すやすや眠るみたくすらすら書けたら

だらだらなのが悲しい現実。(更新目標;毎月曜)

日記;2021/02/02~02/08

 日記です。1万3千字くらい。『ある日…』酒の使い方うめ~っと感心したり、文野ニャンキャット長時間配信に付き合ったりした週。

 ※言及したトピックについてネタバレした文章がつづきます。ご注意ください※

 

0202(火)

 ■読みもの■

  藤子・F・不二雄著『ある日…』読書メモ

dorachan.tameshiyo.me

 それは何ですか;

  『ドラえもん』などで知られる藤子・F・不二雄さんの短編漫画です。期間限定無料配信されていました。子・F・不二雄SF短編<PERFECT版>(7)タイムカメラ』kindle版84%(位置No.372中 310)}に収録。

www.amazon.co.jp

 序盤のあらすじ;

 坂道の片側に住宅が隙間なく、反対側は自然をしっかりと擁壁した夜のベッドタウンの通りを、ハゲ頭の中年男が封筒片手に歩いて下っている。

「やあ、立花さん」「やあ、土井さん。いいタイミングでしたな」

 ハゲ頭に声をかけたのは、鞄を提げたビジネスマンだ。年齢こそハゲ頭と同じくらいの年齢に思えるが、こちらはヒゲも髪型もぴっしり整え、スーツもストライプのネクタイを締めた洒落者だ。正反対のふたりはそのまま会話をつづけ並んで歩く。

「今晩は」「おじゃまします」「どうぞどうぞ、佐久間さんはもう来てますよ」

 ふたりが訪れたのはひときわ立派な住宅。

 ベレー帽をかぶった恰幅のよい主人にとおされた広間には、酒瓶にごちそうののった大皿、体育座りをした黒髪長髪・瓶底眼鏡のオタクがいた。

 そして中央でひときわ目立つのは――普段は隅にあるだろう――棚の存在。棚のうえには映写機が載せられている。

「えー、われら みどりヶ丘シネサークルは、映像表現を通じ地域文化の向上に微力を尽さんものと結成され、人数こそわずか四人ですが優秀なメンバーがそろって、ここに第一回英社会を開催できますことは、私の深くよろこびとするところで……」

 クジ引きでいちばんを引いた洒落者のビジネスマンがカバンから取り出したフィルムをセットする。

 Doi Film present

「これはこったタイトルですなぁ」「20世紀フォックスを思わせなくもないが……」

 世界を駆ける男

 作りこまれたタイトルから、ビジネスマン土井そのひとが登場、妻子に見送られた土井は家を出発、香港を走りハワイを走る……土井はどこまで走るのか? そしてそのほかの好事家たちの自主製作映画はどんなものか? というお話です。

 読んでみた感想;

 いぜん期間限定無料配信されたさい読んだときにもふと思った――けれど調べられないままにしてしまっている――ことなのですが。これ、語り口としてはののけ姫』などに近いようなかたちで世界設定・世界観が提示された作品なのではないか? という気がしてなりません。

〔つまり物事の因果がいささか迂遠なかたちで示されていて、「よくよく振り返るとあれは、こういうことだったんではないか?」と察せられるような作劇。*1

 複数ある劇中劇のうちの第三フィルム、『スター・ウォーク』

 これの元ネタ『スター・ウォーズ』は、冷戦期アメリカのレーガン大統領が発表した戦略防衛構想のニックネーム(「スター・ウォーズ計画」)にもなりました。こことラストとは簡単につなげられます。

 そして最初の劇中劇『世界を駆ける男』でも、中産階級の人物でさえ仕事でさまざまな国へ出かけるようになった社会である/そうした活動が可能なほど航空技術が発達した世界であることが提示されている……と考えると、線がないわけではない。

 ただ、第二フィルムである「首都圏が西へ西へと膨張していたころ」*2から撮影を開始したマイホームからの都市の発展コマ撮り映画は、そうした方向でどうという風に言いづらい。「山が見る間に崩れて造成されていく」*3過程には、爆薬の類いも使われたかもしれないけれど、そこは劇中描かれていない。これはちょっと冷ややっこかもしれない。

{そのへんの意図があるなら劇中フィルムに、過去の戦争の痕跡とか冷戦の気配を盛り込みそうなものだ。

 たとえばWW2時代に掘った防空壕や軍需工場がこわされるとか、旧日本軍敷地やアメリカ軍駐屯地が変わるとか、ぎゃくに発展する都市のなかでそこだけぽかんと変わらず残されるとか……そういうのを書き込んだりするだろう}

  ***

 ただ、第二フィルム自体で映される、コマをまたぐと山が無くなり、またコマをまたぐと団地のたぐいがぼんぼん建ち並ぶ……長期間(8年)を定点で高速(8分)で見るからこそ観客が声をもらす変化は、4人の上映がおわったあとの会話で示される、世界の変化になかなか気づけないいま・ここに生きる私たちの変われなさ・見えなさ具合と対照的な気がしてきます。

