すやすや眠るみたくすらすら書けたら

だらだらなのが悲しい現実。(更新目標;毎月曜)

日記;2020/12/01~12/07

 日記です。3万字から8千字に減りました。年末で更新ぐだぐだになってしもうてスミマセヌ……。 ピーター・ワッツ著『ゼロズ』邦訳全編ネット公開とな!? という週。

 ※言及したトピックについてネタバレした文章がつづきます。ご注意ください※

 

1201(火)

 ■そこつもの■

  HMV35%還元セールで買い物し忘れた

 お絵描きに夢中になった結果、HMVオンライン通販の35%還元セールを逃してしまいました。

 

 ■読みもの■

  『NIR H, ExM&I950語くらい読む

 昔ざっと読んだときはよくわからなかったニュアンスをいくらか拾えて良かったです。ビバGoogle翻訳! DeepLに深い愛を!

 

 

1202(水)

 ■読みもの■

  『NIR H, ExM&I800語くらいを読みゴールを切る

 昔ざっと読んだときはよくわからなかったニュアンスをいくらか拾えて良かったです。ビバGoogle翻訳! DeepLに深い愛を!

 それは何ですか;

 『No Intelligence Required Her, Ex Machina and Interstellarは、SF作家グレッグ・イーガン氏が自身のサイトに投稿した、『her/世界でひとつの彼女』『エクスマキナ』『インターステラー』について主に論じたエッセイです。

 読んだ感想;

 あした読みおわる『アバター評』同様にキレッキレのウィットにくわえて、『アバター評』では書かれなかった具体的な作品検討もなされているので、こちらのほうが面白いよなぁと思います。

 読み終えてから気づいたんですけど、エッセイを要約紹介している先人がいらっしゃること知りました。

 最初は「まじかよおれがひーこら頑張ってたんは時間の無駄だったんでは……?」とガックリきましたが、知ってたら自分で読み直さなかったろうから、気づかなくって正解でした。

 

 やっぱりじぶんできちんと読んでみることは大事で、先人氏の要約とはぼくは違った印象を抱きました。 

(でもチャイナ・ミエヴィル氏が原典からチャールズ皇太子の実験都市やSteamゲーまでピクチャレスク/「ピクチャースキュー(悪凝り版ピクチャレスク)」について語ったエッセイ『Skewing the Picture』「絵について語ったエッセイ」になるほどの大きな違いはないです)

 キレッキレだけど、べつに感情的な意味でキレてはなくないですか? だって……

 脚本を読んだだれかが、ガーランド監督にリモコンを見せながらこう言ってあげるべきでした。

「オーケー、じゃあ今度は理にかなった宇宙が舞台のバージョンを書いてくれないか、こんなテクノロジーが存在する宇宙ね」

  After reading the script, someone should have turned to Garland with a remote control in their hand and said, “OK, now write a version that makes sense in a universe that contains this technology.”

   グレッグ・イーガン『No Intelligence Required Her, Ex Machina and Interstellar

 ……こんな感じですよ?

 あきらかに笑わせようとしている文章だと思います。

(笑えるかどうかは別問題だし。

 また、笑わそうとしている文章よりも、素朴に怒り散らしていたほうがまだ好感度たかいということはあるかもしれないけど……)

 

 評価もじぶんが読んだものと微妙にちがった印象です。

 たとえば『エクスマキナ』の脱出スリラー要素にたいする批判として先人氏は2つを紹介してますが、イーガン氏が挙げているのは4つ――2倍なのでした。

 はぶかれた2つは、ぼくが読んでも「イーガン先生、それ難癖くさくないですか?」と思えるもので、わからなくもありません。

 『her』についての批判点を先人氏は「本物のAIが出来たというのに一般人の反応があまりない」とまとめられているんですが、イーガン氏が批判しているのは、くわえて"一般人はおろか、AI制作に投資した(であろう)ひとびとの反応すらない"こと。

 『インターステラー』についての批判点を先人氏は、

  • 主人公がワームホールが(円盤ではなく)球だとギリギリになって知ったシーン。
  • 津波の惑星の実態を着陸して初めて知ったシーン。
  • 「愛だけが時間も空間も超えられる」

 とそれぞれ並行して挙げていますが、

 イーガン氏は上2例と最後の例とでは一貫性がないという風に言っているのでした。

 ワームホールが目と鼻の先の距離まで来てようやく「ワームホールを球だ」と、津波の惑星に実際おりたってようやく「この惑星にはでかい津波があるぞ」と初めて知るようなバカぞろいなのに、⇒終盤のありえない展開を合法化する伏線張りのためだけに、科学者が「愛は時空間にしばられない!」とアホみたいなことを予知してみせる……その辺のちぐはぐをもイーガン氏はツッコんでいるんです。

