すやすや眠るみたくすらすら書けたら

だらだらなのが悲しい現実。(更新目標;毎月曜)

日記;2019/07/30-08/05

 先週は月曜締切はぶっちぎりつつも、なんとか長文感想(?)を上げることができましたね。

 それはそれとしてこの更新は7/30(火)から8/5(月)までの日記です。5500字くらい。

 さておき『チェンソーマン』3巻発売の販促として、藤本タツキ氏の読み切り・連載作第一話の一挙公開(毎日一作ずつ)企画がもよおされているようです。なによりもこちらを優先して読んでいただいたほうがよいと思いました。(若書きで才気あふれる『佐々木くん』から行き作家的成長を追うのもよし、人を選びそうな個性と万人受けする面白さ両方がそなわり最強になった『予言のナユタ』『妹の姉』など近作から読むもよし)

 

0730

 宿直明け日。この日に東京へ某話題作のロケ地巡礼に行こうと思ったものの、帰宅したら眠りこけてしまいました。(9時~13時30分、14時30分~19時05分と眠りとおした)

 庭の除草剤まきもせず。ぐだぐだな休日。

 『バトゥーキ』既刊4巻までと、『ながたんと青と』既刊3巻までとを読みました。

 以下、読書メモ。

※それぞれの作品についてネタバレした感想がつづきます。ご注意ください※

 『バトゥーキ』読書メモ

 部活やら何やらを禁じられた高校生の少女が、ある日公園に行くとふしぎな音楽と踊りを目にして……というバトル漫画です。

 カポエイラvs他流派・他格闘技者のバトル内容も面白いんですが、とにかく語り口が独特ですさまじい。現代日本の主人公らのお話のなかからヌル~っと、カポエイラの技名や人名にまつわる物語へとつながれてしまうのです。著者の迫氏は、過去作『嘘喰い』でもいくつかの特殊ルールゲームについて劇中舞台や歴史とからめて来歴を紹介するような作劇をしたことがありましたが、そちらはまあ説明の範疇におさまるものでした。

 今作の語りはもっとぬるぬると変てこで、その変てこさが気持ちよい。さしこまれるナレーション(来歴についてのシーン)はお話を一本にまとめて脈絡をつけるためというよりかは、読者に理解や納得をうながすためだとかというよりは、脈絡がさまざまあることを示す――さまざまな事情で動くさまざまな人がいることを示すもので、読者の頭をかき回します。(来歴についての説明するシーンを読んでるぼくは「ま、待って、説明してくれ」とそのシーンについての説明をもとめたくなった)

 雑なくくりですけど、マジック・リアリズムだ、ラテンアメリカ文学みたいだと思ったりします。

 3巻くらいで主人公の出生の秘密があかされ大目標みたいなものが提示されるのですが、話の筋が見えた気がしません。(たぶんこのボス的な人物と戦うのだろう、でもどういう経路で?)

 

 『ながたんと青と』読書メモ

 戦争未亡人の娘(35歳)が、実家の老舗料亭ではいまだ男社会のため厨房に入れないため、在日米軍が主に食事するホテルの洋食店のコックのひとりになるも、紆余曲折あり料亭のほうに関わるようになって……という話。

 海洋動物学のキャンパスライフ(フィールドワーク)をあつかった過去作『海とドリトル』で見せてくれたような磯谷友紀氏の取材力が今作でも発揮されているんでしょう、レシピがきちんとあるタイプの料理漫画で、今後も楽しみです。

 

 

0731

 宿直日、の夜長を利用して『バイエルン犯科帳』を読みはじめました。これはそのうちちゃんとした感想記事を上げると思います。読みました。上げました(替え玉異性装トリックは1809年の単なる現実;『バイエルン犯科帳』感想)ドイツ近代刑法学の父A・フォイエルバッハ氏による19世紀初頭の事件(1809年とか、1827年とか)をまとめた本で、「こういう容疑者(犯人)の証言を受けて、裁く側はどう解釈すればよいか?」記した指南書の向きがある。