 そうして見てみると(上で書いた「劇中現実の結末を迎えるまでのあいだに、劇中劇である第一~第三フィルムでこの世界がどんなものか暗示的な描写がなされているのではないか?」という見立てとは別の、一本の作品としての連関として)、第四フィルムとそこからの顛末は、やっぱりどうにもそれまでの劇中劇3フィルムなどなどのシーンと絡み合った"これ以外はない"というような強固さがあるように思えてならない。

 自宅の庭で両手を挙げて朝の体操をするふうの核家族(土井がつくった第一フィルムとおなじく夫婦+男の子)。下り坂の住宅街を手を掲げつつ走る小学生(第一フィルム・第三フィルム同様はしるひとの映像。今作第一コマの、ベッドタウンの下り坂を歩くハゲ頭の立花の姿)。そして唐突に終わる映像(継続的長期的に撮影をした第二フィルムの逆)

  第三フィルム『スターウォーク』の、コミカルな調子ながらも……伝令から司令の呼び出しをうけた(金物を床にならべていた)修理員が「さっきまで司令室のイスを直していたところなのに」と再度司令室に行けば、「司令なら今ブリッジに」と言われ、「それならさっきまでおれがいた金物室のすぐ上じゃないか」と来た道を引き返す……ご近所の様子さえわからない、巨大すぎるくらいに巨大な帝国というシステムと矮小な個の関係は、やっぱりどうにも示唆的じゃないでしょうか。

 

 ***

 以前読んだときはラストの展開にばかり注目してしまいましたが、饒舌な3者のオタク談議に、根暗そうな佐久間くんが無言ながらも体育座りでフレームインしつづける作劇のたのもしさに感心しましたし、そうして細部を気にしてみると、飲食物のつかいかたがめちゃくちゃうまい! 気安かったり不穏だったりする劇中の空気は、こういう小道具の使いかたの巧みさによる功績も大きいんでしょうね。

 そういうことに気づけた再読でした。

{第一フィルム上映前は、あふれんばかりの泡を浮かべたコップを片手に喋り。

 上映がすすんでいくにつれ水量が減り。

 いかにも大作な『スターウォーク』ではついにコップが置かれて(上映準備のすごさから”拝聴"の姿勢をとったのだろう)、上映後はコップが横に倒され転がっていたり、大皿はほぼ空となっている(飲み食いしながら楽しめる作品だった、ということなのだろう。実際フィルムもそういう内容だ)。

 根暗の佐久間くんがdisる第四フィルム上映前は年長者3人はコップなしで喋り(臨戦態勢というかんじの不穏な空気)、そしてフィルム上映後の年長者3人からのdisでもコップは持たれず、年長者からの講評と佐久間君からの応答がひととおり終わって、根暗の佐久間くんがひとり演説する最終ページでは、ハゲ頭が佐久間くんを見ずほほえみながら酒を注ぎ直している(聞く耳持たなさの強調/上映前とは別種の不穏な空気)}

 

  杉崎ゆきる著『D・N・Angel』4巻くらいまで読書メモ

 それは何ですか;

 杉崎ゆきる氏の人気漫画です。恋する気持ちがたかまると先祖代々うけついだ凄腕怪盗"ダーク"へと変身する主人公、彼らが恋する双子の同級生、凄腕怪盗一族と因縁があるらしい凄腕警察の学園ドラマ。

 読んでみた感想;

 アニメ版放送当時たのしく観た覚えがありますが、内容をほとんど忘れてしまっていて、「こんなややこしかったり展開が早い作品だったのか」とびっくりしました。

(主人公/ダークと双子の姉妹をめぐる四角関係は早々に一区切りついて、主人公が双子の一方と恋人関係になっていた)

 見た目も性格もぜんぜんちがうけど一つの身体を共有する主人公コンビと、性格はぜんぜんちがうけど見た目はそっくりな双子コンビとで、似通いつつも異なるコンプレックスを抱えていて「なるほどなぁ」と思ったりした。

 作り手の構想がどうかとか、実際のところはどうなのかわからないんですが……たとえば次のエピソードを読んだらなんか季節の節目の学校行事がはじまっていて、そして恋の鞘当て役となる生徒会の先輩がポップしたり。

 あるいは、すごいパワーとフットワークを有した映像作家が突然湧いてきて、偶然主人公をダーク関連のPVに起用したり(そしてその一件から彼に執着して、主人公の学校にたびたび訪れるようになったり)……と、無からキャラや設定が湧いて出てくるような展開があって、今後どうなるか読めないところがある。

 

 

0203(水)

 仕事休み。

 本を読んだりしようと思っていたのですが、Nijinyanjiを延々垂れ流して一日がおわってしまいました。

 ■観たもの■ネット徘徊■

  にじさんじ大型企画Nijinyanji(ぼくが期待するニャンキャットをお出ししなかった公式と、した文野環)

