」 とした作品群のほうがよいかもしれないなぁと思いました。
でもけっきょく、ひどい方向へ転がった場合のしずかちゃんもまりなちゃんも東くんも、「だれかがそばに寄り添ってくれたり、話し合いをしたりさえすれば、だいぶ心境が変われそうだ」というところでその"だれか"になれそうなタコピーがどこかへ旅立って行ってしまったので、最後の未来とそれ以外の未来も、そこまで違いはないのかもしれません。
また、『マイマイ』にしても『神様が~。』にしても、取り返しのつかない事態に直面はするものの、じぶんで罪を犯したわけではない人たちの話だから、乗り越えるべきハードルがだいぶ違うような気もします。
0326(土)
■ゲームのこと■
きょうの『Wardle』
正解! きょうのことばは「家」でした。
Right! The word was: HOUSE
どんな事態がきてもいいよう、家のなかに十分な供給できるだけの食糧や飲料、薬を備蓄しましょう。窓にテープを十字に貼りましょう。
Prepare your home for whatever may come- you should have a sufficient supply of food, water and medicine. The windows must be cross-taped.
より多くのことばを推測すれば――それだけより多くの準備ができるのです。
The more words you guess – the more ready you are.
『星のカービィ ディスカバリー』2~3面プレイメモ
ボス面のワドルディ救出目標がだいぶ大変になってきた。
体力ごとに行動パターンが決まっていて、その数パターンをノーダメージで乗り切ればオーケーなのだが、ケアレスミスをどこかでしてしまってやり直しが増える。
3面のボスについては攻撃力アップのバフアイテムを積みまくって何度もリトライしてなんとかクリアできた。
0327(日)
■ゲームのこと■
きょうの『Wardle』
あなたは正解できませんでしたが、それでもわたしたちはこのことばを知ってほしいです。きょうのWARdleは「メディア」でした。
You didn’t guess it, but we want you to know it anyway. The wardle was: MEDIA
非民間のたしかな情報源(ラジオ、TV局、ウェブサイト)からの情報だけを信じるようにしましょう。たとえばwww.dsns.gov.uaや、www.npu.ua、www.mil.gov.ua、 www.moz.gov.uなどです。
Trust information only from reliable non-private sources (radio, TV channel, web-sites), such as www.dsns.gov.ua, www.npu.ua, www.mil.gov.ua, www.moz.gov.u
明日はまた別の知識のかけらを得る機会があります。
Tomorrow is another chance to get another piece of knowledge.
いちど出た問題だけど、まちがえてしまいました。この辺からニュースを追うのも、Wardleをするのもおっくうになってしまった。
『星のカービィ ディスカバリー』4~一旦のED・クリア後面-1’までプレイメモ
(なおこのプレイメモは、先日アップした個別の感想記事
へいろいろ膨らませたうえで使いました)
オモテ面の第4~6面をクリアした。
また、EDロール後の「To be continied」に導かれてウラ面の第1´エリアをクリアした。
4面、崇高美をかんじさせる氷雪のホワイティホルンズの古い教会(4-5面)にたたずむデデデ大王は、ウェザリングのきいた毛皮をまとい、『ロード・オブ・ザ・リング』的な風格がある。
おなじみのハンマーを取りこぼしたあと、太く長い石柱を得物にするなどの雄姿が、そうした気高いイメージをつよめていた。
(6つある6面をのぞいて、1面あたり5つなので)20回繰り返してきた「パラララッパ、ラッパパ♪」のファンファーレにあわせてダンスをするステージクリア・シークエンスが打ち崩されて、これまた『ディスカバリー』ボスクリア後のおなじみであった"ワドルディの町"へもどる流れも打ち崩されて、そのまま次のエリア(5,6,オモテ面フィナーレのあるエリア)へ行ったのがアツかった。
オモテ面フィナーレで明かされる『ディスカバリー』の舞台の歴史やストーリーボスの思惑などもまたすごくって、ほのぼのとしたカービィ周りの道中からガラリと一転、つよいコントラストが気持ちよかった。
(「それならもっと伏線を散りばめてくれてもよかったのでは?」と思わないでもないが、「予兆という予兆がないからこそ、転調がこれほど際立っていたのではないか?」という思いもあり、なやましい。
ウラ面で掘り下げがなされていくんだろうか?)