 ピストルで撃ったあと、銃床の遊底で殴りつけて脳挫傷レベルの傷を負わせたひとが紹介されていて、近年の某映画の殺意みなぎるアクションを思い浮かべたけど、それはそれとして、銃ことピストルの扱いとしてはそのように動くのが正しい(?)暴力のありかた(?)なのかなとか思った。

 はたして銃弾の信用性はいかほどのものと思われていたのか、という疑問があり、ストッピングパワーのとぼしい時代(銃)であれば、撃ち尽くしても戦いが終わるかどうかわからないで戦う=鈍器として使用できるよう身構えるのが、もっともらしい態度なのではないか? とか。……もちろん、新たに弾が手に入ったときに銃でたたいたせいで歪んでリロードできませんそれどころか暴発するおそれあるくらい壊れてしまいました、では元も子もないわけだけど。

(『バイエルン犯科帳』については翌日も書く)

 

 

0801

 宿直明け日、の朝長を利用してサマースケイル氏『最初の刑事』を読み始めました。

 こちらもきのうの『バイエルン犯科帳』とおなじく19世紀(後半)の事件・捜査をあつかったノンフィクションで、扱われる事件・刑事は、ディケンズをはじめとした数々の文学者・探偵小説家に影響を与えたそう。ただ、探偵小説的というよりかは自然主義的な書きぶりで、とにかく事細かに複数人の動きを追っているから、目がすべってしまう。

 日中は行事の準備。炎天下だなあという感じで、なかなか焼けました。

 

 さて『バイエルン犯科帳』について。Narratives of Remarkable Criminal Trialsとして英訳されていて、現在はリンク先のとおりカリフォルニア大学図書館所蔵の本がデジタル化され誰でも読めるかたちで配信されているようだ。英訳版も抄訳であることに変わりないが、14件の事件が紹介されている。目次を照らし合わせると邦訳1件目が英訳2件目、邦訳4件目が英訳10件目、邦訳5件目が英訳1件目、邦訳6件目が英訳12件目なのかな。ということで、新たに9件の事件が読めるわけだ……読み手が英語を読めるのであれば。(英訳3~9、11、13件目の計9件)

 インターネットで読めるかたちで文字列化してくれているので、グーグル翻訳など各種機械翻訳にかんたんにかけれるのがありがたい。

 

 

0802

 行事準備日でした。不満がたまった。8月4日の日記につづく……つもりでしたが、内に秘めておくことにしました。

 Narratives of Remarkable Criminal Trialsをすこし読んでみました。逆説的に、たまに読む新聞記事は文章がシンプルで良いなと思いました。この本みたいに、関係代名詞やら指示語やらが複数ついてしまうと途端にどこがどこにかかるのか分からなくなってしまう。Google翻訳と照らし合わせてみたけど、Google翻訳だって入れ子になると翻訳精度が下がるし、そもそも無かったものとして扱ったりするんですね。知らんかった。

 

 

0803

  準備予備日。昨日のうちに準備がだいぶ進んだのでおやすみです。きょうも東京に行かなかったし、午前中を寝て過ごしたので、第一日曜(ないし土曜)のお絵描き教室を行くことができなくなってしまいました。

 『彼女が俺を好きな理由』を読み、『私の百合はお仕事です!』2巻まで読み、『ごくりっ』全2巻を読み直し、竹宮ジン氏『マイ・ファーストレディ』を読み、『ディアティア』2巻まで読み、『この世界の片隅に』地上波初放送に立ち会いました。いくつかは2日のことだったかもしれません。

 どれもかわいらしかったです。

 以下読書メモ。

※それぞれの作品についてネタバレした感想がつづきます。ご注意ください※

 『彼女が俺を好きな理由』読書メモ

 誘うと10人に1人は乗る。そんなゴシップ誌の低俗なネタを、恋愛経験のない新人社会人の青年が、居酒屋でばったり会った初対面の女性にかましたところ、とんとん拍子で相手の家に行くことができて、ラッセンの絵などを売りつけられることもなく一晩を共にできました。女性の真意は? みたいなお話です。