 いちから社の運営するバーチャルYoutuber団体にじさんじや海外にじさんじが横断する超大型企画Nijinyanjiが一日じゅうやっていたので付き合いました。

 世界中のにじさんじ配信者(ライバー)が、15分おき『Nyanyanyanyanyanyanya!』を歌って踊ってみた動画を公開していく……という企画。

 『Nya以下略』通称ニャンキャットは、何時間何十時間とリピート再生し続ける耐久動画もつくられていることで有名な動画で、当初の発表から想像したイメージは、にじさんじの日にライバーさんがリレーとはいえ十数時間延々歌いつづけるんだろうなぁというものでした。

 過去のにじさんじライバーの配信を見ても、にじさんじ所属でソニーミュージックから歌も出しているバーチャル学級委員長・月ノ美兎さんが、じしんのチャンネル登録者数60万人突破するまでの耐久配信で、ニャンキャットを踊り&歌い続ける配信をされていたのも記憶にあたらしい

 以下はプレスリリースをしっかり読んだかたなら起こらなかった落胆なんですけど、じっさいフタを開けてみたら15分おきに公開される動画は3分38秒の尺で、つまり動画4分⇒10分空き⇒4分⇒10分空き⇒……と歌ってない時間のほうがながい!

「想像してたんと違う……」となりました。

 また、動画がおわったら自動的に次の動画に飛ぶわけではないので、付き合うリスナーはじぶんで動画概要覧をクリックしてそこに提示されたリンクをクリックして別チャンネルに飛んで、チャンネルページの動画欄をクリックしてプレミア公開予定動画を探してクリックして開いて……としなければなりません。

 

 公式がリレー動画配信をしているのと並行して、「Nijinyanji」企画に声がかからなかった猫の擬人化ライバー文野環さんによる自主耐久配信がおこなわれていました。

 アーカイブがきちんと残るように分割しての配信で、朝9時から夜23時までの計14時間におよぶ長丁場。

  ぼくがイメージしたニャンキャット配信は、文野さんによるもののほうが近く、そして予想を超える楽しさがありました。

 イメージどおり延々ニャンキャットが14時間ちかく流れ続ける配信なのですが、予想を超えて良かったのが、文野さんがひとりで延々歌い続ける根性企画じゃないということですね。

 バーチャルの存在とはいえ文野さんも猫なので、歌いつづければ喉も枯れるし、便意だって催すし、昼も夕方もまたぐから腹だって減る。

 ……ということで、まずご自身の弟へ電話をし、配信でながれるBGMも聞こえない弟に「にゃんにゃんにゃんにゃか言い続けろ」と強要、弟がにゃんにゃか言っている間にラーメンを食べます

 文野弟「にゃんにゃんにゃんにゃか……」

 文野環「ズズーッ、ズズーッ!」ラーメンをすする音

 

 しばらくして、「なんでも屋さんってのがあるらしいじゃん?」と歌いながらインターネット検索、なんでも屋さんにニャンキャット歌唱を代行させようと電話交渉をします。

 

 交渉が失敗におわると、ツイッターのDM機能を利用してリスナーからニャンキャット歌唱動画を募集、届いた動画を事前確認なくどんどん垂れ流していきます。

 男性一般視聴者(通称ナンニキ)から届いた第一曲(低音きかせたイケメンボイスが「ニャンニャンニャニャンニャ」と滑らかに歌っていたかと思ったら、だんだんと文野さんがナンを作るのが好きだからか、「ナンナンナナンナ」と変わっていき、原曲とちがうけど何か耳について離れない中毒性あるメロディに変わっていく歌)ニャンニャン言ってるけど完全に念仏である般ニャ心経、「次゛は゛ミ゛ーの゛番゛だニ゛ャ!」ニャンちゅうのニャンキャットニャンニャン言ってるけどメロディはミッキーマウスマーチ、文野環をはげますコール(アイドルへのケチャかと思ったら「かっとばせーふーみーの!」と野球の応援歌)や、「サーターン! サーターン!」ノリのやつ)、文野環をはげますフィメールラップ、男性ラッパーからも投稿されて突如はじまるラップバトル、配信中にギター買ってきたリスナーによるギター歴10分ニャンキャットギター歴10年のリスナーによる上手いけどニャ以外合ってないゴリ押し適当ニャンキャットまじめに弾いた再奏ニャンキャット、ピアノ歴十年単位だろうリスナーによるめちゃうま本気ニャンキャット演奏野良猫ちゃんのオペラ風アレンジジューズハープニャンキャット口笛ニャンキャット口太鼓ニャンキャット定規ニャンキャット歯磨きニャンキャットオタマトーンニャンキャットソウルのコーラス系と、メロディラインの2パターン)……

 ……さまざまなニャンキャットが入り乱れ、さらには野良猫が複数の動画を同時に流して般ニャ心経+ボイパ+応援ミックスがすき)、DJ的なシュポポポと運営から注意のSlackチャットがとどき、電話がかかって野良猫本人がミュート離席する場面も。残念だが当然……とリスナーがおびえるなか、気にせず新たな募集動画を垂れ流す野良猫(つよい)