 

 記されている各作の批判は具体的で、読んでいて興味深いですが、具体的にグサグサくるのでつらくもあります。

 また、批判内容は「こういう性格の/そういう職種の/キャラがああいう劇中テクノロジーを使っているのに⇒これをしないのはおかしい」というプロット上の穴を指摘したものが大体で、イーガン氏の才覚が活かされるSF考証的な話題にまで達していないのが別方向につらい。

 『her/世界でひとつの彼女』評でイーガン氏がおこなう……

映画が終わりに向かうにつれ、かれらの関係{=トゥオンブリ(『her』主人公。ライターをしている男性。)とかれの購入したAIサマンサの恋愛}は、サマンサの莫大な知性のうちのごくごく一部を占めているにすぎないことがわかっていきます。しかしそれがわかったからといって、あの機能不全のロマンティックな関係だけがじしんにとって真に唯一の問題で無二の関心事であるというこの神経質な中流階級の男の泥沼みたいな世界観にわたしたち観客のすべての時間が費やされたという事実は変えようがありません

Towards the end of the film we learn that this relationship is only occupying a microscopic fraction of Samantha’s vast intelligence, but that doesn’t change the fact that we’ve spent all our time mired in the world view of a neurotic middle class man whose only real problems, and only real interest, are his dysfunctional romantic relationships.

   グレッグ・イーガン『No Intelligence Required Her, Ex Machina and Interstellar

 ……との批判は、このエッセイ全体に当てはまるブーメランでしょう。

 この記事を読んでくれたかたに、もし、

「エッセイの後でzzz_zzzzは、"これらのエッセイは、イーガン氏の莫大な知性や知識のごくごく一部を占めるにすぎない"と擁護します。しかしそれが分かったからと言って、しょうもない映画のしょうもない部分がいかにしょうもないか述べることだけが唯一の話題である文章に、わたしたち読者のすべての時間が費やされたという事実は変えようがありません」

 と言われたら、ぼくは返す言葉がありません……。

 

 以下の文は個別の記事ができたら日記から消します~。

 (1/23追記)訳文記事を書いたので(『『君の名は。』への評がいかに快挙か;訳文と感想(ネットで読めるグレッグ・イーガン氏の映画・創作観)』)消しました。

 

 

  『aAIPtiBT“H”を読む

 読んでなかったやつです。ビバGoogle翻訳! DeepLに深い愛を!

 それは何ですか;

 An AI Pal That Is Better Than “Her”(『her』より優れたAIパル)は、SF作家グレッグ・イーガン氏によるMIT Technology Reviewへの寄稿です。これの前後に読んだエッセイ2つと違い、べつに作品への直接的なdisはなく、発展性ある内容です。

 読んでみた感想;

 イーガン氏は『her/世界でひとつの彼女』劇中世界で利用されるAIの方向性について現在のトレンドじゃないとしつつも、現実に実用化されているいくつかの事例から将来的には登場しうるものだと述べます。

 サマンサの自己認識は、現実世界でのオートメーション化されたアシスタントのトレンドを反映したものではなく、まったく違った方向へ進んでいます。

 パーソナルアシスタントをおしゃべりに作ることは、ましていちゃつくなんて、資源の莫大な浪費でしょうし、ほとんどのひとはそれへイライラすることでしょう、あの悪名だかきマイクロソフト・クリッパーへみたいに。

Samantha’s self-awareness does not echo real-world trends for automated assistants, which are heading in a very different direction. Making personal assistants chatty, let alone flirtatious, would be a huge waste of resources, and most people would find them as irritating as the infamous Microsoft Clippy.