 主人公の人物設計がなかなかきびしいところはあります。ふたりが知り合った経緯は、居酒屋でいきなり隣に座ってボディタッチするセクハラおやじに悩まされていたところを、主人公が助けた(というか、一緒にご飯を食べていたかれの上司の女性が機転をきかせただけで、青年自体はとくになにも貢献してない)というものなんですけど、さてこの青年、上司が去って二人きりになったところで、セクハラおやじ以下の低俗なお誘いをしてしまうのです。テンパっていたらそんなもんではないか、というところではありますが、「どうよ?」と思う人は思いそうな気がします。

(ヒロインが青年の誘いに乗ったのには理由があるわけですが、誘う青年のデリカシーのなさはそれとは別問題ですからね)

 

 『私の百合はお仕事です!』読書メモ

 周囲からの評価のために外面をよくする高校生が主人公の漫画で、バイト先のエス系百合仮装カフェの先輩店員で自分よりはるかにできるクールっぽい見た目の子と徐々に距離がちかづいていってます。すこし『彼氏彼女の事情』を思わせますがそちらとちがうのは、『彼氏彼女の事情』のヒロインが容姿性格学業成績などなどを完璧によそおったキャラなのに対して、『~お仕事です!』の主人公は、周囲に好まれること・空気を読むことに特化した外面で・むしろ学業成績などがあやしいキャラであることです。

 

 『ごくりっ』読書メモ

 幼馴染として成長してきた男2人女1人のトリオで、主人公はヒロインのことを好きでしたが内向的な主人公が尻込みしているうちに、彼女は明るい男とカップルになってしまった。恋愛成就の小さな神社に「いとしいしとと……」と未練がましい願いをしたところ、その晩、得体のしれない存在が主人公とヒロインの夢のなかに現れて……という漫画です。

 2016年小学館月刊スピリッツ』誌に連載された作品。 超常的存在によって男女が不定期的に急接近してしまうお話ということで、2012年から集英社週刊ヤングジャンプ』誌などで不定期連載された『君は淫らな僕の女王』を思い起こしますが、あちらよりももっとリアリティライン高く、じめっと、青年誌的な(←雑なくくり)人物造形。かわいいけれど、絶世の美女ではない、絶妙なキャラデザがすてきでしたね。

 

 竹宮ジン氏『マイ・ファーストレディ』読書メモ

 せつない、キュンキュンするような百合です。じぶん以外の誰かに顔をかがやかせるあの子の横顔を見たり、じぶんがあの子を見ていることをあの子でない別の誰かに気づかれて冷や水をあびせられたりします。

 

 『ディア・ティア』2巻まで読書メモ

 初々しいティーンエイジャーの心情がすごいやつでした。恋したことない子がやたらともてる先輩男子高校生に、自分の尊敬する先輩や親しくしているクラスメイトを振ったりなんだりするのはなぜだと疑問に思って近づきコミュニケーションをするようになり、新たに生まれたこの想いはなんだとなるようなところで1巻の半分くらいが終わるような感じの、とにかく初々しい動きが詳細に描かれています。

 セリフで明示されもしますが、そんな初々しい情動が、うまいこと文脈に乗るよう整えられています。男子は家庭環境に問題をかかえていて、誰かとカップルになることに尻込みしていて、女子は周囲の親しい友人たちがことごとくフラレているこの男とカップルになることに尻込みしている。そんな対称的な対照性をもちあわせていることに、ふとヒロインが気づいた時の視界のひろがりよう。成長のえがきかたはいろいろあるなあと勉強になりました。

 

 『この世界の片隅に』鑑賞メモ

 ひさびさに見返して(リテイク版は初)、素朴にまた楽しんでしまいました。すごい映画だ。彩度をおさえた画面のなかで、ぽんと鮮やかな色が挿し込まれたときの美しさ。かなとこ雲の雨の水色の美しさ。