 そしてついに運営もSofTalk読み上げメッセージでDMに参戦!(?)してフロア熱狂。なかなかにぎやかな視聴者参加型企画になりました。

 

 猫ちゃんの強い(面白い)ところは、一回アウトが出た人でも再投稿してくれたなら拾って採用するけど、それでもダメなら温情かけずにサックリ却下できるところですね。

「わたしのファンだけど音痴で、ちゃんと歌ってるはずがそう聞こえないひとが、"歌を練習してリベンジしたい"って送ってきたから。さぁ練習の成果はどうかな?」4:01:50

ニャーニャーニャーニy4:02:09

 「期待して損したわ」4:02:12 3秒即切り!

 

 お昼すぎには、野良猫妹から折り返しのLINE電話がはいって 、

 文野妹「にゃんにゃんにゃんにゃか……」

 文野環ズズーッ、ズズーッ!ラーメンをすする音

 となったり(「なんでさー? いまさー、(平日昼間で)お仕事中なのにさー、4千人も(同時視聴者が)いるのぉ?」とリスナーに対して姉譲りの火の玉ストレートを放る妹猫)。

 また、同期であるにじさんじ二期生ギルザレン三世と連絡がついて

 ザレン「にゃんにゃんにゃんにゃか……」

 文野環「……」ミュート中

 

 猫ちゃんが連絡ついて歌唱代行させたりお願いを試みたのは、家族やなんでも屋さんのほか、後輩にあたるシスター・クレアさん、大後輩周央サンゴさんのほか、にじさんじ外の個人vtuberである犬山たまきくん、さらにはにじさんじ外部どころかバーチャルYoutuberでさえないUUUM所属の人気Youtuberあつしさん、少年革命家ゆたぼん、果ては大和証券Mリーグ2018で個人MVPに輝いた渋谷ABEMASの絶対エース・RMU(リアル・マージャン・ユニット)代表・多井隆晴プロ。

 さまざまなメンツが猫ちゃんのために集まってくれた、バーチャルリアルの垣根を超えた横断コラボ配信となりました。あったけぇな……。

 あきらかに寝起きで、配信中の電話かもよくわかってなかった風のギルザレンチャット欄では同期の物述有栖ちゃんも登場

 歌唱も息も絶え絶えで、野良猫とも(二人きりでは?)初めて話すらしいという(こともあってか、他コラボ者とちがって、離席中の野良猫が現況を適宜連絡いれてくれもする)、かわいそうな犠牲者……かと思いきや、「この配信が良かったと思う人は高評価低評価チャンネル登録うがい手洗いソーシャルディスタンス三密GoTo五つの小お願いします」の野良猫独特のあいさつを完全詠唱(!)するクレアさん

 野良猫から音沙汰ないなか45分くらい歌うこととなり、負けるか―! こんなところで負けてたまるかー! 1年A組ー! ふぁいおー! ふぁいおー! 俺たちはこの体育祭で優勝するってきめたんだ! このムカデ走で1位を取らなきゃ優勝は絶対にない!」とムカデ走に挑戦する学生寸劇をはじめたり、この配信中にチャンネル登録者数が数千のびて9万人突破のお礼のあいさつをすることになったり、「そんなことない! たしかにたまきくんはぁっ、ちょっとお金遣い荒いし……たまに痛いこととかするけどでもっ殴った後とかスゴイやさしいし、いつもンゴにやさしくしてくれるし!」とDV彼氏を恋人にもつ彼女寸劇をはじめたりンゴちゃん

 ご自身が飼っているリアル猫の鳴き声をミックスしたBGMによる万全の態勢で配信にのぞまれたあつしさん

 ご自身も配信中でNijiNyanji本編配信同様のおどりをリアルで披露しながら歌うこととなり野良猫リスナーからの詫びスパチャがとびかった多井プロ……と、協力してくれたかたがたの活躍・野良猫との関係もおもしろくって、たいへん楽しかったです。

 

 

0204(木)

 ■社会のこと■

  本物の男は「女性がたくさんいる会議はすすまない」と仰るけれど

news.yahoo.co.jp

 そんなシビアな即断即決の本物の男たちがきびきびとお仕事なさった結果が、この失われた30年だとしたら、さすがにもうちょっと落ち着いたほうがよいのではないかと思ってしまいます。

 

 

0205(金)

 宿直日。

 

0206(土)

 宿直明け日。枕がうまく調整できず頭が痛い。日中寝て過ごす。速達を出すついでに髪を切りに行くつもりが起きたら夜だったので終わりです。

 

 ■読みもの■

  中村なん著『いじめるヤバイ奴』期間限定全話無料配信を読む

natalie.mu

 むかし1話だけ読んでツラくなってそれ以上読めなかったんですけど、いじめが楽しくてやってる「本物のいじめっこ」の転校生・加藤くんとのイジメ対決(?)あたりで流れがわかってきて、メインヒロインの白咲さんとおなじく、苗字に色を含んだ青山さんが出張ってくる修学旅行編あたりからニコニコしながら読みました。