   MIT Technology Review掲載、グレッグ・イーガンAn AI Pal That Is Better Than “Her”

 昨今の対話型AIと人間社会とのかかわりについて、世界的な嫌われ者Windows Office』のアシスタント*1といったチョイ前のパソコンユーザーなら馴染みぶかい卑近なものから、介護施設認知症の老人が戯れるアザラシぬいのセラピーロボットの動画(現在非公開)ELIZAに代表されるAIをもちいた来談者中心療法に関する論文など、まじめな活用例まで概観し。

 そして、「『her』や現代のAIのかかわりは奇異に思えるかもしれないけれど、わたしたちが"子供のころの一番の親友はエリザベス・ベネット*2だった"と言うひとと出会っても、たじろぎはしても別にだれもそれを精神病的妄想の症例だと見なしたりはしないじゃないですか。でも以前はそうではなかった」といった旨から、過去の小説(の登場人物)と人間社会とのかかわりを振り返ったうえで。

 とりあげた過去と現在それぞれのトピックについて、フィクショナルな存在とヒトとのやりとりが一方通行的なものから双方向的なものになった変化があることへ着目し(=いつ読んでも書かれたことは変わらない本のキャラクターと、それを読むヒトという関係から。プログラムされたキャラクターへ自由に入力をしそれぞれ異なる返答をもらうヒトという関係へ変化した)、将来的に登場するかもしれない、フィクショナルな存在と人間社会とのさらなる関係を想像します。

 

 この想像の末尾は、いぜんこのblogで紹介した、イーガン氏がキリスト教の神をいかにして信じ、そしてはなれたかをつづった半生記Born Again,Bliefly』や、(前述記事でいくつか実作への昇華を注目したとおり)創作のなかでもりの海』などで語られてきたような、耳に聞こえよく都合のよい「物語」をただただ受け入れることにたいする疑問がむけられており、ファン必見の内容です。

 

 また、割合お堅そうな論考のなかにも、ELIZAからエリザベス・ベネットへという具合に、実在物をそのままのかたちで対比変奏させて話をすすめるイーガン氏の語り口・構成力が光っています。

 さらに、『her』を取り上げたイーガン氏の別エッセイ『No Intelligence Required Her, Ex Machina and Interstellarに記されたあらすじと比べてみても面白い。イーガン氏が論に合わせて取り上げる部分を変えているうえに、共通する部分についても単語1語レベルで表現を変えています。

 今年のアカデミー賞作品賞部門にノミネートされた映画『her/世界でひとつの彼女』のなかで、セオドア・トゥオンブリーという名のミドルエイジのライターは、サマンサと彼女がじぶんで洗礼名をつけた人工知能オペレーティングシステムをインストールし、まもなく恋に落ちます。

 In the movie Her, which was nominated for the Oscar for Best Picture this year, a middle-aged writer named Theodore Twombly installs and rapidly falls in love with an artificially intelligent operating system who christens herself Samantha.

   MIT Technology Review掲載、グレッグ・イーガンAn AI Pal That Is Better Than “Her”

 サマンサとじぶんで名乗るそのAIは、Siriの上位版の類いとしてトゥオンブリーに売られ、そしてサマンサに公式にまかされた仕事の範囲は、わたしたちがいまここで持っている自我なきソフトウェアの性能をぜんぜん超えるものではありません。

The AI who names herself Samantha is sold to Twombly as a kind of Siri plus, and nothing in her official remit lies beyond the capabilities of the very much non-self-aware software we have right now.

   グレッグ・イーガン『No Intelligence Required Her, Ex Machina and Interstellar

 サマンサがサマンサを自称することについてAIPtiBT“H”では「christens herself」、『NIR H, ExM&Iでは「names herself」と表され。

 そしてchiristen(という、名前じたいにひそむ物語性へ注目させる語を使用した前者でのみ(繰り返しになりますが『BA,B』などをほうふつとさせるような)他者からの都合のよい「物語」をただただ信じることに対する批判が語られていくことになります。

 

1203(木)

 ■読みもの■

  Avatar Review』730語くらい読む

 こんな辛辣だったっけと驚きました。昔ざっと読んだときはよくわからなかったニュアンスをいくらか拾えて良かったです。ビバGoogle翻訳! DeepLに深い愛を!

  以下の文は個別の記事ができたら日記から消します~。

 (1/23追記)訳文記事を書いたので(『『君の名は。』への評がいかに快挙か;訳文と感想(ネットで読めるグレッグ・イーガン氏の映画・創作観)』)消しました。

 

 

1204(金)

 宿直日。

 

 

1205(土)

 宿直明け日。

 ■食べもの■

  麺処まるわ宅麺デイズがはじまった

www.takumen.com

 麺処まるわさんのバジルソルトつけ麺が届いたのでまた食べてます。

 バターなどを容れたパックが進化してました。

 

 

 

1206(日)

 ■社交■

  親戚の新居を訪れた

 とてもきれいで感動しました。シャレたお家にあるあの縞々に嵌め込まれるあのほっそい窓々を初めて室内から見た気がします。

 