都市こそはすべて滅びつつも、春夏秋冬の風光明媚がたのしめた前半エリアにたいして、5面からの後半エリアは、過酷なうえにちょっと不気味だ。
5面オリジネリア荒野大地では、遊園地ではアトラクションとしてお目見えするだけだったオバケが本物のクリーチャとして登場するし、ボス(5-5面)の住処には、それまでの面でチョロチョロとワドルディ救出目標として貼りだされてきた「てはいしょ」をつかったギョッとするマップの作りこみがあり、初めて踏み入れたときは素朴にギョッともゾッともした。
6面では地には溶岩が流れており、空からは火山の火球がふりそそぐ。
ふよふよ浮いていればそれなりに攻撃や敵をやりすごせる『カービィ』シリーズにおいて、その優位性をうばうようなステージや敵の配置がさまざま組まれている。
6面がおもしろいのは、そこまで旧文明の残骸を間借りしているかのようだったクリーチャたちが自分で作ったのだろう新たな文明のにおいもあることだ。
そうして作られたケモノたちの文明は、どれもが好戦的なのがなかなかつらい。
ステージの入口には厳めしい顔つきをしたケモノの巨大なモニュメントがあり、そのさきでは木組みの物見櫓の上から見張りのケモノが侵入者がこないか目を光らせている……
……カービィに対して明確な敵意・害意が向けられていくことになるのだ――ネガティブな意識が、モノとして建築物として具体的な形をもって練り上げられたのを見る。
6面で原生クリーチャたちが築くステージは、プレイヤーにとってホームグラウンドとなる"ワドルディの町"がほのぼのと牧歌的・ミニゲームたくさんのストーリークリアとほぼ関係ない寄り道ステージであることとこれまたきれいな対照性をきずいていて、なんかいい感じにほっこりエピソード(と「いやほっこりするけど、ゲームとして大丈夫か?」と不安になった)としてバズリ散らかしている任天堂公式スタッフインタビューでHAL研スタッフが言った「カービィがかわいそう」ということばの多義的な含みを知ることとなる。
しぃ虐、ゆ虐、ちいかわ愛好者のそれである。
かわいそうはかわいい。
HAL研究所はたいへんな逸材ぞろいなので、「崇高美からサイコホラー、なんでも演出できるなHAL研究所……」と感心してしまった。なんでもできるな。
***
プレイしていていちばん興奮したステージは1-1面。
おなじみコピー能力を駆使して、"特定のコピーのアクションでないと変化がおこらないオブジェクト"のリアクションを引き出したり。『ディスカバリー』初登場となる"ほおばりヘンケイ"が複数種いっきにお目見えされ、まるでオモチャ箱をひっくりかえしたかのように目新しいものが次から次へと出てくるうえに。
"ほおばりヘンケイにより変化がおこるオブジェクト"が、ステージだけでなくクリーチャにも織り交ぜられている。
(カービィ⇒ステージやらカービィ⇒ステージやらだけでなく、NPCクリーチャの行動が⇒ステージに影響をもたらすオブジェクト変化があるのがすごいところだ)
ただし"ほおばりヘンケイ"のバリエーションは以後、ここで期待をふくらませたほどには増えていかず、また、"特定コピーのアクションにより変化するオブジェクト"もオブジェクト同士のアクション・リアクションによる相互作用もそこまでいろいろ出てくるわけではなかった。
そういったわけで今後のステージの肝要は「序盤で顔見世した"ヘンケイ"バリエーションをどう応用していくか?」という具合になっていき、つまり、
「地面にヒビがある……とんがりほおばりの出番だな」
「こわせないカベがある……自販機ほおばりの出番だな」
とか、そういうあてはめ問題や計算ドリルを解いていく作業感が微妙にちょっと出てきてしまうのはどうしても否めない。(とはいえ各ステージはよく考慮され、またそういう予想にたいするズラシもあるので、ダレや飽きにつながらない程度のバリエーションはある)