 主人公である仲島くんがかわいらしい。たまに見せるえすのサカエ来日記』ゆっきーが見せてくれるみたいな、希望にあふれた緩い笑顔を浮かべているときがすき。

 

 お邪魔キャラ感があった正義漢・田中くんやいけすかない敵キャラ加藤くんが、文化祭編、生徒会選挙編と経ていくにつれ、(加藤君はいろいろ変化があったキャラとはいえ、田中くんなんかはそのうざったい性格は冒頭から全くなにも変わっていないというのに)段々と味わい深くなっていき。さらなる色苗字ヒロイン緑田さんの得体のしれない性格や、モブキャラっぽかったミスコン優勝志望者・吹石さんなど、それぞれモットーや趣味の異なるキャラをどんどん増やしながらアンサンブルを奏でていく群像劇としてとても面白い。

 いかにもギャグです・その場の適当なやりとりですという具合に出てきた「新選組」とか、じぶんたちを獣にたとえたりするのが、なぜか経糸を編んでいってだんだんとその線を太くしていき、気づいたらしっかりした実を結んでいくところとか、不覚にも熱くなってしまった。

 

 無から設定が生えてくる感じとか、その意味不明さ(なんで生身の人間の顔がナイフをはじくんだよ?)、割り切りかたに関して言えば、この週に読んだ『D・N・Angel』よりよっぽどひどいと思うのですが、スラスラ読めてしまう。ふしぎ。

 「面白ければ(面白さのためならば)リアリティラインなんて捨ててしまってかまわないということを力強く示してくれた傑作」と言う声は聞くし、いったん頷きもしたけれど、かなり難しい選択に思える。

 「こっちのほうが良いから」と好き勝手にコースやゴールラインをずらされるレースを楽しめる人が言うぶんには納得いく評価だけど、ぼくはそうじゃない。そうじゃない人間がこうも楽しんでしまえているから不思議です。

 田中君が刀に夢中になるとか、新選組概念をお出ししてくるとか、加藤くんが勘違いしつつ乗ったりなんだりとか……主人公にとってお邪魔虫同士が結託したり結託できなかったりゴチャゴチャやること。こうしたあれやこれやは、ともすれば「勝手にやってろ」と吐き捨ててしまいかねないどうでもいいものに、あるいは主筋(と思われるもの)にたいするページの無駄遣いに思えてしまいそうなものです。

 ベテランによる大長編漫画『からくりサーカス』でさえ過去編で人気が低迷した~みたいな話も聞きますし、連載レースでは取りたくなさそうなライン。

  こうしたものを後々の最高に面白いシーンのために描いていくのは、けっこうリスキーな綱渡りなのではないか。

 

0207(日)

 ■読みもの■

  なろう小説は、わかりやすいタイトルに反して願望充足目的や快感のファストフード目的で読むのに向かない

 最近の作品を読めていなかったので『小説家になろう』をまた漁っています。ランキングの顔ぶれが結構かわっていて、未読作がいっぱい出てきました。

 ツイートなどを巡回させてもらっているかたがたの間でも話題になっていた高難度迷宮でパーティに置き去りにされたSランク剣士、本当に迷いまくって誰も知らない最深部へ……。~「戻ってこい」と言われてるかどうかもよくわからない。俺の勘だとたぶんこっちが出口だと思う~』は面白かった。

 尺もキャラも無駄がなく、きれいにまとまった良作でした。ランキング上位の作品をいくつか読んだうえで味わうとなおさら面白いと思います。いわゆる"パーティ追放モノ"の定型のズラしかたがうまい。

 

 さて『たぶんこっちが出口だと思う』とか、あるいはリスの聖杯』は珍しい部類で、なろう小説を読んでいて思うのは、

「槍玉にあげられがちな直接的なタイトルが掲げるような願望充足や快感を得ようと思うなら、いわゆる"なろう小説"ではなく、名のある出版社の作品を読んだほうがよいだろう」

 ということですね。とにかく忍耐力を必要とされます。

 連載作品なのでタイトルは別に内容の説明ではなく、「こういうお話になる予定です」という青写真にすぎないんですよね。

 たとえば90分の映画なら、最初の22分(1/4)で一幕が終わって次に~みたいなペース管理があるわけですが、『小説家になろう』の小説にはそんなん無いわけです。

 人気ランキング上位から、『下剋上』やら『謝ってきてももう遅い』やらを看板にかかげた作品を読んでみる。すると、主人公が底辺で何万字も延々修行にあけくれていたり、劇中世界の冒険者ギルドのこまごました説明や手続きに1話が丸々ついやされたりするために下剋上の下から進まなかったり、あるいは追放した側が自身の失敗を謝る場面に至っていないどころか失敗にまだ気づいてもいなかったり……なんて作品に出くわすことは案外すくなくありません。