 ■観たもの■

  にじさんじイクラ腕試し予選B組を観ました。

youtu.be

 月ノ美兎委員長の配信で観ました。でも音響はしずりん先輩あたりのほうが良かったと思います。

 一期生は2年が経って本当に打ち解けた、気の置けない関係になってくれてリラックスして観れますね。

 ウィリアム・テルが終わった1:00:00~、3位を初心者のモイラ様が取ったことで、

静凛「みんなPvPにいそしんじゃったかもしんない」

勇気「やっぱりへーわ主義者はーあまりここではー点数とれないんですよねー」

月ノ「はいはいはいチキンがよぉ(笑)」

樋口「いっぱい殺せたんで良いです。キルリーダーなったんで」

 と煽り合いから、でろーんが自身やちひろちゃんえるさんなどがよくプレイするAPEXにからめた冗談をだし、

勇気「やっぱりね~ちひろ~、射撃ぃ近距離がとくいなんで、マスティフがあればいけましたね~」1:00:56

 とAPEXネタに乗ると、渋谷ハジメ兄貴も乗る。

渋谷「おれもセンチネルがあればなぁ」1:01:16

 ここでいまの一期生は、即座に

月ノ「なんてぇ?」

一同爆笑

静凛「なんて?」

月ノ「なんてぇ~?」

える「APEX断ちなって言ってただろさっき!」

月ノ「にーさんもっかい言ってくださいよ~?」1:01:18

 とハジキを総叩きできるようになっていて、しみじみニヨニヨしてしまいました。

 ハジメさんは年長者で、しかもパソコンや配信機材の知識があって(二期生がデビューしたくらいまではチラホラ明示的に言及がありましたが)配信外でその辺のサポートを買って出てくれていたこともあってか、しばらくのあいだ一定の敬意をもって接される側みたいな関係性ができあがっていたような印象がありました。慮りすぎて遠慮に見えてしまうような……。

 もちろん、個々では(しずりん~ハジメ先輩間とか)ちがったんですけど、ぼくの目からはスベってそうに思える瞬間にも「何言ってんすか(笑)」とならず愛想笑いが返されちゃう……みたいな、そういう局面がありました。

 さまざまなことを経たいま、ようやく「何言ってんすか(笑)」が反射で出てくるようになってくれたんだなぁなんて。

 

 

1207(月)

 ■本のこと■ネット徘徊■

  ピーター・ワッツ氏17年の作『ゼロズ』が全訳公開

clementiae.hatenablog.com

 blog『忘れないために書きます』の運営者さんが、ピーター・ワッツ氏による2017年発表の短編『ZeroS』を全文邦訳公開されました。

 原文はCC BY-NC-SA 2.5CC=クリエイティブコモンズ=作品の共有も翻案もおこなえるよ、ただしBY=クレジットを表示し―NC=非営利で―SA=改変時は元CCライセンスを継承する場合にかぎり)の作品で、つまり翻訳(≒改変)文章もクレジット表記かつ非営利であれば(≒元CCライセンスと同じ条件を継承するならば)自由に公開可能ということみたい。

 過日、blog『視神経』の運営者さんが、ピーター・ワッツ氏による99年発表の小説tarfish』を全文邦訳公開されていましたが、それに触発されたとのこと。

 ワッツ初期の長編と最近の短編、両方の邦訳がいまネットで読めるというわけで、えらいことになったものです。

 

  (遅報)コリイ・ドクトロウ氏の長編『メイカーズ』邦訳もネットで公開されてたんか!

blog.livedoor.jp

 著作『シスアドが世界を支配するとき』が『2000年代海外SF傑作選』(買って積んでます……)にも選ばれたというコリイ・ドクトロウ氏、氏の長編イカーズ』クリエイティブコモンズ作品で、 『基礎からのFreeCAD』の著者など坪田 遼氏が翻訳し、EpubKindle用データも用意されていることを今更ながら知りました。えらいひとがいるもんです。

*1:世界的な嫌われ者=米ウィキペディアのOffice Assistantのページにある「Criticism and parodies」項は、書き出しから「このプログラムはあまねくユーザーからうっとうしい出しゃばりだと罵られておりThe program was widely reviled among users as intrusive and annoying、」と火の玉ストレート。日本語圏においても、何かわからないことはないか投げかけるイルカ型アシスタントへ「お前を消す方法」と訊ねるネタでおなじみです。

*2:エリザベス・ベネット=ジェイン・オースティン氏による小説『高慢と偏見』の主人公。