 また「背景で時間経過を描いていたりしたのだなあ」「まだまだ拾えてないところがあるもんだなあ」と思いながら観ました。今回ひろえた部分は、たとえば金属供出で小物から金物などが消えるという、前提知識があったりあるいは『ガイドブック』などを読んだりして初めて気づく部分とは違うところです。

 さて今作については鑑賞メーターで書いた感想からさらに追記したものがメモ帳があるのですが、途中で止まって放置しています。まるで進歩がない……となりました。

 

0804

 行事日。焼けました。

 準備などで不満がふつふつとたまった。いや向こうからすればこちらのセリフだということなんでしょうが。1155字ほど愚痴を書いて消しました(未投稿です)。

  

 

0805

 行事片付け日で宿直日。

 昨晩は怒りの長文タイプ(未公開)をしたせいで2時くらいまで起きてしまい、ベッドに入ってからさらにヒートアップしてなかなか寝付けなかったうえ「明日は"あれは納得いきませんよ"と言おう」と抗議の言葉を練っていたんですが、朝目覚めたらその怒りはすっとんでしまった。しかし短時間睡眠により体力もすっとんだままで、眠気は消えることなくまとわりついていました。

 休憩時間に『最初の刑事』を読み進めました。

 『チェンソーマン』3巻発売の販促として、藤本タツキ氏の読み切り・連載作第一話の一挙公開(毎日一作ずつ)企画がもよおされていることに気づきました。このブログでも感想を書いた『妹の姉』もラインナップにあるみたい。 未読作もついに読めてうれしいです。『恋は盲目』『シカク』あたりはまだ青さがありますけど、『予言のナユタ』になるともう作画の面でも作劇の面でもズバ抜けてすごくって、第一線のプロの作品ですね。藤本氏の個性と万人受けする面白さ両方そなわり最強に見える。

 『最初の刑事』読書メモ

 事件発覚直後の陪審員が立ち会っての検証・取り調べ内容からして、なかなかえげつないなと思った。

「全員を調べろ。同じだけの敬意を払え」。「全員の話を聞かせろ」。村人たちは検死官がケント家を保護しているのではないかと疑っていた、とステイプルトンは述べている。「金持ちと貧乏人の法律は別なのか」と。

   早川書房刊11年5月初版、ケイト・サマースケイル氏『最初の刑事』、p.75

 捜査模様・その周囲の反応で、時代性土地性は出せそうなものだなあと思いました。

 さてここを読んで、「貧富や上流下流の階級差を、真理の追究という別の枠組みが無効化しつらぬく展開が面白い」(あるいは、そうした別の視座から投射されることによって、両者の日常から裡に抱えていた意識が表へと顕在化する展開が面白い)とおもったけれど、振り返ってみればいままで通り過ぎてきたフィクションでも大なり小なりそういうダイナミズムを扱った作品があったなあと思い至ります。(たとえば推理系なら"ネタバレなので脚注に伏せる*1"氏によって映画化された某作がそうですね。HowardHoax氏がむかしブログで批評されていた。カッコのあとの展開の面白さで言えば佐藤亜紀氏が『小説のタクティクス』で取り上げた災害がひとしく降り注ぎながらも階級差が浮き彫りになるスピルバーグ監督版『宇宙戦争』、未読未鑑賞ながらこちら『忘れないために書きます』さんの評を読むに面白そうな『高慢と偏見とゾンビ』もそういった趣向がありそうに思える)

 ぼくが適当な本をパラッと読んでフワッと思い浮かぶようなことは、そうした種本を五万と読んで飲み込んだジャンル作家はもちろん思い浮かんでいて、それどころか深く考え、作品の一要素として自作へアウトプットしている。さとい読者であればそれに十二分に応答してもいる。それを肝に銘じておかないといけないなアなんて思いました。

*1:B・アフレック