 最近よんでなかったので、あれこれ新顔を読んでみて、無数の作品のなかから宝石を掘り出してくれるスコッパーのかたがたには足を向けて寝られねえぜ……となりました。

 

  『魔導具師ダリヤはうつむかない』読書メモ

 それは何ですか;

 甘岸久弥さんによる『小説家になろう』投稿作です。最新話数320話・計140万字におよぶ(『小説家になろう』らしい)大長編です。140話くらいまで読みました。

 序盤のあらすじ;

「すまない、ダリヤ。婚約を破棄させてほしい」 

 魔導具師工房の兄弟子かつ魔導具を納入している商会の次男トビアスと婚約していたダリヤ。トビアスからそう告げられたのは、ダリヤたちが新居に引っ越した次の日のことだった。

 双方の亡き父同士の約束とはいえ、トビアスに悪感情はない。婚約してからの2年間、良い妻になろうとトビアスに乞われるまま髪色を変え、背を丸め、地味に生きてきたダリヤだったが、思い返せば転生まえの世界でもクレームをつけるお客様にうつむき、進捗を怒鳴る上司にうつむき、デスクばかりを見る日々を送り、そうして日をまたいだ激務の果てに死んでしまったのだった。

 もううつむくのはやめよう。これからは自分でできる限り、生きたいように生きよう。

 ダリヤは新居を引きあげ、実家へ戻った。……というお話です。

 

 読んでみた感想;

 だいたい140話くらい読みましたが、終わりが見えませんね。

 141話「獅子と夏の大輪」で、129話で種がまかれたダリヤや彼女の売り込む魔導具"遠征用魔導コンロ"に否定的な目を向け・妨害工作もしかけたと云うお城のお役人を相手にしたプレゼンがひと段落つきます。ここまで読んで「やっぱりこういう、分かりやすい対立と解消エピソードであれば、ぼくなんかでも楽しめるなぁ」と思いました。

 14話「泡ポンプボトル」でダリヤが作って売り出そうと動き始めた泡ポンプボトルは、55話「商業ギルドで打ち合わせ」で販売をおこなう商業ギルドへのプレゼンがおこなわれ、77話「職人と職人」で共同開発先の工房から量産用の試作品がつくられ……と、市場に出るまで結構に時間がかかる。

 さきに話題にした遠征用魔導コンロも、ダリヤがひょんなことから交流をもった王国騎士団の魔物討伐部隊の若きエースのためにコンロを改良しようと思ったのが、89話のこと。50話ぶんくらいまたがったエピソードなわけです。(そして141話でお役人との直接対話がおわったあとも、コンロが部隊に支給されたエピローグ的なお話が閉じられるまでそこから3話ほどが取られます)

 

 ……こう書いていくと悪口のように思えるかもしれませんが、まるでつまんない作品だったら140話も読んでないわけです。

 せっかちな人には向かないけれど、ちょっとずつ歩みを進めていくダリヤの日々に隣で付き添うにはぴったりの語りでしょう。

 登場人物は主人公のダリヤを含めて愛らしく、まじめな仕事ぶりで、いつか報われる日がきてほしいと見守りたくなるようなひとばかり。

 そうした思いはダリヤを唐突に理不尽にフった兄弟子トビアスにさえ湧きます。

 トビアスは職場の若い事務員さんに一目惚れして婚約破棄をした以外にも、あれやこれやとやらかすのですが。かれがどうしてそんな行動をしでかしたのかも納得いくかたちでフォローしてくれているので、

「いつかしあわせに生きられるといいな……」

 と次第に想ってしまうようになりました。

 

0209(月)

 

 ■読みもの■

  マンガLOG収蔵庫『スマートフォンでマンガを読む時代における「見開き」の表現について』

m-kikuchi.hatenablog.com

 興味深い記事でした。まじでこれは作り手・出版社もしっかり考えてそう。

 時系列が前後しますが、おなじジャンププラスの別作者による別連載作魔のメムメムちゃん』103話を読んだら、こちらの見開きページについてもスマホでみてもパソコンでみても面白い表現がなされていて、「これかー!!」と蒙が啓かれました。

shonenjumpplus.com

 

  ■社交■読みもの■

  友人T氏へ『その淑女は偶像となる』布教に成功する

 高校時代からの友人T氏とLINEをする。

(このblogで書いたなかだと、きな子がめがねを忘れた』書館の大魔術師』などを布教してもらったり、イドインアビスふかたま』を一緒に観に行ったりしたひとです)

 僕ヤバ談義などをしつつ、『おちたらおわり』『いじめるヤバイ奴』そして『その淑女は偶像となる』をおすすめし、最後の一作について布教に成功しました。

shonenjumpplus.com

 序盤のあらすじ;

「あいどる?」

 なんですのそれ? さぁ私(わたくし)生け花のことしか…… たしか「不埒な踊り」を大勢の前で披露する人たちだとか まぁ! なんてはしたない! 私たち「淑女」とは大違いですわ! ねぇ桜子さま?