1-1面で期待したような、なんでもありの百面相みたいなゲームもやってみたかった気はする。するけれど、バリエーションのしぼられた所作を繰り返したことが、フィナーレのクイックタイムイベントを織り交ぜたムービーパートを(プレイアブルパートとシームレスな)手ごたえのあるものにしていて、最初は「そんなところもほおばるの!?(笑)」とニヤニヤしたあの"ほおばりヘンケイ"に、最後はただただしみじみ感じ入ってしまった。
終盤なかなかの大風呂敷が明かされ、広げられはするものの、全体としてはダイアログやモノローグをいくつも積み重ねていくような作品ではない。そしてまた、マップや小道具にサブテクストを無数に散りばめ多重に織り込み、それについて深く読み込めば今作の事件の全容やそれぞれのステージの物語や星の歴史が浮かび上がってくるようなタイプのストーリーでも(多分)ない。
(たしかに、異星の文字でえがかれた企業の名前や会社としての詳細などは、ガシャを手に入れることで知れたりする。しかしあくまでランダムで入手できたりできなかったりするガシャの景品であり、それを知れるかどうかは確率問題だ)
とにもかくにも"ほおばり"と救出のアクションを延々と重ねていく作品であり、その手ごたえだけで、これほどまでの情感がわきあがるのだという作品でした。サイレント映画の質感にちかい。よい活劇をあじわいました。
0328(月)
■自律神経の乱れ■
手に届かない高みの、飾りとしての本棚に置かれた本について「本は読むものなのに本末転倒だ」と非難することばより……
……手に届く本をじっさい読んでその中身を語ることばのほうがごくごくわずかなような気がして、「これをなんかうまいこと端的にまとめればバズり散らかせるのでは~!? おれも人気ブロガーになるぞ~!!」と奮起したのですが。思いの丈を日々140字に収める言語的鍛錬を重ね続けているかたがたとちがって、だらだらブログ運営者にはそんなすべはなかったのでした。
0329(火)
何をしていたんだったか……。
0330(水)
■観た配信■
卯月コウ切り抜き師「いっぞ!」チャンネルさんの帰還を喜ぶ
リンク先は4月8日『【APEX】遊びの時間は終わりだカスタム | 葛葉イブラヒムうるか【にじさんじ/卯月コウ】』からの切り抜きです。
エニーカラー社の運営するバーチャルYoutuber団体にじさんじに所属する御曹司系中学生vtuber卯月コウ。
そのトークとセンスから、「卯月コウさんのチャット欄治安が悪すぎない?」とにじさんじ内外から心配されるような(言ってしまえば2ちゃんっぽい)独特のファン層を形成している配信者さんで……
配信の面白いところをピックアップしてハイライトする第三者による「切り抜き」動画も、独特の凝ったものが見受けられ、とくに『同業者によく推されてるようで推されてないちょっと推されてる御曹司Vtuber【卯月コウ】』は、さまざまな配信者が雑談やチャットで卯月コウについて語った一言二言を網羅して、うづコウリスナーであるヨルシカn-bunaさん作曲の歌とともに映していく……という労作。
そのかたとは別の方で、「いっぞ」チャンネルという切り抜き師さんがいらっしゃいまして、このかたもすごい。
Vtuber最協決定戦は本番まえに一週間くらい練習カスタムマッチを連日おこなうのですが、ほかのFPS大会(の練習スクリムマッチ)の配信同様、深夜まで及ぶ長時間配信となります。
これをこまかくこまかくハイライトしていたのが「いっぞ!」チャンネルさん。
去年のうづコウさんのチーム雪月花は、和気あいあいと会話しながらも練習カスタムマッチで何度もチャンピオンを獲った優勝候補で、いっぞチャンネルさんの更新も連日におよんでいたのですが、本大会後にぷつりと沈黙してしまい、年が明けてしまった。
雪月花が惜しくも優勝をのがしたことによるロスなのではないか……と心配していたのですが、またV最協の季節がやってきて、氏も活動再開したようでした。
お元気でなにより。
0331(木)
■身の回りのもの■
洗濯機がこわれた
洗濯機がこわれたので修理をたのむ。