「こんな短いスカート……私はずかしくて着れませんわ。本日も精一杯、勉学に励みましょう」

 口元に手を当てたおやかにはじらいあるいは微笑む淑女に、おなじ制服をきた女子たちが「さすが白百合の華」と歓声をあげる。桜子はつつしみぶかい淑女の見本だった。

「"『QUEEN1』龍道寺龍星、5万人のステージを埋める"……くそっ次は財力に物を言わせて前の2倍CD買ってやる!」

 同じ声がトイレの個室で悪態をついている。桜子はつつしみぶかかった――その手のスマホに映っているのはメジャーからマイナーまでアイドルを網羅したニュースサイト――自分のアイドル趣味をかくすほどに。

「桜子のぶりっ子ムカつくよね! ああいう子に限って裏じゃ性格悪かったりすんのよ。今度体操服隠してやりましょう!」

「……一応体操服もう一着買っとくか」

 桜子はつつしみぶかかった――うへぇと舌を出し眉間に皺よせる、自分の本当の性格をひたかくすほどに。

「山形から転校してきました! 若菜あるみです! アイドルのお仕事もやってます! みんなよろしくね!」

 アイドル……? アイドルってまさかあの…… 大きな八重歯をむき出しにして満面の笑顔を浮かべる転校生へざわめく女生徒たちをよそに、ホームルームは進む。「ではあるみさんは桜子ちゃんの隣ね」

 隣席となる人物の顔と名前を見たあるみが一瞬思案し、次の瞬間また笑顔でとびつく。

「ねえ! まさか桜子って… あの"花色エトワール"の桜子ちゃん!?」

「あるみさん! 今はお喋りはその辺で!」

 桜子があわててあるみの八重歯を手でふさぐ。桜子はつつしみぶかかった――自身の過去を隠蔽するほどに。

 5万人の観客を沸かせた「Queen1」龍道寺龍星や「乙女♡ロイヤル」マーガレット恐子、「爆撃特攻隊」炎上夏希、「サイリウムらいとぴんく」南みみ……現代アイドル界(シーン)の頂点に立つ彼女らはかつて1つのユニットに所属していた――花色エトワール

「花色エトワールのメンバーはみんな人気だったんだけど、"一人だけ"ずば抜けて人気な子がいた。

 それがリーダー、姫宮桜子。花色エトワール5人目のメンバー!

 トイレの個室の空きスペースから顔を出し、あるみが満面の笑みで言う。

「私と一緒にアイドルやろ!」

 桜子はなぜアイドルを辞めたのか? なぜそれを隠しているのか? あるみの新天地でのアイドル仕事を見て桜子は何を思うのか? ……というのが第一話です。

 読む人への注意;

 コミックス未発売の若い連載だとばかり思っていたけれど、無料公開終了回がではじめてしまいました。(第1話から最新6話までのうち、げんざい第4話が有料限定に)

 上述のとおり有料なのは第4話だけで、ジャンププラスへの無料会員登録で付与されるポイントによって閲覧可能・連載追いかけ組になれます。

 無料公開中の1~3話が各話60ページの計180ページでかなりボリューミー。これを読んでピンときたら続きもお楽しみいただけるでしょう。4話以降も、大体30ページずつ6話までで計90ページと、かなりの分量があって、質量ともにすごい筆力だなぁと思います。

 読んでみた感想;

 がんばっているのに報われないひとがそれでも無理やり笑顔をつくってもうひと頑張りする、細めた目から涙をこぼしながらも笑顔をつくりつづける……尾田栄一郎ンピース』雷句誠色のガッシュ!!』などで読者をたびたび心動かしてきたあの顔。

 あの顔を、ひとびとを笑顔にすることが仕事のショービジネスの世界で、真正面から描いてみせる。そんな王道をつきすすむ漫画が『その淑女は偶像となる』です。

 キメ顔キメゴマがばっちしキマっている作品で、ズドンズドンと良い音を立てて放り込まれる直球の快さにページをどんどんめくってしまう。

 

「超カッコイイ ヒーローさ 僕もなれるかなあ」

 新人賞ではなくまず何より『ワンピース』コミックスの読者投稿コーナーでその名前を絵をジャンプに載せた堀越耕平先生が、のヒーローアカデミア』第一話で主人公デクが見せた、無個性だと知ってからもヒーローについてYoutubeを漁りノートをしたため母に尋ねたあの顔。あの顔もまた、"がんばっているのに報われないひとが見せる顔"で、そこには『ワンピース』序盤でよく見たようなそうした顔みたくは素朴にせつなく感動させてくれない、暗黒面に踏み入れてしまった悲愴さをはらんだ恐ろしい味を出していたけれど。

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「"どんな時でも全力でお客さんを笑顔にさせる" それが私がカッコいいって思ったアイドルだから」

 『その淑女は偶像となる』第一話でそう言って桜子に向かって笑顔を浮かべるあるみの顔も、そのあとの桜子の顔も、全然ちがうもので、全部が全部すばらしい。素朴に胸を打たれてしまう。

 来るぞ来るぞとわかっているのに、まんまと感動させられてしまう。というか、来るぞ来るぞと期待させたうえで、それを上回るビッグアーチを打たれてしまう。予告ホームランみたいな漫画なのでした。(新人さんの作品か~本当に?)

 今作の作者である松本陽介さんが『ワンピース』や『金色のガッシュ!!』のファンかは存じませんけどツイッターなどでは言及ナシ。藤田和日郎さんとか、さらに源流をさかのぼれそうではある)

「書く人や描かれる作品で、こうも違うものか」と楽しかったです。

 

 7日に更新された第6話でもまた、人々を笑顔にさせるお仕事としてのアイドルの姿が描かれていて、前向きにがんばりつづける主人公らを応援しました。

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 また、3話から登場する事務所の先輩まりも様との対立が、ステージの上で好転的に活かされて楽しい。

 フレデリック・ワイズマン監督ドキュメンタリーレイジー・ホース』で映し出されたような、ケの日々の反映としてのハレの舞台が描かれています。

 あのドキュメンタリーがとらえた、再帰性反射材をもちいたモーションキャプチャとリアルタイムプロジェクションマッピングにより、白人美女がじしんの手を動かすたびにステージライトが追従し、裸体に光の描線が(微妙なラグをふくみつつ)描かれる夜の舞台――それと時間を違えたおなじ場所で。だれも客がいない昼の閉店時間帯に、黒人掃除夫がワイパーをたくみに動かし、陽光にきらきらとかがやく洗剤の泡による描線をすらすらと引いていく……あの相似。あの美しさが、この漫画にもある。

(というか、ワイズマン監督作なら『BALLET アメリカン・バレエ・シアターの世界』を挙げるほうが適切かもしれない。あの、あまりにもかろやかな幕引きと、長く長く入念にストレッチをするなどそこに至るまでの地道なケの日々とのその対照をあげたほうが)

*1:もののけ姫』の前半をふりかえると、主人公の里に現れた巨大なもののけタタリ神には、謎の鉄塊が撃ち込まれており、主人公は里を離れた村をすぎたさき「洪水か地すべりか」で呑まれた「それなりの村があった」場で野宿をする。いっしょに野宿をしたジコ坊から――「なにか心当たりは?」的に聞いた鉄塊についてではなく――おおきなもののけが棲むシシガミの森の所在を聞く。

 シシガミの森周辺の岩がちな谷では、山犬のモノノケと石火矢をたずさえた人との対立があり、その紛争で出た負傷者{モノノケの傷の手当てをする山犬の娘サンや、女領主エボシからやむなしと切り離されたタタラ場の男衆}と主人公は出会う。

 タタラ場の男衆へたすけた主人公は、集落へ案内される。集落は緑の野山にぽっこりと出た腫瘍のような存在で{腫瘍だかコブだかという形容は、『ジ・アート・オブ・もののけ姫』に記された表現。宮崎氏の言かは不明}、タタラ場の周辺では樋が幾重にもとおされ、泥水を排水し腐臭をただよわせている。野山を石火矢製作のために削っている最中だった……というような具合です。

 『もののけ姫』の世界には、刀や矢をもって争いごとをする武家の下でひもじい思いをするふつうの社会のおいて、自分たちの生活を豊かにしようと独立・山を切り崩し石火矢をつくり売ることで現状を打開しようとするタタラ場の一団がおり、そして切り崩される山には古来からもののけがいる。そうして両者は利害を異にして対立し、対決し、そこから人間によって傷つけられた一部の自然はタタリ神へと変じて暴走し、無関係のとおくはなれた人里へコラテラルダメージが及んでしまった……

 ……タタリ神に撃ち込まれた鉄塊の経緯は『もののけ姫』劇中で明示されています。{『もののけ姫』は、そのとおくはなれた田舎でコラテラルダメージを受けてしまった若者を主人公にして、源流の現場を(たしょう蛇行しつつ)目指すこととなります}

 けれど、「それなりの村があった場」がなぜ「洪水か地すべりか」に呑み込まれたかについては、とくだん言及がない。しかしながら――だからこそ?――「タタラ場的な鉄鋼業かは不明にせよ、人間社会が発展していくうえで山を切り崩すような試みが、"それなりの村"でもなされた結果なのではないか? タタラ場は栄えたが、こちらの村はそうはならなかった、そういうコインの裏表なのではないか?」と類推できるような余地がある

*2:藤子・F不二雄著藤子・F・不二雄SF短編<PERFECT版>(7)タイムカメラ』kindle版85%{位置No.372中 316(紙の印字でp.313)}5コマ目、「ある日…」より。

*3:藤子・F不二雄著『藤子・F・不二雄SF短編<PERFECT版>(7)タイムカメラ』kindle版85%{位置No.372中 317(紙の印字でp.314)}3コマ目、「ある日…」より。